「H3」ロケット打ち上げ成功

JAXAの次世代基幹ロケット「H3」2号機が、ついに、打ち上げに成功しました。良かった良かった。

歓喜に沸く関係者。どれだけプレッシャーがかかっていたことか。私は少し泣きました。

前回の失敗時に、悔し泣きの会見をしたJAXAの開発責任者の岡田氏(61歳)は今日、笑いながら泣いたとか。

H3の全長はH2Aよりも10m長い63m。飛行機で言えば、国際線主流機のBoeing 787-9とほぼ同じ長さです。

ところがその重さは、B 787-9の247トンに対してH3は575トンと倍以上。さすがに中身詰まってますねぇ。

ちなみに「世界最大級のICBM」などと言われる某国の「火星17」は、長さ23m。全然ちっちぇえじゃん。

やはり先進国の本格的なロケットは巨大です。あんなに大きくて重い物を、よく真っ直ぐ打ち上げるものです。

日本はようやく、宇宙開発や宇宙ビジネスで、世界の第一線に肩を並べたというところでしょうか。

でも米国に比べれば、周回遅れかもしれません。政府の理解(=予算)が今度どうなるのか、そこが問題です。

観測衛星「だいち」は、今回は搭載していませんでした。JAXAもちょっと弱気だったんでしょうかね。

まあそうやって、だんだん自信を取り戻してくれればよいのです。今日は岡田氏の言葉にも打たれました。

「H3を宇宙の軌道と言うよりも、事業の軌道に乗せていくというのが重要だと思っています」(泣ける)

日本の基礎研究は、どうナノ?

ノーベル化学賞は「量子ドット」の研究者が受賞しました。

「ナノテクノロジー」という微細な技術への功績が評価されたのですが、ただタイミングがどうなんですか。

なにしろその前日の物理学賞が「アト」ですから、「ナノ」ごときで「微細ナノ?」とか言われませんかね。

てなことはなく、量子ドットというすでに広く応用されている技術は、今後さらに広がりそうです。

ところが報道番組を見ると、受賞者情報流出の件ばかりが報じられ、その研究内容はサッと流されていますね。

本来のアカデミックな解説よりも末節のスキャンダルを、日本のメディア(そして国民)は好むのでしょうか。

研究を掘り下げて特集する気がないのは、このところ日本人の授賞者がいないからかもしれません。

残念なことに、日本はもう、過去の研究遺産を食い潰してしまったと言う人もいます。

近年の基礎研究は、他の国々にすっかり抜かれています。それもこれも、為政者の理解不足、浅慮に尽きます。

安倍元首相はかつて、「学術研究を深めるのではなく、もっと実践的な職業教育を行う」と述べました。

<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-95.html" target="_blank" title="某野党議員">某野党議員</a>ですら「2位ではダメなんですか」と言う始末。

与野党が共にこれでは、研究予算は付きませんね。そして将来のノーベル賞受賞も、まったく期待薄です。

「アト秒」

ノーベル物理学賞は、「電子」の動きを観測する新たな研究を可能にした研究者が受賞しました。

「アト秒」と呼ばれる、きわめて短い時間だけ光を出す実験的な手法を開発した、のだそうです。

なんにせよ、想像を絶するほど短い時間だということは理解できます、アト秒。100京分の1秒。富嶽百景。

生理学・医学賞の「mRNAワクチン」開発とは違い、研究についての説明をメディアはほとんど諦めてますね。

せめて、今回の偉業を達成するまでの苦労話や意義について、もう少しぐらいは解説してほしいものです。

ミリ→マイクロ→ナノ→ピコ→フェムト→アト、という言葉は、今回知られるようになったかもしれません。

「フェムト(f)」なら、日頃よく目にします。体積の単位「フェムトリットル ( fl )」などです。

たとえば、ヘマトクリットを赤血球数で除した赤血球1個当たりの容積(MCV)は、正常値が90 fl 前後です。

これが低値だと鉄欠乏性貧血の目安となるので、次の採血で血清鉄やフェリチンを調べることになります。

「アト(a)」を日常で使うことはないですね。「アトぜき」ぐらいですか。違うか。

「アト一歩」なんて言う時は、もうホント、すごく惜しいときの表現なんでしょうかね、違いますね。

でもそれを言うなら、「mRNAワクチン」開発の詳細も、メディアは十分には解説しきれていません。

「ウリジン」を「シュードウリジン」に替えたというブレイクスルーも、まったく解説が膨らみません。

もちろん私にも、その解説をする能力がありません。すみません。ワクチンは使わせていただいておりますが。

今年の夏は暑かった

「今年の夏は暑いねぇ」

この夏、毎日のようにこの言葉が聞かれましたが、でも去年も「今年は暑い」と言ったような気もします。

いまの暑さが辛くて、去年よりも今年の方が暑いと思いたいのかもしれません。

今年は去年よりも1年歳をとっているので、その分、気力や体力や忍耐力が低下しているのかもしれません。

なので患者さんには、今年がいちばん暑いと思うのは気のせいかもしれませんよと、いつも話してきました。

ところが気象庁が、この夏の日本の平均気温は平年と比べて1.76度も高いと発表したものだから驚きました。

気象庁が統計を取り始めてからの125年間で、気温も海面水温も過去最高だったことが分かりました。

これは失礼しました。気のせいじゃなかったようです。今年の夏は本当に暑かったんですねぇ。

となると問題は、今年だけの異常気象なのか、今年始まった異常気象なのか。今後もずっと続くのか。

こんな気温が毎年続くようだと、もはやそれは「異常」ではなく「通常」の気象となります。

そんな暑い夏に、今後もずっと耐えていかなければならないのでしょうか。

ただこの数日は、私は夜中のエアコンを途中で止めるようになりました。つけっぱだと少し寒いのです。

日中はまだ暑いですが、夜の気温は下がり始めているのかもしれません。

そんな風に夏の終わりを感じると、ちょっと寂しい気持ちになりますね。やっぱり冬よりは夏の方が好きです。

「H3」ロケット打ち上げは「成功」せず

日本の新たな主力ロケット「H3」初号機の打ち上げは、直前になって「中止」されました。

メインエンジンは着火しましたが、打ち上げ0.4秒前に着火すべき「ブースター」が着火しなかったとのこと。

「打ち上げる前に取りやめているので、今回は失敗ではない」という解釈です。「打ち上げ中断」です。

もしも、たとえ1mでも打ち上がった後の中止なら、ロケットは壊れます。それは間違いなく失敗でしょう。

さいわい今回は打ち上げ前の中止なので、ロケットはそのまま次の打ち上げで利用できると考えられています。

しかし、何年もかけて打ち上げを準備して、また期待して見守ってきた人たちにとって、今日は「失敗」です。

失敗ですが、挽回はできます。過去に何度も、そのような試練を乗り越えてきた日本ですから。

ロケットと言えば、某独裁国がやたらに打ち上げています。

その大きさはH3の3分の1程度ですが、最近の打ち上げの成功率は高く、この国って別の意味で驚きますね。

米国ではイーロン・マスクの「スペースX」が、すでに打ち上げビジネスとして成功しています。

先週は、巨大ロケット「スーパー・ヘヴィ」の燃焼試験が成功したばかり。H3の2倍の大きさのロケットです。

彼らは火星への移住をも目標に開発しているので、やることがすでに桁違いです。

問題を克服する能力や技術やチーム力や根性なら、日本も負けないはず。来月の打ち上げ成功を期待します。

ノーベル物理学賞の真鍋氏は、米国人です

ノーベル物理学賞は、米プリンストン大の真鍋淑郎氏らが受賞しました。

こういった、海外に流出してしまった日本人研究者の偉大な業績を知るたびに、複雑な思いに駆られますね。

基礎研究に対する予算規模が、先進諸国(中国も含めて!)に比べて圧倒的に小さいという問題がまずひとつ。

日本の政治家(官僚も?)の認識不足・思慮不足による、国家的な戦略ミスでしょう。

なにしろ<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-2190.html" target="_blank" title="安倍首相">安倍首相</a>(当時)はかつて、学術研究を深めるより実践的な教育をしろと公言してるぐらいですから。

「日本の近年のノーベル賞ラッシュは、過去の遺産を食いつぶしたものに過ぎない」

5年前に医学・生理学賞を受賞した<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-2190.html" target="_blank" title="大隅良典氏">大隅良典氏</a>の言う「近年」は、残念ながらもう過ぎ去りつつあります。

仮に今から猛烈に基礎研究に力を入れたとしても、しばらくは追いつかないということです。

なぜ国籍を変更したのかと記者に問われて真鍋氏は、「米国ではやりたいことをできる」と答えました。

裏を返せば、「調和を重んじる」日本では「他人を邪魔するようなこと」ができないのだと。

「私は調和の中で暮らすことはできないものですから、それが私が日本に帰らない理由です」

この発言はショックでしたね。和を以て貴しとなす日本人としては、痛いところを突かれた気がします。

研究費問題も調和問題も、いずれも解決しなければ日本の科学研究の未来はありません。

日本を脱出した研究者を、いつまでたっても「日本人」としてカウントして安心しているようではダメですね。

火山国ですが、巨大噴火のことまでは想定しません

四国電力伊方原発3号機は、運転差し止めの<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-3030.html" target="_blank" title="去年の仮処分決定">去年の仮処分決定</a>が本日取り消され、再稼働が認められました。

前回は、阿蘇山が過去最大規模の噴火をした場合、火砕流の影響を受けないとはいえない、との判断でした。

しかし今回は、伊方原発にまで影響を及ぼすような阿蘇の巨大噴火の可能性は高くない、というのが決定理由。

阿蘇山噴火の科学的評価が変わったわけではなく、その影響に対する判断が変わったわけです。

つまり、たとえ噴火被害が甚大でも、その確率がきわめて小さければ考慮しなくても良い、ということです。

あるいは、被害が極端に大きな破局的天変地異は、もはや想定しても意味がないというニュアンスも感じます。

伊方原発を巻き込むような巨大噴火が起きたら、それこそ原発どころの騒ぎじゃないでしょ、というわけです。

いやしかし、単なる噴火だけなら、たとえ西日本が火砕流で焼き尽くされても、日本はきっと再起できるはず。

生き残った東日本の人たちが徐々に西日本に移り住んで、きっとまた西日本を再建してくれることでしょう。

その証拠に、9万年前の阿蘇の巨大噴火でほとんどの生物が死滅した九州は、現在すっかり繁栄しています。

それにしても、原発が火砕流に飲み込まれて完全にメルトダウンしたら、いったい日本はどうなることか。

その意味で、過去最大規模の噴火すら想定した昨年の仮処分決定は、じつに誠実な判断だったと思います。

ですが日本人は、最悪の事態を想定することを忌み嫌う国民性ですから、今回の決定の方がなじむのでしょう。

地震や津波はともかく、噴火のことはもう、考えないことにしたわけです。

それに、原発が破局噴火の火砕流に巻き込まれたとき、それが稼働中かどうかはもはや関係ないですからね。

地図を眺めて妄想に入り込む

幼少期から地図を見るのが好きでした。なので今でも時々、GoogleMapであちこちトリップしています。

ジブラルタル海峡と津軽海峡、どっちが狭いんだろう。今日はその疑問を、Google先生にぶつけてみました。

検索窓に、「ジブラルタルか」まで入れたら、「ジブラルタル海峡 距離」っていう項目が出現。これは親切。

それを選択してみると、最上段の「回答」には地図入りで「11,119km」とありました。1万?km?

よく見ると、熊本県熊本市東区上南部からジブラルタル海峡までの距離らしい。そんな情報は要りませんが。

気を取り直して2段目の回答(Wikipedia)を読むと、14kmだと判明。やっぱり津軽海峡より狭いんですね。

こう狭いと、橋を架けるかトンネルを掘りたくなりますよね。と思ったらすでに工事中ですか。

九州で言うなら、橋を架けたいトップは天草(下島)と島原の間でしょうね。あと天草–長島間も捨てがたい。

平戸から五島は、ちと遠いか。陸路で繋げたらまさに「Goto(五島)トラベル」(これが言いたかった)。

プレートが移動しているので、海峡は今後、徐々に広がるか逆に狭くなって衝突するかの、いずれかでしょう。

そんな風に地図を眺めていたのか、アフリカの左側に南米の右側がピッタリはまることに気付いた人がいます。

ある学者のアイデアだそうですが、ウェゲナーが「大陸移動説」を提唱するのはその300年後のことらしい。

でも大陸移動説ですら、世の中で広く認められるようになったのはウェゲナー没後、つい数十年前のことです。

「パンゲア大陸」が分裂していまの大陸を形成したというのが定説ですが、また数億年後には再結合するとか。

大西洋が閉じるか太平洋が閉じるかの2説あるそうで、後者の場合、超大陸「アメイジア」ができます。

アメリカ大陸とアジアが結合するとなると、日本は米中間の緩衝帯としての重責を担うことになるでしょう。

もうその時は、日本国内の全ての海峡も島もくっついて海は消失しているので、橋もトンネルも不要です。

希望が見えました

コロナ禍で世界が暗くなっているこの時期に、一筋の希望の光が見えた気がしました。

今夜6時半ごろ2階の窓から、北東の空を光りながら進む「きぼう」を目にして、私はそのように感じました。

正確には、見たのは国際宇宙ステーション(ISS)ですが、「きぼう」日本実験棟も当然、見えていたはず。

それは橙黄色に輝く意外に大きな光の点で、北の空から東に向かって、一直線に移動していきました。

たまに目にする飛行機よりも速い印象でしたが、もちろん、距離を考えたら速いなんてものじゃないでしょう。

調べてみたらISSは、地上400kmを秒速7.7km、地球1周を90分の速度で、毎日16周ほど回っているとのこと。

「きぼう」が6時半によく見える、との情報を得て夕方6時過ぎに職場を出たときは、まだ期待半分でした。

日没直後でまだ空が明るいし、こんなので見えるのだろうかと思っていました。

ところが家に帰り着く直前、不意に、進行方向の空に光る点を見つけたのでした(もちろん安全運転中)。

慌てて帰宅し、家人に何か叫びながら2階に駆け上がって北側の窓を開けると、光は東に向かっていました。

空はまだ、普通の星が見えない程度の少し明るい状態だったので、ISSが唯一の光る天体でした。

あとで考えてみたら、日没直後の絶妙のタイミングでなければ、ISSは見えないことに気付きました。

日が沈んで空が暗くなり、しかし上空のISSにはまだ太陽光が当たっている短い時間だけ、なんですよね。

そんな特別の瞬間を目にすることができ、しかも「きぼう」の光なのですから、そりゃ気分も上がります。

コロナ禍の収束とは何の科学的関連性もありませんが、そんな風に結びつけたくもなるでしょう。

海に出て また山に降り 最上川

山形県の記録的豪雨で、最上川があちこちで氾濫しました。ニュース映像は、<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-3199.html" target="_blank" title="球磨川の氾濫">球磨川の氾濫</a>に酷似しています。

人的被害が少なかったのは、球磨川が教訓となり、行政の避難指示と住民の動きが早かったからだといいます。

ある町の職員は、「空振りでもしょうがない。怒られてもいいと思い避難指示を出した」と。すばらしい。

くしくも最上川と球磨川は「日本三大急流」と呼ばれる河川のうちの2つ。あとのひとつが富士川。

これらはいずれも川底の侵食による水深にばらつきが大きく、それが急流を生み出しているそうです。

その本流に多くの支流が流れ込むので、原理的に降雨量の急な変化に弱い構造なのかもしれません。

いくつもの山河を見て歩いた松尾芭蕉が、梅雨時のこの川を「早し」と詠んだのも頷けます。

「五月雨をあつめて早し最上川」

最初は「涼し」と詠んだけど、数日後に川下りをした印象で、後に「早し」に変えたことでも知られます。

川下りがよほどスリリングだったのか。雨が降ると豹変する河川だと、身をもって知ったのかもしれません。

この句は、例の<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-3209.html" target="_blank" title="「蝉」の句">「蝉」の句</a>の2日後に詠まれたようです。さらにその2週間後には、次の句を詠んでいます。

「暑き日を海に入れたり最上川」

河口に至った芭蕉は、暑い一日が海に流れ入るかのごとく、涼味を感じたようです。

その、海に流れ込んだ大量の水が、やがて雨となって山に降るという循環を、芭蕉は感じていたのかどうか。

河川の氾濫はいまに始まった事ではなく、ずっと繰り返されています。地球温暖化や異常気象とは無関係です。

現代の科学技術をもって、少なくとも人的被害だけは起きないよう、あらゆる方策を講じてほしいものです。