コロナもインフルも、また増え始めたかも

コロナは1月末、インフルエンザは2月上旬をピークに、徐々に減りつつあります。いや、減りつつありました。

これは全国的にも、熊本でも、そして当院の発熱外来でも、おおむね同じ傾向でした。

ところが今日の発熱外来では、コロナ検査20人中の陽性10人、インフルは26人中11人と、増加に転じました。

陽性者の絶対数も陽性率もともに増えたことは、コロナ禍で何度も経験したように、流行拡大の兆候です。

とくに今日は、コロナとインフルの両方とも陽性だった「重複感染」の方が2人いました。

この2人の共通点は、小児、39度台の熱、周囲にインフルいるがコロナはいない、コロナ罹患歴あり、の4つ。

通常なら、インフルエンザの検査だけをするようなケースです。

それなのにコロナも検査した理由は、保護者のの強い希望があり、小児なので窓口負担が少ないこと、の2つ。

同様に、周囲に溶連菌感染者がいるけどインフルも検査したら、インフルと溶連菌感染の重複感染でした。

これは、突然高熱が出たことと、咽頭発赤が軽すぎる点が気になったゆえの検査でした。

つまり、疑わしい順に1つずつ検査していたら、2つめの感染症には気付かないかもしれないということです。

複数の感染症が同時に流行している場合は、このような点に気をつける必要があります。まさに今がそうです。

日曜日には「アリナミンVドリンク」

診療日に私は昼食は摂りませんが、日曜に限っては、気合い入れのためにドリンク剤を飲んだりします。

過去にはリポビタンやユンケルなども試しましたが、いまのお気に入りは「アリナミンVドリンク」ですね。

飲んだ後、口腔・鼻腔からマスク内に広がるニンニク臭が、なんともたまりません。

ところで、最近TV-CMを見ていて気になるのは、「アリナミン」のアクセントです。

以前はたしか、「ウクライナ」とか「エベレスト」と同じく、「中高型」だったと思います。

ところが今は、「ドラえもん」と同じアクセント。いつのまにか「平板化」しているんです。

アリナミンの製造販売元は、かつての「武田薬品工業」から、いまは「アリナミン製薬」に変わっています。

武田の子会社が3年前に米投資ファンドに売却され、アリナミン関係はすべて、武田の手から離れました。

その「移管」に伴って、アクセントまで移動したのか。いやしかし、固有名詞のアクセントまで変えますか。

そういえば最近、「救心」のCMもよく目にします。動悸・息切れに効くという、昔からある薬ですね。

高血圧などで通院中の方から、動悸があったので救心をを飲みました、という報告を受けることがあります。

なんだかなぁ、て感じですが、それなりに効いたりします。プラセボ効果だけではなさそうです。

救心の重要な成分は「蟾酥(せんそ)」という生薬で、「ジギタリス」に似た「強心配糖体」です。

これは、ある種のヒキガエルのイボイボから分泌される毒素。いわゆる「がまの油」なんですね。

毒も適量飲めば薬ってことに気付いたとしても、そのイボイボ分泌液を最初に飲もうと思った人がすごい。

コロナ「第10波」に突入か

長く休診していたので、薬が切れた生活習慣病の方もいらっしゃったようで、申し訳ありませんでした。

早めに告知はしていたつもりですが、十分ではなかったようです。

それにしても、久しぶりに「現場復帰」してみると、新型コロナが増えてますね。

コロナ検査7人中の陽性は5人(陽性率71%)、一方でインフルは8人検査して陽性2人(25%)。

今日は発熱外来に割いた時間が短かったので、この程度でしたが、たぶん陽性者はもっと多いはずです。

当院の発熱外来でコロナ陽性者がインフル陽性者を上回ったのは、かなり久しぶりかもしれません。

それに今日は、コロナとインフルの重複感染や、コロナとアデノウイルスとの重複感染者もいました。

このような事例が出るのは、経験上、コロナの陽性率が高いときの特徴です。

コロナの定点あたり報告数は、全国では11月中旬、熊本でも11月下旬以降は再上昇に転じています。

その推移をグラフにすれば、明らかに「第10波」が立ち上がろうとしています。

発熱者の受診率やコロナ検査率が明らかに低下しているいま、感染者の実数はもっと多いと考えられます。

今日のコロナ陽性者5人のうち4人は、周囲に発熱者等はいるがコロナはいない、という方でした。

重複感染の2人も、インフルとかアデノだけ先に検査していたら、コロナは検査しなかったかもしれません。

ですが、病状から何か怪しさを感じたら、念のためコロナの検査をしてみるのが、いまの私のスタンスです。

バンジージャンプ直後の急死の原因は?

バンジージャンプ後に、50代の男性が急死した事故(事件?)。呼吸が荒くなり、心肺停止したとのこと。

記事には詳細が書かれていませんが、ジャンプ直後の「息切れ」をヒントに、病状を推測してみます。

意識障害その他の神経学的異常についての記載が無いので、おそらく「脳血管障害」ではなさそうです。

胸痛や背部痛を訴えたという話も出てないので、「急性心筋梗塞」とか「急性大動脈解離」でもなさそうです。

病歴不明ですが肺炎や喘息の疑いはなさそうで、死因はおそらく「急性心不全」か「致死性不整脈」でしょう。

私はその中でも、もしかすると「急性右心不全」かもしれないと考えています。

昔、大学病院に勤めていた頃、高いところから飛び降りた直後に急性右心不全になった症例を耳にしました。

着地した衝撃で、心臓の「三尖弁」の「腱索」が断裂し、「三尖弁閉鎖不全」が起きたということでした。

このような「外傷性三尖弁閉鎖不全」は、ベテランの心臓外科医ならたいてい見聞きしたことがあるはず。

「三尖弁」は右心房と右心室の間の弁で、右心室が血液を肺へ拍出する際に右心房への逆流を防ぎます。

心臓の拡張期に大きく開き、全身の静脈血を右心房から右心室へと緩やかに招き入れます。

ちょうどその時にからだに強い加速度や圧力が加わると、三尖弁が大量の血液の流入によって圧迫されます。

その急激な負荷に耐えきれずに、三尖弁を支えているヒモ状の組織「腱索」が断裂してしまうわけです。

交通事故や墜落事故のときに、腱索断裂が起きることがあるとされています。

腱索が切れると、心臓が収縮したときに三尖弁がうまく閉じなくなり、弁の逆流が出てきます。

この「三尖弁閉鎖不全」は、腱索断裂以外にも様々な原因でが起きますが、通常はゆっくり進行するものです。

しかし、もしも断裂した腱索の本数が多くて、突然高度な逆流をきたすと、急性右心不全が起きるでしょう。

右心室から肺へ突然血流が送られにくくなり、ちょうど肺塞栓と同様に、息切れが起きるはずです。

と、考えてみましたが、詳細な報道がないので答え合わせができません。あくまで個人の推測ということで。

タミフルを飲まなくてもインフルエンザは治る

10月になり、新型コロナウイルス感染症の診療が少し、変わりました。

たとえば、当院でも処方してきたコロナ治療薬の「公費支援」が、「全額」から「一定額のみ」になりました。

自己負担の上限額は、3割負担だと9,000円です。これまで自己負担ゼロだったので、その差は大きいですね。

もともと10万円近い薬なので、最終的に公費負担がなくなれば、自己負担が約3万円になる日が来ます。

この高額な自己負担を考えると、今後この薬を希望するのは、1割負担の方だけになりそうです。

一方で、インフルエンザが陽性の場合には、タミフルなどの抗ウイルス薬を希望する方がほとんどです。

皆がタミフルを飲んでいるので自分も飲む。元気でも飲む。いかにも日本的な、言うなれば反射的同調ですね。

その結果、世界中のタミフルの75%を日本が消費しているという、驚くべきタミフル愛好国になっています。

ところが今シーズンは、インフルエンザの陽性者でも、タミフルなどの処方を希望しない方が目立ちます。

ひところ騒がれた「異常行動」(ただし濡れ衣)を恐れているのではなく、薬を必要とは思わないようです。

想像するに、新型コロナを特別な治療薬も飲まずに治した経験が、その方にはあるのかもしれません。

そうなのです。インフルエンザに罹ったからといって、必ずしも抗ウイルス薬を飲む必要はないのです。

タミフルなどは、高齢者や基礎疾患のある方などが限定的に使う薬だと、そろそろ考えるべきかもしれません。

流行の主役はインフルエンザへ

新型コロナウイルスの感染者は、少なくとも検査で陽性と判明する方は、目に見えて減っています。

毎日の発熱外来ではその代わり、コロナの陽性者が減った分以上に、インフルエンザが増えています。

熊本市のコロナの定点あたり報告数は、先週(9/18〜24)ついに10人を下回り、9.12人となりました。

一方でインフルエンザの報告数は、先週9.96人にまで増え、もう「注意報レベル(10人以上)」は目前です。

つまり先週は、流行の主役がコロナからインフルに入れ替わった、転機だったと言えるかもしれません。

おそらく今後は、コロナはいったん収束し、インフルエンザが爆発的な流行に向かうんでしょうね。

多くの人のインフルエンザの免疫力が低下しているのに、人々はウィズコロナを謳歌しようと開放的です。

なのでせめて、ワクチンだけは打ちましょう。コロナはともかく、インフルエンザは打ちましょう。

当院でも来月からインフルエンザワクチンの接種を始めますが、予約サイトの予約枠は、すでにほぼ満杯です。

私も来週中には、接種しようと思っています。でもその前に明日、コロナの7回目を接種する予定です。

インフルエンザワクチンの接種回数については、今シーズンは柔軟に対応したいと私は考えています。

本来、12歳以下は2回、13〜64歳は1回または2回、65歳以上は1回、という規定がありました。

ところが近年のワクチン不足を受けて、13歳以上は原則1回のみ、というルールになってしまいました。

その理由として国は、13歳以上はすでにある程度の免疫を持っているから、という理屈を付けました。

しかしいま、多くの方の免疫が低下している上に、さいわいにもワクチンの供給量は例年より多いようです。

ならば今期は、被接種者の希望があれば、13歳以上でも65歳以上でも!、2回接種を認めてもらいたいですね。

「糖尿病」改め「ダイアベティス」?

<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-4053.html" target="_blank" title="「糖尿病」">「糖尿病」</a>という病名を別の呼称にしようという動きの中で、「ダイアベティス」案が出てきました。

高血圧症や脂質異常症にならって、高血糖症や耐糖能異常症になるかと思ってたけど、違いました。

糖尿病の英語名「Diabetes」を、そのまま日本語読みして「ダイアベティス」ということですか。

これまでも、医療者同士で「ディアベ」なんて言ったりしてたので、馴染みはあります。

でも、英語の発音 [dàiəbíːtis] にできるだけ忠実にカナで書くなら、「ダイアビーティス」ですけどね。

この英単語で重要なのは、「ビー」の部分にアクセントがあるということです。

アクセント部分の発音の正確さは、それが相手(ネイティブ)に通じるかどうかに大きくかかわります。

その、いちばんだいじな部分を「ビー」と言わずに「べ」と発音して、果たして通じるのでしょうかね。

いや、たぶん、ダイアベティスというのは、英語を参考にして作り出した、新しい日本語なのです。

日本語なので、外国人に通じるかどうかは関係ありません。とにかく「糖尿病」をやめたいのです。

糖尿病治療に関わっている外資系企業の、日本法人の関連事業部の名称にも違いがあって、面白いですね。

・日本メドトロニック株式会社ダイアビーティス事業部

・アボットジャパン株式会社ダイアベティスケア事業部

メドトロニックが原音に忠実なのに対し、アボットは敢えて日本風です。本社の親日度の違いかもしれません。

第9波の次には、第10波が来るでしょう

一昨日放送されたRKKの『週刊山崎くん』で、当院のお隣の「味のまつり家食堂」が紹介されていました。

録画(全録)したものを今日見たら、当院の建物が見事に何度か映り込んでいましたね。

収録当日(先月)、私は発熱外来の合間に屋外をウロウロしたのですが、残念ながら映っていませんでした。

さて、コロナです。熊本県の毎週の「定点あたり報告数」の推移は、7/31-/6の週から8/28-9/3の週までに、

24.66→22.41→16.43→16.60→15.54→17.84と、いったん減っていたのに、いまは上昇に転じています。

同様の状況は東京でも全国でも見られ、ほとんどの地域でコロナ感染者数が再び増えつつあるようです。

この報告数は、第8波のピーク時の約3分の2に相当します。つまりいま「第9波」真っただ中ということです。

当院の発熱外来の、最近の日曜日の「陽性者数/コロナ検査数(陽性率%)」の推移は、

14/23(60.9)→13/23(56.5)→休診→15/27(55.6)→13/27(48.1)→12/20(60.0)、でした。

検査数がやや減り、しかし陽性率が高いのは、疑わしい人に絞って検査しているからかもしれません。

いま、新型コロナウイルスの新たな変異株「BA.2.86(通称ピロラ)」が、世界各国で報告され始めました。

突然変異箇所がとても多く、過去のワクチンがあまり効かないため、感染急拡大が懸念されています。

いったいコロナって、いつかは収まるんでしょうかね。それとも永久に、新たな波が来続けるんでしょうか。

コロナ禍後の「RSウイルス感染症」大流行

「RSウイルス感染症」が流行しています。乳幼児が罹ると重症化することもある、呼吸器感染症です。

高熱とひどい咳が特徴的で、2019年までは毎年、秋口から流行する感染症でした。

ところが2020年は、からっきし、流行しませんでした。コロナ対策が奏功したのだろうと考えられました。

ところがその翌年、2021年は、例年よりも早い夏場に大流行しました。

前年に流行しなかったために子どもたちの免疫が低下していたため、翌年流行したのだと考えられました。

その大流行のおかげで免疫が付いたのか、2022年は例年程度の流行におさまりました。

しかし今年、再び2021年並の大流行が始まっています。

これは子どもたちの免疫低下だけでは説明できません。やはり「ウィズコロナ政策」が利いているのでしょう。

「園でRSが流行っているので、検査してほしい」というお子さんが、毎日のように来院されます。

ですがこの検査の保険適用は、外来では、RSに罹ると重症化しやすい0歳児に限られます。

なので1歳以上のお子さんの検査は、当院では原則として行っていません。検査はほぼ、お断りしています。

一方で0歳児の場合は、熱や咳の状態や状況を考慮して、念のためRSの検査を行うことが増えています。

RSウイルスの検査の保険適用と検査の可否については、<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-3458.html" target="_blank" title="以前も書いたように">以前も書いたように</a>、釈然としない実情があります。

ですがどっちみちRSに特効薬は無く、RSであろうとなかろうと、治療は病状に応じて行うのみです。

長い目で見て、まだコロナは流行の真っただ中です

毎日毎日、当院の発熱外来を受診する発熱者のうちの何割かは、コロナ陽性です。

でも高熱でも検査は希望しないし、そもそも感染症とさえ思っていない方がいます。気持ちはわかります。

「たぶん疲れだと思うんです」

「エアコンが効きすぎてたんですよね〜」

ワクチンの副反応や熱中症などでもない限り、発熱は何らかの感染症を疑うサインです。

疲れやエアコンの効きすぎで体力・免疫力が低下したことによって、感染症を発症したと考えるべきでしょう。

「ウイルスとかじゃないと思うんです」

新型コロナのおかげで「ウイルス感染」が嫌われています。ウイルス=コロナ、の雰囲気なのでしょう。

ですが、ウイルスでなければ細菌か、別の病原体による感染症ということになって、逆にややこしいです。

普通の風邪はおおむねウイルス感染です。そして新型コロナも、言うなれば新種の風邪です。

コロナ禍当初から、コロナなんてただの風邪だと言う人がいましたが、しかしそれは少し違います。

ウイルスが人類に馴染んで弱毒化し、また多くの人々にある程度の免疫ができるまでは、油断はなりません。

変異が激しいので、今後何度も流行再拡大を繰り返し、場合によっては再強毒化する可能性もあります。

感染者の全数がわからなくても、重症化率や死亡率は工夫して評価していかなければなりません。

まだポストコロナではありません。あくまでウィズコロナです。普通の風邪扱いするのはまだ早いのです。