閑話休題

「ちなみになんですけど、解熱剤っていただけますか」

このような言い方をする患者さんが多くて、そこまで回りくどく控えめに尋ねなくてもいいのにと思います。

最近の方は、「ちなみに」を「ついでに」程度の意味で使ってるんでしょうかね。意味は通じますけど。

「閑話休題」という表現も、たまに誤用を目にしますが、そう言う私も学生の頃までは勘違いしていました。

「難しい話はさておき、ちょっと息抜きしましょう」みたいな意味かと思っていました。

正しくは、本筋からはずれていたムダ話(=閑話)をやめるときに使う「余談はさておき」の意味ですよね。

「いかんわ!(い『閑話』!)『休』憩はこれまでにして本『題』に戻ろう!」的な。

その意味でいうと、私のブログには、3行ごとに『閑話休題』と書かなければなりません。

しかも閑話に続く閑話、かんわかんわで青田赤道ですか。(それは、ちょんわちょんわ←古い)

それどころか、本題と言える内容が何もない「オール閑話」の回もあるかもしれません。今回もたぶん、そう。

しかし『閑話』の意味を辞書で引くと、(1)心静かに話すこと、(2)むだばなし、とあります。

まさに当ブログはいつもだいたいそんな感じで、毒にも薬にもならないむだ話を、心静かに書いております。

「さすまた」を振り回す使い方も、ある

貴金属店に押し入った強盗を、猪八戒似の(失礼)ガードマンが刺股(さすまた)で撃退した拍手喝采な事件。

刺股をあのように振り回す使い方があるのかと、しかも実際効果抜群じゃないかと、映像を見て驚きました。

たしかに刺股は本来、「刺す」「股状の」器具であって、おもに首などを壁側に抑え込む使い方ですよね。

しかも、複数の刺股で同時に別々の角度から刺して抑え込んでこそ、威力を発揮するモノだとされています。

ひとつだけを「刺し出す」と、その股状の部分を相手に両手で掴まれたら、容易に奪われてしまいそうです。

そうなると、その相手に本来の持ち手の棒状の部分で突かれたら、形勢は完全に逆転してしまいます。

だからこそガードマンは、相手に股を持たせないために激しく振り回したのかと、そう考えると腑に落ちます。

まあなんにせよ体格の良い方ですから、刺股でなくてもそれこそ猿股でも、武器にできそうな勢いでしたね。

「刺股」と聞くたびに、昔教科書で読んだ、魯迅の『故郷』を思い出す人もいるでしょう。私もその1人です。

「チャー」を捕まえるときの武器が刺股。チャーとは、ミュージシャンじゃなくて、西瓜を食べる獣ですね。

そして、チャーと同時にに思い出すのが、「ヤンおばさん」ということになります。

懐かしくなって青空文庫で読んで驚きました。「刺股」も「チャー」も「ヤンおばさん」も出てこないのです。

それぞれ、「叉棒(さすぼう)」「土竜(もぐら)」「楊二嫂(ようにそう)」。なにそれ。もうガッカリ。

と思っていたら、さきほどの井上紅梅の訳ではなく、佐藤春夫の翻訳版もありました。

こちらには「刺又」「チャー」「楊小母さん(ヤンおばさん)」が出てきました。これですよ教科書のやつは。

翻訳者の言葉の使い方・選び方って、こうも違うんですね。

井上版で習っていたら、これほどまでに私の記憶に残る小説ではなかったかもしれません。

鼻に執着する花

「鼻水が出る」という意味で「鼻が出る」なんて言いますよね。

この場合、厳密には「洟が出る」という字で書くべきかもしれませんが、日常的には「鼻」を使ってます。

まあどっちみち、しゃべるときは同じ「ハナ」ですけど。

「ハナ」と読む漢字では、「花」「華」「英」は同語源、また「鼻」「洟」と「端」も同語源のようです。

花と華の違いとか鼻と洟の違いを調べると興味深いですが、受け売りばかり書きたくないので割愛します。 

「花ちゃん」と言えば、当ブログではわが家の愛犬のことを指します。「ハナ」じゃなくて漢字の「花」です。

まあどっちみち、しゃべるときは「ハナチャン」です。

花ちゃんに「モフモフ」したモノを与えると、食らいついてなかなか離(ハナ)してくれません。

口から無理矢理引っ張り抜こうをすると、歯茎と目ん玉をむき出しにして、余計に強く噛んで抵抗します。

ダスキンモップが最悪で、引っ張り上げると花ちゃんがモップにぶら下がってしまうほどです。

花ちゃんはぬいぐるみも好物です。とくにその「鼻」に対する執着が強く、どうしても食いちぎろうとします。

わが家のアンパンマンはすでに、鼻をもがれて間抜け顔になっています。なのに目は笑っているので哀れです。

クマのぬいぐるみは、固く縫い付けてあった鼻が無理矢理かじり取られ、醜悪怪奇な顔貌に成り果てています。

「クマ」にイライラする日々

「クマ被害」が毎日のように報じられます。今日のNHK「クロ現代」のテーマも、クマ被害の対策でした。

これを見ていて私はしかし、出演者の「クマ」のアクセントが気になって、内容が入って来ませんでした。

桑子キャスターは、NHKの標準アクセントに従い、「池」や「島」と同じ、「尾高型」アクセントでした。

一方でゲストの東京農大教授(小池伸介氏)は、「船」や「猿」と同様の、「頭高型」で一貫していました。

NHKに限らず、メディアで耳にするのは、尾高型。とくにNHKは、このルールを厳密に守っています。

でも私は頭高型です。尾高型は何度聞いても慣れません。すごくイライラします。

この件は<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-3308.html" target="_blank" title="3年前">3年前</a>にも書いたことがあり、つまり私は年がら年中「クマ」にイライラしているのです。

ところが最近、そのNHKで青井アナがコメント中にクマを頭高型で言ったのを、私は聞き逃しませんでした。

つまり青井アナは、多分個人的には頭高型なのです。NHKの規則で、尾高型に矯正(強制)されているのです。

私には納得しかねますが、伝統的には尾高型が正しく、最近は頭高型も市民権を得つつあるのだといいます。

例の<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-1730.html" target="_blank" title="「NHK日本語発音アクセント新辞典」">「NHK日本語発音アクセント新辞典」</a>では、ようやく頭高型も認める記載が入ったばかりです。

このように、2拍和語で尾高型から頭高型に変化しつつある語には、ほかに「さじ」とか「父」があるとか。

あー、私はまだ伝統的(尾高型)かな。

「豚汁」は「ぶたじる」か「とんじる」か

「豚カツ」が、わが家の食卓に上るとき、ほぼ必ず「豚汁」が添えられます。以前からそういう流儀なのです。

その「豚汁」のことを、東京などでは「とんじる」と言うようですが、わが家では昔から「ぶたじる」です。

「とん」は「豚」の音読みで「ぶた」は訓読みですが、「汁」の音読みは「じゅう」で「しる」は訓読みです。

したがって、「ぶたじる」は訓読みですが、「とんじる」と読んでしまうと「重箱読み」になります。

昔は全国的に「ぶたじる」だったそうですが、NHKの塩田氏によると、東京から「とんじる」が始まったとか。

2000年の調査では、北海道を除く東日本が「とんじる」、それ以外が「ぶたじる」という分布でした。

しかし「とんじる」の勢力範囲は年々拡大し、その後は近畿地方も「とんじる」に寝返っています。

こうして、テレビ等による東京からの情報発信力の強さによって、全国に「東京方言」が広がっていくのです。

いまや「ぶたじる」は、九州北部と北海道と鳥取に局在した、マイナーな読み方になってしまったようです。

九州はともかく、北海道と鳥取に共通する読み方と聞くと、松本清張の『砂の器』を思い出してしまいます。

あの映画では、東北地方と出雲地方に共通する「ズーズー弁」が、重要な鍵となりました。

それが「かめだ」ではなく「とんじる」だったとしたら、丹波哲郎と森田健作は鳥取砂丘を歩いたはずです。

医者は字がきたない(例外あり)

字の書き間違いについて昨日書いたばかりですが、そこからのスピンオフということで。

子どもの頃、お腹をこわしたりして小児科に行くたびに、私の興味はお医者さんの書くカルテでした。

先生が万年筆でカルテにミミズのような文字を書き殴っていたのを、子どもの頃に何度も目撃しました。

それが日本語なのか英語なのか区別が付かず、もしかするとドイツ語なのかと思ったりもしました。

昔から、医者は字がきたないということになっています。(美しい字を書く先生もいらっしゃいます)

その理由として、医者は自分のしゃべる速度で文字を書きたがる、という説があります。

たしかに私もそうです。思考の流れを妨げたくないので、黙読の速さで文章を書いてしまいます。

一文字ずつ丁寧に書くことなどあり得ず、画数の多い漢字がとくに乱れます。ひらがなですら変形します。

もともと悪筆なのが、速記によってさらに酷いミミズ文字になり、おそらく書いた私にしか読めなくなります。

どうかすると私自身にも読めないことがあり、「解読」するのに時間がかかったり、ついに諦めたりもします。

電子カルテの登場によって医師がカルテを手書きしなくなったのは、つい最近のことです。

カルテ本文も点滴指示書も処方箋も紹介状もみな、キーボードとマウスで「書き上げる」ことができます。

しかしそのおかげで、たまに手書きしなければならない書類に出くわすと、酷いことになります。

漢字を忘れているとか、書き間違うというレベルの話だけではありません。

筆記作業に使う手や上肢の筋肉群が退化しているので、筆圧が上手に調節できないし、すぐ疲れるのです。

おそらく脳の筆記中枢も退化していますから、ボールペン先が意図した方向に進みません。

このように、電子カルテ時代になってむしろ、手書き文字がますます汚く醜くなってしまったのです。

漢字を間違える

公的な手書き文書で、漢字を書き間違えるという失態をやらかしてしまいました。

病名を「脂質異常症」と書くべきところ、「質」の字の下半分が「算」の下半分になってしまったんですね。

多分このままでも意味は通じるはず。まさか、この病名は何かと問い合わせてくる意地悪はいないでしょう。

ですが、このへなちょこ漢字をそのままにしておくのは、さすがの私でもハズい。

しかし、修正テープを使って公文書の過誤を隠蔽するのは間違っています。私の主義にも反します。

かと言って、2本線を引いて修正して修正印を押せば、私の間違いを強調するようなもの。それも避けたい。

私が試みたのは、「目」の部分を大きく上から書き直し、「升」みたいな部分を潰してしまうという力業。

その結果、私のミスは目立たなくなりましたが、漢字の下半分がグチャグチャになってしまいました。

字を手書きすることが減ったせいでしょうか、漢字を忘れてるし、書いても間違えることが増えました。

完全に忘れてしまった漢字は、パソコン上で表示させてから、それ見ながら手書きしています。

問題は、難しくもない小学生レベルの漢字を、書いてる途中で急に書けなくなることです。

「鉄欠乏性貧血」と書いているとき、「鉄」の右側が「失」か「矢」か、急に自信がなくなることがあります。

パソコンで調べるのもシャクなので、「矢」の上がちょっとだけ出たような微妙な字でごまかしたりします。

「貧血」の「貧」と「貪食」の「貪」も、ときどき急にどっちか分からなくなります。

しょうがないので、字の上の部分を「分」とも「今」とも読めるように汚く書いてごまかしたりします。

こういうとき、日頃から字が汚いことが役に立ちます。

『ハンチバック』読後感

芥川賞には、市川沙央(いちかわさおう)さんの『ハンチバック』が選ばれました。

その一報を聞いて、いつものように受賞作を読んでみました。(以下、ネタバレがあります)

普通ならKindle版で読むところですが、今日はちょっと疲れていたので「Audible版」で聞きました。

しかもデフォルトで1時間51分かかるところを、1.2倍速にして1時間32分で「読了(聴了?)」しました。

1.5倍とか2倍とか、最大で3.5倍まで設定できますが、さすがに聞けたモノではありません。

「ハンチバック」とは「せむし」のことですね。用語として微妙です。

主人公も、そして著者の市川氏も、ともに人工呼吸器を装着して生活してる重度障害者なんですね。

能力的にも倫理的にも生理的にも、健常者にはとても書けない小説だと感じました。

ままならぬ体で生きる心情が赤裸々に描かれていますが、残念ながら私の好む小説ではありませんでした。

でも文學界新人賞とか芥川賞は、こういうやや実験的で挑戦的な小説が好きなのでしょうね。

PCR陽性とか濃厚接触とかの言葉が普通に出てくるところだけが、私には現実的で安心できる部分でした。

ちょっとこれ以上、感想が膨らみません。すみません。

神代もきかず竜田川

奈良県生駒市を流れる竜田川の水が、緑色に変色しているのが見つかったというニュース。

その色はまるで、わが家の入浴剤「バスクリン薬用きき湯 FINE HEAT レモングラスの香り」にそっくりです。

川がこんなに鮮やかな蛍光色に染まるとは、「神代もきかず」という表現がまさにピッタリの珍現象ですね。

「ちはやぶる 神代もきかず 竜田川 からきみどりに 水くくるとは」(鶴原業平朝臣)

(珍しいことが色々あったという)神代にも聞いたことがない。竜田川が川水を真緑に絞り染めにするとは。

どうやら川の緑色の成分は、入浴剤に使われる「フルオレセインナトリウム」という物質だと判明しました。

で、件のバスクリンの成分表を見たら、「黄色202」という色素が入っています。これがそうらしいですね。

誰かがバスクリンを大量に川に流したのでしょうか。

竜田川の場所をGoogleマップで見たら周辺には「龍田」という地名があり、熊本の龍田地区と似た状況です。

熊本の場合、山は「立田山」で、駅は「竜田口」で、学校は「龍田小」ですが、当然みな同根でしょうね。

まだ文字の無かった時代から、その地域には「たつだ(たつた)」という呼称があったのだろうと推測します。

神代もきかず竜田川

奈良県生駒市を流れる竜田川の水が、緑色に変色しているのが見つかったというニュース。

その色はまるで、わが家の入浴剤「バスクリン薬用きき湯 FINE HEAT レモングラスの香り」にそっくりです。

川がこんなに鮮やかな蛍光色に染まるとは、「神代もきかず」という表現がまさにピッタリの珍現象ですね。

「ちはやぶる 神代もきかず 竜田川 からきみどりに 水くくるとは」(鶴原業平朝臣)

(珍しいことが色々あったという)神代にも聞いたことがない。竜田川が川水を真緑に絞り染めにするとは。

どうやら川の緑色の成分は、入浴剤に使われる「フルオレセインナトリウム」という物質だと判明しました。

で、件のバスクリンの成分表を見たら、「黄色202」という色素が入っています。これがそうらしいですね。

誰かがバスクリンを大量に川に流したのでしょうか。

竜田川の場所をGoogleマップで見たら周辺には「龍田」という地名があり、熊本の龍田地区と似た状況です。

熊本の場合、山は「立田山」で、駅は「竜田口」で、学校は「龍田小」ですが、当然みな同根でしょう。

まだ文字の無かった時代から、その地域には「たつだ(たつた)」という呼称があったのだろうと推測します。