小数の読み方

「35.8度」を私は、「サンジュウゴテンハチド」ではなく「サンジュウゴーテンハチド」と読みます。

この場合の「5」の部分は、「ゴ」ではなく「ゴー」の方が、「収まり」が良い気がするのです。

 

ところが、とくに若い人が前者のように言うのを時々耳にすることがあり、違和感があります。

それが言葉の揺れなのか、たまたま今風なのか、単に私が古いのかと、ずっと気にしていたことでした。

 

最近、NHKの放送用語委員会がその点を議論している文章を見つけ、ようやく合点がいきました。

それは、小数の読み方の「拍数(モーラ数)」は、2拍に合わせた方が自然な発音になる、という学説です。

つまり、「イチ・ニ・サン・ヨン・ゴ・ロク」ではなく、「イチ・ニー・サン・ヨン・ゴー・ロク」だと。

具体的には、2.5(ニーテンゴ)、3.5(サンテンゴ)、4.5(ヨンテンゴ)、5.5(ゴーテンゴ)となります。

 

なるへそ(=なるほど)と思って読み進んでいたら、もっと面白いことが書いてありました。

 

それは、小数点以下の「2」と「5」の読み方においては、「2拍に調整されない」場合もある、ということ。

具体的には、2.2(ニーテンニ)、2.22(ニーテンニーニー)、2.222(ニーテンニーニーニ)という具合。

どうやら、小数部分の桁数が奇数の場合、最後が「ニー」にはならず、「ニ」の1拍に留まるというのです。

そうなる理屈の詳細は割愛しますが、自然に発音しやすい方向に変化した(=揺れた)結果なのでしょう。

 

なので年配のアナウンサーには、「サンジュウゴテンハチド」のように、古風な発音をする人もいるとか。

最近の若い人がそのように発音する事例は、いわば「揺れ戻し」なのでしょうか。

「しりとり」遊び

待合室や車の中で診察の順番を待っている子どもたちは、たいていスマホかタブレットで何かしています。

動画を見たりゲームをやったり、待ち時間を潰す道具が多くて、子どもたちは退屈しなくていいですね。

10年ぐらい前まではまだ「親も親だなぁ」なんて思いで見ていましたが、さすがにもう普通の光景です。

たまに、「しりとり」などの言葉遊びに熱中している親子がいると、逆に新鮮でほほえましいですね。

先日、子どもの診察をしている間、その子の兄弟が母親としりとりを続けているのを耳にしました。

子「しりとり」→ 母「りんご」→ 子「ごりら」→ 母「らっこ」→ 子「こざかな」

「こあら」と来ると思って耳を傾けていたのに「こざかな」と来て、思わず爆笑してしまいました。

個性的で良いですね。それに、「こあら」ではまた「ら」に戻るので、それを回避したとも考えられます。

大人は、子どもがうまく言葉を探せるように、平易な言葉で誘導してあげるのがしりとりのミソです。

そしてたまに「ん」で終わってみせて、「んがついたぁ」と子どもに指摘されて「しまったぁ」と言うのです。

英語にも、似た様な遊び “word chain” があるようですが、これは「スペル」の最後の文字をしりとりします。

スペルを知らなければできないので、「音」だけで遊べる日本のしりとりの方が原始的で普遍的でしょうね。

「最後の一音」をしりとりで繋げていけるのは、一音ずつ発音する、日本語特有の音韻構造によるのです。

これを専門的には「モーラ拍」というそうですが、おかげで日本の幼児は、話し言葉だけで遊べて幸せですね。

山火事が鎮圧

カリフォルニアの山火事を「対岸の火事」と思ってたら、日本を経て韓国にまで「飛び火」してしまいました。

日本各地の山火事は、消火活動によってあちこちで鎮圧が発表され始め、鎮火に向かいつつあるようです。

延焼を抑制できた状態が「鎮圧」で、完全に消えた状態が「鎮火」なんですね。今回初めて知りました。

ただ、ニュースでたびたび耳にする「火災が鎮圧した」のような「自動詞」的使い方には、違和感があります。

これが「火災が鎮火した」なら違和感がありません。「馬から落馬した」みたいでくどいのはさておき。

たしかに「鎮」は、「鎮める」と「鎮まる」の両方で使います。「咳を鎮める」と「咳が鎮まる」のように。

鎮火は、「火を鎮める」とか「火が鎮まる」という意味で、他動詞的にも自動詞的にも使えます。

鎮圧はしかし、「圧を鎮める」や「圧が鎮まる」という意味ではなく、「力で何かをおししずめること」です。

火災に対して鎮圧を用いるなら、それは「人や自然の力によって火災をおししずめること」であるはず。

なので「火災が鎮圧する」は違うと思うのです。せめて「火災を鎮圧する」か「火災が鎮圧される」でしょう。

こんなところに引っかかるのは、私だけですかね。もう気になって気になって、心が鎮まりません。

第12回日経「星新一賞」発表

第12回日経「星新一賞」のグランプリが発表されました。

受賞作を軽くレビューしますが、ショートショートなのでオチが命。なるべくネタバレしないように書きます。

【一般部門グランプリ】『ユウェンテルナ』(吉野玄冬著)

映像化されたら素晴らしいと思いました。舞台はアマゾンから宇宙へ。ベゾスからマスクではなくて。

単純なSFではないところが評価されています。吉野氏は、こういう作品を書き慣れてらっしゃるようですね。

【ジュニア部門グランプリ】『将来ドック』(小林宗太著)

職業柄、こっちの方が親しめました。私が書くならこの設定でしょうね。社会批判もこの程度がちょうど良い。

文体や文章のレベルが私に近いのも嬉しいし、なにしろオチが最高です。

11年前、私が<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-828.html" target="_blank" title="第1回「星新一賞」に応募したときのこと">第1回「星新一賞」に応募したときのこと</a>を思い出します。

締切間際に投稿を終えて院長室で爆睡してしまい、夜中に巡回してきたSECOMの人に起こされた顛末です。

残念ながら受賞は逃しましたが、その時の原稿をいま読み返してみたら、けっこう面白いじゃないですか。

いやいや、もうちょっと手直しして、もう一回応募するって・・・もちろんダメです。

ではいつか、ブログネタが無いときにでも、この場をお借りして私の作品を発表することにしましょうかね。

いま「チンチン電車」が熱い

「キンキン」に冷えたビールを飲みながら、その対義語が「チンチン」とはよくできてると思いました。

このような「○ン○ン」界隈に、他にどんなのがありますかね。辞書の助けを借りつつ考えてみました。

「アンアン」と泣く。初めて知りましたが、雷鳴が「インイン(殷殷)」と轟く、なとど言うらしいですね。

「ウンウン」頷く「エンエン」泣くまたは続く「オンオン」泣く。ア行は、泣く表現が多いです。

「カンカン」怒るか照るか帽子かパンダ「キンキン」ビールか司会者

「クンクン」嗅ぐ犬「ケンケン」片足または犬「コンコン」咳か雪か狐

「サンサン」太陽「シンシン」雪または夜。「ズンズン」と同じ意味で「スンスン」と言うそうですね。

「センセン」恐恐、子子「ソンソン」

「タンタン」麺または虎視か狸「チンチン」熱いまたは電車など「ツンツン」無愛想またはつつく

「テンテン」各地を「トントン」叩くまたはパンダ

「ナンナン」と話す「ニンニン」でござるよ「ネンネン」ころりまたは歳々「ノンノン」チガイマスネ

え〜っと、まともな「ワンワン言葉」とはいえないものが多数混入し始めたことを、お詫びするでござるよ。

疲れたので今日はここまで。

カンパ襲来

この冬最強といわれる「寒波」が来ています。熊本でも朝から雪が降りました。夕方にも降りました。

子どもなら喜んで犬のように走り回るところですが、私も大人なので、明日の道路の凍結が心配になります。

愛車は電子制御4WDなので安心はしていますが、太い(305mm)サマータイヤは滑りやすいかもしれません。

ところで、カンパを募る、なんて言うときの「カンパ」は、何かの目的に賛同した資金援助のことですね。

元々は、政治運動を起こして大衆を組織する意味のロシア語「カンパニア」に由来しているといいます。

議事堂の鐘を鳴らす合図で市民が立ち上がったそうで、その鐘(カンパネラ)が語源だとか。

「カンパネラ」はイタリア語で鐘の意味だと思っていましたが、あらためて辞書を引いてみたら少し違う。

鐘はイタリア語で「カンパーナ」。小さな鐘が「カンパネッラ」。カンパネラは呼び鈴サイズのようです。

なので議事堂の鐘の場合はカンパーナだと思うのですが、まあ私の理解の及ばない理由があるのでしょう。

同様のイタリア語を調べてみたら、「フォンターナ」が泉で、「フォンタネッラ」が小さい泉。

語尾に「ella」を付けると「小さい」という意味になるんですね。しかも語感まで可愛くなる。

イタリア語とかスペイン語って、聞いてて語尾が陽気ですよね。ノリが良くてちょっとうさん臭い。

夕食で久しぶりにスティックセニョールを食べたので、余計にそんな気がしているのです。

ちなみに「スティックセニョール」は、日本で開発されて日本で命名された野菜。「和製西語?」なんですね。

「まちがい探し」は嫌いじゃない

どういうわけか最近、「まちがい探し」の広告が、Facebookに頻繁に表示されるようになりました。

最初に見た時にうっかり真剣にチャレンジしてしまい、どこかをクリックしちゃったんでしょうかね。

あまりしつこいので「投稿を非表示」を選択。以後、いまのところ表示されなくなりました。

まったくこの手の広告は、気を緩めるとつけ込んできますからね。

ところで、「間違い」と似た言葉に「間違え」がありますね。私は圧倒的に前者をよく使います。

それぞれ、動詞「間違う/間違える」の名詞形なのですが、動詞ならば両者ともよく使いますね。

「言い間違い/言い間違え」についてNHKは、前者が優勢であり、なるべく前者を使えと言っています。

動詞形の「言い間違う/言い間違える」についてはしかし、私には後者の方がしっくりきますけどね。

似た様な言葉で、当ブログでよく使ってきた表現が「取り違い」と「取り違え」です。

ワクチンなどの「取り違い/取り違え」について書いてきた回数を調べたら、前者2回、後者31回なんですね。

圧倒的に「取り違え」をよく使っています。たしかにその方が自然な感じがします。

おそらくそれは、動詞形の「取り違う」と「取り違える」に由来するのでしょう。後者の方が馴染みます。

「違う」と比較して「違える」は、何かが逆になった、より能動的な錯誤のニュアンスがあるように思えます。

なので「患者の取り違い」よりも「患者の取り違え」と書いた方が、より悪質な印象になるんでしょうね。

昼は猛暑の発熱外来、夜はパリ五輪、という日々が始まりました

2024年のパリ五輪が開催される中、猛暑が選手や観客を苦しめています。特に今年はコロナウイルスの影響が続いており、感染対策が求められています。高温と湿気が重なる中、発熱外来には多くの患者が訪れ、医療現場は逼迫しています。選手たちは過酷な条件下でベストを尽くし、観客はマスクと水分補給を徹底して応援しています。私たちも安全に夏を過ごすために、健康管理と感染対策を徹底し、互いに支え合うことが重要です。

すみません。今日は手抜きして、ChatGPTに以下のようなお題を出して、ブログを書いてもらったのです。

「パリ五輪、猛暑、コロナ、発熱外来、の4つを盛り込んだ、200字程度の、敬体のエッセイをお願いします」

インチキして言うのもナンですが、中身の無い文章ですねぇ。まあ、自分の日頃のブログは棚に上げますが。

そして中身が無いくせに、起承転結はシッカリしていて、こぢんまりまとまって面白味がない。

私が好きなのは、「起承転」で終わったり、話題がズレたまま終わるような、そんな不安定な文章です。

そうか。それを頼んでみるか。「では、さっきのお題で、まとまりの無い文章を書いてください」。

さて、ChatGPTさんの回答はというと、やっぱり面白味の無い、でもしっかりまとまった文章でした。

どうやら、AIっていうのは、中途半端な文章を書くという、不完全なことができない体質のようです。

AIに弱点があるとしたら、そういう完全無欠の部分かもしれません。

『サンショウウオの四十九日』

芥川賞は、朝比奈秋の『サンショウウオの四十九日』と松永K三蔵の「バリ山行」が受賞しました。

今日は、医師作家である朝比奈氏に敬意を表してサンショウウオの方を、例によってKindleで読みました。

(以下、ネタバレあります)

全身が半分ずつ結合した「結合双生児」。そのひどく特殊な主人公設定に、まず興味をそそりますね。

真っ先に思い浮かんだのは、「あしゅら男爵」なのですが、もちろんそういう次元の話ではありません。

私も以前、考えたことがあります。頭部まで結合している双生児の、互いの意思の疎通はどうなんだろうと。

思っただけで相手に伝わるのか。それどころか、伝わる・伝えるという概念がなく「思いはひとつ」なのか。

読み進むうちにその答が得られたような、でもちょっと違うような、設定が難しすぎて矛盾をはらむような。

選考委員の一人は「小説にしかできない設定に挑んでおり、その文学的野心が評価された」と言います。

「映像化困難」とは思いませんが、映像化して面白いかどうか。その意味では、小説にしかならない設定かも。

結合双生児の心理描写という、たしかに実験的な設定を思いつくとは朝比奈氏、常人ではないと思いました。

なお、本作中に「あしゅら男爵」という言葉がちらっと出てきたのは、読者サービスでしょうか。

雨が降っても暑いです

ちょいちょい雨が降りますが、基本的には暑いですね。

いま寝室の室温が33.5度だったので、慌ててエアコンのスイッチを入れて、冷やし始めたところです。

「猛暑」とか「酷暑」などとよく言いますが、今日は「毒暑」という言葉を初めて目にしました。

それらの意味は同じですが、どれがいちばん暑そうですかね。

ためしに辞書で後方検索してみると、「暑」で終わる暑そうな二字熟語がたくさん出てきました。

「炎暑」焼けそうです。

「激暑」ゲキアツと読むべきか。

「厳暑」まあ暑そう。

「酷暑」よく使うヤツ。

「極暑」極寒の反対ね。

「焦暑」こげそうです。

「甚暑」ちょっと聞き慣れない。

「大暑」ぜんぜん普通。

「毒暑」からだ壊しそう。

「熱暑」なぜか特段の暑さを感じない。

「繁暑」聞いたことない。

「猛暑」聞き慣れました。

「烈暑」これは暑そう。

では、ここからは創作で。

「刺暑」「痛暑」「穿暑」痛いほどの暑さ。

「痺暑」「痙暑」「攣暑」いずれも熱中症レベル。

どうしても、体調に関連するものばかり思いつきます。職業柄しょうがないっしょ。