発熱外来は「外来対応医療機関」へ

新型コロナの「5類化」に伴い、従来の「発熱外来」よりも幅広い医療機関が、診療を行う体制となります。

新型コロナ診療を行う医療機関は今後、「外来対応医療機関」と言うことになるようです。

すべての医療機関がコロナ診療を行うのであれば、あえて「外来対応」と明言する必要はありません。

しかし残念ながら、「外来非対応」の医療機関もあるわけで、そのような呼称になるのでしょう。

当院のような「診療・検査医療機関」(いわゆる発熱外来)は、そのまま外来対応医療機関にスライドします。

さらに多くの医療機関が、新たに外来対応医療機関として、コロナ診療に加わっていくことになるはずです。

外来対応医療機関は、原則として県などのサイトに公表され、発熱者などの受診への便宜が図られます。

しかしながら、日曜・祝日の外来対応医療機関は、おそらく今後もかなり限られることでしょう。

コロナ以前から、休日の医療体制は平日よりも圧倒的に貧弱でしたが、コロナ禍ではなおさらです。

流行のピークが来るたびに、当院の日曜・祝日は発熱者一色となり、それ以外の診療が困難になるほどでした。

多くの医療機関が休日に休診することには、もちろんそれぞれの言い分や事情があることでしょう。

休日診療には経営上のさまざまな困難があるのに、診療報酬にインセンティブが与えられてないのは問題です。

当番医が休日診療すれば休日加算が付きますが、元々休日診療をしている医療機関では、それが付きません。

「好きで休日診療してるんでしょ」みたいな、冷たい仕打ちなのです。国は、その考えを改めていただきたい。

感染者は減っても、発熱外来は必要です

連休2日目。発熱外来受診者は31人。そのうちコロナ検査(NEAR法)実施者19人。陽性3人(16%)でした。

この3人の周囲にコロナ感染者はおらず、うち2人は、最初はコロナ検査をするつもりはなかった方です。

検査をしなかった12人の中にも、コロナかもと思う方が何人もいましたが、検査の無理強いはしませんでした。

「5類化」目前のいま、コロナの疑いがある人の診断を絶対確定させる必要性は、もはや無いかもしれません。

「インフルなら薬があるけど、コロナは知ってもしょうがない」と言い放つ方もいらっしゃいます。

「そんなことはありませんよ」と強く反論する根拠もなく、結果的に検査率が低下しているのが現状です。

「連休中までは検査料が無料ですよ」と甘くささやいても、もはや乗ってくる方はほとんどいません。

そんな具合ですから、連休後(検査料有料化後)の検査希望者はほとんどいなくなるかもしれません。

熊本県の今日の新規感染者数は29人でした。実数報告が5/8に終了しても気にならないほど、少ない人数です。

とは言え、自分が感染しているかどうか知りたい方は、今後もなくなることはないでしょう。

高齢者と同居している方などはとくに、気になるところです。

抗原検査よりも確実なPCR検査などの遺伝子検査は、今後もどこかの医療機関が実施を続ける必要があります。

結局は、これまでの発熱外来のノウハウと設備を有する医療機関が、今後も担うことになるのでしょうね。

新型コロナの「5類化」が正式決定

新型コロナの感染症法上の位置づけが、5月8日から「5類」に移行することが正式に決定しました。

さらに、空港等での水際対策の解除は、連休初日の4月29日に前倒しする方針のようです。

帰国時の混雑対策としてだけでなく、連休を利用して社会・経済の活性化を早めようという狙いでしょうか。

その一方で、おもに高齢者などを守るために、また来月からワクチン接種の新シリーズが始まります。

熊本市では先週から接種券の送付が始まり、今週は接種券を受け取った方からの予約が入り始めています。

当院では今回も、当院での接種歴がある方に限定して、電話か窓口で予約を受け付けています。

そのようにする理由は、ネット等での予約が不得手なかかりつけの方に、確実に当院で接種を行うためです。

ワクチンの供給量が限られているために、当初からずっとその方針で接種を行ってきました。

モデルナに限れば、ワクチンは十分に確保できるので何人にでも接種出来ますが、いまさら手は広げません。

当院での接種が初回の、それどころか来院自体が初めての方への接種は、受付や確認等に時間を要します。

その時間があったら、まず、かかりつけの接種希望の方全員に、ご希望の日時に接種をしたいのです。

大型連休中の発熱外来

連休中に発熱外来をしますか、みたいな調査依頼が、熊本市と熊本県から別々に届きました。

両者ほぼまったく同じことを聞いてきたので、いったいどういう了見なのかと、県に問い合わせてみました。

すると県の担当者は、ほう、市でも調査してるんですね、みたいにとぼけるので、確認をお願いしました。

実際には、市の調査に回答すればそれで良いのでしょうが、県の担当者の認識不足がどうも気になりました。

コロナ行政が転換期を迎え、お役所もたいへんです。全職員が全てを把握するのは困難なのかもしれません。

「5類」に変わるタイミングに合わせなくてもいいのに、いやそうだからか、ワクチンの接種も始まります。

幸いなことは、新規感染者数が、少なくともその報告数が、ひと頃よりは激減していることです。

連休中の発熱外来の混み具合がどうなるか予測は付きませんが、当院としてはこれまで通り診療するのみです。

むしろ気になるのは「5類化後」、つまり5月8日以降です。

なにしろこの日から、コロナ診療の公費負担が(一部を除いて)なくなります。自己負担が急に増えます。

支払いで揉めないためには、検査前いや受診前に、検査費用が3割負担であることを説明する必要があります。

予約の段階でこれを説明すれば、検査を断ったり受診自体をキャンセルする方も増えるかもしれません。

逆に言えば、連休中が公費負担のある最後の期間となります。まさか「駆け込み検査」ってないでしょうね。

コロナ感染者はジワジワ増えてますけど

発熱外来の受診者はめっきり減りましたね、と書きたいところですが、このところ不気味に増えています。

3月1カ月間のコロナ陽性者(NEAR法)は、22人(検査数181人、陽性率12.2%)でした。

ところが、4月は今日までの17日間(実診療日13日)だけで陽性者は22人(検査数105人、陽性率20.0%)。

さらに、とくに昨日と今日では、26人検査して陽性6人(陽性率23%)と、ジワジワと増えている印象です。

この6人の年代は8〜43歳と、若い方が目立ちます。

最近のコロナは症状の軽い方が多い印象がありましたが、ここに来て、高熱の方が目立つようになっています。

4月の陽性者22人を見ても、熱が38度未満の方は5人だけでした。昨日・今日の6人は全員が38度以上でした。

ひところは、熱が低いからと言ってコロナじゃないとは限りませんよと言ってましたが、様相が変わりました。

今のコロナは逆に、また高熱が出やすくなってきたかもしれません。

最近の問題は、発熱していても処方のみを希望して、検査を希望しない方が多いことです。

おそらくこれは、世の中の感染者数が減っているし周囲に感染者がいない、というのがその理由でしょう。

ところが実際には、周囲にコロナがまったくいない、という方が検査して陽性が出ることが多いのです。

当院の4月の陽性者22人のうち、周囲にコロナ感染者がいた人は6人(27%)だけでした。

どこで感染したのか見当もつかないという人もいれば、そういえば同僚が熱を出していたという方もいます。

もはや発熱しても検査しない人が増えたため、感染ルートがわかりにくくなってきています。

このようにしてコロナは、ついに「普通の風邪」のように扱われていくのでしょうか。

当院のような発熱外来が、検査をして陽性者を一部あぶり出しても、社会的な意義は少ないのかもしれません。

オンライン資格確認は、リアルタイム資格確認ではない

「オンライン資格確認」を当院でも導入しましたが、これは「マイナ保険証」のためだけではありません。

従来の保険証でも、「オンライン」で被保険者の「資格」が有効かどうかを「確認」することができるのです。

このシステムによってたぶん、「資格喪失後受診」を防げるだろうと、私は期待していたのですが・・・

職場等が変わって被保険者資格を喪失している方が、うっかり、その保険証で当院を受診することがあります。

保険証に記載の有効期限の範囲内なら、医療機関としてはそれ以上疑わず、診療を受け入れることになります。

すると2,3カ月後に保険者から「資格喪失後受診のため診療報酬は払えません」という一方的な通告が来ます。

以前は、保険者の言いなりになって、診療報酬の再請求をしていましたが、今はそんなことしていません。

保険者からの理不尽な通告は拒絶しています。当院としては保険証の確認をしたのだから、当然でしょう。

すると今度は保険者が面倒な手続きを強いられることになりますが、そんなの私の知ったことではありません。

ある保険者は、マイナ保険証だと資格が有効かどうか確実にわかるんですけどね、と捨て台詞を吐きました。

ところが、です。オンライン資格確認では正確に資格確認ができないことが、本日判明してしまいました。

3月末で退職した方の旧保険証を、2日前にシステムで確認してみたら「有効」だと判定されたのです。

今日になってもう一度確認したら、こんどは「無効」でした。

つまり、保険証の有効性を判定する大元のデータが、退職の10日後になってやっと更新されたということです。

保険者に電話で尋ねると、職場から保険組合への連絡が遅れたようです、と他人事のような回答。

私はさほど驚きはしませんでした。リアルタイムで資格確認ができるなど、最初から期待してはいませんから。

新型コロナの「5類」化と、医師の「応招義務」

新型コロナの「5類感染症」への「位置づけ変更」に伴って、最近よく聞くのが「応招義務」という言葉です。

「診療に従事する医師は、診察治療の求があつた場合には、正当な事由がなければ、これを拒んではならない」

医師法19条のこの規定が、応招義務の根拠とされています。診療拒否には「正当な理由」が必要なのです。

新型コロナはこれまで、特定の医療機関での対応が制度上求められていたため、応招義務の例外扱いでした。

「うちは発熱外来してませんので」という理由で、発熱者の診療を断ることができたわけです。

しかし5月8日からは、「新型コロナに罹患またはその疑いのみを理由とした診療拒否」はできなくなります。

加藤厚労相は会見で、このことを明言しました。コロナ診療に参画する医療機関の増加を目指すためです。

一方で加藤氏は国会では、動線分離できないなど診療が不可能であれば他院紹介をお願いする、と述べました。

結局、コロナ診療はそれが可能な医療機関が担うという、これまでとあまり変わらない形になるのでしょうか。

あるいは、動線分離等を厳格には守れない(守らない)医療機関も、コロナ診療に加わっていくのか。

たぶん後者。マスク装着義務も撤廃されたことだし、院内感染のリスクも事実上許容されていくのでしょう。

メディアでは「応召義務」という記載をよく目にしますが、厚労省の文書では「応招義務」を使っています。

当ブログでは以前は「応召」と書いてきましたが、本稿からは「応招」に切り替えました。

マイナ保険証とウィズコロナへの診療報酬改定

「四月馬鹿」って、最近あまり言いませんね。昭和の頃は「エイプリルフール」と同程度に聞く言葉でしたが。

「ウソついてもいい日」にお知らせするのもナンですが、今日から当院の医療費が値上がりしたのは本当です。

「マイナ保険証」を持って来なかった人からは、「6点」ほど余計に初診料を頂戴しています。今日からです。

再診料だって、容赦はしません(ていうか、ルールなので値引きできません)。「2点」ほど頂いてます。

たとえマイナ保険証を持って来て一定の承諾が得られた方でも、初診料は「2点」高くなっています。

「オンライン資格確認」システムの維持費は、この6点や2点の「チリツモ」で工面することになります。

「一般名処方」に関連した加算も「2点」ほど、今日から増えています。

一方で、コロナ関連の診療報酬上の「特例」は、「五類」化へ向けて大幅に削減されていく方向です。

外来でも算定できる「二類感染症患者入院診療加算」は、昨日で終了しました。まだ「二類」ですけど。

コロナ患者への療養指導を行った場合に算定する「救急医療管理加算」は、5月8日から大幅減額です。

発熱外来の基本報酬であるコロナ疑い患者の診療で算定する「院内トリアージ実施料」は、8月で終了の予定。

このように診療報酬を削減していく一方でコロナを診る医療機関を増やそうというのは、少々無理筋ですかね。

この忙しいのにマイナ保険証システムの準備中です

「オンライン資格確認(オン資)」の導入を医療機関に強いるのは憲法違反だ、という訴訟が起きています。

「オン資」とは、マイナ保険証によって、本人確認と直近の資格情報や医療情報まで確認できるシステムです。

全国の医療機関が、そのシステムをすでに導入済みか、いままさに準備を進めているか、あるいは検討中です。

当院でもようやく顔認証付きカードリーダーや専用PCのセッティングが終わり、いまは最終調整中です。

初期費用には国からの補助が出ますが、足りません。さらに、その後の維持費はすべて、永久に自腹です。

マイナ保険証の仕組みはたしかに、やがて必要だとは思います。ただ、国の「やり方がマズい」のです。

まず、オン資より前に、現行の保険証を「ICカード化」するようなステップは踏めなかったんですかね。

保険証の券面に印字してある情報だけでもIC化されれば、とりあえず現場では十分です。

本来は電子カルテに手入力すべき情報をカードリーダーで読み取れるだけでも、医療機関はとても楽です。

ネット接続や専用PCは不要。汎用のカードリーダーさえあればいいので、導入コストはわずかです。

利用者(被保険者)も、受付で「ICカード保険証」をピッと読み取らせるだけなので、便利です。

そのようにして、国民がICカード保険証に慣れておけば、マイナ保険証への移行もスムーズでしょう。

並行して、「別の方法で」マイナカードを十分に普及させた後に、保険証を廃止すればいいじゃないですか。

マイナカード普及後に保険証にも用途を広げるべきなのに、保険証を人質にカード普及を狙うのは反則です。

医療機関は国のイヤらしいやり口に押し切られ、コロナ禍中だというのに余計な作業をさせられているのです。

コロナは「受診率」が減ったかも

今日の東京の新型コロナ新規感染者数は799人。熊本179人。曜日を考慮しても、かなり少ないですね。

昨日・今日の連休中、当院で行ったコロナ検査(NEAR法)は40件。そのうち陽性は9人(陽性率22.5%)。

同じ2日間に行ったインフルエンザの検査は52件。うち陽性は15人(陽性率28.8%)。

コロナは明らかに減っています。1月と比べると激減していると言っても良いでしょう。

一方で、コロナと置き換わるかのように増えて来たインフルも、まだそれほど大爆発な状況ではありません。

コロナの陽性率が低かったのは、「念のため」の検査が多かったからでしょう。

またインフルの陽性率があまり高くないのは、検査時期が早すぎた事例が多かったからかもしれません。

熱が出たばかりの方は、通常は検査をお断りしていますが、39度以上でキツそうだとなかなか断りにくいもの。

その結果、高熱→早めにインフル検査(陰性)→コロナも否定できないのでその検査(陰性)、となるのです。

「5類移行」の話が具体化してきた頃から、発熱者の受診率や検査率が低下してきた印象があります。

市民の意識の中で、コロナの扱いが早くも「普通感冒(風邪)」に近づいてきたということでしょうか。