療養期間の短縮は、さっそく適用開始

「新型コロナウイルス感染症の患者に対する療養期間等の見直し」は、即日適用という異例のスピードでした。

熊本市のサイトも、大慌てで深夜に更新されていましたが、わかりやすく書いてあります。その要点は、

(1)有症状の方:発症の8日後(かつ症状軽快24時間後)に療養期間解除。入院中の場合は11日後。

(2)無症状の方:検体採取の8日後に解除。5日後に検査で陰性なら6日後に解除

(3)濃厚接触者:これまで通り、最終接触の6日後に解除

すぐに思いつく疑問は、(2)の検査の実施と判定は、完全に個人任せなのかどうか、ということ。

この部分に医療機関の関与が必要なのでは「ひっ迫」を助長するだけです。やめていただきたい。

保険金の取扱いも気になりますが、それは市のサイトのQ&Aにも出ていました。

「Q:保険金が10日分もらえなくなるのですか。A:契約されている保険会社に直接お問い合わせください」

市は明言を避けていますが、「みなし入院」期間が短縮されるのだから、保険金の減額は確実でしょう。

保健所に提出する「入院チェックシート」は、「解除予定日」を発症の7日後になるように修正しました。

発症の4,5日後に診断が確定する人もいるので、診断後の療養期間が妙に短くなった印象です。

感染力については完全に「シロ」とは言えないのですが、もうこれが日本の方針なのです。

ただし当院では、発症後2週間以内の方はすべて警戒の対象です。一般待合室への入室はお断りしています。

自宅療養期間7日へ短縮

新型コロナ感染者の自宅療養期間が短縮されます。有症状者は7日、無症状者は5日間になるようです。

方向性としては歓迎しますが、よく考えてみれば矛盾をはらんだ、なかなか難しい方針変更です。

医療現場で、患者さんから尋ねられた時にどのように説明すべきか考えてみました。

自宅療養期間を3日も短縮して大丈夫なのか、感染させたりしないのか、と心配する方に対しては、

「発症後10日間のうち最後の3日間は、ほとんど感染力がないというデータがあるようです」

となると反対に、じゃあ今まではムダに3日間も長く療養させられていたのか、という不満も出そうですが、

「ムダではなく、とても慎重な安全第一の規定だったのですが、もう、その時代は終わったのです」

医学的リスクと社会経済活動までを総合的に考慮すれば、7日間が妥当という結論に至ったのでしょう。

それは今後、さらに短縮される可能性もあるし、いつかは事実上撤廃されることでしょう。

ところで、無症状者の療養期間はかなり短くなりますが、解除前の抗原検査でちゃんと陰性が出ますかね。

感染性の無い実質的な「偽陽性」だとしても、陽性が出てしまったら、けっこう悩ましいことになりますね。

診断したら速攻届出、これが理想なのですが

このところ、少し下火になっていた発熱外来ですが、今日は少々混み合っていました。

そんな診療の真っ最中に保健所から電話あり。新型コロナ感染症の発生届に漏れがあるとの指摘でした。

どうやら、先日届け出た中で、同じ家族のうちの一人のHER-SYSが入力されていなかったようです。

原因不明ですが、届出の途中で何かしら、たぶん私の操作(や記憶)に不具合があったのでしょう。

しばらくするとまた保健所から電話。こんどは、今朝陽性と診断した方の発生届を、至急提出してほしいと。

当院で確定診断した後に具合が悪くなったようで、保健所が動くためには発生届が必要とのこと。

当院では、少ない日で数件、多い日は数十件の発生届を提出しており、膨大な作業量と時間を費やしています。

たとえばHER-SYS入力は、診療日であればその診療終了後から夜中にかけて、まとめて作業を行っています。

本来であれば確定診断後すぐに届け出る必要がありますが、なにしろ件数が多いので、まとめてしまうのです。

しかし、発生届が出ていないと保健所が動けないのであれば、できるだけ早く届け出をしなければなりません。

であるなら、忙しい発熱外来の途中でも提出できるような、徹底的に簡略化した届出の仕組みが必要です。

例えば、1例1分以内で入力できるよう、抜本的なスリム化を図った「新HER-SYS」に期待したいですね。

全数把握は、この際、ヨシとしましょう

新型コロナ感染者の<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-3977.html" target="_blank" title="全数把握の見直し">全数把握の見直し</a>論がここに来て失速し、当面の現状維持を支持する動きが優勢です。

医療機関や保健所の負担軽減よりも、感染者のフォローの方がもっと大事だと気付いたからです。正論です。

全数把握をやめると、もしも報告から外れた感染者が重症化した場合には、対応に問題が生じかねません。

感染者と公的に認定されなければ、公費負担や職場復帰や保険金の手続きなどにも影響するかもしれません。

その「矛盾」に気付いた黒岩・神奈川県知事は、姿勢を一転させて全数把握見直しに慎重な姿勢を示しました。

全数把握見直しの旗振り役が、当初の考えの過ちを潔く撤回することを、はばからなかったわけです。

「HER-SYS入力」などの事務作業が、医療従事者や保健所の負担になっていることは確かです。

だから全数把握を見直すべきだというのは、私も当初はそうでしたが、やや短絡的な発想かもしれません。

感染者に行動制限を課す現行制度のもとでは、役所が感染者を把握してサービスを提供する必要があります。

とくに重症化対策等の感染後のフォローを考えると、感染者の登録は当面は続けておくべきでしょう。

要は、続け易いやり方でやれ、ということです。いま流行の「サステナブル」ってヤツですよ。

HER-SYSは、1人1分以内で入力できるところまでスリム化してほしい。そのかわり当面は、全例報告。

重症例もしくは重症化リスクのあるケースは、別枠で報告する(簡便な)仕組みを、自治体ごとに作ること。

熊本市には、独自の報告書類「入院チェックシート」がありますが、これは全例提出しなければなりません。

HER-SYSが簡略化されようかというのに、この面倒なシートの全例提出って「時代錯誤」じゃないですかね。

新型コロナ自宅療養者の「夜間電話相談窓口」開設

「熊本県新型コロナウイルス感染症自宅療養者等夜間電話相談窓口」が設置され、本日運用が始まりました。

自宅療養者や同居人からの、夜間(午後6時〜午前9時)の相談を受け付ける窓口です。

「熊本県」とは言いながら「熊本市民」は対象外です。熊本市民には別に「熊本市夜間相談窓口」があります。

最近、通常の発熱外来の予約以外に、感染確定者からの病状相談や追加処方依頼などの電話が増えています。

そこで、当院でよくある質問(FAQ)とそれに対する回答例をいくつかご紹介します。

「最初に受診した時よりも熱が上がって来たのが心配」

軽症のうちに診断を受けた方に多い質問です。発症の2,3日後に熱のピークが来るのは、よくあることです。

「39度の高熱が3日続いているが、大丈夫か」

最近の新型コロナ(BA.5?)は、高熱が続く方が多いです。明日までに下熱しなければご相談ください。

「のどが痛すぎて水も飲めない」

解熱鎮痛剤を使って、痛みが和らいだタイミングで飲食をするのがよいです。強い痛みも2,3日で終わります。

「家族は検査を受けなくてもよいのか」

無症状のうちは、検査はなるべく控えてください。しかし発熱したら早めにご相談ください。

「咳が出始めたので薬がほしいが、受診のために外出しても良いのか」

受診のための外出は、自宅療養者でも制限されていません。遠慮せず来院してください。もちろん予約の上で。

「全数把握」見直しへ

新型コロナ感染者の「<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-3953.html" target="_blank" title="全数把握">全数把握</a>」の見直しが決まりました。

「発生届」は、高齢者や重症化リスクの高いケースなどに限定して、自治体が判断する運用となる方向です。

ただし、感染者数の把握だけは、続けられるようです。

「<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-3961.html" target="_blank" title="HER-SYS">HER-SYS</a>」はすでに入力項目がかなり減っており、しかも私は自主的に「超簡略入力」をしています。

かつては1人当たり10分以上を要していました。30人分以上入力するときには、ほぼ半泣き状態でした。

いまは1人2,3分程度です。一気に44人とか46人分入力した日もありますが、2時間そこそこで終わりました。

この程度なら続けてもいいと思っていた矢先なので、今後は全例入力不要と言われてもさほど感動しません。

後々のフォローの余地を残すためにも、名前と電話番号と発症日ぐらいは全例登録しても良いと思います。

とはいえ現時点でも、本当の意味での「全数把握」ができているかどうかは疑問です。多分、できてない。

無症状感染者が多いことに加えて、発熱外来が混み合いすぎて検査が間に合っていません。

最近は、「会社からPCR検査ではなく抗原検査をするように言われた」という来院者も目につきます。

「早く白黒つけてこい」という意味なのでしょう。偽陰性の可能性はあまり考慮していないようです。

ひとたび抗原検査で陰性と出れば、病状がどうであれ、とくに若者にはPCR検査を受けない方が多いです。

一方で高齢の方はたいていPCR検査を希望されます。そのような方は大切にフォローしなければなりません。

感染者「二重カウント」のニアミスなら、よくある話

連日のトップニュースだった「コロナ」も、いまは「豪雨」や「五輪汚職」や「統一教会」に負けています。

しかし感染者数は過去最多クラスが続いているし、病床ひっ迫も改善していません。

さらに最近は「全数把握」や「HER-SYS」といった発熱外来に関わる問題も、クローズアップされています。

今日の熊本県の新規感染者数は4,254人。二重にカウントされていた4人が累計から除かれたとのこと。

二重カウントなんてどういうことだと思うかもしれませんが、あり得ることです。考えられるパターンは、

(1)ひとつ医療機関が、1人の感染者の発生届を2度提出した

(2)複数の医療機関が、1人の感染者の発生届をそれぞれ提出した

たとえば、FAXで発生届を提出した医療機関は、後日あらためてHER-SYSも入力することになっています。

これをやると、すべての届け出がダブるのですが、保健所が全部チェックして二重カウントを防いでいるとか。

他院での抗原検査で陽性だったことをハッキリ言わず、なぜか当院でPCR検査を受ける方も時々います。

検査結果を電話報告したときになって、実はコレコレという話になり、当院からの届出はストップします。

当院のPCR検査の結果が待ちきれず、他院で抗原検査を受ける方もいます。

これもPCRの結果を電話連絡した際に、実はもう陽性が出たのです、という話になります。

そのように、最終的に二重カウントを防ぐことができればよいのですが、必ずしもそうとは限りません。

他院から届出が出てますので先生の方は取り下げてください、と保健所から指示されたこともありました。

現状の方法での全数把握は、関係者の疲労とストレスの原因にしかなりません。やり方、変えましょう。

抗原検査キットの無料配布始まる

新型コロナ抗原定性検査キットの無料配布が、熊本市でも今日から始まりました。「協力薬局」で配布します。

もしも陽性だった場合、本人が保健所へ陽性者申請を行い、保健所が陽性者登録をすることになります。

無症状や軽症の場合には、医療機関を受診することはありません。

医療機関への抗原定性検査キットの配布も行われています。医療機関の判断で、必要な患者に供与します。

このキットを使った陽性判定者については、医療機関が陽性者登録(発生届)を行うことになります。

当院では、おもに検査結果を急ぐケースで使おうかと考えています。つまり重症化リスクのある方です。

一方で薬局での無料配布は、重症化リスク因子がない16歳以上40歳未満の有症状者が対象です。

無症状の感染者は抗原検査で偽陰性となりやすいため、今回の無料配布も対象外とされています。

基礎疾患がある方や妊婦の場合も対象外。これはちゃんと医療機関を受診してくださいよ、ということです。

無料配布を受けられるのは1人1回だけ。配布期間は今日から9月3日まで。あと2週間しかありません。

協力薬局は限られ、市内にたったの21カ所。しかも1薬局の1日あたり配布数は、わずかに25個程度。

この程度の配布規模で、発熱外来のひっ迫を軽減する効果があるんですかね。焼け石になんとかじゃないの。

抗原検査キットのネット販売解禁と医療機関への配布開始

新型コロナウイルスの「抗原定性検査キット」のネット販売が、解禁されることになりました。

薬局での販売はこれまでも認められていましたが、それは薬剤師が使用方法を説明することをが条件でした。

ところが今後は、対面での説明なしに、ネットで誰でも簡単に買えます。

せいぜい、通販サイトの画面上での説明に対して、「了解」ボタンを押すことが求められるぐらいでしょう。

もともと「偽陰性」が出やすい検査法ですが、検査手技が悪ければなおさら、検出感度は下がります。

その陰性判定を鵜呑みにして油断してしまうと、もしも偽陰性なら感染拡大につながってしまいます。

さらに重要なのは、陽性だった場合にどうすべきか。「感染者」としての対処や療養のルール作りです。

陽性者が「確定診断」のためにいちいち医療機関を受診するようでは、意味がありません。

健康フォローアップセンター(陽性者登録センター等)による健康観察が受けられる体制整備が必要です。

一方で、医療機関が発熱外来等で使う抗原検査キットが入手しにくいことが、最近問題となっています。

そこで、医療機関等への抗原検査キットの配布が始まりました。当院も本日、医師会から配布を受けました。

このキットは、PCR検査希望者に順番待ちの自家用車内で使ってもらうことを、当院では考えています。

とくにに、高齢者や重症化因子を有する方などには、PCR検査の前に試みる価値はありますね。

陽性なら、新型コロナ治療薬(ラゲブリオなど)をすぐ処方することができます。これは大きなメリットです。

なお、入手したキットの数が限られているので、一般の希望者に配布するわけにはいきません。悪しからず。

「水際対策」撤廃までの過渡期か

日本はまだ、コロナの「水際対策」をやってます。入国(帰国)前の「陰性証明」をキッチリ求めています。

でも海外はもう、入国者の検査や接種歴なんて、全く気にしてませんからね。

いま新規感染者が世界最多の日本が、海外からの感染者流入阻止に躍起になってるのって、おかしな話です。

そんな日本ですが、ようやく今日、入国者に関しての厚労省の規定が、次のように緩くなりました。

「日本から外国へ短期渡航する者が、日本出国前に日本で取得した検査証明書については、外国を出国する前72時間以内に取得(検体採取)したものである場合には、日本への帰国(再入国)に当たって有効な検査証明書として取り扱います。」

これまでは、海外を出国する前72時間以内の「渡航先で発行された」陰性証明が必要でした。

それが今後は、日本出国前の検査結果でも制限時間内なら、再入国時の証明として有効となったわけです。

つまり、短期の渡航である場合は、渡航先でコロナに感染する可能性についてはもう考えないということです。

これはまた、ずいぶん緩い水際対策になったものですが、ともかく短期渡航者にとっては朗報です。

実は私も、このことは以前から気になっていました。私の休暇は短いので、渡航はいつも短期だからです。

例えば3年前のシンガポール旅行は、8/13に熊本を出て8/15には熊本に戻るという強行軍でしたから。

でも、日本出国前の陰性証明で渡航後の再入国を認めたのでは、もはや水際対策の体を成していませんけどね。

この分だと、もう近々、水際対策は撤廃されそうです。