「薬がのみきれない!〜知られざる “残薬” のリスク〜」、昨日の「クローズアップ現代」のテーマです。
薬が多いことの問題は、理解できます。しかし「残薬」がリスクとは、誤解を招く表現です。
残薬(=薬を飲み残すこと)は結果であり、問題の原因ではありません。残薬を減らす工夫こそが大事です。
残薬が出る原因には、次のようなものが考えられます。
(1)単純に薬を飲み忘れたり、飲むタイミングを逸してしまう
(2)薬をなるべく飲みたくないので、自己判断で中断する
このうち(1)は、処方の工夫で対処しますが、(2)は、医療の根幹にもかかわる大問題です。
治療のために必要だから処方された薬を、飲みたくないから飲まないでは、医療自体が成立しません。
その背景には、理解不足と医療不信があり、それは医師と患者との人間関係にも関係してきます。
これまでは「コンプライアンス」=医師の指示を守って薬を内服すること=「服薬遵守」でした。
これからは「アドヒランス」=患者の理解と意志に基づいて薬を飲むこと=「服薬遵守」だそうです。
医師からの押しつけ処方か、患者自らの要望による処方か、まるで北風と太陽のような好対照に見えます。
しかし、実際の医療現場は、このように単純な話ではありません。
十分説明しても、なかなか理解してもらえない。けれども、どうしても飲んでほしい薬もあるのです。
しばらく内服を続けて効果が出た時点で、やっと薬の意義を理解してもらえることも、しばしばあります。
ときに医師は、心を鬼にして、北風になるべき局面もあると、私は思います。
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