大阪で開催されている、日本循環器学会学術集会に参加してきました。
会長の、大阪大学心臓外科の澤芳樹教授は、昔は多少面識もあった方ですが、いまや雲の上の人です。
なにしろ、iPS細胞を用いた心筋細胞シートを使った研究で、いまや世界の最先端を独走しています。
そしてその心筋細胞シート用の細胞を提供しているのが、iPS細胞の生みの親、京都大学の山中伸弥教授です。
そのようなつながりがあって、今日の記念講演が行われたというわけです。
山中教授は、若い頃からこれまでの全研究経過を、きわめて興味深く、しかも面白く話してくれました。
そのあとで講演した桂文枝師匠にも負けないほどの、関西人らしいノリでした。こういう講演を聴きたかった。
ノーベル賞受賞後、これまでに何度も語られてきた一般向けの発言や記事とは、ひと味違いました。
医学研究者である山中教授が、同じ医学研究者に講演するので、その内容は実に詳細で興味深いものでした。
彼の最初の実験で、その結果がもくろみとは真逆になったことがきっかけで、研究にのめり込んだそうです。
次の実験で、また予想外の結果が出ると、そっちの方に興味が移る。しかもとことん追求する。そういう性格。
するとまた別の副産物が出る。こんどはそっちを探求する。どんどん興味がずれていく、より面白い方に。
悪く言えば移り気、良く言えば柔軟。気が付けばiPS細胞を発見していたと、ザッと言えばそうなりますか。
多分、天才的なひらめきがあるんでしょうね。面白いものを見逃さず、つかむ。そこが凡人とは違うのです。
「iPS細胞」の「 i 」だけ、なぜ小文字なのか。山中教授の口から、その理由があらためて明かされました。
もともとは、「ES細胞」と対等に「○S細胞」と命名したかった。でも目新しい「2文字」が見つからない。
最終的に「IPS細胞」にしたけど2文字っぽさを残そうと、「 I 」を小文字にして「iPS細胞」にしたとのこと。
Appleの「iPod」を意識したのは本当ですが、あくまで「 I 」の存在感を弱めるためだったんですね。
あるときAppleの幹部に「iPodのマネしてiPSにしたけど」と言ったら、「ええんちゃう?」と言われたとか。
そのくだりがなんとも、関西人。
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