80代の女性から、「はしかのワクチンを打ちたい」と電話がありました。いまそんな問合せが増えています。
はしか(麻疹)単独のワクチンは入手困難なため、実際に接種するのは麻疹/風疹混合(MR)ワクチンです。
そのMRワクチンは、接種希望者の殺到による品薄が懸念されるため、接種対象はある程度制限すべきです。
MRワクチンはまず、子どもへの定期接種が最優先です。
定期接種の第2期接種は就学前の「年長児」が対象のため、年度末の3月は駆け込み接種が増える月です。
さらに来月4月は、新たに接種対象となった子どもたちが、例年より早い動きで接種に来るかもしれません。
定期接種ワクチンは、当院ではつねに1カ月分の在庫を保っていますが、いまMRは少し多めに確保しています。
それをやりすぎてはいけませんが、たぶん全国の医療機関が、多めに確保しておこうと画策しているはずです。
その結果、関東などではすでに品薄状態だと聞きます。接種予約の受付を休止している医療機関もあります。
そんなわけなので当院では、いまは小児以外への接種は基本的に受け入れられません。
成人の方はまず、本当に免疫が不十分なのかどうか血液検査をしていただく方針です。
そもそも、いま日本で麻疹が流行しているのかと言えば、まったく違います。
かつて日本は他国から「麻疹輸出国」と揶揄されていました。2008年の麻疹発生数は1万人を超えていました。
そこでワクチン接種に力を入れ、2015年にようやく「麻疹排除状態」であることがWHOから認定されました。
ただしその後も、旅行者を発端とした発生が見られ、2019年の麻疹届出数は744例に及びました。
ところがその翌年、コロナ禍の「3密回避」等が奏功して、麻疹が激減するという予想外の展開となりました。
なので当然ですが、人の移動がまた増え始めた昨年からは、麻疹もまた増えています。
海外から麻疹がまた持ち込まれることは、すでに予想されていた展開なのです。
そして少なくとも、現在の20人ほどの発生では、麻疹が流行しているというほどの事態ではありません。
慌てず騒がず、定期接種対象者から順次、粛粛と、ワクチンを接種すれば良いのです。
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