「マイナ保険証」で資格喪失後受診は防げる?

報道番組は、「マイナ保険証」の話題で持ちきりです。

マイナンバーカードを普及させるために、国が保険証に狙いを定めたといいます。その側面はあるでしょう。

メリットは、利用者も医療機関もお役所も、全員が便利になるということ。まあ、コストを考えなきゃね。

デメリットだと思われているセキュリティの不安も、じつは思い込みにすぎないので大丈夫、という話。

つまりそんな具合にメディアにも、マイナ保険証への切り替えを後押しするような論調が目立ちます。

私がマイナ保険証の最大のメリットだと思うのは、保険証の<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-2834.html" target="_blank" title="資格喪失後受診">資格喪失後受診</a>を(たぶん)防げることです。

保険証には顔写真がないので、その保険証が本人の物かどうかを確認する手段がありません。

記載されている有効期限が適切であれば、もうそれ以上その人を疑うことはなく、診療を行います。

ところが、勤務状況や扶養関係等が変わって、実は被保険者資格を喪失している方が、時々いらっしゃいます。

うっかりなのか故意なのか、本来であれば使ってはならない無効な保険証を、そのまま提示されるわけです。

このような場合に医療機関は、資格喪失後受診かどうかを知るすべはなく、通常通り診療することになります。

そして2,3カ月後に保険者から「資格喪失後受診のため診療報酬は払えません」という主旨の通告が来ます。

性善説で保険証を信じて診療を行うと、時々こういう痛い目をみますが、ある程度は仕方ないと思っています。

マイナ保険証では、たぶん被保険者情報は随時更新されているので、資格喪失後受診はできなくなるはずです。

この点には期待しています。でもそれ以外の「便利になるところ」には、実はそれほど魅力を感じません。

「コロナ陰性」=「インフル陽性」と見なす

「コロナとインフルの同時流行期の発熱者は、『コロナ陰性』=『インフル陽性』とみなす」

こんなバカげた方針を厚労省が打ち出そうとしていると、メディアが報じています。とても信じられません。

首相や大臣の会見や厚労省からの一次情報を見ないうちは、メディアの飛ばし記事だと考えたいぐらいです。

具体的には、発熱外来のひっ迫対策として次のような分業が検討されているようです。

(1)抗原検査「陽性」→コロナと診断、必要なら「発熱外来」を受診

(2)抗原検査「陰性」→インフルと診断、必要なら「一般医療機関」を受診

ことしの冬は新型コロナとインフルエンザの同時流行が懸念される、ということに異論はありません。

しかし、抗原検査でコロナ陰性ならインフル陽性とみなしタミフルを処方せよ、というのはひどい話です。

まさか厚労省は、世の中の発熱疾患はコロナとインフルしか無いと考えているのでしょうか。

それに抗原検査の感度は低く、「偽陰性」が多いことは誰でも知っていることです。

その陰性者を医師は「オンライン診療」し、インフルと診断し、タミフルの処方まで求められるとは。

とは言え、コロナもインフルも、低リスクで軽症の感染者であれば療養方針に違いはありません。

いずれにせよ、高齢者や重症化因子を持つ家族等には近づかないように行動することだけが重要です。

発熱外来の報酬加算、またまたまた延長

「二類感染症患者入院診療加算(外来診療・診療報酬上臨時的取扱)」の、待ちに待った延長が決まりました。

ナンの話???でしょうけど、発熱外来の診療報酬においては、とても重要な「加算(点数)」なのです。

じつはこの加算、今年3月末までの時限措置でした。

ところが3月16日に厚労省から、次のような「Q&A」が発出されました。

Q「令和年3月31日までの措置とされているが、4月1日以降の取扱いについてどのように考えればよいか」

A「令和4年7月31日までの間は、引き続き、当該加算を算定することができる」

文章では出さずに(出してるかもしれないけど)、Q&A (自問自答) の形で公表するのが厚労省の常です。

では、7月末で終了かと思っていたら、7月22日になって、次のような「Q&A」が出ました。

Q「令和4年8月1日以降の取扱いについてどのように考えれば良いか」

A「令和4年8月1日から9月30日までの間は、初診の場合に、当該点数を算定することができる」

その延長期限が近付き、ついに加算は終了かと案じていたら昨日また、次のような「Q&A」が出たわけです。

Q「令和4年10月1日以降の取扱いについてどのように考えれば良いか」

A「令和4年10月31日までの間は、引き続き、当該加算を算定することができる」

刻んできましたね。最初は4カ月延長したのに、次は2カ月の延長、そして今回はわずか1カ月の延長。

となると、次はきっと半月、11月15日まで延長されるのでしょうね、等比数列的には。待ってます。

登録しなければ集計もできないし、連絡は最小限

熊本県では今日から、市町村別の新型コロナ感染者数の公表を取りやめ、総数と年代別人数を公表しています。

これは今日0時時点での数なので、私が昨夜登録したものも含まれます。もちろん住所など登録してません。

登録しなければ集計も不可能。登録する側も、集計する側も、目論見通りすっかり楽になってしまいました。

なお熊本市は「市内の医療機関等から報告された数」を公表しています。市の感染者数に近い数値と言えます。

発生届の提出対象は、これまでに何度も書いてきたように、次の4類型に限られます。

(1)65歳以上

(2)入院が必要な方

(3)妊婦

(4)重症化リスクがあり、かつ、コロナ治療薬または新たに酸素投与が必要な方

この発生届対象者に対する連絡方法については、熊本市では次の様な対応となっています。

・電話で健康状態を聞き取りし、あわせてSMSで療養に関する情報を送信する:(2)(3)(4)の方

・SMSのみ:(1)の方

重症化リスクがなければ、たとえ高齢者でもSMSを送ってオシマイ、なんですね。

高齢者にこそ、電話連絡してあげるべきじゃないかと思うのですが、大丈夫なんでしょうかね。

「全数把握」の簡略化、本日運用開始

新型コロナ感染症の「全数届出」が見直され(=中止され)、今日から発生届の対象が絞られています。

「届出」は全数ではなくなりますが、新規感染者数の「把握」は続きます。

当院では、この土曜と日曜に合計47例のPCR検査を行い、そのうち陽性者は13人(陽性率28%)でした。

先月の異常な陽性率60〜80%と比べると驚くほど低水準です。第7波の収束を示唆するものと思われます。

さて、この47人には、もしも陽性だった場合に発生届の対象となる方が数人いました。

ところが蓋を開けてみると、陽性者13名の中には、届出の対象となる方は1人もいませんでした。

ひところは、夜中まで数時間かけてHER-SYS入力していたのに、今夜の入力ゼロは衝撃的です。

ここまで簡略化されていいものだろうかと、心配になります。

ところで、発生届の対象外となった方は、今日から生命保険の「入院給付金」が受け取れなくなりました。

このことに関する苦情等が、昨日今日で数件ありました。

「みなし入院」に対する給付自体がもともと甘い運用だったとは言え、急な制度改正は現場の混乱を招きます。

新型コロナの全数届出、ついに終了へ

来週月曜日(9月26日)から、新型コロナ感染者(検査陽性者)の届出体制が変わります。

「発生届」の対象が、「65歳以上・入院を要する者・重症化リスクがあり治療を要す・妊婦」だけになります。

それ以外の方は発生届の対象外。医療機関から、その感染者の情報を保健所に届け出ることはなくなります。

では、発生届対象外の方は、誰にも知られず、ひっそりと自宅療養するのかといえば、そうではありません。

そのための、フォローアップ体制が構築されています。熊本県の場合、それは「療養支援センター」です。

ただし、新型コロナ感染と診断された人は、自分自身で、療養支援センターに登録しなければなりません。

簡単に言えば、「医療機関はもう届出をしてくれないから自分で届出しなさいよ」ということです。

なんか、医療機関や保健所が楽をするための制度改正みたいでイヤですが、実際、そういう意味なのです。

当院で今日PCR検査を受けた方は、その結果が判明するのは明後日(9/26)の「新体制」下になります。

なので検査を受けた方全員に「 新型コロナウイルス感染症と診断された方へ」というチラシをお渡ししました。

これは本来、陽性確定者に渡すものですが、便宜上、あらかじめ今日のうちに渡しておきました。

そのチラシの要点は、

(1)体調が悪化したら、医療機関か熊本県療養支援センターか夜間電話相談窓口に電話すること

(2)自宅療養期間の説明は従来取り、発症後(無症状なら検体採取後)7日間(5日後に抗原陰性なら5日間)

(3)外出は自粛。ただし症状軽快の24時間後以降なら、感染予防対策を徹底すれば必要最低限の外出は可能

(4)療養証明書は発行されない。宿泊療養が必要なら連絡すること(入所できるとは限らないけど)

発生届対象外の方が経過中に重症化した場合に、適切にフォローできるのか。その点は気がかりです。

感染者であることを証明する書類も、厳密にはありません。医療機関が何か手を打つ必要がありそうです。

「新型コロナ説明会」(熊本市保健所版)は、分かりやすかった

「熊本市新型コロナウイルス感染症診療体制及びワクチン接種に係る説明会」が、YouTubeで行われました。

厚労省のようなZOOMじゃないので、<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-4005.html" target="_blank" title="昨日みたいな">昨日みたいな</a>混乱や爆笑シーンはありませんでした。

よくわかっている方による説明は、ムダが無くて分かりやすいですね。ただし、お偉いさんの挨拶は不要です。

「全数届出見直し」によって、発生届の対象外の感染者のフォローアップ体制が問題になります。

これは「熊本県療養支援センター」や「夜間電話相談窓口」が担当するわけですが、有効に機能するかどうか。

その前段として、医療機関には、陽性者への「療養についてのチラシ」の配布が求められます。

ただしその配布のタイミングは、現実的には検査時(=PCR陽性かどうかが確定する前)しかなさそうです。

発生届の対象外の方でも、診断確定後に医療機関を受診した場合の診療は「公費負担」となります。

しかし陽性者であることの確認方法については一定の証明書がないため、医療機関では苦労しそうです。

全数届出じゃないけど医療は全員公費負担、というねじれが、意外と現場での混乱を招くかもしれません。

オミクロン株対応ワクチンは、12歳以上で過去2回以上接種済であれば誰でも接種対象です。

熊本市にはその対象者が57万人いますが、当面のワクチン供給量は18万人分。最初は不足気味で始まります。

驚いたのは、オミクロン株対応ワクチンは、現時点では「1人1回しか接種できない」ということ。

つまり今回「BA.1対応ワクチン」を接種したら、次の「BA.4/5対応ワクチン」は接種できなくなるのです。

この規定はやがて撤廃されるだろうと私は推測しますが、現時点ではそうなので、注意が必要です。

「小児用ワクチン」を2回接種した子が12歳に到達した場合、3回目では小児用は接種できないようです。

接種できるのは、オミクロン株対応ワクチン(ファイザー)のみです。この点は間違いやすいので要注意。

乳幼児(0歳6カ月〜4歳児)用のワクチンも、やがて接種が始まります。

5〜11歳の接種率も低迷しているのに、4歳以下でどのぐらい接種希望者がいるんでしょうかね。

1バイアルで10人の接種が想定されていますが、そんなにまとまった接種者が集まるのかどうか、疑問です。

「HER-SYS新機能リリース『爆笑』説明会」

「HER-SYS新機能リリース説明会」に、昨日と今日、2夜連続で参加しました。もちろんネットです。

ZOOM配信の第1回は参加数が限られていたため、昨夜の第2回からはYouTubeのライブ配信も行われました。

が、控えめに言ってもスムーズさに欠ける、ていうかグダグダ、率直に言えば事故レベルの説明会でした。

それにも増して今日の第3回説明会は、不慣れな参加者の方々のおかげで「爆笑ハプニング100連発」。

油断した顔が大写しになるし、ミュート忘れの方のお茶の間の会話やテレビ番組の音声が丸聞こえです。

「厚生労働省ですがミュートにしてください(ブチキレ気味)」「ミュートってどうするの?(丸聞こえ)」

いやいや、腹の皮がよじれるほど笑いましたよ。なんならコロナ禍でいちばん笑ったかも。

厚労省側もあいかわらずグダグダ。政府の方針が急に変わるので、準備する時間が足りなかったのでしょう。

いつも思うのですが、お役人が行う説明って、網羅的というか平板で、スライド読んでるだけでかったるい。

しかもトラブルに弱く、アドリブが下手。よくわかっていない管理職の方が説明すると、たいてい失敗します。

さて、「HER-SYS新機能」の要点はと言うと、

・「発生届」の対象は、「65歳以上・入院を要する者・重症化リスクがあり治療を要す・妊婦」の4類型のみ

・それ以外は、年齢別の人数のみの「日次報告」にとどめる

その日次報告にも厳しいルールがあって、次のような文言の記載がありました。

・1日1回しか報告できません

・「報告」ボタンを押下したあとは取下げや訂正はできません

まだ完成度が低いので、このような融通の利かない仕様になっているのでしょう。早く改修してくださいね。

ていうか、いまどき「押下」って言葉遣いはどうなの。そこは「クリック」か「タップ」でしょう。

「反ワクチン」活動の究極か

新型コロナワクチンを接種してないのに接種証明を作成した医師の事件が、妙な展開を見せてきましたね。

接種委託料をだまし取った程度の罪で、この医者は医師資格を失うんだなぁと、当初は哀れに思っていました。

新型コロナワクチンの接種事業には、悪徳医師の「付け入る隙」があります。

ワクチンとシリンジが無償で配給されるので、原価がかかりません。打てば打っただけの委託料が入ります。

配給されたワクチンの本数と実際に接種した人数を、役所が正確に照合する仕組みもありません。

「接種は受けたくないが接種証明書がほしいという女性の求めに応じて接種したように装っていた」

逮捕された医師は最初はそう言っていましたが、そんな人情味のある言い訳は、化けの皮が剥がれてきました。

「患者に危険性を説明し、それでも接種を希望した場合に生理食塩水を入れて打った」

接種現場で持論の「反ワクチン」論を展開し、説得できなかった相手には、無断で「実力行使」したわけです。

つまり、こういうことでしょう。

この反ワクチン医師は、最初から接種する気など無かったのに、自治体と接種委託契約を締結していた。

これはワクチンを接種するためではなく、反ワクチンの「布教」活動の場を作るためだったんですね。

そして説得に失敗した相手には、生理食塩水を注射してでも、接種を実力で阻止した。

それが正義であると信じていたのでしょう。この医師の、ゆがんだ計画的犯行に慄然とします。

第7波のピークアウトは間違いない?

第7波は確実に峠を越えつつあり、全数把握の見直しや水際対策の緩和などが、確実に前進しています。

日曜の当院の発熱外来も、朝のうちに夕方までの予約が一杯になることはなくなりました。

が、今日も昼には埋まりました。まだまだしばらくは、この程度の状況が続くのかもしれません。

相変わらず、39度前後の高熱の方が多いですね。BA.5になってからそんな具合です。

この2,3週で思うのは、成人とくに中高年の方が増えて来たことです。逆に言うなら、子どもが減りました。

夏休みの影響で、学校での感染拡大が止まったからかもしれません。であるなら、今後また増えるでしょう。

世の中はしかし、ウィズコロナを意識して前進しつつあります。気分的にはポストコロナかもしれません。

オミクロン株対応ワクチンの接種準備も着々と行われていますが、希望者が殺到する雰囲気がありません。

並行してインフルエンザワクチンの準備も始めようとしているところですが、これも接種計画が立てにくい。

10月にはコロナが急激に収束して、社会経済活動はもちろん、医療分野の状況も一変するかもしれません。

そんな中で、コロナとインフルワクチンの接種をどのように計画するのが妥当か、予測がつきません。

昨年は、ちょうど今頃から感染者数が減り、10〜12月はすっかり収束したように見えました。

さて今年はどうなるのか。黙って様子を見てないで、ワクチンぐらいはせっせと打っときますか。