「緊急事態宣言」って、最初はガツンとやるべきじゃないの?

緊急事態宣言は出ていますが、都内の繁華街の人出は春の宣言の時に比べるとまだずいぶん多いようです。

宣言の内容が前回よりも緩いので、人々の意識もそのぶん緩いのでしょうか。

マスクを外した状態での会話が悪い→飲食が悪い→飲食店の時短営業、というのが今回の宣言の基本です。

誰も感染していない集団からウイルスが湧いてくることはないはずですが、会食をきっかけに感染者が出ます。

それなのに会食をやめないのは、参加者がみな自分は感染していないと思い込んでいるからでしょう。

気心の知れた仲間内にも感染者がいると常に疑わなければならないことに、この感染症の難しさを感じます。

ここで、NHKニュースを見ていて気になった表現をひとつ。

客足が減ったことについて、「客側も来店を控えたとみられます」とのコメントに、違和感がありました。

「来店」とは、店に来た客についての店における表現であって、店に行こうとする客が使う言葉じゃないはず。

新しいパン屋さんができたニュースを見て、「よし、明日はあの店に来店してみよう」なんて、言わないし。

英語で「いま行きます」は、相手の立場に立って “I’m coming.” です。その理屈は理解できます。

しかし日本語で「いまからそっちへ来るよ」とは言いません。「そっち行くよ」です。

では、店に来ることが「来店」なら、店に行くことは何と言うのでしょう。

「行店」とは言いませんね。そんな言葉があったら仰天します。

「訪店」も日常的じゃない。「来日・訪日」みたいな対の言葉はありますけどね。

「店に行く」という意味の日本語は存在しないのかと疑問をお示しして、私からの挨拶とさせていただきます。

緊急事態宣言を出すにしても、難題だらけです

緊急事態宣言をまた発令するのであれば、前回の宣言による「副作用」を教訓としなければなりません。

なので制限対象と区域を限定的にして、学校への影響も最小にしようという考え方には、賛同します。

感染リスクが高いのは飲食の場だから飲食店等を中心に営業制限をしよう、という短絡的発想も理解できます。

さて、実効性のある施策が打ち出せるのか。中途半端なことをすれば、時間が無駄に過ぎるだけですからね。

飲食店等の事業者への「罰則と補償」が、どう設定されるのかも大事。いわゆる「北風と太陽」問題です。

前回の緊急事態宣言では、「北風も太陽もない」と野党議員に批判されました。

今回はその反省を踏まえたとしても、たいした太陽光は差さないでしょう。どうせ、補償<減収分、なのです。

すでに疲弊しきった事業主の、罰金を払ってでも営業したい気持ちもわかります。北風には耐えるのみ。

その飲食業などとは全く別の意味で、多くの医療機関が、コロナ禍で苦難にあえいでいます。

ひと頃は、受診控えによる収入源も問題視されていましたが、今はもちろん、病院の病床ひっ迫が大問題。

入院治療では協力できない当院は、トリアージ業務で社会貢献することになります。「発熱外来」のことです。

いま診療時間の大半を発熱外来に当てていますので、普通の風邪などの方には、ご迷惑をおかけしています。

いつになるのかわかりませんが、この山場を超えるまで、しばらくは「有事体制」の外来診療が続きます。

感染急拡大で迎えたオリンピックイヤー

緊急事態宣言がついに、1都3県を対象に発出されそうな雰囲気になってきました。

これを、遅すぎだと言う人もいれば、不要と言う人もいる。正解はありません。コトは単純ではないのです。

未曾有の国難の真っ最中には、為政者は何をやっても完璧にはいかないし、政策が後手後手になりがちです。

何かをやっても叩かれるし、遅きに失しても叩かれる。最終的な評価は、数年後のことでしょう。

東京オリンピックは、本当に開催できるのか。力尽くでもやるべきものなんでしょうか。

「人類が新型コロナウイルスに打ち勝った証しとする」なんて妄想は捨てましょう。もう間に合いませんから。

「人類が新型コロナウイルスに打ち勝つ力を見せよう」ぐらいの表現なら、ギリギリいけるのか。

ワクチンは残念ながら、しばらくは輸入に頼るしかないので、夏までの国内接種率はそう高くはないでしょう。

なので年内に国内で集団免疫が確立されるとは、とても思えません。地球全体で考えたら、なおさらです。

欧米の変異株がどのように「化ける」かも、まだまったく見通せません。むしろイヤな予感さえします。

オリンピックは、「コロナも先が見えたね」と思えるタイミングで開催を検討すべきです。

それこそが真に、「人類が新型コロナウイルスに打ち勝った証」ですよ。さすがに半年後は厳しかろう。

事実は予測よりも深刻なり

意外と減ったね、と思ってしまったのが、今日の東京都の新規感染者数664人でした。慣れって怖いです。

その意見が3割ぐらい共感できる、テレビ朝日の玉川氏が、今朝口にしていたので思い出したことがあります。

GoogleのAIによる「COVID-19 感染予測(日本版)」の存在です。

そのサイトで東京都の感染者数の予測を見ると、12/14時点での、12/15から1/11までの予測が出ています。

それによると予測値は、12/15:261人、12/16:520人、12/17:573人、12/18:645人、でした。

このうち12/15は火曜日なので報告数は少ないだろうと予測したようですが、実際には460という異常値。

翌12/16からの3日間の新規感染者の実数も、678、822、664、とGoogleのAI予測を上回っています。

早い話が、GoogleのAIを持ってしても予測できないほどに、日本の感染対策がダメだったというわけです。

このことはGoogle先生も早速学習して、次には修正した予測を打ち出してくるでしょう。

東京都の新規感染者数はさらに、12/21には千人を超え、12/27には2千人、1/1には3千人を超える予測です。

おそらく実際の感染者数が予測を上回ることは間違いなく、年末には東京の医療は崩壊の危機に瀕しますね。

なお、熊本県の予測値は意外と少ない数値のようですが、もちろん鵜呑みにはできません。

今後のさらなる対策の強化によって、AI予測値を下回る結果を出したいものです。

トラベルが悪いのではなく、会食で油断するのが悪いのです

菅首相が「Go To トラベル」全国一斉停止を発表したその晩、8人で「会食」していたとはガッカリですね。

国民に対する誠実さに欠けるだけでなく、この感染症に対する菅氏の認識の甘さを露呈してしまいました。

大丈夫だと思って会食する油断が、感染拡大の最大の要因の一つだと言うことを、わかってないようです。

たしかに、いくら大人数が集まっても、未感染者ばかりの集団からウイルスが湧いてくることはありません。

マスクなしで大声出して会食しても、参加者の中に1人も感染者がいなければ、感染は決して広がりません。

なので会食で感染したと思われる事例では、参加者の中に元々感染者が1人以上紛れていたということです。

しかもその感染者はたぶん、無症状だったのです。(感染を自覚して参加していたら、それはそれで大問題)

会食は、ただの3密とはワケが違います。飲食する際にはたいてい、全員が同時にマスクをはずすからです。

菅氏の会食メンバーの中に感染者がいた可能性は、高くはありませんが、ゼロとも言えない。

もっとも、参加者全員が70代から80代の高齢者ですから、感染していたら無症状では済まないでしょうけど。

無症状者の中に感染者がいる確率は参加人数に比例するわけで、だからこそ大人数の会食は危険なのです。

菅氏らは、自分が感染するという最悪の場合にどんな問題が起きるか、という想像力に欠けています。

そんな甘い考えだから、「Go To は感染拡大に関係ない」と言い張って最悪のタイミングまで引っ張るのです。

Go To 停止でキャンセルになった部屋を他の客に安く売るのは合法?

「Go To トラベル」全国一斉停止で、予約のキャンセルが殺到してるようですね。事業者の悲鳴が聞こえます。

特例的な支援として、事業者に対する補償の割合が、旅行代金の50%に引き上げられるとのこと。

ところで、旅行をキャンセルした人の、その理由って何でしょうね。

(1)料金の割引がなくなるんなら、旅行は中止っしょ

(2)この際、感染対策として旅行を控えようと思います

このうち前者が多いのなら、旅行業者には挽回策があります。

私が旅館の経営者なら、キャンセルで空いた部屋に、半額の料金で宿泊できるキャンペーンを打ちますね。

つまり、こうです。1泊1万円の予約をキャンセルされると、国からの補償が5千円入ります。

一方で、空いた部屋は「半額セール」とでも称して、5千円で売り出します。もちろんGo To の適用は無し。

旅館には合計1万円の満額が入るし、利用客もGo To 適用時並みの料金で宿泊できる、というわけです。

ただし、キャンセル客に、次のように特別価格での販売を持ちかけるのは御法度になるとのこと。

「いったん予約をキャンセルして、同じプランを再予約すれば、料金を半額にしますが、いかがですか?」

あくまで、同じ客にキャンセルと再予約を促してはダメ、ということなので、別の客なら良いのでしょう。

「キャンセル物件につき半額」みたいなセールが問題なければ、これは狙い目になるかもしれません。

もちろん、そんな裏技ばかりが横行すると、Go To トラベル停止の効果は減弱してしまいます。

「Go To キャンペーン」の制度設計が不完全なので、運用しても停止しても、ツッコミどころは満載です。

何を相手に勝負してるんでしたっけ?

「勝負の3週間」のうち2週間が過ぎ、もう「勝負はあった」ようにも見えますね。もちろん「負け戦」です。

「Go To」は大枠で維持したまま、「みなさん、今が勝負です」と言われても、戦い方が分かりませんよ。

国民の多くが、やるべきことをやっていますが、それでも感染が拡大する理由が、どこかにあります。

無症状の感染者が多く、しかも発症の2日前から感染力がある点が、この感染症拡大の最大の要因でしょう。

私などは自宅と職場を往復するのみで、2月以来一度も外食していません。感染が怖くて動けないのです。

熊本県は今日、「診療・検査医療機関」として指定を受けている医療機関を、県のサイトに公表しました。

公表について同意する医療機関のみの掲載ですが、全部で141施設。そのうち熊本市内の医療機関は47です。

当院もその末席を汚しておりますが、受診者が多いのは、やはり日曜日ですね。

病状を踏まえて、PCR検査を提案すると、検査を断る方が時々いらっしゃいます。その言い分は、

「コロナじゃないので」(という根拠の無い自信あり。とりあえず経過観察となりますが、要注意)

「お高いんでしょう?」(行政検査なので無料ですと伝えたら、じゃ受けますぅ、となります)

「会社に迷惑がかかる」(私には信じられない発想の方が時々いらっしゃる)

陽性のはずがない、陽性なら知りたくない、陽性だと困る、と思う人がいるところがコロナの難しい点ですね。

目的地NGで、出発地OKには、深い理由があるのかも

札幌市と大阪市を「目的地」とする旅行が、Go Toトラベルの対象から外されました。

一方で、その地を「出発地」とする旅行は、Go Toトラベルの対象からは除外されていません。

感染拡大地域が「目的地」なら問題で、「出発地」ならOK、というのは、少々理解に苦しむ理屈です。

西村大臣はその理由を、「医療ひっ迫地域に多くの人が訪れたら、病床に大きな影響が生じる」と言います。

感染地を「目的地」とする旅行の問題点は、旅先で感染して、地元にコロナを持ち帰ってしまうことです。

一方で、感染地を「出発地」とする旅行の問題点は、感染者が他の地域に感染を広げてしまうことでしょう。

そのいずれの場合も、感染拡大地域での医療ひっ迫には、直接的にはあまり関係がないように思えます。

しかしたしかに、旅行者が多数押し寄せれば、観光スポットや飲食店で「3密」が起きやすくなります。

そのことが原因で、感染地の住民にも感染がさらに広がり、結果的に、医療ひっ迫につながる懸念はあります。

「目的地」NGは、よく考えてみると意外に有効な方策なのかもしれません。

一方で、「出発地」OKを極論すれば、感染地の住民が旅先で医療を受けるのはかまわない、ということです。

その意味まで含んだ、感染拡大地域での医療ひっ迫軽減策とするなら、これはずいぶん考え抜かれたものです。

にしても、全国レベルでの感染拡大を食い止めるためには、「出発地」からも除外すべきことは明白です。

3週間程度の「短期集中策」だというのは、つまり、クリスマス前には制限を緩和したいということでしょう。

であるならば、中途半端なことはやらず、もっと思い切った感染拡大防御策を発動すべきじゃないですかね。

このままでは、史上最悪の年末年始になりゃしないかと、私は本気で心配しています。

「Go To トラブル」だと揶揄していた頃が懐かしい

「Go To トラベル」事業はついに見直され、一部制限されることに決まりました。でしょうね。

感染拡大地域に限定して、強い措置を講じるとのこと。菅首相の決断は手遅れではないと思いたい。

「Go To トラベルが感染拡大の主要な要因であるとのエビデンスは、現在のところ存在しない」

昨日まではこのように言ってたお歴々ですが、その裏で方針転換の時機をうかがっていたことは明白です。

物証(エビデンス)がなくても、状況証拠はあります。尾身会長も西村大臣も、本心ではわかっていたはず。

感染を早く沈静化した方が、結果的には経済的なダ メージも少なくなる、という考え方に舵を切ったわけです。

「エビデンス」は、学者や医者が以前から、「科学的根拠」という意味でよく使っている言葉です。

そしてたぶん官僚らも、こういうカタカナ言葉が好きです。

さらに専門家会議等でこの言葉が頻出するモノだから汎用語になり、政治家まで使うようになったのでしょう。

「証拠が無い」と言われると、その柔軟性の無い言葉にムカつく人もいるでしょう。角が立つ表現です。

ところが「エビデンスが無い」と言われたら、「あ、そうなの。じゃ、いいですぅ」となりますね。ならんか。

どの様に方針転換を図ろうとも多少の混乱は招くでしょうけど、それを恐れていては先に進めません。

菅首相には、良心と科学に従って、バランスの良い政策を迅速に打ち出していただきたい。

「神のみぞ知る」発言を責めている場合ではありません

感染が拡大して皆がイライラする中、西村・経済再生担当大臣の昨夜のうっかり発言が、批判を浴びています。

「どの程度の新規陽性者が想定されているのか(略)見通しを示していただきたい」と問われた西村氏が、

「感染がどうなるかってのは本当に、神のみぞ知るという、これはいつも尾身先生も言われてます」

と答えてしまいました。残念ながら、表現の仕方、言葉の順番が悪かったですね。

「いつも尾身先生が、感染がどうなるかは神のみぞ知るだと言われてますが、・・・」と言うべきでした。

「神のみぞ知る」は、あくまで尾身先生の口から出た言葉として、明瞭な引用形にしておかなきゃ。

で、その尾身氏の「神のみぞ知る」発言ですが、科学者は、自分が分かることと分からないことを区別します。

なので科学的に予測不可能であることをもって、「神のみぞ知る」と表現することもあり得ます。

しかし政治家が「神のみぞ知る」と言えば、無責任だと責められるのです。でもたぶん西村氏の本心ですよね。

西村氏は正直です。実際、感染がどう広がるかは神のみぞ知るですよ、本当に。全人類がそう思ってますよ。

だから野党も、そんな言葉尻を攻撃するなんてつまらないことせずに、もっと建設的なことで議論しましょう。

政府が感染対策を国民に丸投げしてきた結果が、この第3波なのです。やはりいま何か、国の施策が必要です。

回し始めた経済を止めたくない気持ちはわかりますが、もう「Go To キャンペーン」は修正すべき時期です。

キャンペーンの全停止ではなく、繊細で効果的な方策を全集中で考えてほしいものです。国民は従いますから。