「HER-SYS」ここらで見直しましょうか

新型コロナ感染者情報管理システム「<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-3797.html" target="_blank" title="HER-SYS">HER-SYS</a>」について、昨夜のNHKが詳しく取り上げてくれました。

その入力項目が多すぎる問題に対して、昨日の田中アナの素直な驚き方はなかなか良かったですね。

今からでも決して遅くないので、HER-SYSは撤廃してシステムをまるっと取り替えていただきたいものです。

かつて<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-3352.html" target="_blank" title="HER-SYSが登場した頃">HER-SYSが登場した頃</a>、「彼女のシス(HER-SITH)? 暗黒面?」などと書いたことがあります。

じつはその時、もう一つ連想していた言葉がありました。不謹慎ながら敢えて書きますが、「はー死す」です。

山口弁では、「はー」はよく使う言葉です。「もう」の意味の副詞です。

「はーやれんいね」(もう、やってられませんよ)のような使い方が一般的です。

なので「はーしす」は、まるでHER-SYSの入力作業の辛さを訴えた「もう死ぬ」に聞こえるのです。

何年も前に、自転車(販売)業界が、「ハース」というキャンペーンを張っていたことがあります。

「Heart(ハート)」+「Earth(アース)」=「Hearth(ハース)」という造語なんだそうです。

ですがCMで流れる音声は、「Hearth」ではなく「Hearse」に聞こえました。これは「霊柩車」の意味です。

思わず、業界の事務局に電話してしまいました。

私「ハース、ハースと宣伝してますけど、ハースって霊柩車の意味です。自転車に使うのはいかがなものか」

業「ハースはハートとアースから作った言葉です」

私「しかしそれなら、語尾は『th』の発音でなければなりませんが、聞いてると『se』の発音ですよ」

業「はぁ?」

てな具合に、噛み合いませんでした。でもその後、いつのまにか「Hearth」は姿を消したようですね。

もしや感染者数が増加に転じてませんか

当院は火曜・金曜が休診日なので、「休前日」の高揚感に浸れるのが、月曜・木曜ということになります。

盆正月を除くと、臨時休診でもしない限り私に「連休」はありません。

たとえば世間で言う「ハッピーマンデー」は、当院では土・日・祝の「3連診」の最終日。疲れ果てる日です。

もう1年半以上「発熱外来」をやっていますが、日曜祝日はいつも、発熱者の受診で大変混雑します。

受診者の多くが、「発熱患者専用ダイヤル」等からの紹介で当院を初受診する、いわゆる「一見さん」です。

近所の方は少なく、いつかまた当院に来る可能性の低い方ばかり。ある意味「一期一会」な方々です。

昨日の発熱外来では、抗原検査を7人、PCR検査は22人に行いました。この29人のうち25人が初診でした。

その抗原検査では2人が陽性、PCR検査では陽性が15人(陽性率68%)と、いまだに高い陽性率です。

何度も書いてきたように、陽性率が高いのは検査数が足りていない証拠。実際の感染者はもっと多いのです。

今日の熊本県の新規感染者数は271人。週のなかで最も数値が減る月曜日としては、約1カ月ぶりの高値です。

東京都でも、3日連続で前の週の同じ曜日を上回る感染確認のようで、全国的に増加傾向かもしれません。

「大型連休の影響はあまり無かった」という分析結果を受けて、人々はますます開放的になっています。

そりゃ私だって、北海道とか沖縄に飛んでいきたいですよ。でもどっちみち連休が取れませんけどね。

この暑い中、防護具を着けて炎天下の駐車場をウロウロするのは地獄。早く終わりにしてもらいたい。

でも東南アジアや沖縄なんかに旅行したら、熱帯の猛暑を楽しめたりするんですよね。どうしてなんだろ。

「みなし陽性」は、判断基準がとても大事

熊本市の今日の新型コロナ新規感染者は217人。このうち臨床診断により届出された「疑似症患者数」は3人。

これは検査をせずに感染者と診断する、いわゆる「<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-3783.html" target="_blank" title="みなし陽性">みなし陽性</a>」例です。だいたい毎日1〜2人程度ですね。

じつは私はまだ、みなし陽性判定は一度もしたことがありません。

もちろん、濃厚接触者でかつ、高熱などの症状がある方には、しばしば遭遇します。

でも、確認のため、やはりPCR検査をします。その結果が出るまでに、半日から長くて2日かかります。

もしも検査をせずにみなし陽性とすれば、その分早く、感染者(ただし疑似症患者)と認定できるはずです。

しかし考えてみると、その少しばかり早い「みなし判定」は、患者さんにとってメリットがあるのでしょうか。

濃厚接触者であればどっちみち、自宅待機が必要です。トータルの待機期間の短縮にはつながりません。

私がよく経験するのは、PCR検査の結果が出た頃にはもう、下熱してとても元気な「陽性者」がいることです。

このような方を「みなし陽性」で済ませていたら、「ホントに陽性だったんですかね」という疑念が生じます。

さらにもう一つ。みなし陽性の過剰診断ともいえる「みなし偽陽性」の問題も、考慮しなければなりません。

<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-3782.html" target="_blank" title="2月にも">2月にも</a>同じことを考えて自験例を集計したら、約半数が「みなし偽陽性」となり得るという結論でした。

その時は、「何らかの症状がある同居家族内濃厚接触者」をみなし陽性とする、やや甘い基準でした。

おそらく、発熱条件を盛り込むなど基準を厳しくすれば、偽陽性は減ると思われます。

いつか時間のあるときに集計して、「正しいみなし陽性を出すための条件」を探ってみましょう。

「健康保険証原則廃止へ」と言うけれど

「マイナンバーカード保険証」の普及がなかなか進まず、政府もあの手この手を繰り出そうとしています。

ついには、「もう健康保険証は廃止するからね。知らんよ」と最後通牒をかまし始めました。

患者側の問題だけでなく、医療機関側の「オンライン資格確認」システムの導入が遅いことが実は問題です。

当院もまだ導入していないので、偉そうなことは言えません。

私は元々、先進システムにはすぐ飛びつくタイプなのですが、当院の電子カルテとの連携に問題がありました。

でもこれは最近解決したようで、そろそろ当院もシステム導入に乗り出そうかと、いま考え始めたところです。

現時点で、オンライン資格確認の運用を行っている医療機関は全体の19%、診療所に限れば13%です。

後藤厚労相は昨日、「令和5年3月末までに概ねすべての医療機関で導入することを目指す」と述べました。

そう簡単に言いますけど、導入にはいろんな問題があるのです。

まず、オンライン資格確認システムに必要な顔認証付きカードリーダーの設置には、数か月かかるようです。

おまけに初期費用が高くつき(補助金の上限を超える)ほか、ランニングコストがかなりかかります。

そこで医療機関へのインセンティブとして4月から、システムを導入した場合は診療報酬が加算されています。

しかしこの加算措置は、結果的に患者負担を増やすため批判が出ており、早くも見直しが検討されています。

新しい医療システムを始める時に、医療機関に設備投資の負担をさせるという発想がまず、ダメだったのです。

医療機関は無料検査所ではありません

くまもと県北病院が、保健所から委託された濃厚接触者のPCR検査について、医療費を誤って請求していた件。

検査料は徴収しなかったものの、初診料などの医療費を請求していたことが問題となっています。

つまりこの病院は本来、委託された「検査」のみを行い、それに伴う「診療」への請求はできなかったのです。

最近は減りましたが2月頃までは、濃厚接触者は原則として全員PCR検査を行うよう保健所は勧めていました。

当時は毎日のように、保健所からPCR検査をするよう言われた方が何人も、当院の発熱外来に来ていました。

ところがその中には少数ですが、会計の段になって「えっ、料金がかかるんですか?」と驚く方がいました。

おそらく保健所は、「PCR検査は無料で受けられますよ」と説明していたのでしょう。

たしかに当院で行うPCR検査は「行政検査」扱いなので無料ですが、初診料などは別途かかります。

しかし保健所の説明では、「完全無料」だと誤解してしまう可能性があったのです。

その反対に、一般の医療機関のように「診療」してしまったのが、今回のくまもと県北病院の誤りなのでした。

となるとポイントは、本件でのPCR検査の「委託料」がいくらだったのかという点ですね。

保険診療でPCR検査をした場合の診療報酬の総額と比べて、格段に低額だったのかもしれません。

病院には委託検査の制度解釈を誤った非があるとしても、低料金で買い叩かれていた背景はないのでしょうか。

それなりのリスクを負って検査を行うのですから、医療行為全体への報酬はキッチリ認められるべきです。

休日の医療・検査体制の充実を

東京も熊本も福岡も、新型コロナ感染者数が2日連続で前の週の同じ曜日(つまり日曜日)を上回りました。

大都市圏と地方都市の感染者数が同じタイミングで増えるのは、本当の感染再拡大とは思えません。

昨日も書いたように、検査体制の不備によって抑え込まれていた感染報告が、連休後にまとめて出ただけです。

と思いたい気持ちとは裏腹に、今日の発熱外来受診者が異常に多かったのは、どういうワケなんでしょうね。

今日は朝9時台には「新型コロナ感染症専用相談窓口」に電話して、当院への紹介を止めていただきました。

残念ながら熊本では、休日診療している医療機関が少なく、当番医でも発熱外来をしないところがあります。

それに加えて、検査会社が休日体制でフル稼働していないので、PCR検査はたいてい休み明けに回されます。

という具合に昨日と同じことをまた書いてますが、それほどまでに私は、休日に弱い医療体制を憂えています。

しかし、検査会社が暦通りに休業するのは、役所や一般企業と同じで職員を休ませる目的があります。

ですが一方で小売店などのサービス業では、休日営業こそが重要で、従業員もそれを理解して働いています。

医療サービスも同じこと。年中無休でフル稼働する検査会社が、市内に1つぐらいあってもいいでしょうに。

それが無理でも、日曜祝日だけ検査をするような、休日に特化した検査センターがあれば、それで十分です。

発熱外来は、来月もやるしかなさそう

熊本市の保健所は最近、無症状の濃厚接触者の積極的なPCR検査を行わない方針に切り替えています。

発症したら検査を考えましょう、という姿勢です。検査態勢のひっ迫を考慮したものかもしれません。

しかしそのおかげで、濃厚接触者の感染の有無が不明のまま、自宅療養が解除されていきます。

遅れて発症した濃厚接触者に遭遇することも多く、検査を抑制することの弊害は、すでに出始めています。

「オミクロン株」の派生型「BA.2」の感染者が、昨日熊本県内で初めて確認されました。

お隣の鹿児島県では、熊本よりも11日早い今月18日に初感染が確認されています。

その鹿児島は、先週から新規感染者数が上昇に転じており、昨日からは2日連続で過去最多を更新しています。

これがBA.2の拡大によるものであるのなら、熊本でも同様の事態が今週末ごろから始まることでしょう。

ちょうど春休み・新年度の人の移動(異動)の多い時期なので、タイミングとしては最悪かもしれません。

感染の再拡大があろうとも、発熱外来の診療報酬は4月から大幅に引き下げられることになっています。

なので当院の発熱外来も規模を縮小しようかなと思っていましたが、しばらくはまだ無理そうですね。

PCR検査の診療報酬に、わずかばかりの救済措置

マンボウを予定通り21日にすべての地域で解除することを、政府は決定しました。

けっして感染が終息したわけではなく、むしろ感染再拡大の懸念の残る中で、あえて舵を切ったわけです。

発熱外来をやっていると、たしかにピークは過ぎたと感じますが、ダラダラと感染者が減らない印象です。

そんな中、4月からPCR検査の診療報酬がほぼ半減するなど、医療機関には大打撃が待ち構えていました。

以前は18,000円だったものが、12/31から13,500円、4月からは7,000円と、大幅に減額される予定でした。

診療報酬と検査用経費の差が医療機関の収入ですが、ヘタをすると赤字になりそうなぐらいの「改悪」です。

このままでは検査すればするほど損をする、ならばPCR検査なんてやめようかという人も出てくるほどです。

そう思っていたら、診療報酬の引き下げが少しだけ、ほんの3カ月間だけ、緩和されることになりました。

4/1から6/30までは8,500円という「経過措置」を、中医協(中央社会保険医療協議会)が提案したのです。

まったくケチな見直しですが、じゃなくて、中医協の皆さまには、格別のご配慮、痛み入ります。

一方で検査センターには、検査委託料のさらなる引き下げをお願いします。

ていうかそもそも、最初から委託料が高すぎたのです。医療機関が利に走っているわけではありませんので。

システムダウンをきっかけに、脱「HER-SYS」へ

「<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-3352.html" target="_blank" title="HER-SYS">HER-SYS</a>(新型コロナウイルス感染者等情報把握・管理支援システム)」が、システムダウンしました。

今日の昼間の出来事です。そのおかげで私の1日は、バタバタでした。

毎週日曜日や祝日には、熊本市内外から当院の発熱外来を受診する方が大勢います。

PCR検査用の検体は、翌日の朝、検査センターに提出し、その結果は夜遅くに判明します。

さらにその翌日の朝から、患者さんに検査結果の連絡を行い、続いてHER-SYSへの入力作業が始まります。

そのHER-SYSがシステムダウンしたので、今日は33件分のPCR陽性者の「発生届」が出せなくなりました。

発生届が提出されなければ、保健所は感染者の発生を正式に受理できず、その後の対応も進みません。

保健所に電話で問い合わせてみると、「こっちもHER-SYSが動かなくて困ってますぅ」という返事。

手書きの発生届が提出された場合、それを保健所の職員がHER-SYSに入力しなければならないからです。

私には、1件当たり10分以上かかる手書きの発生届を、33件分も作成するような時間も体力もありません。

そこで、当院で使ってる自作の患者データベースを改修し、発生届が出力できるようにしました。

この作業に軽く2時間かかりましたが、結果的には、その方が近道だったと思います。

慌てて作ったのでバグだらけで、保健所から疑義照会の電話がかかってきました。申し訳ありません。

でも、さらに修正を加えて完成度が上がりました。次からはバッチリでしょう。

これでもう、HER-SYS入力の必要がなくなりました。今思えば、アレってすごく面倒だったんですよ。

療養解除時の確認検査は不要です

新型コロナ感染から回復した方にとっては、「いつから出勤できるのか」ということが、最大の関心事です。

感染者の、いわゆる「退院・療養解除基準」は、

(1)有症状の場合:発症日から10日間経過し、かつ症状軽快後72時間経過していること

(2)無症状の場合:検査日から7日間経過した時点、ただし途中で症状が出たらその日から10日間

療養解除に際して、解除当日に保健所から電話かSMSが届き、後日「就業制限解除通知書」が郵送されます。

ただし、その「通知書」がなかなか届かない方も多いようで、保健所が言うには、

「非常に感染者が多く、(就業制限解除通知書の)郵送まで2週間~1か月お時間をいただいております」だと。

ここまで遅いのでは、職場復帰時には使えません。おかげで当院などに「診断書」を求める方が出てきます。

あるいは、「自宅療養が終わるんで、確認のためPCR検査をしてもらえますか」という方も目立ちます。

会社等が、PCR検査による「陰性証明」を求めるのでしょうけど、当院でそのような検査は行っていません。

規定通りの療養期間を経過すれば、療養解除時の検査は不要です。証明書等も不要ということになっています。

それに、もしも検査して「陽性」が出たら解釈がヤヤコシイですからね。

というわけで当院では、「自費でもいいから」と言われても、「陰性証明」としての検査は行っておりません。

それは、本当に検査が必要な方に発熱外来の時間を割くためであり、また検査資源の節約のためでもあります。