中央社会保険医療協議会は今日、がん免疫療法薬「オプジーボ」を、値下げする方針を決めました。
2年に一度の定期的な薬価改定を待たず、例外的に、緊急に薬価を最大25%引き下げることになりそうです。
ひとり1年間で3,500万円かかるという超高額医薬品によって、国民皆保険制度が破綻しかねないからです。
「高額療養費制度」によって、国民の本人負担には上限があるため、結果的に国などの負担が増えるのです。
ではオプジーボを、保険がきかない自費診療にすればいいのかといえば、そういうわけにもいきません。
そんなことしたら、大金持ちしか使えない薬になります。なにしろ「夢の新薬」です。国民が公平に使いたい。
しかし薬価を下げることは、製薬会社に大打撃。新薬を開発するモチベーションを失いかねません。
「たくさん売れたら価格を下げる」という、薬価の見直し方も、メーカーとすれば納得がいかないでしょう。
オプジーボは当初、予想国内患者数470人の「メラノーマ」治療薬として、承認されました。
患者数が少ない疾患の薬は、どうしても高額な薬価になります。それはやむを得ないことです。
ところが「非小細胞肺がん」に適応が拡大され、患者数は1万5千人(別の検討では5万人)に増えました。
この患者数に3,500万円をかけ算したら、そりゃ医療制度が破綻しかねない金額となります。
当初予想を上回り需要が大幅に増えたのだから、薬価を下げても利益は出るだろう、というのが役所の考え。
「下げ幅25%は市場予想よりも小幅」と受け取られて、小野薬品の株価も少し上がったとのこと。
ただ、うがった見方をすれば、このような動きはすべて、小野薬品の想定した通りかもしれません。
まず患者数の少ない「メラノーマ」で高い薬価を勝ち取り、あとで「非小細胞肺がん」にも拡大する作戦です。
考えてみれば、需要が数十倍に増えたのだから、25%ぐらい値下げしたところで痛くも痒くもないでしょう。
ところでオプジーボは、本庶佑・京都大学名誉教授が発見した「PD-1分子」が、開発の元になっています。
本庶佑先生といえば、今年のノーベル医学・生理学賞の有力候補でしたが、受賞を逃しました。
もし受賞していれば、ノーベル賞に水を差すようなオプジーボの値下げは、やりにくかったかもしれませんね。
ノーベル賞発表の翌日から急に、財務省と厚労省がオプジーボ値下げに動いたので、そう思えてしまいます。
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