補助金で「焼け太り」とは言葉が過ぎませんか

新型コロナ対策で支払われた補助金が病院を「焼け太り」させていると、批判的に報じられています。

コロナ患者を受け入れるために病床を空けた病院に支払われる「病床確保料」が、そのおもな標的です。

これはコロナ第1波で病院の収益が悪化したことを受け、減収分を補うために導入されたものでした。

病床を「確保」して稼働させないほど補助金額が大きくなるのは、たしかに制度設計上の問題かもしれません。

しかし、それまで赤字経営だった病院がこの補助金で「黒字化」したことを問題視するのは、いかがなものか。

これまで構造上の問題に苦しんできた病院が、この補助金によって図らずも息を吹き返したのです。

そしてそれがコロナ診療のモチベーションとなり、この3年間の日本の医療を支えてきんじゃないですか。

病院に限らず、当院のような発熱外来でも同様に、「<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-3315.html" target="_blank" title="発熱外来診療体制確保補助金">発熱外来診療体制確保補助金</a>」が支払われました。

発熱外来専用の時間枠を「確保」したのに実際に発熱患者が来なかった場合に支払われる補助金です。

これも、発熱患者を受け入れない方が補助金額が大きくなるという、矛盾をはらむ制度でした。

当院では、最大限の時間枠を発熱外来に充てることにして、いったん、かなり巨額の補助金を得ました。

しかしご存じの通り、実際に発熱患者を多数受け入れてきたので、補助金の多くを返還する必要があります。

その年内返還の可否を問う「<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-4035.html" target="_blank" title="不幸のメール">不幸のメール</a>」が厚労省から届いた話は、2カ月以上前に書きました。

しぶしぶ、年内返還可能と返信して待っていたところ、先日厚労省から、年内は無理だと連絡が入りました。

こっちは返す気になってるのに、まあ待てと、まだ返すなと。どんだけ厚労省忙しいんでしょうね。

異常な陽性率は「大波」の証拠

連日コロナの話題もイヤなんですが、どうやら重大な局面に差しかかったように感じています。

昨日の当院のPCR検査は26件と、第7波の頃に比べれば少ないですが、陽性23件(陽性率88%)は異常です。

濃厚接触かつ高熱が出て半日以上経過した方などは、PCRではなく抗原定性検査を行うことが増えました。

昨日と今日で抗原検査を行った方は22件。陽性は17件なので、陽性率は77%。これも高い。

しかしそのような、いかにも「怪しい」ケースを除外して行ったPCRの陽性率が88%ですから唖然とします。

60歳以上の陽性者は少なく、ほとんどは40歳代以下でした。

家庭内の濃厚接触者は3分の1程度で、職場やクラスや部活内での(セミ)クラスターも散見されます。

こまめに自宅で抗原検査をする方も多く、発熱外来としては大いに助かっています。

PCR検査をご希望の方にも、できれば自宅を出る前に、抗原検査をしていただくようお願いしています。

もしも抗原が陽性なら、PCR検査が不要となるばかりか、処方等が不要な方には来院の必要すらなくなります。

そのような、医療機関が関知しない陽性者の数が、国や自治体の集計に全て正しく反映されるとは思えません。

毎日発表される「新規感染者数」は、おそらく実態とはかなり隔たりがあるはずです。

もしかすると、すでにもう第7波を越える「大波」になっているのかもしれません。

「インフルエンザにタミフル」は、実に気楽

「<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-4098.html" target="_blank" title="コロナとインフルは同時大流行かも">コロナとインフルは同時大流行かも</a>」と一昨日「予言」した事態に、確実に近づきつつあります。

コロナの濃厚接触者の抗原検査で、コロナは陰性でしたがインフルが陽性の事例がありました。

これはもう「家庭内同時流行」です。コロナだと決めてかかると、インフルを見逃しかねません。

滅多にないだろうと思っていた、「コロナとインフルの同時感染」も、ついに今日、現れました。

あり得るとは思っていましたが、そのようなケースが実際に出てくる様になったことは衝撃的です。

今日は発熱外来を午後に限定したので、<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-4093.html" target="_blank" title="先週の当番医の時">先週の当番医の時</a>よりは受診者数こそ少なかったものの、濃厚でした。

「インフルのような寒気がした」「前にインフルに罹ったときと同じ症状」

そんな訴えの場合でも、インフルだけでなくコロナの検査も行うと、しばしばコロナ陽性でした、これまでは。

ところがいまは逆。コロナだろうと思った時でも、インフルの検査も行った方が良い状況になっています。

コロナの濃厚接触者に対してすら、念のためにインフルも調べときましょうか、という提案が必要です。

インフルが陽性なら、原則としてタミフルを処方しています。特別な同意書は不要で、処方も簡単です。

一方でコロナの薬は、今日も同意書を読んだ挙げ句に処方を断る方もいて、まだまだ手軽な薬ではありません。

「ウィズコロナ」は、ワクチンの普及に加えて、治療薬がもっと一般的になった時点で使うべき言葉でしょう。

コロナとインフルは同時流行ではなく「同時大流行」かも

新型コロナとインフルエンザの同時流行が、いよいよ現実味を帯びてきました。

熊本市の定点当たりのインフル報告数が、先々週(12/5〜12/12)の1.00から、先週は3.12に増えました。

この分だと(同じ比率で増えると)今週は約10となり、「注意報レベル」に達するかもしれません。

さらにその翌週にまた3倍(報告数30)となれば、これは「警報レベル」です。

インフルエンザに対しても、コロナと同様の予防法(3密回避・マスク・ワクチン)しかありません。

しかし、世の中はすでにウィズコロナに向かいつつあり、それらの予防策も以前より緩んできました。

ここでインフルが同時流行したとしても、もはや緩んだ流れは変わらないかもしれません。

つまりこの先、ウィズコロナ&インフルが待ち受けているということです。

今年最後の日曜診療となる明後日は、もしかすると<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-4093.html" target="_blank" title="先日の当番医">先日の当番医</a>の時よりも激しい発熱外来になりそうです。

よほどコロナの疑いが強くない限り、発熱者にはインフルの検査も併用する必要があるでしょう。

いつも日曜診療をしている当院が当番医をするのは、市内の休日診療体制にとっては不利だと先日書きました。

そのことを医師会事務局に相談したところ、当院は当番医のローテーションから外されることになりました。

もちろん、今後も毎週日曜に診療を行うことが条件です。大丈夫。日祝診療は今後も続けます。

「マイナ保険証」普及のための「加算」の右往左往

「マイナ保険証」普及のため、来年4月から従来の保険証の利用者負担がさらに増やされることになりました。

今年4月の診療報酬改定では、マイナ保険証を利用した方が診療報酬が高くなるように設定されていました。

初診料の「加算」は、3割負担の場合、マイナ保険証だと21円、従来の保険証なら9円の患者負担でした。

マイナ保険証に対応するための設備投資等が医療機関の負担となるため、それを手当するための措置です。

しかし、患者負担が割高になることはマイナ保険証の普及には逆効果であることが問題となりました。

すると10月からは180度方針転換。こんどは従来の保険証を使った方が、患者負担が高くなりました。

初診料の加算は、マイナ保険証だと6円、従来の保険証なら12円の患者負担になりました。

そしてこのたび、来年4月から従来の保険証の場合の患者負担が、18円に増えることが決まったわけです。

このような改定は、マイナ保険証への切り替えを促す、国民に対するインセンティブです。

ただし医療機関にとっては、マイナ保険証が普及する方が損をするという、微妙な逆効果を生み出しています。

あちらを立てればこちらが立たず。大事な制度改革を姑息的に済まそうとするから、こうなるのです。

マイナ保険証普及のインセンティブを、診療報酬の微調整で手当てしようという発想が、そもそも間違いです。

医療機関にとって、マイナ保険証対応設備の初期費用は補助金では足りず、導入後も永続的に負担が続きます。

これは重大な医療制度の改革なのですから、政府が全工程の面倒をきっちりみるべきです。

なお、マイナ保険証の有無にかかわらず、マイナ保険証「未」対応医療機関を受診すれば、加算が付きません。

当院もまだ未対応(カードリーダーは届いたけど準備中)。今ならオトクですよ。

発熱外来の報酬は下げ、支援金は渋る

熊本県内の新型コロナ新規感染者数が、今日は2236人でした。2千人超えは3か月ぶりのことです。

以前ほど一喜一憂しなくなった感染者数ですが、それでもとくにこの2,3週間は気になる推移を見せています。

全数届出が終了し、感染者数も以前ほど厳密には把握されていないでしょうから、実数はもっと多いはずです。

自宅での抗原検査キットで陽性だった方には、医療機関を受診しない方も増えています。

新型コロナはやがて、普通の風邪と同じような扱いになるのでしょう。欧米ではすでにそうです。

その真逆にあるのが中国。そして日本はその中間かもしれません。ある意味で、発展(?)途上なのです。

発熱外来に対する国の補助金や助成金も、2年前には大盤振る舞いでしたが、最近はサッパリです。

診療報酬もどんどん減らされ、発熱外来の役割は終焉に向かって(向かわされて)いるようにすら感じます。

と思っていたら実は、まだ国の支援事業が行われていました。空気清浄機の購入等に支援金が出るようですね。

あまり大々的には周知されていないものだから、私も最近まで気付きませんでした。

今日になって大慌てで、空気清浄機や検査装置などの購入についての「事業計画書」を提出したところです。

いったい国や自治体って、医療機関を支援したいのかしたくないのか。金を出すようで出し渋るんですよね。

インフルエンザの自主検査キットこそ、おおいに使うべき

たびたび書いているように、自宅で抗原検査をしてから受診する方がとても増えています。助かってます。

医療用キットで陽性なら、電話問診の内容によっては、受診せずにそのまま自宅療養となる場合もあります。

基礎疾患があったり、病状が心配だったり、何らかの処方を希望する方だけ、来院してもらえばよいのです。

ですがその方の濃厚接触者のPCR検査や抗原検査が必要なケースも多く、結局はご家族で来院されたりします。

そのついでに、検査キットの写真または現物を見せていただき、証拠としてその写真を撮って保存します。

ただ自宅での検査って、それが絶対に本人のモノかどうかはわかりません。自己申告を信じるしかありません。

コロナは感染すると一定期間の自宅療養等が必要となるので、本来は厳密な陽性判定が必要なんですけどね。

一方でインフルエンザは、コロナに比べれば療養の制限も緩いので、むしろ自主検査が望ましい気がします。

コロナとインフルの同時流行期には、両者を<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-4069.html" target="_blank" title="同時検査">同時検査</a>するか、もしくは先にインフルを検査すべきでしょう。

コロナの流行が優勢と思われるうちは、コロナとインフルの同時検査でよいと思います。

しかしインフルの方が圧倒的大流行となった時は、インフル単独の自主検査キットを活用すべきです。

いつぞや言われていたような、コロナだけ検査して「<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-4020.html" target="_blank" title="コロナ陰性=インフルと判断">コロナ陰性=インフルと判断</a>」なんてのはバカげてます。

日曜日の発熱外来、どうにかなりませんか

診療を終えて大慌てで帰宅したもののキックオフに間に合わず、録画を追っかけ再生で見ました。

W杯カタール大会グループリーグ第2戦です。残念ながら日本は、0-1でコスタリカに敗れてしまいましたね。

でも、こんな日なのに診療を早めに切り上げることができないほど、今日の発熱外来は混み合っていました。

午前中の早いうちに夕方の予約まで埋まることが、最近では当たり前になって来ました。

受付は一日中、「今日はもう予約が一杯です。申し訳ありません」と電話で謝り続けなければなりません。

なによりまず、熊本市(県)の休日の発熱外来体制が貧弱すぎます。これは去年からずっとそう思っています。

熊本県のサイトで、熊本県内の「診療・検査医療機関」つまり発熱外来の一覧を見ることができます。

これは公表に同意した医療機関のみの掲載ですが、全部で385医療機関、熊本市内だけでも157カ所あります。

しかしこの一覧には、発熱外来を実施する曜日や時間の記載がありません。

実は、この157カ所のうち、日曜日にも発熱外来を実施する医療機関は6カ所だけです。

しかもそのうち、朝から夕方まで対応しているのは、当院を含めてたったの2カ所だけ。

この状況が、いつまで経っても改善されません。休日の発熱外来をもっと充実させる方法って、ないですかね。

てことで、第3戦(対スペイン)は金曜日の午前4時から。これはまた厳しい時間帯です。

コロナとインフルの同時検査キット、市販へ

新型コロナウイルスとインフルエンザの同時検査キットが、ネットや薬局で販売されることになりそうです。

コロナ単独の検査キットはすでにOTC(一般用医薬品)化されており、広く使われているのはご存じの通り。

医療用キットで陽性なら、もはや医療機関を受診する必要はないので、発熱外来のひっ迫抑制効果があります。

今後のコロナとインフルの同時流行に備えるなら、同時検査キットも一般売りすべきです。

現にこの1週間、当院の発熱外来でも、コロナとインフルの同時検査を希望する方が急増しています。

いやむしろ、コロナよりもインフルを疑ってインフルの検査を希望する発熱者が意外と多くて、驚きます。

でも「もうインフルは出てますか?」と問われれば、「まだコロナの100分の1以下です」と答えています。

熊本県の定点(80カ所)あたりの毎週の報告数は、0ではありませんが1未満です。まだその程度なのです。

当院でも、インフルが陽性に出た方は今年はまだ一人もいません。

発熱者に原則として全例コロナとインフルの同時検査をするのは、本来は正しい医療行為ではありません。

いちばん「怪しい」疾患(たとえばコロナ)の検査をまず行い、それが陰性なら、次の疾患を考えるべきです。

しかしそれでは、鼻腔(鼻咽腔)を綿棒で拭う操作を、2度繰り返さなければなりません。苦痛を2回です。

そこで、「順位を付けがたい」2つの感染症の検査を最初から同時に行うのが、同時検査キットなのです。

ムダの多い同時検査ですが、今回のケースは国も推奨しているので、心おきなく実施させていただきます。

なぜ最初から同時検査をしたのか、まさかレセプトにいちいち言い訳の記載を求められたりしませんよね。

第8波ピークを前に、「ゾコーバ」緊急承認

塩野義製薬の新型コロナ内服薬「ゾコーバ」が、緊急承認されました。

重症化リスクがない人にも処方でき、従来薬「ラゲブリオ」などよりも幅広く使える治療薬になるでしょう。

その妙な名称の由来は、「XO(ノックアウト)」+「COVID-19」=「XOCOVA(ゾコーバ)」だとか。

当院の発熱外来では、2日前の日曜の抗原検査とPCR検査は37件。そのうち陽性は25件。陽性率68%でした。

経験上、感染者が増えるほど陽性率は高くなります。第7波では、ピーク時には80%を超えていました。

すでに第8波に入ったことには、疑いの余地がありません。

家庭内感染や、保育園や学校や施設等でのクラスターで感染したお子さんは、まだあまり多くありません。

むしろ、周囲に感染者どころか発熱者もいない「寝耳に水」の方が目立ちます。

これは経験上、大流行の初期に見られた兆候と同じです。

第7波と異なるのは、自宅で抗原検査を行う方が多いこと。医療用キットで陽性なら、それでコロナ確定です。

重症化リスクがなく全身状態が良ければ、感染しても発熱外来を受診する必要はありません。

そのかわり、発熱したけど自宅で抗原検査が陰性だった方が、PCR検査目的で受診するケースが増えています。

日曜の陽性者25人のうち、HER-SYS入力を行った方は3人でした。医療機関の負担は確実に減っています。

ラゲブリオを処方したのは2人だけでしたが、ゾコーバなら、もっと多くの方に処方することができそうです。