インフルエンザによる異常行動で、転落事故を起こしたお子さんの事例が報じられました。
いまでこそ、異常行動の原因がインフルエンザそのものであることは、広く知られています。
しかし少し前までは、抗インフルエンザ薬、とくにタミフルが、異常行動の原因と信じられていました。
20年ほど前から異常行動事例が続き、厚労省は2007年に、タミフルの10代への使用を原則禁止としました。
その後の調査で、インフルエンザによる異常行動にタミフル服用の有無が関係ないことが判明しました。
私たち医師の多くが当初から、それが濡れ衣であることは経験上分かっていました。
ところが厚労省は、「因果関係は否定できない」とのスタンスで、服用禁止措置を続けました。
厚労省は、科学的・客観的事実に反して、慎重すぎる事なかれ主義の施策を貫くことがしばしばあります。
HPVワクチンのときもそうでした。メディアが喧伝して不安を煽ると、厚労省はすぐに追随してしまいます。
2008年の研究では、タミフルを服用した方がむしろ異常行動は少ない可能性すら指摘されました。
しかし、厚労省がタミフルの10代への投与をようやく「解禁」したのは、2018年のことでした。
異常行動はインフルエンザによる熱せん妄であって、タミフルの副作用ではないと、国がやっと認めたのです。
いまでは、タミフルと異常行動に「因果関係」は無く、単なる「前後関係」であることが立証されています。
異常行動が起きる少し前のタイミングで、たまたまタミフルを飲んでいたケースが多かっただけなのです。
(写真は、厚労省のパンフレット「インフルエンザの患者さん・ご家族・周囲の方々へ」より)

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