脱原発

イタリアの国民投票は、圧倒的多数で脱原発という結論を出しました。

ドイツのメルケル政権も先週、2022年末までに原発を全廃することを閣議決定しました。

一方で、あくまで原発を推進していくのが、フランス、アメリカ、イギリス、ロシア。

ここで日本も脱原発を選択してイタリア・ドイツ側に付くと、どこかで聞いたようなグループ分けになりますが、こういう三国同盟なら私は歓迎です。

今回イタリアは、世界的に株を上げたと思います。

ドイツに比べると、明るくて軽いイメージの国ですが、実際に訪れてみるとずいぶん古風で、歴史の重みをずっしりと感じます。

ひるがえってわが日本。

支持率低下で退陣色濃厚だった菅首相が、震災で首の皮一枚つながり、支持率も挽回できるかと思いきや、何をやっても後手後手で、いいとこナシの、最悪の末路をたどっています。

起死回生の逆転打があるとすれば。それは「脱原発」を宣言してしまうことではないでしょうか。

「10年以内に原発を全廃します」

とか口走って居直り、法案を仕上げて閣議決定する。

世論の反応によっては面白い展開になりそうですが。

メルトダウンと水位計

福島第一原発1号機の核燃料が、地震の直後にメルトダウンしていたことがわかりました。

原子炉の水位計を調整して判明したことは、燃料が完全に「空だき」になっていた事実でした。

これまでの2カ月間、テレビや新聞で原子炉の図解を見て、燃料棒と水面の位置関係についての最新情報に一喜一憂してきたあれは、いったい何だったのか。

メルトダウンを示唆する傍証はこれまでにたくさんありました。

しかし東電や役所は、異を唱える一部の専門家の意見には耳を傾けず、事態を過小評価してきたわけです。

あのスリーマイル島原発事故でも、水位計の故障のために原子炉内が満水と誤認してしまい、冷却を止めたために、燃料棒が3分の2ほど露出してメルトダウンが起きたそうです。

映画「チャイナ・シンドローム」は、そのスリーマイル事故の直前に作られた、原発事故を題材にした映画ですが、その中でも、やはり水位計の誤表示が原因で判断を誤り、メルトダウンになりそうになるシーンがありました。

学生の頃この映画を観たとき、原子炉が「メルトダウン」という状態になると、高温の核燃料によって原子炉の底が抜け、地球規模の大惨事になってしまうと、そのように理解したものでした。

いま福島のメルトダウンした核燃料は、圧力容器の底にたまっているようです。

東電によれば、少量の水によって「うまい具合に」冷却されているとのことですが、そんな説明で素直に安心できるほど、今の日本人は無知ではありません。

圧力容器はすでに損傷し、これまでに大量の水が漏れています。

もしも、その損傷部がだんだん拡大して冷却水注入が追いつかなくなると、核燃料が再び水面から露出してしまいます。

原子炉の底は抜けないのか。私はそれを、本気で心配しています。

それにしても、原発の水位計って、原子炉を冷却する上では何よりも重要な計器なのに、どうしてこんなに簡単に故障してしまうのでしょうか。

ユッケで食中毒

焼肉店で起きた、腸管出血性大腸菌「O-111」による集団食中毒。

ただの食中毒では済まされない事件に発展してきました。

初めは、某焼肉店での集団食中毒と、ユッケを食べた男児の死亡報道。

>衛生管理のひどい焼肉店があったものだ。

同じ焼き肉チェーンの、別の店でもユッケを食べた男児が死亡。

>この企業の経営体質に問題がありそう。

両店はユッケ用の肉を同じ食肉業者から仕入れていた。

>もしかして真犯人は食肉業者? 

店は生食用ではなく加熱用と認識して仕入れていた。

>やっぱり焼肉チェーンに重大責任あり。

食肉業者はユッケ用と知っていて加熱用肉を卸していた。

>卸も焼肉店もどっちも悪い。

「生食用」表示の牛肉は、そもそも国内に存在しない。

>なんじゃそりゃ

「生食用」と表示するための厚労省の衛生基準に強制力無し。

>元凶は行政の不備?

国は、形ばかりの規則をつくり、あとは丸投げ。

問題が起きたら、社長が土下座し、官僚が苦々しい顔をしてみせる。

おなじみの構図になってきました。

原発事故

福島原発事故の評価が、チェルノブイリ並みのレベル7に引き上げられました。

「同じレベル7でもチェルノブイリとはまったく違います」と言う人がいますが、「では、どちらが深刻なのですか」と切り返したくなる気分です。

ところでチェルノブイリ原発事故といえば、その放射線被害の大きさばかりが記憶に残っていますが、事故のいきさつを、あらためて調べてみて驚きました。

もしも何らかの原因で緊急炉心停止装置が故障し、停電によって外部電源も途絶え、おまけにディーゼル発電機もうまく稼働しない状況になった場合に、どのようにして冷却用の電力を確保できるのか。

電源喪失時の対処法を「実験」する中で起きたのがチェルノブイリの事故だったようです。

原発においては、昔から電源喪失を恐れてきたことがわかります。

そのチェルノブイリから四半世紀もたった今、電源喪失による原発事故が起きたことに愕然とします。

絶対に冷却を止めてはならない核燃料という「暴れん坊」を、人類はまだ手なずけることができていないようです。

使用済み核燃料プールの無防備さにも驚きました。

いくら原子炉本体がきわめて頑丈な圧力容器や格納容器で守られているとしても、建屋の天井が無くなると、外から核燃料プールが丸見えです。

プールが破壊されたら、おそらく制御不能の大惨事になるでしょう。

原発を存続させるのなら、隕石の直撃や航空機テロにも耐えられるぐらいの、あきれるほど徹底した安全対策をしてもらいたいです。

震災と健康問題

被災地の惨状が、だんだんと詳しく伝わってきています。

今日は、医療分野で気になること。

まず、被災者の健康問題。

震災によるケガや避難後の体調悪化だけでなく、必要な医療が中断されたことによる持病の悪化も大問題です。

急病患者への医療もままならないでしょうし、癌や心臓病などで手術予定だった人たちはどうなっているのか。

被災地の過酷な環境で医療に従事する人たち。想像を絶するものがあります。

ニュースの大半を占めているのは、原子力発電所事故に伴う放射能汚染問題。

「一部で高レベルの放射能が検出されましたが、その他の地点では健康被害をもたらす放射能は検出されませんでした。ご安心下さい。」

官房長官は今日もこのような語り口です。

「多くの地点では健康被害をもたらす放射能は検出されませんでしたが、一部では高レベルの放射能が検出されました。ご注意下さい。」

どうしてこのように言えないのか。危機感の欠如を感じます。

米国と韓国は、自国人を原発から80キロ退避させたというのに。

被爆覚悟で原子炉の冷却作業に従事している人たちのことを思うと、涙が出ます。

製薬工場の被災で、供給停止の危機に直面している薬があります。

日本でただ一カ所、あすか製薬のいわき工場で作られていた、甲状腺ホルモン剤です。

これは日本中の、甲状腺機能低下症の患者さんにとっての一大事です。

緊急輸入等で対処できると思いますが、こういった薬は、全国に分散して生産または貯蔵するような仕組みにはできないのでしょうか。

話はそれますが、ACジャパンのTV CMはどうにかならないものでしょうか。

趣旨は悪くないのですが、あれだけ何度も同じものを見せられると、さすがにちょっと・・・。

CMが流れている間だけ、TVの電源が切れる仕組みにできませんか。節電にもなります。

大震災

未曾有の大災害が起きました。

言葉が見当たらず、ブログ更新を躊躇するうちにも、刻々と状況が変わっています。

津波の規模が大きすぎて、従来の沿岸対策ではまったく歯が立ちませんでした。

「想定外」という言葉が繰り返されますが、では今後、どのレベルまで「想定」すべきなのか。

二重三重の安全策が講じられていたはずの原子力発電所に、毎日新たな異常が出現し、不具合は連鎖し、放射能汚染の拡大が懸念されています。

これだけの緊急事態だというのに、電力会社の隠蔽体質は変わらず、情報を矮小化して発表する傾向が見られます。

首相や官房長官の発言にも、楽観的・希望的表現が目立ちます。

不用意な発言によるパニックを恐れているのか、それとも悪い予測を口にすることを忌み嫌う日本人の体質なのか。

事ここに至っては、チェルノブイリ級の事態を想定した対策を打ち出したとしても、だれも政府を責めることはないでしょう。

これまで私は、反原発の立場の人々の考えを前近代的で非科学的と見ていましたが、それは偏見でした。

これを機に、日本は脱原発をリードする国になってはどうでしょうか。

それはドイツではなく、被爆国日本・地震国日本の宿命的役割かもしれません。

日本よりも経済規模の小さな多くの国々が、いま日本に援助の手をさしのべようとしてくれていることを、素直にありがたく感じます。

みな同じ地球人だという思いになりました。

被災された方々には心からお見舞い申し上げます。

災害規模があまりに大きく、被災者の救援活動は難航し、復興のことまで考えると途方に暮れてしまいます。

西日本に住んでいて直接的被害がない自分に、いまできることは何か。

とりあえず、いちばん即効性のある支援といわれている「節電」に取り組んでみたところです。

新燃岳噴火

1月27日以来の相次ぐ爆発的噴火によって、周辺地域に降灰被害と不安を与えている新燃岳。

噴火のニュースを聞いてすぐに思い出したのは、「死都日本」という小説です。

医師が書いた災害小説ということで興味が湧き、8年前の発売直後に購入して一気に読破しました。

新燃岳を含む霧島一帯に大噴火が起きて、日本が大変なことになる話です。

火山オタクでもある著者石黒耀の、知識と空想力とスケールの大きさには驚かされました。

今読むといっそうリアリティがありそうです。

ところで、映画007シリーズにも新燃岳が登場したことがあります。

その事実を私は最近知り、確認のために鑑賞してみました。

日本が舞台となった「007は二度死ぬ」という、1967年公開の映画です。

ジェームズ・ボンドが日本に潜入し、悪の組織スペクターと対決するストーリー。

ところがそのスペクターの秘密基地が、こともあろうに新燃岳の火口内部に設置されているのです。

ボンドの活躍によって基地は爆破されますが、それに誘発されて新燃岳が大噴火してしまいます。

ラストは、溶岩流が周辺地域を飲み込んで行く様子を、ボンドとボンドガールが遠くから満足げに眺めているというシーン。

今だと公開しづらい映画です。

八百長相撲

大相撲が揺れています。春場所も中止になってしまいました。

日本相撲協会の放駒理事長は、無気力相撲と八百長が「ある意味イコール」だと発言しました。

何年も前から、だれもがそう感じていたことだけに、驚くこともなく、がっかりするばかりです。

これまでも幾度となく問題になってきたのが無気力相撲。

これは言ってみれば「へたくそな八百長」。そりゃあ「わざと負ける」予定の相撲には気合いが入らないでしょう。

協会の「無気力相撲撲滅」方針を受けて、八百長相撲は、より「上手な八百長」に進化してきました。

その巧妙な八百長のための打合せに使われたのが携帯メールです。

ところが、「消去」したはずのメールが「復元」され、八百長の動かぬ証拠となりました。

大阪地検特捜部の証拠偽造事件の時もそうでしたが、デジタルデータというものは、普通の方法で「消去」したのでは、完全には消えないものなのですね。

昨年の野球賭博問題後に、相撲界の再建を賭けて新理事長に就任したばかりの放駒親方ですが、もっと深刻な問題に直面することになってしまいました。

カイケツが期待されています。

心臓移植

海外で心臓移植手術を受けるための、ある募金活動について、今朝の朝ズバが特集していました。

こういう報道を見ると、いつもふたつのことを思います。

親の行動力と「助け合い」の力がこどもの命を救った、という「感動」がそのひとつ。

もうひとつは、移植を待つ外国のこどもたちの順番に、日本人が「割り込んだ」ことへの「申し訳なさ」です。

1999年に、日本での脳死移植が始まりました。

「脳死は人の死か」という議論が巻き起こり、欧米人とは異なる日本人特有の感情、倫理観・宗教観・死生観が、日本に脳死移植が定着するのかどうかを、疑問視させました。

しかしもう一つ、強行して行われ、なおかつ失敗した1968年の「和田移植」が、日本人に「移植アレルギー」を招いたことも事実でしょう。

ひとつ「コト」があると、いっせいにアレルギー反応を呈して、その結果大事なことを遅滞させてしまう、日本人の一面です。

強烈なプレッシャーの中で手術を成功させた12年前の移植チームには敬意を表します。

当時とは打って変わって、最近では脳死移植がいちいち全国ニュースになることもなくなりましたが、これは移植医療が定着したというよりも、日本人の「熱しやすく冷めやすい」気質のせいかもしれません。

事実これまでに、脳死心臓移植は91件行われただけです。昨年は23件と年間最多でしたが、それでもアメリカの1%のペースです。

そのアメリカの年間2千数百件の中に、日本人への移植も含まれることを忘れてはならないでしょう。

境界線

北朝鮮の肩を持つ訳ではありませんが、韓国と北朝鮮の海上の軍事境界線、いわゆる北方限界線(NLL)には違和感を感じます。どうみても北朝鮮にとっては不利だからです。

11月の砲撃事件で話題になった延坪(ヨンピョン)島は、ほとんど北朝鮮沿岸に位置しているのに韓国領です。

どういういきさつで国連軍がこのような境界線を設定したのか、そのとき北朝鮮側が異を唱えなかった理由は何か。

それで思い出すのが、岡山県と香川県の海上の境界線です。瀬戸内海のちょうど中間に県境があるのかと思えば、実は、ほとんど岡山沿岸付近に境界があります。

したがって、両県の間の瀬戸内海の島々の多くが香川県に属します。

以前、香川の病院に勤務していたときにこのことを知り、疑問を感じて地元の人に聞いたことがあります。

すると「樽流し伝説」を教えられました。

江戸時代に、県境でもめた備前と讃岐が、海の真ん中の島から樽を流して境界線を決めたという言い伝えです。

樽流しを提案した岡山側があらかじめこっそり行った実験では樽が香川寄りに流れたのですが、本番のときは潮流が北向きで、岡山沿岸に境界線ができてしまったというのです。

ずるいことをすると、こういう結果になります。