「みなし陽性」の運用が始まります

熊本県でも、いわゆる「みなし陽性」の運用が、明日から可能になります。

医師の判断により、検査を行わず、臨床症状で「新型コロナ感染者」とみなすことができます。

その取扱には、次の2つの条件を満たす必要があります。

(1)陽性者の濃厚接触者で、同居家族または同居している方が有症状となった場合

(2)PCR検査の試薬や抗原定性検査キットが不足していることにより、 検査の実施に支障が生じている

みなし陽性の運用によって、検査に伴う医療資源が節約でき、陽性診断とその後の対処も格段に早まります。

当院で今月PCR検査または抗原定性検査を行ったのは186人。このうち同居家族内濃厚接触者は53人でした。

そのうち来院時に何らかの症状のあった方は36人で、これらは(1)の条件でみなし陽性と判断できる方です。

ところが実際に検査で陽性だったのは36人中19人でした。残る17人は「みなし偽陽性」かもしれない人です。

もちろん、PCR検査等の「偽陰性」も否定できないので、有症状濃厚接触者はつねに要注意対象です。

とは言え、みなし陽性の「過剰診断」には留意すべきだと、自験例を集計してみて改めて気付いた次第です。

感染してもすぐに職場復帰

新型コロナの感染が確定すると、病状や重症化リスク等に応じた療養場所が、保健所から指示されます。

(1)入院

(2)宿泊療養

(3)自宅療養

感染者に電話して様子を聞くと、たいていの方は(3)ですが、たまに(2)の方がいます。(1)は少数です。

ところが最近は、第4のパターンの方も出始めていて、驚きます。

(4)職場復帰

「感染者なのに職場復帰?」と驚くのですが、話を聞けばその事情は切実です。

老健施設等の感染者エリアでの勤務に、軽症感染者の職員が駆り出されている、というわけです。

なるほど、よく考えたものです。感染者には当面、新たな感染のリスクはありませんからね。

感染者の病棟を、感染した医療スタッフが担当することが、大都市圏の病院等では、すでに行われています。

医療者はつねに感染のリスクに晒されており、しかも感染したらしたで、都合良く働かされるわけです。

でも考えてみると、無症状・軽症感染者はある意味「無敵状態」です。この好機を生かさない手はありません。

万一私が感染して、しかも元気なら、どこかの病院のコロナ病棟に手伝いに行きたくなるかもしれませんね。

「家庭内濃厚接触」には、やはり早期PCR検査かな

毎週火曜の休診日は、日曜と月曜に行ったPCR検査の結果報告と届出を行う日として、完全に定着しています。

今日、PCR検査の結果を電話で伝えた方は77人。検査数自体は、先週より減ってます。

このうち陽性は34人。陽性率は44%。これほど陽性率が高いうちは、まだ流行がおさまる気がしません。

電話では結果を伝えるだけではなく、この1日2日の病状の変化を尋ねます。

それらの情報をもとに、発生届をHER-SYSに入力し、入院チェックシートをFAXするまでが今日の仕事です。

あいかわらず家庭内感染が多いですね。

先週ぐらいまでは、家族内に感染者が1人出たので、他の家族のPCR検査を求めるケースが主流でした。

ところが今週は、家族に複数の感染者が出たので、残り全員のPCR検査を希望するような例が増えています。

家族の場合はたいてい「濃厚接触者」となりますが、その中にはしばしば、無症状の方が含まれています。

しかし実際に今日もPCRの結果を電話で伝えていると、無症状だった濃厚接触者が何人か発症していました。

「家族内感染者との濃厚接触→無症状だけどPCR検査→その後発症→PCR陽性が判明」というパターンです。

検査・医療資源の節約をうるさく言うなら、無症状濃厚接触者の検査は控えるべきだという考え方があります。

しかし私は、感染者が多数勢力であるような家庭では、残りの家族全員のPCR検査を原則として行います。

前述したように、診察時にはたとえ無症状でも、やがて大半が発症することが経験上わかっているからです。

あとで陽性とわかるほどなら、一刻も早く「陽性判定」を出した方が、医学的にも社会的にも有益です。

家庭内での面倒な隔離・動線分離や消毒等は、家族全員が感染したことがわかった時点で、もう不要ですし。

「6カ月間隔で1日100万回」の実現へ

「新型コロナワクチンの3回目接種1日100万回」を、今月の後半には達成したいと、岸田首相が述べました。

野党議員から突き上げられて答弁したような流れです。たしかに、もっと早く表明して欲しかった。

首相が何をぶち上げたところで、自治体が従うのはあくまでも、中央省庁(厚労省)からの指示です。

厚労省は、これまでの政策との整合性をとりながら理屈を付けて次の施策を決定するので、時間がかかります。

自治体は、厚労省からの指示を元に、大慌てで動き出します。医療機関への通知が出るのもその頃です。

ところが国民は、首相が言ったのなら明日からでも実現するのだろうと、そのぐらいの感覚でとらえます。

「今月中に100万回」と急に言い出すのではなく、「来月中に100万回」と1カ月前に言っといてほしかった。

2回目の接種からの間隔も、ようやく「全対象者で6カ月」ということになりそうです。

熊本市でも今週木曜日から、64歳以下であっても6カ月以上の間隔で実施、という規定に変わる予定です。

市の予約システムにおける予約受付も前倒しされ、「接種券が届き次第可能」とする運用に変わります。

しかも実際には、たとえ接種券が届いてなくても、2回目から6カ月経っていれば接種は可能です。

ただし、予約の混乱を回避するために、市は接種券を段階的に送付しています。

市民の皆さまにおかれては、混乱を避けるべく、「接種券が届いてから予約を入れる」ようお願いします。

保健所の仕事が早くなってる!

PCR検査を委託している検査センターで昨日また、機器のトラブルがありました。

昨夜のうちには判明する予定だった検査結果が、翌朝(つまり今朝)になるという連絡が昨夕ありました。

以前にも経験済みのことなので、対処法は心得ています。まずは連絡を待つ患者さんへお詫びの電話連絡です。

PCR陰性か陽性かで家庭生活が大違いになりますが、結果判明が延びると言われたら待つしかありません。

その待ち時間をできるだけ減らそうと、今朝は6時台に出勤して、7時から電話連絡を始めました。

検査した11人のうち8人が陽性でしたが、8人といっても3家族です。家庭内での複数感染が多いのです。

診療開始までに、電話連絡と追加問診と、発生届の入力と、保健所へのFAXを終えなければなりません。

バタバタしたものだから、発生届(HER-SYS入力)のうち1件の送信ボタンのクリックを忘れてしまいました。

そしたら朝のうちに保健所から電話が入り、FAXと比較して発生届が1件足りません、と。

驚きました。保健所の仕事が早くなってる!(失礼)

入力した発生届なんていつ読んでくれるのやらと、以前は思っていましたが、認識を改めなければなりません。

発生届が迅速に処理されているところを見ると、その後の動きもきっと、早くなっていると期待できます。

感染者数が千人レベルにも耐えうるまでに、保健所のマンパワーが増強されているのでしょう。

昨日は、感染者の住所確認で保健所から電話がかかりましたが、市内の有名な町名の読みを間違えていました。

もしかすると、市外(あるいは県外)からの応援の方かもしれませんね。

「家庭内濃厚接触」は、なかなか避けがたい

家族に陽性者が出た、という方の受診が増えています。新型コロナはもう、身近な感染症になってきました。

発症の前から感染力が強いのがコロナの特徴なので、発症後に対策を始めても家庭内ではほぼ手遅れです。

もちろん発症後の隔離がムダだとは言いませんが、現実的には難しい場合も多く、結局、感染が広がります。

「濃厚接触者である同居家族等の待機時間について」という通知が、2日前に厚労省から出ています。

エッセンシャルワーカーかどうかにかかわらず、待機期間については次のように規定されています。

(1)陽性者の発症日(無症状なら検査日)か住居内で感染対策を講じた日の、遅い方から8日目に解除する

(2)別の家族が発症した場合は、改めてその発症日を0日として起算する

家族内で新たに「発症者」が出たらその都度、待機期間がリセットされ、8日間のカウントをやり直しです。

それを考えると、とくに人数の多い家庭では、感染対策(動線分離等)の迅速な導入が本当に重要になります。

さらに、住居内感染対策が難しいご家庭では、濃厚接触者の待機期間は毎日リセットされてしまいます。

PCR検査で陰性だったとしても、検査日以降に新たに感染するリスクが高いのが、家族内濃厚接触の特徴です。

感染しているのなら早く発見してあげることが、家庭全体の感染症管理に役立つだろうと私は思っています。

「PCR陽性」判定を再検査する必要ある?

この時期の日曜日ですから、予想以上に激しい発熱外来でした。

午前中のうちに夕方の予約枠まで埋まってしまい、午後の予約は早々と中止する羽目になりました。

県の新型コロナ感染症相談窓口には、今日はもう紹介をしないでくれと、かなり早い時間帯に連絡しました。

どうしても検査して欲しいと電話してきた方を何人もお断りしなければならず、申し訳ありませんでした。

今日はPCR検査だけでも63人でした。予約電話を全部受け入れていたら100人を超えていたかもしれません。

今日PCR検査をしてくれるのはそちらだけだと聞いた、という方もいて、断るのが辛い一日でした。

相談センターからの紹介なのだからなんとか検査してくれ、という方も、何人もいらっしゃいました。

どうして検査できないのか(こちらは困っているのに)、とお怒りの方も、実は少なくありませんでした。

前にも書いたように、無料PCR検査で陽性だったので検査してくれ、という方の受診が今日も目立ちました。

すでにPCR陽性と判定されたのに、また検査を受けるなど二度手間の極みです。

ところが聞いてみると、無料検査所からの指示で、当院で確定検査を受けるように名指しされたとのこと。

その「確定検査」のために、医療資源(検査試薬と医療費)を費やし、時間を2,3日ムダにするんですよ。

再検査の必要な「PCR陽性判定」など無意味です。陽性判定を出した人が、責任をもって確定してください。

検査キットが足りません

新型コロナのPCR検査や抗原検査を行うための「検査キット」の不足が問題となっています。

医療機関以外の、家庭や事業者等での検査数が増えたことも、その原因のひとつでしょう。

しかしこれは医療機関の負担を減らすための「予備検査」的な位置づけとして、推奨されている面もあります。

「市販の抗原検査で陽性だった」とか「無料PCR検査で陽性だった」と来院する方は、たしかに増えています。

「市販の抗原検査では陰性だったけど」とか「無料PCR検査では陰性だったけど」と言って来る方さえいます。

家庭や事業所レベルで一種の「トリアージ」が行われているわけで、使い方によってはとても有益です。

しかしここまで感染が拡大することを業界も想定していなかったのか、検査キットが足りなくなりました。

地域によっては、発熱外来での検査を抑制、あるいは休止せざるを得ない一大事になっているようです。

当院では、抗原検査キットの在庫にはまだ余裕がありますが、来週以降どうなるかはわかりません。心配です。

さらに今日、検査センターから、PCR検査用の唾液検体採取容器が足りないという連絡を受けました。

医療用の特殊な試薬やキットではなく、単なる容器の不足なのに、PCR検査ができなくなりかねない事態です。

交渉の末、来週までの想定検査数をカバーできる程度の容器は入手できましたが、先行きはまったく不透明。

検査関連消耗品を増産するだけでよいのか、あるいは検査の流れを変えるべきなのか、抜本的対策が急務です。

濃厚接触者の未検査での臨床診断は妥当

平日だというのに、今日も発熱外来受診者が多数いました。

その多くが、同居家族に感染者が出た人たち、すなわち「濃厚接触者」でした。

今週日曜と月曜に当院でPCR検査または抗原検査をした90人のうち28人、約3割が濃厚接触者でした。

その28人のうち検査結果が陽性だったのは11人で、そのほとんど(10人)は発熱等の症状がありました。

一方、検査で陰性だった濃厚接触者17人のうち6人にも、微熱や咽頭痛や咳などの症状を認めました。

有症状の濃厚接触者は16人。新しく示された基準では、その全員を検査なしで感染者と診断できます。

しかし実際には、そのうち6人は、臨床診断によって誤って感染者とみなされてしまうことになります。

さて今日は、30人の方が当院でPCRまたは抗原検査を受けました。家族内の濃厚接触者は11人(36.6%)。

濃厚接触者の割合は、どんどん増えてきている印象です。このうち有症状者は8人。うち1人は抗原陽性でした。

オミクロン株だから濃厚接触者が増えているのではなく、検査を希望する濃厚接触者が増えている印象です。

そして無症状の方よりは、たしかに有症状の方の方が明らかに、陽性率は高いようです。

医療ひっ迫対策としては、有症状濃厚接触者を未検査で感染者とみなすのは、いまは妥当と言えそうです。

たしかに濃厚接触者の検査が多すぎます

新型コロナの感染者数が増える中で、病床だけでなく、検査態勢が熊本でも急激にひっ迫しています。

当院のPCR検査を委託している検査センターも最近はパンク気味で、ついに今夜はトラブって大変な事態です。

当初は、朝11時までの検体提出なら当日夕方に、夕方までの提出なら翌日昼には検査結果が出ていました。

ところが最近は、朝出した検体の結果判明が夜遅くなり、ついに夜中を回るようになりました。

また、夕方提出した検体の検査結果も、翌日夜にやっと判明するようになりましたが、今夜はそれも厳しい。

あまりにも検査数が多くなりすぎたのは、単純に感染者数が増えただけではありません。

感染力が強くてあちこちでクラスターが発生し、家庭内感染も多く、濃厚接触者が増えすぎているのです。

当院でも、陽性診断をした翌日に、その家族が数名まとまって発熱外来を受診するようなケースが増えました。

後藤厚労相は今日、「有症状の濃厚接触者では医師の判断で未検査でも感染が診断できる」方針を示しました。

先日の「<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-3762.html" target="_blank" title="若年層は検査をせず症状だけで診断可">若年層は検査をせず症状だけで診断可</a>」には反対ですが、濃厚接触者なら話は別。賛同できます。

「過剰診断」のリスクよりも、検査や診療の資源を減らす効果の方が、いまは確実に有意義でしょう。

ただ、濃厚接触者本人が、そのような「状況証拠」に基づく確定診断に納得してくれるかどうか。

納得が不十分だと「感染者意識」が希薄で、その後の自粛や隔離が不十分になりはしないかと、心配です。