大村智はすごい人

ノーベル医学生理学賞を受賞した、大村智氏の本、「大村智–2億人を病魔から守った化学者」(馬場錬成著)。

この本を慌てて発注した<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-1463.html" target="_blank" title="顛末">顛末</a>は、前に書きましたが、手元に届くまでずいぶん待たされました。

先日、久しぶりに紀伊國屋書店に行ったら、いきなり、大村智氏の本のコーナーを発見。

普通なら、アイドル関係の本を陳列してるコーナーに、大村智氏の本が平積みです。もはやアイドル扱い?

よく見たら、大野智の関連本でした。

それはともかく、3週間待ってやっと届いた本を、さらに2週間寝かせ、本日読みました。一気に読めました。

すごい人ですね、大村先生。まあ、興味深いエピソード満載ですが、私が気に入った話を少し紹介します。

「イベルメクチン」は元々、ゴルフ場の土から発見した話は有名ですが、ゴルフを始めたきっかけについて。

研究のしすぎで精神に変調をきたした時、精神科の医師から「気晴らしにゴルフしなさい」と勧められたとか。

別の方法で気晴らしをしたら、どうなっていたことか。

何しろイベルメクチンは、年に1回だけ飲めばよい薬です。学会発表した際の質疑も、よく知られていますね。

「本当に1回だけで効くのか?」「効くから1回なのだ」

一見、ジョークですが、薬の特性を率直に述べたとも言えます。薬剤耐性は、いまだに確認されてないとか。

メルク社が、イベルメクチンを3億円で売ってくれと言ってきたのを、大村先生は蹴ったそうです。

あくまでロイヤリティ契約を主張し、結果的に200億円以上を入手します。研究者らしからぬ手腕です。

大村先生に断りもなく、メルク社が、オンコセルカ症へのイベルメクチン無償供与を決めたときのこと。

これに対しては意外にも、大村先生は憤慨したとのこと。手続きとか、筋の通し方にはうるさい方のようです。

「人と同じことをやっていると、うまくいってもその人と同じレベルで止まる」私がいちばん好きな言葉です。

こうのとり打ち上げ成功

無人補給機「こうのとり」5号機を載せた「H2Bロケット」が、無事打ち上げられました。

米国やロシアの打ち上げ失敗が続いていただけに、世界中が見守る中での成功でした。

国際宇宙ステーション(ISS)で暮らしている油井亀美也さんたちも、ホッと胸をなで下ろしたことでしょう。

こうのとりが運んだのは、まず、食品や衣類、シャンプーなどの日用品。これで油井さんの髪もサラサラです。

尿を処理して飲料水にするための「水再生システム」のフィルターも届けられるそうです。助かります。

こうのとりは本来、シャンプーやフィルターではなく、赤ちゃんを運ぶとされる鳥です。

5年前に公募によって、「大切なものを運ぶ」というイメージのある、その名前が選定されました。

こうのとり提案者217名の中から、毎回1組ずつ、種子島の打ち上げ見学に招待されるそうです。いいなあ。

さて、こうのとりを題材に、プロはどんな文章を書くのか。後学のため、今朝の新聞コラムを見てみたところ、

編集手帳(読売):中学生の殺害事件

春秋(日経):タイの爆破テロ事件

産経抄(産経):タイの爆破テロ事件

余録(毎日):赤とんぼ激減

天声人語(朝日):灯火管制解除から70年

各紙とも、こうのとりには触れていませんでした。興味ないのでしょうか。

読売は社会問題を、日経・産経は国際問題を取り上げています。

毎日は、なぜ今日書くのか、赤とんぼの減少に警鐘を鳴らし、朝日はいつもの調子です。

BSL-4施設稼働へ

国立感染症研究所・村山庁舎の「BSL-4施設」の稼働について、厚労相と武蔵村山市長が合意したようです。

有効な治療法がなく、とくに致死率の高い病原体を「バイオセーフティー・レベル4 (BSL-4)」に分類します。

エボラウイルスもそのひとつ。これらを扱うことのできる研究施設が「BSL-4施設」です。

この施設の使命は、以下の3つあると考えられています。いずれも重要です。

(1)BSL-4病原体による感染症が発生したときの診断

(2)BSL-4病原体の基礎研究・診断法・ワクチン・治療薬の開発

(3)BSL-4病原体研究者の育成

世界中にBSL-4施設は、41カ所あるそうですが、先進国でそれが稼働していないのは、日本だけだそうです。

建設はしたものの、周辺住民からの反対によって、稼働ができずにいるわけです。

そもそも、日本にわずか2施設しか存在しないこと自体が、何をか言わんやです。しかも稼働していない。

では、他の国々では、住民の反対運動はなかったのでしょうか。そんなことはないでしょう。

施設の意義について、国が住民を説得し、住民が納得したからこそ、その国では稼働できているわけです。

ところが日本では、それができませんでした。住民を納得させられなかったからです。

これはちょうど、HPVワクチン(子宮頸がん予防ワクチン)の勧奨接種の差し控えと同じです。

日本人は、目の前の危険(ワクチンであれば副反応)ばかりが気になって、本来の目的を見失しないがちです。

建設から30年以上を経て、BSL-4施設が稼働に至ったのは、良くも悪くも、安倍政権の力かもしれません。

日本を、感染症のアウトブレイクやバイオテロから守ろうという、ある意味、国防のためとも思えてきます。

地球外生命体発見へ

NASAの科学者が、今後20年以内に地球外生命体を発見できる、と語ったそうです。

最近になって、木星の衛星エウロパや土星の衛星エンケラドスで、「海」の存在が確認されたからです。

海があるのであれば、地球と同じように、長い年月の間にきっと生命体が生まれているはず、という理屈。

何億年もかけて生み出すわけですから、まさに「海の(生みの)苦しみ」とでも申せましょう。

たしかに、無生物から生命が誕生するというのは、神秘的ですが、でも本当にそんなことが起こりうるのか。

南極に落ちた隕石から、DNAの構成要素、アデニンとグアニンが見つかったという話は、<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-123.html" target="_blank" title="以前">以前</a>書きました。

DNA自体が地球外からやって来たとすれば、これはもう、地球の生命誕生の根幹を揺るがす一大事です。

「たんぽぽ計画」という名の実験が、来月から国際宇宙ステーションの実験棟「きぼう」で始まります。

この研究で解明しようとしているのは次の2つ。

(1)生命(微生物)が地球から脱出して他の天体(火星や木星など)に到達できるかどうか

(2)生命の起原以前に有機物が宇宙から地球にやってきた可能性がどれくらいあるのか

たんぽぽ計画によって、地球の生命の起源がはたして海なのか宇宙なのか、その白黒が付くかもしれません。

地球上の生命を育んだ、母なる海が、生みの親ではなかったとすれば、ショッキングな話です。

おまけに、その宇宙から来た生命体が、どこでどのようにして誕生したのか、その疑問も残ります。

結局、宇宙でいちばん最初の生命体って、どうやって誕生したのでしょうね。

ビッグバンの前に、そこに何があったのか。その疑問にも似ています。

デッドセクション

本日開業した北陸新幹線は、東京、中部、東北、北陸の、4つの電力会社の電力供給地域にまたがっています。

そのために走行途中で、架線の交流電流の周波数が3回変わる、などというトリビアが新聞に出ていました。

もちろん周波数切替地点では、特別な工夫がなされているので、電気が途切れることはありません。

しかし電気の電圧が変わるとか、交流と直流が切り替わるような場合には、給電が途切れる区間ができます。

これをデッドセクション(無電区間)と呼びます。電車はその区間を、惰性で走ることになります。

全国の鉄道の、どこにどのようなデッドセクションがあるかは、鉄道ファンの方ならよくご存じでしょう。

残念ながら、私が知っているのは、常磐線の取手ー藤代間の1カ所のみですが、そこはよく知っています。

高1のとき、夏期講習を受けるため、茨城県の藤代にある親戚宅から都内まで、2週間ほど通ったからです。

古い記憶なのでやや不正確ですが、そのときの様子や心境を、思い出してみます。

デッドセクションに来ると、車内照明が切れ、空調が止まり、モーター音も消え、妙な静寂に包まれます。

惰性だけで進んでいる電車が、線路の摩擦で徐々に減速していくのがわかります。皆が息をのむ瞬間です。

なんとかこのまま、デッドセクションを抜けきって欲しい。乗客の願いはひとつ。思わず力が入ります。

と、パッと照明が点灯、モーターが音を立て、加速力が回復。みんなが安堵の表情で、肩をたたき合います。

ま、こんな感じ。

もしも、何かのトラブルで電車が急ブレーキをかけ、ちょうどデッドセクションで停車したらどうなるのか。

私は常磐線に乗るといつもそのことが心配で、デッドセクションに近づくたびに、ドキドキしていました。

虫除け効果なし

吊り下げ式の「虫除け剤」に対し、<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-627.html" target="_blank" title="以前から">以前から</a>私も感じていた疑問について、消費者庁が答えを出しました。

「効果の根拠が不十分で景品表示法違反(優良誤認)に該当する」、つまり効かないと。

「風通しの良い場所では効果が無かった」ようなので、逆に言えば、閉鎖空間ではある程度効くのでしょう。

少なくとも、玄関の外側とか、勝手口の外側とかの、屋外に吊しても、効果はなさそうです。

当院の玄関と勝手口に置いている、電動ファンによる拡散方式の「どこでもベープ」は、どうなんでしょう。

屋内側に置いているので、風通しは悪いです。ならばある程度有効かも。

今回の措置命令を受けて、各社は製造販売を中止するのではなく、表示のみを変更するようです。

アース製薬のサイトには、「指摘を受けた表示につきましては、すみやかに是正処置を行う」とありました。

大日本除虫菊は具体的に、「屋内と屋外の境目に吊してください」との文言を追加すると発表しました。

屋内と屋外の「境目」って何? 少なくとも、ドアやサッシのちょうど境目に、物を吊すことはできません。

結局、ドアやサッシのすぐ外側付近に吊すことになり、これは消費者庁の言う「風通しの良い場所」です。

メーカーが「境目に吊るしてください」と言っても、所詮、絵に描いた餅なのです。

この手の商品は、目に見えた虫除け効果を実感しづらく、なんとなく雰囲気で使うことが多いです。

なのでなおさら、パッケージ表示には厳密な正確さが求められます。

混入されたES細胞

「STAP細胞」に振り回された1年でした。

<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-851.html" target="_blank" title="画期的発見">画期的発見</a>→<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-889.html" target="_blank" title="疑惑">疑惑</a>→<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-891.html" target="_blank" title="コピペ論文">コピペ論文</a>→「<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-919.html" target="_blank" title="STAP細胞はあります">STAP細胞はあります</a>」→笹井氏自殺→検証→「ES細胞でした」

STAP細胞としていたものはES細胞であったと、理化学研究所の調査委員会が、昨日発表しました。

科学的分析によるこの結論は、ほぼ間違いないでしょう。となると最大の疑問は、ES細胞混入の経緯です。

まず、ES細胞の混入は、故意なのか偶然(事故)なのか。故意と考えると、2つの疑問が生じます。

誰がES細胞の混入を実行したのか。

(1)小保方氏(単独または共同)

(2)小保方氏以外

誰がES細胞の混入を知っていたのか。

(A)小保方氏(単独または共同)

(B)小保方氏以外

ここは(1ーA)と考えるのが自然ですが、しかし本当にそうなのか。(1ーB)の可能性はないのでしょうか。

誰かが小保方氏にES細胞を渡し、しかしそれを小保方氏はES細胞だとは知らずに、実験に用いた場合です。

その場合、小保方氏自身は、自分がSTAP細胞を新発見したと勘違いしてしまいます。

自分の目で発見した事実なので、それを早く発表するためなら、論文を捏造してもかまわない、となります。

誰に何を言われようと、絶対に確信があるので、「STAP細胞はあります」、となります。

ところが検証実験は、うまくいくはずがありません。もうだれも、ES細胞を混入してくれないからです。

決してオボちゃんを擁護するわけではありませんが、そんな可能性もあり得るなと、思った次第。

ただ、誰がES細胞を混入したとしても、追試で再現が不可能とわかっている捏造を、なぜしたんでしょうね。

STAP細胞はありません

もうほとんどの人がその存在を信じていない「<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-894.html" target="_blank" title="STAP細胞">STAP細胞</a>」。その検証実験はついに、打ち切られました。

「細かなコツをクリア出来れば再現できる」という小保方氏本人の手によっても、再現できませんでした。

小保方氏はあさって理研を退職し、この一件は事実上、幕引きとなるのでしょう。

「新発見は得てして疑われるもの」だからこそ、STAP細胞は逆に、最後まで信じたかったですね。

理論的には、再現できないからといって存在しないとは断定できませんが、まあ、そろそろ諦めましょう。

はたして捏造だったのか、あるいはまさかの真実だったのか。それを知っているのは、小保方氏ただ1人です。

いや、捏造でもなければ真実でもない、彼女の妄想だったのかもしれません。

妄想でも捏造でも、内容が新しく、体裁が整い、有力共著者を揃えた論文は、科学的には信用されます。

科学者が不正を行うはずがないという「研究者性善説」によって、データそのものは、あまり疑われません。

超一流の科学雑誌「Nature」は、少しでも研究生活歴のある人間にとっては、雲の上の存在です。

そのNatureが小保方論文を採用したのは、STAP現象の画期性を、重要視しすぎたためでしょうか。

笹井芳樹氏などの超有力共著者の存在によって、論文の真正性が疑われることもなかったのかもしれません。

ひとたびNatureに掲載されると、こんどはNatureの権威によって、世界中がSTAP細胞を信じました。

それから1カ月間、日本中はお祭り騒ぎでしたが、その後手のひらを返したようにSTAP叩きが始まりました。

<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-648.html" target="_blank" title="バルサルタン">バルサルタン</a>問題で、日本人の臨床研究論文が信頼を失ったのは昨年のこと。

今年は、基礎研究論文にも、特大のケチがついてしまいました。

1台1億円の車

ブガッティ・ヴェイロンの話ではありません。あれは2億円だし。

究極のエコカーともいわれる燃料電池車(FCV)は、ほんの4,5年前まで、1台1億円といわれていました。

ところが、トヨタが昨日発表した燃料電池車「MIRAI」は、1台723万円。

どこをどうやってコストダウンしたら、1億円が723万円になるんでしょう。技術革新おそるべしです。

政府も、補助金やらインフラ整備などで後押しして、燃料電池車では日本が世界を牽引しようという腹です。

いきなり来月発売というのも、予想よりも早い。かなりの前倒し感、トヨタの気合いを感じます。

歴史的転換点を迎えたともいえる昨日の発表はしかし、安倍首相のニュース等にかき消されてしまいました。

発売は来月15日ですが、その前日に総選挙の投開票がぶつけられてしまったのも、タイミング悪し。

いったい安倍首相は、トヨタの味方なのか敵なのか。

究極のエコカーとはいうけれど、燃料の水素を製造する過程も含めてエコなのか、そこが問題です。

水素の製造方法は、3つ考えられています。

(1)化石燃料を分解する

家庭用の「エネファーム」と同じ方法。化石燃料に依存し、生産過程でCO2が出る。いまいちエコじゃない。

(2)工場の排出ガスから取り出す

リサイクル的な意味合いではエコです。供給量は多いようなので、当面はこの方式が主流になるのか。

(3)海水を電気分解する

もちろんその電気は、太陽光や風力あるいは潮力などで発電します。これこそ究極のエコでしょう。

少し前までは夢物語だった、海水分解と燃料電池の組み合わせ。もう手が届くところまで来た感じがします。

アンタレス爆発

赤色超巨星アンタレスの超新星爆発ではありません。それなら<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-707.html" target="_blank" title="ベテルギウス">ベテルギウス</a>の方が先でしょう。

米国で昨日打ち上げられた無人ロケット「アンタレス」が、発射直後に爆発・墜落しました。

国際宇宙ステーションへの物資輸送を担う、補給船「シグナス」を送り出すのが、アンタレスの目的でした。

北朝鮮ならともかく、世界最高水準であろう米国のロケットでも失敗するのかと、あらためて驚きます。

まあ、無人でよかった。

爆発の原因は、ロケット1段目の主エンジン「AJ26」の異常だと報じられています。

このAJ26エンジンは、1960年代に開発された、旧ソ連製の「NK-33」エンジンの改良型だそうですね。

ここでまず、何じゃそりゃ、となります。ソ連製のエンジンを、このような重要な局面で米国が使うのかと。

ソ連では、ロケット計画変更のためNK-33は破棄処分となったはずが、こっそり保管されていたそうです。

ロシア時代になり、そのNK-33が米国の民間企業に売却され、改良されてAJ26と改名されます。

それが巡り巡って、今回の打ち上げを行った会社に渡り、アンタレスロケットに装着されたということ。

改名されても、そのエンジンの基本部分はNK-33。大昔にソ連で作られたものです。

そんなものを使わなきゃならない米国って、大丈夫なのかと疑いたくもなります。

一方でロシアは昨日、補給船「プログレス」を、ソユーズロケットで打ち上げました。もちろん成功です。

ロシアの宇宙技術は、なかなか侮れません。