エボラ対策の心配事

エボラ出血熱は、<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-1120.html" target="_blank" title="羽田空港での疑似患者の一件">羽田空港での疑似患者の一件</a>を受けて、対岸の火事ではないことがわかってきました。

これまでは水際作戦でしたが、今後は、疑いのある患者への対処を迫られる局面が次々と出てきそうです。

エボラ出血熱を疑う患者が出た場合、厚労省が指定する医療機関で検査や治療を行うことになっています。

「特定感染症指定医療機関」3カ所と「第一種感染症指定医療機関」44カ所、全国で計47の医療機関です。

九州・沖縄には、福岡・佐賀・長崎・熊本県内にそれぞれ1カ所、沖縄に2カ所の、合計6機関あります。

大分・宮崎・鹿児島県内にはありません。中南部九州にある指定医療機関は、熊本市民病院ただひとつです。

熊本市民病院の感染症病棟には、室内の気圧が陰圧に保たれている、二重ドアの特殊な個室が2つあります。

患者搬送を陸路で行うなら、鹿児島と宮崎の患者はみな、熊本に来ることになります。これはたいへん。

過去1カ月以内のギニア、リベリア、シエラレオネ滞在歴のある方が発熱した場合、エボラ出血熱を疑います。

このような疑似患者に対して、現時点では次のような対応法が決められています。

(1)患者からの電話相談があった場合:自宅待機させ、行政職員による診断の後、指定医療機関に移送

(2)一般の医療機関を受診した場合:その医療機関で待機させた後、指定医療機関に移送する

当院に疑似患者が受診した場合、院内に待機させている間には、一般患者の診療を行うわけにもいきません。

もしも市民病院が満床(=2床)になったら、どうなるのでしょう。今のうちから心配にもなります。

というわけで、ご自分がエボラ出血熱かも、と思われる方は、来院される前に、まず電話でご相談ください。

血液型検査

お子さんの血液型の検査を希望する親御さんが、ときどきいらっしゃいます。

幼稚園等から調べるように言われたので、というケースが多いです。

何でもとりあえず調べさせる幼稚園や保育園の考え方には、疑問を感じます。

インフルエンザやRSウイルス感染症など、園に言われたので調べて欲しい、という方が多いです。

どのような検査も、それが医学的に必要性があるときに調べるものです。

では血液型検査は、何の意味があるのでしょうか。親子鑑定ならDNAで行うべきです。

「大けがで輸血するとき必要だから」などという理由は、失礼ながら時代錯誤と言わざるを得ません。

病院等では、患者本人や家族が申告した血液型を信じて、その型の血液を準備することなどあり得ません。

母子手帳に記載してあっても、献血手帳があっても、それを鵜呑みにはしません。

輸血用の血液を準備するとき、いくら急いでいても、必ずその医療機関で次の2つの確認をします。

(1)血液型などの検査

(2)患者血液と、準備した血液製剤とを掛け合わせて、異常反応が出ないか調べる(交差適合試験)

このような厳密な検査を行うので、あらかじめ血液型がわかっていようといまいと、何もかわりません。

今でこそ、血液型検査は検査室で臨床検査技師が行いますが、私が研修医の頃は、自分で検査したものです。

自分が担当する患者が入院すると、その日のうちにすることは、問診・診察・血液型検査などでした。

検査用シャーレの上でABO式血液型検査を行い、その証拠として、凝集した血液を濾紙に吸い込ませます。

その濾紙をそのままカルテに貼り付ければ、何よりも確実な血液型判定の証拠になったのです。

古い母子手帳にも、そのような濾紙が貼ってあるはず。血液感染など心配しない、おおらかな時代でした。

厚労省の患者調査

何の因果かこのたび当院は、全国で無作為に抽出された、厚労省の「患者調査」対象施設に選ばれました。

ある特定の1日の診療内容を、詳細に報告することになったのです。その1日というのが、今日でした。

患者調査は3年ごとに行われており、一般診療所は約6,000施設が調査対象となりました。

当院は、全国10万の一般診療所を代表する、6,000のサンプルの中に選ばれたわけです。

調査内容は、患者さんの生年月日や病名などの情報です。少々めんどくさいアンケートみたいなものです。

しかし考えてみると、提出する情報はすべて、毎月の診療報酬請求の際のレセプトに含まれるものばかり。

提出済のレセプト情報の一部を、機械的(電子的)に抽出して流用すれば事足りる話です。

なのにお役所は、欲しい情報をわれわれに再提出させるのです。これこそ縦割り行政の弊害でしょう。

おまけに言わせてもらえば、調査票の提出方法は以下のいずれかで行うのですが、これにも問題アリです。

(1)紙の調査票:患者1人につき1枚の調査票を、手書きで書いて郵送

(2)電子調査票:Excelファイルに調査内容を入力し、CD-Rに保存して郵送

申し訳ないですけど、私はExcelなんて持ってませんよ。表計算はApple純正の無料アプリを使っています。

そのMacのアプリでWindowsのExcelファイルを開くと、あちこちズレて、ラチがあきません。

何度も言いますけど、万人がExcel使っていると思ったら大間違いですよ、お役所の方々。

公的な提出書類を<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-878.html" target="_blank" title="Excelフォーマット">Excelフォーマット</a>にするのって、もうやめてくれませんか。

過重労働の解消

当院の近所にある牛丼店「すき家」は、いまでも年中無休24時間営業ですが、これはまれなケース。

他の多くのすき家の店舗ではすでに、今月から深夜営業が休止されています。

劣悪な労働環境が問題となり、深夜の1人勤務体制を解消しようとしたら、人手が足りなくなったからです。

過重労働を前提とした、ゼンショーの低コスト運営が、当然のようにほころびたわけです。

小児科や産婦人科などの勤務医の、過重労働を前提とした低コスト運営も、多くの病院で行われています。

勤務医らの労働条件を改善しようとしたら、人手が足りずにまともな診療ができなくなるでしょう。

テレビ番組が時々、小児科医や救急医などをとりあげ、過酷な勤務をこなす医師の姿を紹介してくれます。

そのような特集番組はいつも、使命感に燃える勤務医の活躍ぶりを、格好良くポジティブに描きます。

たとえ勤務医がホントはヘトヘトでも、なにしろ患者と比べれば相対的に元気ハツラツなのです。

労働条件が悪いので医師を休ませよう、これでは医療水準が低下するぞ、という風には決して描かれません。

これが、牛丼店員の1人夜勤に密着して、そのハードな勤務を描いたら、どんな番組になるでしょう。

接客、衛生面、防犯上の観点からも、店員1人じゃムリだろう、という問題提起になること間違いなしです。

20年ほどの勤務医経験後に開業した私には、病院勤務医をムダに忙しくさせないようにする使命があります。

今日からの3連休。病院の救急外来受診者を少しでも減らすことに、当院が貢献できればよいのですが。

国民医療費の膨張

日本の国民医療費が膨張していると、叫ばれて続けています。よくいわれる原因は2つ。

(1)高齢化の進展

(2)医療の高度化

高齢であるほど医療コストがかかります。そしてどのような対策を進めても、高齢者の数は減らせません。

人々がより高水準な医療・健康・生活レベルを求めれば、その分医療費が増えます。これも減らしにくい。

高齢者が増えれば医療費が増え、医療が高度化すればますます寿命が伸びるという、スパイラルです。

寿命を伸ばせ、医療を進歩させろ、しかし医療費は抑制せよ、などどいうのは無茶な話です。

国民医療費の対GDP比がOECD平均よりも高いといいますが、まだ米国や仏・独・カナダよりは低いのです。

つまり、世界一高齢化が進んでいる日本としては、医療費をよく抑えていると考えるべきです。

国民1人当たりの年間受診回数は、日本が突出しています。つまり、受診1回当たりの医療費が安いのです。

容易に医療機関を受診できることが、重大な疾病の早期発見・早期治療につながっているとも言えます。

医療費は結果であり、削減するものではないと思います。生産年齢人口を増やすのが、本筋でしょう。

患者データ紛失

当院の話ではありませんので、ご安心下さい。大分大学附属病院での先月の出来事です。

1万3千人分以上の、住所・氏名・病名などの患者データを入れていたUSBメモリを、紛失したとのこと。

だから口を酸っぱくして言ったでしょう。USBメモリに重要な個人情報を入れちゃダメだって。

ちょっと前にも、<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-944.html" target="_blank" title="東京医科大学病院のUSB紛失事故">東京医科大学病院のUSB紛失事故</a>について書いたばかりですよ。

大分大学病院の先生方は、私のブログをお読みになっていないのでしょうか。でしょうね。

同病院の個人情報に関するマニュアルによると、記録媒体への患者情報の保存は、原則禁止だったそうです。

なのになぜ、USBに保存したのか。便利だからでしょう。紛失するとは思っていなかったからでしょう。

つまり、油断してたのです。自分はなくさないという、根拠の無い自信があったのでしょう。これが怖い。

使うなと言っても使うなら、何重にも、情報漏洩防止策を講じておきましょう。

かくいう私も、どうしても使う瞬間が時々あります。では私は、セキュリティー対策をどうしているか。

(1)USBメモリにロックをかけておく

Macの場合だと、標準のディスクユーティリティーで、簡単にパスワードロックをかけることができます。

(2)大容量でオシャレなUSBメモリを、1個だけ厳選して所有する

中途半端な容量のUSBメモリを何個も保有していると、1個紛失してもなかなか気付きにくいものです。

(3)カギなどの貴重品と一緒に束ねておく

いつも紛失に気をつけているモノにくっつけておきます。私の場合は、銀行の<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-451.html" target="_blank" title="ワンタイムパスワード生成機">ワンタイムパスワード生成機</a>。

10年以上前、私が初めて買ったUSBメモリの容量は128MB。当時からすれば、膨大な記憶スペースでした。

その中に、勤務先病院の臨床研究データ等を、どっさり保存していました。いま思えば恐ろしいことです。

感染症と株価

「フマキラー」と「アース製薬」の株価が、大幅に上がっているようです。

蚊が媒介する<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-1059.html" target="_blank" title="デング熱">デング熱</a>が国内で、しかも東京で発生したために、殺虫剤需要の高まりが見込まれるからです。

この両社はまさに「デング株」と言えるでしょう。

となると気になるのは「金鳥(大日本除虫菊)」の株価です。調べてみたら、この会社は非上場のようです。

記憶に新しいのは「エボラ株」こと「富士フイルム」の、株価上昇でしょうか。

新しいインフルエンザ治療薬「ファビピラビル」が、<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-1054.html" target="_blank" title="エボラ出血熱">エボラ出血熱</a>治療薬として有望視されているからです。

ファビピラビルを製造しているのは、富士フイルムHD傘下の「富山化学工業」です。

一般の方にはなじみのうすい会社ですが、抗生剤などで昔からお世話になっている製薬会社です。

ただしそれらの薬は、現在は関連会社の「大正富山医薬品」が販売しています。大正製薬グループです。

しかしながら、製造しているのは富山化学工業のようです。ここらへんの関係はややこしい。

ファビピラビルは本年3月24日に、厚労省の審議会で、製造販売が承認されました。

富山化学工業が製造販売を申請したのが、2011年3月30日なので、承認まで3年かかったことになります。

同社の研究者がこの薬を発見した1998年からだと、苦節16年。医薬品の開発って、まあ時間がかかります。

おまけにファビピラビルは、インフルエンザパンデミックの際の切り札として承認されました。

通常のインフルエンザには使わず、必要時に厚労相の要請を受けて製造する、というのが条件でした。

ところがそこへ、エボラです。ファビピラビルの作用機序なら、エボラにも効く可能性がありそうだと。

国家的危機への対応が早い米国で、迅速に臨床試験が進められ、日本より先に発売されそうな勢いです。

そういうことなら、日本国内でただちに、製造・備蓄しておくのが危機管理というものだと思うのですが。

デング熱

「デング熱」の国内感染者が、昨日70年ぶりに出たと思ったら、今日は2人増えて3人になりました。

3人とも、都内の同じ学校の学生。ダンスの練習をしていた代々木公園で、蚊に刺されたらしいですね。

東京のど真ん中で、熱帯性の伝染病が蔓延とは笑える。いや失礼、エボラ出血熱でなくてよかったです。

デング熱は、感染者を刺した蚊がウイルスを媒介します。なので、3人の感染の元になった人物がいたはず。

なにしろ、他国で感染して日本に帰国して発症する人が、毎年200名前後いるそうです。

世界中では毎年約1億人が発症しているそうで、熱帯地方ではありきたりの、致死率の低い病気なのです。

代々木公園は本日封鎖され、蚊の駆除が行われましたが、すでに感染した人が多数いる可能性があります。

明日以降、さらに多くの発症者が出るかもしれません。東京の方は、しばらく要注意です。

突然高熱が出て、からだ中がひどく痛み、数日後に発疹が出て、やがて治る、といった経過をとるそうです。

デング熱 “dengue fever” は “dandy fever” ともいい、“dengue” と “dandy” は類縁語のようです。

関節痛と筋肉痛で全身がこわばり、歩く姿が「ダンディー」のように気取って見えるのが病名の由来とか。

ていうか、最近あまり使いませんけどね、ダンディーって言葉。もしかして、ダンディー坂野以来かも。

DeNAがDNA検査

モバゲーのDeNAが、8月12日(火)から遺伝子検査サービスを始めるようです。

DeNAがDNA検査かい、とツッコミたくもなりますが、かなり大まじめで用意周到な事業展開のようです。

「DeNAライフサイエンス」社のサイトを見ると、その検査内容の詳細がよくわかります。

検査メニューは「オールインワン」「ヘルスケア」「カラダ」の3つ。価格はおよそ3万、2万、1万円ナリ。

オールインワンで調べる項目は、ガンや生活習慣病や体質など、多岐にわたって282項目。

健康に関わる情報ではあるけれど、それを知ってどうするのか。重要なのはむしろ、その後でしょう。

ある種のガンや生活習慣病のリスクが高いとわかれば、検診や生活習慣改善のきっかけになります。

リスクの高い領域を重点的に警戒するという、新しい予防医療のあり方につながるかもしれません。

遺伝子情報を元にしたヘルスケア産業の前途が、無限に広がりそうな気もします。

それにしてもDeNAという会社、ゲーム会社かIT関連企業かと思ったら、突飛な事業展開をするものです。

楽天の三木谷社長の妨害に遭いながらも敢行した、ベイスターズの買収もそうでした。

そもそも、どういう経緯で「ディー・エヌ・エー」という社名にしたのでしょうね。

もしかして、最初から遺伝子事業を目論んでいたのか。あの創業者の南場智子氏なら、あり得なくもない。

遺伝子検査サービスは現在、Amazonで先行予約受付中。いかにもお手軽な印象を与える販売スタイルです。

もしかして今後も、窓口はAmazon限定でいくのかも。少なくとも、楽天では販売しないでしょうね。

使用済みの注射針

BCGの予防接種で、使用済みの針を使って、5人の乳児に誤って接種をしてしまう事故が起きました。

千葉県東金市の集団接種で起きた、接種過誤のいきさつはこうです。

(1)医師Aが、BCGを5人に接種し、使用済みの針5本をトレーに置いた。

(2)接種医師が交代した。

(3)医師Bが、トレー上の針を未使用品と思い込んで、再使用した。

いやいや、間違えてくれと言わんばかりじゃないですか。まるで絵に描いたような顛末です。問題は3点。

(1)医師Aは、使用済みの針を置くべき場所(廃棄用容器)を知らず、トレーに置いた。

(2)接種補助を行っていた看護師が、医師Aやトレーに注意を払っていなかった。

(3)医師Bは、針の異変に気づかなかった。

ポイントは(1)でしょう。なぜならそれは、単なる不注意や勘違いによるものではないからです。

人はうっかりするもの。だからそれが事故に至らないようなシステムを作ることが、何よりも重要です。

BCGの接種に限らず、使用済みの針は、使った直後に、使った本人が、専用容器に廃棄すべきです。

廃棄容器に確実に捨てるまでは、手に持った使用済みの針を、どこにも置いてはならないのです。

事故を防ぐためのシステムは、絶対に例外を認めないことで、効力を発揮します。