全国44の国立大学病院の昨年度の決算が、過去最大となる285億円の赤字だったと発表されました。
物価や人件費の上昇に診療報酬などの収入が追いついていないという、つまり相対的な「収入減」が原因です。
「このまま支援がなければ、大学病院は間違いなく潰れてしまう」と、関係者は危機感をあらわにしています。
いまの診療報酬体系でまともな医療を行っていたら、それほど儲からないか、赤字になる可能性もあるのです。
多くの医療機関が同様の状況ですが、大学病院という「大所」が苦境を公表してくれたことは大きいですね。
社会保障全体の維持のためという名目で、国民医療費の元である診療報酬はジワジワと削減される方向です。
最近はとくに、厚労省ではなく財務省が厳しい態度を打ち出しており、流れはもう変わりそうにはありません。
医者は、本当に弱い立場にあります。国の「公定価格」で、ほぼ完全に収入が決まってしまうわけですから。
国は社会保障費関係費用の増大を問題にしますが、その原因は「少子高齢化」という人口問題じゃないですか。
それに対して、医療機関への支払単価を安くして辻褄を合わせるとは、まったく筋違いもいいところです。
いったい国は、医療機関の価値や経営・存続、医療従事者の収入・生活・人生を、何と思っているのでしょう。
いまあちこちの医療機関が、経営の危機に瀕し、あるいはすでに破綻しています。医療崩壊へ向かっています。
病院の不採算の診療部門がなくなったり、医師が大幅に減るという形でも、地域医療への影響が出ています。
社会保障制度を「持続可能」にするためという国の施策が、医療機関を持続不可能にしているのです。
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