薬のネット販売

「一般医薬品のネット販売を禁止した厚生労働省令は違法である」

この最高裁判決は「対面販売」を必須ではないとしたものですが、2つの側面がありました。

(1)安全性が担保される範囲内では、国民の利便性が追求されるべき

(2)厚労省令が法律の趣旨を越えて、通販等の職業活動を妨げている

ケンコーコムの後藤社長は、「厚労省には明日にでも省令を改正してもらいたい」と言っています。

ところが国は、逆に薬事法の方を改正しようともくろんでいます。

法律を省令に合わせようとするのなら、本末転倒だと思ったのですが、必ずしもそうではなさそうです。

安全な通販システムを規定するために薬事法を改正するのであれば、それが望ましい着地点かもしれません。

そもそも、対面販売すれば必ず安全というわけでもありません。

複数の薬局で購入した薬の「併用禁忌(飲み合わせ)」や「過剰用量」を警告するシステムがありません。

いくつもの医療機関を渡り歩いて、多量の睡眠剤などの処方を受ける人もいます。

その人が服用するすべての薬剤を把握できなければ、医薬品の安全性を確保することはできないのです。

将来的には、「<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-99.html" target="_blank" title="マイナンバー">マイナンバー</a>」カードを利用した個人薬剤情報管理システムなんて、できるといいですね。

医療機関や薬局やネットでの薬剤購入に、カード読み取り操作を組み込めば、完璧です。

<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-466.html" target="_blank" title="昨日も">昨日も</a>書いたけど、「マイナンバー」ってすごく利用価値がありますよね。

保険証確認

保険医療機関を受診する人は、保険証を毎回提示する必要があります(健康保険法施行規則第53条)。

保険医療機関も、保険証を毎回確認する義務があります(保険医療機関及び保険医療養担当規則第3条)。

そう定められてはいますが、当院や多くの医療機関では通常、保険証の確認は月に1回だけです。

保険証を確認する目的は、それが「有効」かどうかを知るためです。

まさかと思う方もいるでしょうが、毎月何人か「保険証無効」の方に遭遇します。

しかもそれは受付で判明するのではなく、あとで支払機関から通知されるのです。

「保険証が無効なので診療報酬は支払えません」と。

職場や扶養関係などが変わり、保険証が切り替わると、それ以前の保険証は無効になります。

受診者の最新の医療保険情報がわからなければ、医療機関は正しい保険請求ができないわけです。

この問題は、次のいずれかによって解決すると思います。

(1)医療保険情報の一元管理:<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-99.html" target="_blank" title="マイナンバー制度">マイナンバー制度</a>によって可能になるんでしょうかね。

(2)医療保険の一本化:究極的にはこちらでしょうね、難しそうですが。

これらが実現するまでは、保険証の毎回確認が、ある程度有効な自衛策になるかもしれません。

いま「保険証の毎回確認をやんわりとお願いするポスター」を作成中です。

プライバシー

ご婦人に面と向かって「もう少し体重を減らしましょうね」などと失礼なこと言ってる自分に気付きます。

もちろん、生活習慣病治療のための医学的助言であり、業務上の発言です。

体重と同様に年齢もまた、女性においては触れて欲しくない情報のはず。

<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-358.html" target="_blank" title="以前">以前</a>、熊日新聞の「読者のひろば」に投稿した際に、少し疑問に感じたことがあります。

紙面には、私の「名前」「職業」「住所(市町村名)」とともに「年齢」も掲載されていたからです。

同じ紙面の他の投書を見ると、それが女性であろうと、すべて年齢が明示されていました。

新聞の投書欄では「実名」での投稿が原則です。しかし年齢まで公表する必要性があるのでしょうか。

実名投書するほどの人間なら、年齢を知られることぐらい気にしてないだろう、という考えなのでしょうか。

私自身はかまわないのですが、せめて年齢掲載の可否を、投稿者が決められるようにすべきでしょう。

プライバシーについて世の中が敏感になったのは、8年前の個人情報保護法施行からでしょうか。

たとえば熊本市職員名簿では、それまで記載してあった住所や電話番号の部分が、すべて空欄になりました。

おかげで年賀状を書くシーズンになっても、何の役にも立たなくなりました。

このように、プライバシー保護は利便性を損ねる場合もあります。

当院では行っていませんが、医療機関でも、患者さんの「匿名化」が進んでいます。

<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-354.html" target="_blank" title="前にも書いた">前にも書いた</a>ように、外来では患者さんを番号で呼び出し、病室入口では名札掲示がなくなりつつあります。

点滴のボトルに、名前を記載しない病院さえあると聞きます。

医療機関でのいきすぎたプライバシー保護は、事故(間違い)防止の観点からは疑問です。

5分間ルール

かつて診療報酬には、悪名高き「5分間ルール」というものがありました。

「医師は1人の患者さんを5分以上かけて診察すること」という規則です。

これを満たさない場合には、その患者さんの診察に対する診療報酬が、一定額(520円)差し引かれます。

「適正な診察時間は5分間である」というのがお役人の考えなのです。

看護師など、医師以外が行う問診時間などは、診察時間には算入できません。

カルテには、医師本人が5分以上診察を行った「証拠」を残さなくてはなりません。

いくらびっしりと丁寧な診察内容を記載しても、それでは何の証拠にもなりません。

逆に「診察時間5分以上」とか「診察時間OK」と、ひとこと記載しておけば、それだけでOKです。

もちろん自己申告なので、その内容がホントなのかどうかは、確認のしようもありません。

お役所が求めるのは「カタチ」なのです。「診察時間OK」と書いてあれば、「よろしい」となるのです。

この規則の最大の問題は、診療の「質」を無視して「量(時間の長さ)」だけを見ている点にあります。

さいわいにして、この制度は2年前に撤廃されましたが、お役所の体質は変わっていません。

今なお、カタチばかりを求めて医療現場を無視した杓子定規なルールが、たくさんあります。

迅速検査

ノロウイルス感染が流行し、その検査をすることも多くなりました。

患者さんが持参した便(たいていはオムツごと)を使って行う「迅速診断」検査です。所要時間は15分。

この「ノロウイルス抗原定性検査」の問題点は「保険適用」の範囲が限られていることです。

お役所の規定では、この検査に保険が適用できるのは、

(1)3歳未満の患者

(2)65歳以上の患者

(3)悪性腫瘍、臓器移植後、免疫抑制剤投与中の患者

このような縛りがあるので、3歳以上の患者さんの検査がやりにくいのが現状です。

同様の規定は、ひところ流行した(いまも散発している)RSウイルス感染の検査でも存在します。

「RSウイルス抗原定性検査」の「保険適用」の範囲は、

(1)入院患者

(2)乳児

(3)慢性肺疾患や先天性心疾患の2歳未満の患者

このうち(2)(3)が認められたのはつい1年前から。それまでは外来では保険が利きませんでした。

「重症化しやすい低年齢に対してのみ、検査を認める」というのが、これらの年齢制限の趣旨なのでしょう。

過剰検査を抑制したいのはわかりますが、必要性がある場合には、保険適用が認められるべきだと思います。

このような杓子定規な取り決めが、診療報酬制度にはたくさんあります。

ウイルス感染

いま「ウイルス感染」のニュースと言えば、この2つでしょうか。

(1)皇太子ご夫妻の長女愛子さまの、ウイルス性胃腸炎

(2)JAXA職員のPCの、ウイルス感染による情報流出

「ノロウイルス感染」による胃腸炎が、熊本でも大流行中です。

感染力が強いので保育園などで蔓延し、それが家庭内にも広がって親も罹患しています。

そんな中、一昨日のNHKのローカルニュース内で、重大な誤りを報じていました。

ノロを含む感染症についてとりあげる中で、アルコール系の消毒剤を使うことを勧めていたことです。

残念ながらアルコールは、インフルエンザウイルスには効きますが、ノロにはほとんど効きません。

アルコール系消毒剤を、手にシュッとしただけで安心してはいけないのです。

ノロに効くのは次亜塩素酸ナトリウムですが、刺激が強いので、それで手を洗うわけにはいきません。

よって、現在推奨されているのは「丁寧に手洗いする」こと。これに尽きるようです。

診療中はアルコールを手にすり込んだ後に、あらためて石けん液でもう一度しっかり手洗いしています。

これを毎日何十回も繰り返すと、手の甲の皮膚がアカギレして、ヒリヒリしてきます。

保湿剤とステロイド軟膏が手放せません。

私の体の中で、手の甲がいちばん疲れていることは確かです。

貼るワクチン

インフルエンザワクチンの接種を、毎日毎日行っています。

注射は大人でもイヤなものですが、小さいこどもは大泣きです。

最近「貼るワクチン」や「塗るワクチン」のニュースが相次いでいるので、大いに期待しています。

これらの薬では、表面加工や薬剤粒子に、特殊な工夫が施されているようです。

大阪大が開発した「パッチ」は、表面に微細なトゲトゲがあり、皮膚に刺さって成分が溶け出す仕組み。

九州大の「塗るワクチン」は、特殊な微小カプセルでワクチンを包み、皮膚の角質をすり抜けるらしいです。

こうした分野はおそらく、急速に技術革新が進み、やがて広く普及することになるでしょう。

現在すでに普及している「貼る薬」の代表格と言えば、小児領域なら気管支拡張剤のテープ剤でしょう。

「咳止めのシール」として知られている薬です。

粉薬もダメ、シロップもダメ、という薬嫌いの子どもにも確実に使えるので、とても重宝しています。

小児用の薬は、すべて貼り薬や塗り薬になりませんかね。

カゼに抗生剤?

寒くなって風邪の患者さんが増えています。

ところで以前、<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-285.html" target="_blank" title="風邪に抗生剤を処方するかどうか">風邪に抗生剤を処方するかどうか</a>について書きました。かいつまんで書けばこうです。

「必要と思えば処方し、不要と思えば処方せず、どちらとも言えないときは患者さんの希望に合わせる」

抗生剤を処方するかどうかを、そんなことで決めていいのかと言われそうです。

でも大事なのは、その後のフォローだと思います。

抗生剤を飲んだのに、なかなか熱が下がらない場合。

「抗生剤が効かないのは、ウイルス感染だからでしょうね。明日ぐらいには下がると思いますよ」

「でも、少しきつそうなので、血液検査をしてみましょうか」

抗生剤を飲んで、すっかり下熱した場合。

「抗生剤がよく効きましたね。ご希望通り処方してよかったです。」

「でも、抗生剤とは無関係に、たまたま熱が下がった可能性も、少し気に留めておいて下さいね」

抗生剤は、決して万能では無いですが、いたずらに毛嫌いするものでもないです。薬です。

カゼと抗生剤

カゼ(風邪)の多くはウイルス感染によるものなので、抗生剤治療は無効であり不要です。

しかし、カゼの中には時々、細菌感染症が含まれていることも知られています。

ウイルス感染か細菌感染か、はたまたそれ以外の病原体(マイコプラズマなど)が原因か。

それらをただちに区別するのは困難ですが、病状や所見等から、おおまかに判別はできます。

患者さんのなかには、抗生剤の処方を希望される方が、今でもけっこう多いです。

逆に最近は、不要なら抗生剤は飲みたくないという方(=ほぼ正しい考えの方)もおられます。

そういったこともふまえて、いまの私の抗生剤処方スタンスはこうです。

(1)必要と思われる場合は、処方する。(必ず)

(2)不要と思われる場合は、処方しない。(なるべく)

(3)それらの中間の場合は、患者さんの希望を尊重する。

いや、こう書きましたが、(3)が多いのです。たとえばこんな感じ。

私「抗生剤は、あまり必要ないかもしれませんね」

患「念のため、出しといてもらえませんか」

私「ですよね」

この会話でもわかるように、最近私は、医学的正論ばかりを押し通すのはやめました。

治すべきは病気ではなく人なので。

休日加算

今日は独り言です。サラッと読み流して下さい。

日曜日や祝日に診療を行うと、通常は「休日加算」というものを算定することになります。

たとえば、休日当番医がそれに該当します。

休日加算によって診療報酬が増えるので、患者さんの窓口での支払いも、そのぶん高くなります。

この休日加算には、二つの側面があると思います。

ひとつは、医師(医療機関)にとっての休日勤務手当。

もうひとつは、不要不急な受診の抑制。休日の受診が便利だからといって、休日に集中しては困るのです。

日頃から日曜祝日診療をしている当院の場合は、少し状況が異なります。

原則として休日加算は算定できないキマリなのです。

お役人の言い分はこうです。

「いつも休日診療してるのなら、それはあなたにとっては平日と同じでしょ」

そんな石頭だから、休日診療をする医療機関が増えないのです。