コロナはまだ出ていますが、症状はただの風邪です

コロナもインフルエンザも、すっかり減っていますが時々出ます。

それと同時に、コロナはもう普通の風邪と同じ扱いでいいでしょう、という雰囲気にもなりつつあります。

検査代が高いし治療薬も実質的に無い(=バカ高い)ので余計に、検査を希望する方は減っています。

コロナかもしれんけど、検査は希望しません、という方が多くて、まあそれもしょうがないですね。

コロナだと明日出勤できなくなるので検査は困ります、という明確な理由を告げる方も少なくありません。

逆に言うなら、コロナはいまなお風邪とは異なり、診断されたからには出勤できない職場があるわけです。

当院でいま検査をお勧めしているのは、高齢者と同居している方や高齢者施設に務めている発熱者です。

ところがそういう「念のため」の方に限って、陽性なんですね。症状は軽い方ばかり。

当院では今も、私はガウンと手袋とフェイスシールドとキャップを装着して、発熱者の診療を行っています。

物々しい雰囲気での診療ですが、それは防護具の在庫が十分あるから使っている面もあります。

今月から、発熱外来における諸経費に対する、旧「トリアージ加算」のような診療報酬上の補助はありません。

多少くすぶっているとしても、そろそろコロナ診療は「強制終了」させようというのが国の本音のようです。

その施策にもはや反対はしませんが、院内感染だけは防ぎたいので、今後も必要に応じて防護具を使います。

発熱者は安易に待合室には入れず、駐車場か隔離室で診ることを、しばらくは続ける方針です。

発熱外来の「空白の2カ月」始まる

保険医療機関における診療行為に対する報酬、つまり医療機関のおもな収入である「診療報酬」の話です。

コロナ禍においては「診療報酬上の特例」措置がありましたが、昨年来、段階的に見直されてきています。

たとえば昨年9月までは「トリアージ加算」300点というものがありました。300点とは3,000円のことです。

これは発熱外来における、時間的・空間的分離や感染対策に必要な人員と物品の確保に対する報酬です。

時間や場所を工夫し、防護具も完備して診療する際に認められる、いわば「発熱外来手当」です。

昨年10月からは、その手当が147点に減りました。1,470円です。ちまちました話ですみません。

さらに今回の改定では、なんと20点に減額です。発熱外来の感染予防経費は、200円で抑えろということです。

動線や時間帯分離を緩和したり、手袋やガウンなども節約して使い回せと、そういうことなのでしょうか。

少なくとも私は今日も、昨日までと同じ防護具を使って検査等を行いましたが、今後どうすべきか悩みます。

ついでに言うなら、147点は3月末で終了したのに、20点が始まるのは6月からということです。

診療報酬の大幅な改定は、これまで4月に行われてきましたが、今回からは6月改定となりました。

つまり4月と5月の発熱外来には、それ専用の報酬がまったくありません。まさに「空白の2カ月」なんですね。

減額はしょうがないとしても、空白はおかしいでしょう。この不都合をどう思ってるんですかね、厚労省は。

次の「新興感染症」に備えて

コロナ禍は終息したわけではありませんが、もう、次の「新興感染症」のための動きが、始まっています。

令和4年末に成立した「改正感染症法」は、部分的な施行を経て、ついに来月1日、全面的な施行となります。

平時から、自治体と医療機関の機能・役割分担を確認しておくために、「医療措置協定」が締結されます。

今後、重大な感染症が発生・蔓延した際に、国や自治体や医療機関等が迅速かつ的確に動けるための準備です。

新興感染症の際、病床確保や発熱外来などの医療を提供することを、医療機関があらかじめ約束するものです。

今週がその協定締結の意向調査の締切ということで、当院も先週、電子申請サービスを介して回答しました。

もちろん次回も当院は、発熱外来を担うつもりです。それが何年後か何十年後のことか、わかりませんけど。

この協定には「流行初期医療確保措置」が含まれます。流行初期の医療機関の減収を、国が補填する措置です。

診療報酬収入が感染症流行前の同月の診療報酬収入を下回った場合、その差額が支援されるそうです。

これは太っ腹ですね。コロナ禍初期の頃には、いちばん望まれていた方策かもしれません。

しかし減収分しか補填しないというのは、コロナ禍で問題となった「焼け太り」への対策のような気もします。

いずれにしても、新興感染症の際に医療機関がすごく頑張ることへのモチベーションには、なりにくいですね。

新型コロナ医療支援策終了へ

新型コロナの医療における支援策は、今月末で終了することになっていましたが、それがが確定しました。

その中でメディアが大きく取り上げているのは、コロナ治療薬の自己負担額が高額になるということです。

たとえば「ラゲブリオ」は、3割負担の方で現在9千円の自己負担が、4月から約2万8千円になります。

この大幅な負担増によって、治療薬を希望しない人が増えることが懸念されていますが、そうでしょうか。

いや、そうだとは思いますが、もうすでに、昨年10月に処方が激減していますからね。

昨年9月までは、コロナ治療薬は「全額公費負担」でした。つまり自己負担ゼロです。

それが10月から3割負担で9千円になった時から、多くの方が、処方を希望しなくなってしまいました。

処方を希望するのはほぼ、1割負担(自己負担3千円)の高齢者だけになりました。

実情ではすでに、コロナ治療薬は高すぎて敬遠されているのです。4月から激減、というわけではありません。

ワクチンはしかし、これまで無料だった分、7千円程度の自己負担は大きく感じますね。

とはいえこれも、このところすでに接種希望者は少なく、有料になったから激減するわけでもないでしょう。

おもに高齢者など接種を強く希望する方には、有料だから接種しないという発想は無いかもしれません。

医療機関にとって実は、治療薬とかワクチンよりも、今回の診療報酬の改定の方が大問題なのですけどね。

あてにならないコロナ感染者数

日曜の診療の後半はいつも、発熱外来一色となります。今日はそれが38人。

コロナ陽性者は23人検査中6人(26%)、インフルエンザ陽性者は30人検査中の10人(すべてB型)でした。

ひと頃と比べて、コロナもインフルも、検査数や陽性率がそれぞれ減って来ています。

新型コロナは今年に入って定点あたり報告数が増え続けていましたが、2/5〜11の週では減少に転じています。

これは熊本市でも、熊本県でも、全国的にも、ほぼ同じ傾向です。

一方でインフルエンザは、年末に比べて1月は少し減ったもののまた増加に転じ、2月はさらに増えています。

感染者数の推移はそうかもしれませんが、定点あたり報告数の集計は、どこまで正しいのでしょう。

まず、コロナは検査費用が高いため、発熱者の検査希望は明らかに「インフル>コロナ」となっています。

このバイアスがあるので、インフルとコロナの感染者数を比較することは、ほとんどナンセンスです。

また小児は医療費の公費負担があるので、コロナの検査希望数は「小児>成人」となりがちです。

そのため、コロナ感染者の年齢分布を正確に分析することも、現状ではほとんど不可能です。

そのようなこともあって、当院発熱外来のデータ分析も、最近はあまり精密にはやらなくなりました。

4月から検査の診療報酬が「激減」します。これもまた、見かけ上の感染者数の減少につながりそうですね。

開業医の働き方改革

「働き方改革」(労働基準法の改正)によって5年前から、残業時間の上限が罰則付きで定められました。

医師にはその適用が5年間猶予されていましたが、今年4月から、残業は原則「年960時間」が上限となります。

これで本当に医師が働きやすくなるのか、病院は十分な医療を提供できるのか、懸念はたくさんあります。

とても大事なことなのでいつか日を改めて書くとして、今日は「開業医の働き方改革」について考えました。

いま世間で言われている「医師の働き方改革」の対象となるのは「勤務医」です。

その勤務医を、規則に違反して「残業させた」場合には、「使用者(雇用主)」が罰せられます。

同じ医師である「開業医」はしかし、誰かに指図を受けて残業するわけではないので、この罰則の対象外です。

開業医も残業することはありますが、これは地域医療に貢献するために自分の判断で決めたことだからです。

とは言え、開業医が時間外に行っている医療行為は、社会の要請に応じたものです。

もとより医師には、医療の提供を求められたら応じなければならないという「応招義務」があります。

しかし、医師が健康を害するほど長時間労働をすることは、あまり持続性のある働き方とは思えません。

また、たとえ医師本人は体力の許す限り診療したいとしても、医療行為には医療スタッフが必要です。

医師以外のスタッフの働き方改革の観点からも、開業医であろうとも、残業はできるだけ減らすべき時代です。

そういうわけで、勤務医のみならず開業医の働き方改革にも、世の中の理解が得られることを願っています。

いつかは「3分(サンフン)クッキング」になるのか

PCR検査等、コロナの「遺伝子検出検査」をした場合、レセプトにはその詳細を記載しなければなりません。

(1)検査が必要と判断した医学的根拠:簡潔な文章で記載する

(2)検査結果:陽性か陰性か

(3)検査の実施日時:何日の何時何分か

たとえば今日の12時23分に行った陽性例では、次の様に記載をします。

(1)発熱等COVID-19を疑う症状があり、検査を行った。

(2)陽性

(3)101223

まったくムダな作業ですが、レセプトの提出を受けた審査機関は、これをどうやって審査するのでしょう。

現状私は(1)はほぼ全症例で同じ文言で提出していますが、何の問題も起きていません。

陽性か陰性かは間違えないように記載しています。でも(3)の時刻は間違えても検証しようがないはずです。

それなのに律儀にも当院では、(3)の日時分を何度も確認するという、少々ムダに思える作業をしています。

このデータ必要なのかと、先日支払基金に電話で尋ねてみましたが、記載をしてくださいとの一点張りでした。

現状では、検査の際に時刻を看護スタッフが宣言し、それを聞いた私が記録し、事務員が後に検証しています。

たとえばスタッフが「12時23分(フン)です」と言うと、私が「12時23分(プン)ね」と復唱したりします。

最近の若い方は、「3フン」とか「4フン」のように「半濁音化」しないことが多くて、少し違和感があります。

私は敢えてそれを「3プン」とか「4プン」などと半濁音化して復唱する毎日です。

現行の健康保険証、来年12月に廃止決定

現行の健康保険証が、来年12月2日に廃止されることが決まりました。

これまで「来年秋に廃止」と言ってましたが、11月末までは秋だとしたら、まあほぼ既定路線通りです。

医療現場でどのような不具合、不便があろうと、「マイナ保険証」に一本化する方針は変わらないようです。

決めたのだから追いつけよ、ということです。

御上に逆らってもしょうがないので当院も、今年3月から「オンライン資格確認」システムを導入しています。

最初のうちは「保険証情報の紐付け遅れ」等の問題が頻発しましたが、最近はわりと安定していますね。

なんならマイナ保険証の方が便利だったりします。

そんな当院のような医療機関につけ込むような、少々珍妙な支援案が、このたび厚労省から発出されました。

マイナ保険証利用促進のインセンティブとなるような、利用率の増加や利用件数に応じた支援だといいます。

「今年10月の使用件数と比較して、来年何%増えたかに応じて、1件あたり20円〜120円支援しま〜す!」

「でも計算が面倒くさそう」「ご安心ください。医療機関からの申請は不要です!」「わあ、それはいい!」

「ちょっと待ってください。それだけじゃないんです」「まだあるの?」

「いまなら、マイナ保険証の利用が500件以上の月があると、顔認証リーダーをもう1台半額でプレゼント!」

「うわぁ、どんどん認証できちゃいそう!」(ていうか、狭いクリニックの受付にリーダー2台も要らん)

診療報酬は、増えるか、減るか

診療報酬の改定が話題になる時期にはいつも、増大する社会保障費をどうするのか、という議論が出てきます。

社会保障費を抑えるには医療費を削減する必要があり、そのためには診療報酬を減らすべきだという論法です。

この理屈に、一般国民はああそうかと納得するのかもしれませんが、実はまったくオカシな話です。

診療報酬というのは、保険診療への対価であり、医療機関や医療従事者の収入の原資となります。

それは医者の「働き」に比例して得られるものなので、頑張れば頑張るほど収入が増えるのは当然のことです。

その際の、さまざまな診療内容に対する「点数」は国が定めており、それを国は自由に「改定」できます。

医者の儲けの総額ともいえる国民医療費を抑えるのは簡単。その点数の設定を引き下げるだけで済むのです。

しかしそもそも、国民医療費が増えたのは、高齢化やコロナ禍などによって、医療の需要が増えたからです。

たとえ、医者が頑張って国民の寿命を延ばしてきたとしても、高齢化社会は医者の責任ではありません。

なのに、医療需要が増えたので、医療費を減らすために医者の儲けの単価を下げようという話なのです。

そして残念なことに、医者の儲けを減らして医療費を削減することに対して、世論はあまり反対しないのです。

医師の働き方改革や看護師などの給料アップが求められる中で、診療報酬の改定はどっちへ向かうのでしょう。

コロナは激減、インフルはまだ注意報レベル

コロナとインフルエンザの流行状況について、最近あまり書いていなかったので、久々にまとめてみます。

当院でも、熊本でも、全国的にも、コロナが減ってインフルエンザが増えています。

全国の新型コロナの定点あたり報告数は、最近の5週間は、11.0→8.8→5.2→3.8→3.3、と減り続けています。

熊本県でも、12.7→11.3→6.4→3.3→2.7、熊本市でも、12.6→10.4→5.1→3.0→2.2と、同じ傾向です。

一方でインフルは、熊本市では、9.8→10.0→17.2→11.0→13.0と、注意報レベルをウロウロしています。

どういうわけか、爆発的に増えて警報レベルに向かってる、というわけでもない、微妙な推移です。

同時期の当院での診断数は、コロナは36→18→12→14→8 インフルは46→21→16→28→31、でした。

これも同様に、コロナは激減したけど、インフルは激増というほどでもない中途半端な増え方です。

それでもおそらく、来月には警報レベル(=定点あたり30以上)にはなりそうです。

この流行状況に一致して、インフルワクチンの接種希望者はとても多く、コロナワクチン希望者はわずかです。

感染者も、検査数も、ワクチン接種も減って、もうコロナは「オワコン」なのでしょうか。

だとしてもコロナはまだゼロじゃないので、発熱外来はまだしばらく続けることになるんでしょうね。