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がん検診の見落とし報道

青森県が行ったがん検診の調査検査を、NHKが大きく取り上げて、波紋を呼んでいます。
NHKは「胃がんと大腸がんでは、4割が見落とされていた可能性がある」などと報じました。
これに対して国立がん研究センターが、今回の調査では評価困難だととの声明を発表しました。
青森県がん情報サービスのサイトで調査結果をよく見てみると、ほぼNHKの誤報ですね。問題点は2つ。
(1)症例数が少なすぎる
(2)観察期間が短すぎる
これは青森県の責任ではありません。予備的調査として、10町村の検診結果をまとめてみただけなのです。
たとえば胃がん。ある1年間で見つかった胃がん患者は、全部で10人。
そのうち検診で要精査とされていたのが6人。あとの4人は精査不要と言われていた。だから見落とし4割だと。
たったの10人ですよ。この人数で、どれだけ正しい評価ができるというのでしょう。
調査対象の10町村の、それぞれの町村1つずつの結果を見ていくと、その問題がもっとはっきりします。
ある町(村)では、胃がん患者は1人だけ。この人は検診で要精査だったので、この町(村)は見落としゼロです。
一方で別の町(村)では、胃がん3人が全員、検診では精査不要との判定だったので、なんと見落とし10割です。
このように、少人数の患者の調査で、的中率だとか見落とし率だと言うこと自体、ナンセンスなのです。
せめて、がん患者100人単位で調べた結果なら、多少は統計学的に意味があるでしょうけどね。
もちろんこのことは青森県もわかっていて、やがて全県に広げるつもりの調査の、あくまで予備調査なのです。
ところがNHKはその数値の部分に食いついて、大きく報じたわけです。統計学的な思考が全く欠けています。

この記事を書いた人

医療法人ひまわり会 つるはらクリニック 院長

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