ジェネリック医薬品不足

ジェネリック医薬品大手「沢井製薬」の胃薬「テプレノンカプセル」に、品質管理上の不正が発覚しました。

薬を包むカプセルの品質が悪くて劣化しやすいため、新しいカプセルに入れ替えて試験を行っていたようです。

新任の担当者が正しく検査をしてしまい、まったく溶けなかったカプセルがあることが発覚。お粗末な話です。

つまり、たとえ薬の主成分に問題が無くても、カプセルが悪くて効果不十分な医薬品だったということです。

「テプレノンカプセル」といえば、「レバミピド錠」と双璧をなす、日頃とてもよく使われる胃薬ですね。

先発品名はそれぞれ「セルベックス」と「ムコスタ」です。パッケージの外観も先発品と後発品は似ています。

ジェネリックを嫌う人にはその品質を疑う方が多く、以前なら、私はその考えをキッパリ否定していました。

それは偏見ですよ。大手メーカーのジェネリックの品質は信頼できますよ。問題ありませんよ、と。

でも実際は、問題大ありじゃないですか。「安かろう悪かろう」じゃないかと言われれば、反論できませんよ。

3年前の<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-3371.html" target="_blank" title="「小林化工」">「小林化工」</a>の不正事件に始まり、翌年は「日医工」の不正と、ジェネリック業界の問題が続きます。

メーカーの業務停止や自主回収などによって、医薬品の供給はいま極めて不安定で、品薄が続いています。

そのとどめが、今回の沢井製薬です。これで医薬品の品薄はますますひどくなるかもしれません。

いずれもしっかりしたメーカーだったのに、手抜きや不正をせざるを得なくなった要因があるのでしょう。

ジェネリックメーカーは数多くの医薬品を製造しており、その多くがひどく安価な不採算品目だそうです。

他のメーカーが業務停止や出荷停止をしても、それを補うために不採算の薬は増産しにくいわけです。

さらに2年に1度の薬価改定で約10%ほど薬価が下がるため、メーカーの儲けはどんどん減るといいます。

メーカーを追い詰めたのは、薬価制度や製薬行政に根本的な原因があるのかもしれません。

まだ発熱外来は続けてますけど

昨日・今日の発熱外来では、コロナ陽性者7人、インフルは25人。だいたいこんな比率ですね、最近の流行は。

コロナとインフルの検査は同時に行うことができますが、最近はインフルだけ検査するケースが増えました。

これは流行を反映したもので、またコロナの検査代が有料(しかも高額)になったことも背景にあります。

当院で行っているコロナの遺伝子検出検査(NEAR法)の診療報酬は700点。つまり7,000円と高額です。

しかしまあ聞いてください。検査の消耗品(検査キット)代が、1検体あたり約6,000円もかかるのです。

先日招集された厚生局の「集団的個別指導」は、じつは診療単価がある程度高い医療機関が対象でした。

「コルァ〜、検査しすぎやろうが、ええ加減にせえやぁ〜」という、国からの恫喝、じゃなくて指導なのです。

ですが当院では、国が推進するコロナ診療に真面目に対応して、目一杯発熱外来を行っただけです。

たしかに見かけ上の診療単価は高いですが、その大半が検査キット代に消えているのです。

つまり儲けているのは医療機器や検査キット会社ですからね。売り上げだけ見て評価しないでいただきたい。

結局、診療報酬という公定価格とそれを熟知した業者の間で、医者は上手い具合に働かされているのです。

検査や治療で四苦八苦するばかりじゃなく、いまは予防(ワクチン接種)にも力を入れようとしています。

ただしワクチンの納入価格がかなり高額なので、これまたかなり薄利です。どうにかなりませんかね。

「集団的個別指導」

厚生局熊本事務所による「集団的個別指導」に招集され、午後を臨時休診にして講演を聞きに行って来ました。

内容的には、保険診療における注意点についての懇切丁寧な説明であり、別の言い方をすれば「説教」です。

その「召集令状」が届いたのは1カ月前のこと。すでに今日は乳幼児の予防接種の予約などが入っていました。

発熱外来もまだ毎日行っており、できることなら急な臨時休診は避けたいと思っていました。

都合が悪い場合は不参加でも良さそうな雰囲気だったので、先日厚生局に電話してみました。

私「発熱外来を中止するのは市民の健康にも反するし、乳幼児の予防接種を急に変更するのもいかがなものか」

厚「参加できない方のために別日にも開催を予定しておりますので、そちらに参加していただきます」

私「別日とは、いつになりますか」

厚「その当日の1カ月前のご連絡になります」

私「それでは結局、今回と同じことですね。別日にも参加しないということは可能ですか」

厚「そうなりますと、『個別指導』を受けていただくことになります」

「個別指導」・・・医療機関がもっとも恐れる、恐怖の4文字ですね。「コベツシドウ」と書けば6文字です。

かつて新規開業直後に受けたことがありますが、準備が超々大変だし、確実に休診を余儀なくされます。

そのような、医療機関を困惑・狼狽・憔悴・疲弊させる招集をちらつかせるお役所のやり口は、嫌いですw。

「オンライン資格確認」システムの補助金を申請

「マイナ保険証」をカードリーダーにセットして顔認証する操作にも、慣れた患者さんが増えました。

医療機関が行っているのは「オンライン資格確認」ですが、これには実は2つの「確認」が含まれています。

(1)「本人確認」:顔認証や暗証番号の入力による

(2)「資格確認」:保険証情報がわかる

旧知の患者さんであれば(1)は省いても良いのですが、(2)のためにカードをセットしてもらっています。

ただし、オンラインで確認した(2)の情報が最新のものかどうかは、別問題。そこが面倒なところです。

この、オンライン資格確認のシステムを導入した医療機関には、きちんと申請すれば、補助金が支給されます。

その上限は、診療所の場合42万9千円。このシステムを導入するための初期費用は、当院では約60万円でした。

このように、システム導入が義務とされていながら、医療機関の手出しが大きいのです

補助金の申請期限が今月末に迫り、ついに今日、申請書類と添付書類(すべてpdfファイル)を提出しました。

取りかかったらすぐ終わる作業なのですが、どうにも気が重くて、腰を上げるまでに何か月もかかりました。

一部書類はExcelファイルをダウンロードして記入する必要があるので、Macユーザーのやる気をそぐのです。

結局は、Mac内にインストールしたWindowsで処理しました。たいした作業じゃないけど、ムカつきます。

せっかくペーパーレスで申請できるのだから、サイトのフォームへの入力で完結してほしいですね。

コロナは高止まり、インフル右肩上がり、そしてワクチン

インフルエンザが通年で流行していますが、いよいよこれから本来の「流行シーズン」を迎えます。

これだけ報じられているので、高熱が出たらインフルか?と思いがちですが、高熱でもコロナの方が多いです。

インフルの検査しか希望しなかった方が、陰性だったので念のためコロナの検査をしたら陽性だったりします。

今日の発熱外来は、最近の日曜日のなかでもとくに受診希望者が多く、かなり早い内に予約受付を止めました。

コロナとインフルの同時検査を今日行ったのは18人。そのうちコロナ陽性8人、インフル陽性2人でした。

インフルで学級閉鎖中だという39度台のお子さんも、両方検査したらインフルは陰性でコロナ陽性でした。

全体では、コロナ陽性16人に対しインフルエンザ陽性は5人と、インフルがコロナに迫りつつある印象です。

というのも、8月1カ月間のコロナ陽性診断112人に対してインフル陽性はわずかに13人だったのです。

熊本市の定点あたり報告数も、コロナとインフルを比べて見ると、当院の検査結果と同様です。

コロナがピークでほぼ横ばいなのに対して、インフルは右肩急上昇でコロナに迫っています。

あらためて免疫を付けるために、今シーズンこそは、インフルエンザワクチンを接種すべきかもしれません。

それに加えて新型コロナワクチンの「秋開始接種」も、今月下旬からはじまります。

まだ発熱外来が忙しくて、ワクチン接種枠の設定が定まっていません。希望者の方は少々お待ちください。

(蛇足)今日は私の、63回目の誕生日でした。「高齢者」まで、あと731日。

報告数がピークアウトしたとしても、感染者は増えているかも

新型コロナの感染者数の推移の指標は、毎週の「定点あたり報告数」です。

5月8日(月)以来の月曜〜日曜を単位として、都道府県毎の報告数が集計され、金曜までに公表されています。

熊本県は、2.06→2.30→2.41→3.54→5.43→6.38→8.75→9.58→11.99→15.93→22.05、という推移。

先週(7/17〜23)の報告数は、5類化最初の週(5/8〜14)の10.7倍に増えています。

5類化直前の週(5/1〜7)の新規感染者数が1日平均88.9人なので、いまは1日951人程度と推定できます。

最新週(7/24〜7/30)の定点あたり報告数の集計結果はもちろん、まだ出ていません。

当院の最新週までの陽性診断数は、5→7→9→13→15→27→29→31→30→36→46→34という推移でした。

これだけ見るとピークアウトした感もありますが、当院の少ないデータだけでは統計学的な意味はありません。

とくに最近、有症状の濃厚接触者などコロナ感染が確定的な方が、敢えて検査をしないケースが増えています。

いわゆる「みなし陽性」とも言える臨床診断事例ですが、いまは、検査代の節約がそのおもな要因です。

発熱等で電話相談があっても実際には受診しない方もいます。検査しないのなら、受診も不要なのです。

未検査だとコロナの自覚も乏しくなりがちで、下熱後すぐに出勤する方もいますが、それもやむなしです。

発症後5日間は外出を控えることが推奨されているとは言え、強制ではありませんから。

家族などの濃厚接触者の方には、無症状なら出勤OKなどと伝えていますが、まだ若干の抵抗は感じます。

そして案の定、出勤した日の夜から発熱したりします。こんな事態にはもう慣れるしかないんですかね。

コロナ入院はすでに厳しい状況です

土日祝日に発熱外来をしていると、予約の電話が引っ切りなしにかかってきます。

日頃のかかりつけや、自宅近所の民間病院や、当番医に連絡して断られた方からの電話も、少なくありません。

しかし高熱で具合の悪い方であっても、予約枠が満杯の場合は、当院でも受診をお断りすることになります。

とくに病状の重い方には救急要請するように伝えますが、なかには「救急車に断られた」という方がいます。

救急車は来たけれど、いまの病状では入院は難しいという救急救命士の判断で、搬送はしなかったそうです。

近隣の複数の病院に電話しても、コロナ受け入れ病床が空いていないとの返事で、どうしても入院できません。

保健所に相談しても、必要であれば救急要請するようにとの返答ばかりで、問題はなかなか解決しません。

5類化以降、コロナ医療の調整役が事実上不在です。最後まで面倒をみてくれる相談役がいなくなりました。

当院受診者で、すぐ入院が必要ではないけど軽い低酸素の方には、パルスオキシメーターをお貸ししています。

年齢や病状にもよりますが、酸素飽和度が○○%以下になったら救急要請してください、などと伝えています。

客観的な根拠(低酸素)がなければ、救急隊や救急病院への説得力がないからです。

熊本はいま、そんな状況です。報道されているコロナ情報と医療現場の実情は、大きく乖離しています。

これはコロナ禍の3年半では初の事態です。それも覚悟の上での5類化なのですが、現実は厳しいのです。

世間の関心は猛暑と猟奇事件や悪徳企業に向いていますが、最大の社会問題は今もコロナかもしれません。

「ウィズコロナ」と言うけど、気分は「ポストコロナ」?

なでしこジャパン。初戦を5−0の大勝で飾りました。

おおいに盛り上がる観客席もパブリックビューイングもスポーツバーも、マスク装着者なんて誰もいません。

とは言え、発熱外来をやっている医療従事者としては、少しばかり、コロナの現状に触れておきます。

皆様、ご記憶でしょうか。日本ではいま、コロナの定点あたり報告数が毎週発表されているのですよ。

5月8日の「5類化」以来、1週間毎の報告数が都道府県別に集計されています。

熊本県では、2.06→2.30→2.41→3.54→5.43→6.38→8.75→9.58→11.99→15.93、という推移です。

かつては、東京都の新規感染者数が日本全体の新型コロナの流行の指標のように、毎日報じられていました。

ところがその東京の最新(7/10〜7/16)の定点あたり報告数は8.25です。お隣の神奈川県も8.14です。

一方で九州7県はすべて10以上。福岡を除くと全県で15以上なのです。沖縄は別格で31.8です。

このように今回(第9波?)は明らかに「西高東低」です。ナゼナンダロウ、ドシテナンダロウ(タモリ風)。

沖縄との交流の多さでは説明が付きません。佐賀と宮崎での増加が福岡よりも著しいのですから。

そんな状況でも第8波までと違うのは、スポーツ観戦だけでなく、世の中全体の「ポストコロナ」気分ですね。

今日の発熱外来で1人、ノーマスクでの受診者がいました。もはや発熱外来でもポストコロナ気分なのか?

当院がRSウイルス検査をサービスしない理由

RSウイルス検査は、1歳以上は保険適用がないので当院では原則としてやってないことは、<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-4294.html" target="_blank" title="前にも書きました">前にも書きました</a>。

ところが、他の医院では検査してもらえた、という患者さんもいて、なんともやりきれない気持ちになります。

当院がケチで融通が利かず、他院は温情ある医療機関に見えるからです。

1歳以上の幼児(とくに1,2歳児)へのRS検査は、医療機関によって次のいずれかで行われることになります。

(1)自費(=患者の10割負担)で検査を行う

この場合、RSの検査料金だけでなく、初診料や処方箋料や他の検査も、すべて自費診療となってしまいます。

なぜなら、保険診療と自費診療を混在させることは「混合診療」となり、禁止されているからです。

私を含め多くの医療従事者は、必要時の混合診療を認めて欲しいと思っているのですが、現状では御法度です。

(2)医療機関のサービスで検査を行う

RS検査の費用を医療機関が負担し、保険診療にも自費診療にもしないやり方です。

患者負担はRS検査以外の診療部分のみとなり、混合診療ではなくなります。すべて保険診療となります。

そして例えば1,2歳のお子さんの場合、熊本市だと元々医療費の自己負担がないので、患者負担はゼロです。

このうち(2)は、見かけ上はサービスですが、それで医療機関の負担が増えるわけではありません。

なぜなら、小児科で3歳未満は包括医療のため、何歳であっても元々検査代を請求できないからです。

RSウイルス検査の費用はどっちみち医療機関の手出しなので、(2)のサービス検査には抵抗がないのです。

しかし、包括医療なので手出しになることと、混合診療を避けるために手出しすることでは、意味が違います。

厳密に言えば(2)は、医療費を自治体と保険者に負担させて患者負担を回避する、グレーな「裏技」です。

これは、医療費を減らすためにRS検査の保険適用を0歳に限定している趣旨には、反することになります。

なので私は、検査が患者さんの医療に真に必要ならサービスもしますが、治療内容に影響しないならしません。

そもそも、RSウイルス感染に特効薬は無く、他の風邪と同様に病状に応じて治療を行うだけです。

園から言われたからとか、念のため程度の理由では、RSウイルスの検査をするわけにはいかないのです。

すでに「第9波」なのかどうかは問題ではありません

「5類感染症になっても、新型コロナウイルスが変わるわけでも、流行が終わるわけでもない」

そのように言われる一方で、社会の方は確実に変わり、人々の危機意識も全体的に希薄になっています。

いまひとつピンとこない「定点あたり報告数」はしかし、5/8の「5類化」以降、全国的に増える一方です。

たとえば熊本県の毎週の報告数は、2.06→2.30→2.41→3.54→5.43→6.38→8.75→9.58という推移です。

全国で熊本よりも数値が大きいのは、沖縄48.39、鹿児島13.48、千葉9.89、宮崎9.66の4県だけです。

人口と定点数の比率が必ずしも同じではないので単純な比較はできませんが、熊本の流行ぶりはわかります。

各県の報告数の推移を見ると、宮崎はほぼ熊本と同じ動きで、鹿児島は2週間ほど先行した増え方に見えます。

さらに沖縄は、その鹿児島よりも4週程度先を突き進んでいて、いま医療崩壊に瀕しています。

今後流れが変わる要素がないので、熊本も6週間後には沖縄のようになると考えた方が良いでしょう。

当院の今日の発熱外来は、朝のうちに夕方までの予約枠が埋まる勢いでした。体感的には、すでに第9波です。

全国各地の定点あたり報告数のグラフを見れば、第9波の坂を登り始めたことぐらい誰だって分かります。

ところが後藤担当相は、患者数が大きく伸びてないので現時点では第9波には当たらない、と強弁しています。

まあ、政治家が不都合な事実をできるだけ矮小化したがるのは、今に始まったことではありませんけど。

いま既に第9波かどうかの判定はどうでもいいので、政府のコロナ対策は先手を打って欲しいものです。