インフル情報まとめ

インフルエンザは全国で、とくに西日本で、なかでも九州で、大流行しています。

当院でも初診だけで毎日10人から20人、多い日は再診も含めると50人以上がインフルエンザの患者さんです。

そこで今日は、日頃の診療で患者さんからよく聞く質問や誤解について、まとめておきます。

「マスクは意味ないとテレビで言ってたが、どうなの?」

私は使っています。いつも患者さんの咳を浴びているからです。たびたび手洗いもします。これも大事です。

一般の方は、少なくともインフルエンザに罹った本人は、感染拡大を防ぐためにマスクを装着しましょう。

「38度を超えなかったので、インフルエンザじゃないと思ってました」

私の印象として、インフルエンザの方の2,3割は、熱が38度を超えません。1割ぐらいは37.5度も超えません。

すぐ下熱して元気なので、受診せず登園・登校したお子さんの中には、インフルエンザの方もいるでしょうね。

「B型は軽いと思ってたのですが」

ほぼ、都市伝説です。熱の高さや倦怠感の強さは、A型かB型かよりも、個人差の方がよほど大きいようです。

とくに今年は、B型に胃腸症状(嘔吐・下痢)を伴うケースが目に付きます。結膜炎や中耳炎も見かけます。

「先月A型に罹ったのですが、こんどはB型に罹ることもあるのですか?」

12月のデータでは、ざっとA(H1)pdm09が6割、A(H3)(いわゆるA香港型)が1割、B(山形系)が3割でした。

A型とB型が拮抗している今期は、その両方に罹る可能性があります。とくに今月はB型が増えてますね。

「いまからワクチンを打っても、もう間に合わないでしょう?」

間に合います。すぐ接種しましょう。すでにA型かB型の一方に罹った方でも、まだ接種する意味はあります。

ワクチンの効きにくいA(H3)の割合が少ないので、今年は予防接種の効果は高いと思います。

今シーズンは、ワクチン不足のせいで未接種の方が多いのが問題です。早い流行と関係があるかもしれません。

睡眠薬と夢

医学賞のひとつ「ベルツ賞」は、「睡眠制御とその障害の研究」により、筑波大の柳沢教授が受賞しました。

柳沢氏は、人間はなぜ眠くなりどうやって覚醒するのか、その分子機構を究明しました。

これまでの人生で私は、不眠で悩んだことがありません。悩みで眠れなかったことなら、何度もありますが。

脳の興奮を抑え込む「GABA受容体作動薬」が、これまでの睡眠薬の主流でした。もちろん今でも主流です。

ところが最近、まったく作用機序の異なる睡眠薬が、2つ登場しました。

夜になると眠気を催し、朝になると目が覚めるのは、メラトニンというホルモンの働きによるものです。

7年前に発売された「メラトニン受容体作動薬」は、この概日リズムのずれ補正しようという睡眠薬です。

夜型生活等でリズムが乱れた体を、徐々に正常化していく薬と考えてもよいでしょう。商品名は『ロゼレム』。

脳の覚醒を保持する働きをしているオレキシンという脳内物質を、冒頭に紹介した柳沢氏が発見しました。

3年前に発売された「オレキシン受容体拮抗薬」は、脳の覚醒をブロックして眠気スイッチを入れる薬です。

夜に目が冴えて眠くならない人には、この作用機序の薬がうってつけでしょう。商品名は『<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-1977.html" target="_blank" title="ベルソムラ">ベルソムラ</a>』。

という具合に、理想的にも思える睡眠薬が次々に発売されたのですが、その効果には個人差が大きいのです。

よく効いた方は喜んでくれますが、作用が弱いとか、副作用を嫌って服用を中止する方も少なくありません。

ロゼレムやベルソムラを飲んで、怖い夢を見たとか、変な夢を見たという人がときどきいます。

他の睡眠薬や<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-444.html" target="_blank" title="禁煙補助薬">禁煙補助薬</a>などでもあり得る副作用ですが、ロゼレムやベルソムラで、わりとよく聞きますす。

睡眠が改善して、夢をよく見るようになっただけかもしれません。<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-469.html" target="_blank" title="夢好き">夢好き</a>の私としては、興味ある副作用です。

抗生剤使用法の反省

「安易に抗生剤を処方しない」「普通の<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-285.html" target="_blank" title="風邪に抗生剤は効かない">風邪に抗生剤は効かない</a>」

このことは当ブログにも何度か書いてきました。しかし最近、あらためて反省させられる出来事がありました。

他院の先生から、当院を含めた医療機関における抗生剤の使い方への、疑問の声を頂戴したのです。

そのことを、当院かかりつけの患者さんが、匿名の手紙で知らせてくれました。ありがたいことです。

安易な抗生剤の使用がもたらす耐性菌の増加という弊害は、感染症治療においてきわめて憂慮すべき問題です。

抗生剤使用の是非は、病状経過を慎重に観察し、血液検査やその他の検査を踏まえて判断するのが本来です。

とくに、小児用としては最強の抗生剤<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-1988.html" target="_blank" title="オゼックス">オゼックス</a>は、その安易な使用は厳に慎むべき薬です。

しかしながら、目の前の患者さんの病状によっては、やや見切り発車的に抗生剤を選択するケースもあります。

前にも書いたように、従来からマイコプラズマ肺炎によく使う抗生剤が、今年はほとんど効きませんでした。

そんな時、切り札としてオゼックスに切り替えたところ劇的に著効したケースを、何度も経験しました。

やがて、しつこい咳と高熱が続いたら、ついつい最初からオゼックスを選択するようになったかもしれません。

このような処方のやり方は、科学的ではありません。おおいに反省しなければなりません。

そこで今後は、以前よりも我慢強く病状経過を観察し、必要な検査があれば繰り返し行う方針としました。

抗生剤を処方する場合にも、耐性菌を考慮した薬剤選択を意識しなければなりません。

開業しておよそ10年になりますが、順調な経過よりも、手こずった患者さんの記憶の方が強く残っています。

早く抗生剤を出しとけばよかったと、後悔したケースも多数あります。

病態を正しく判断して適切な抗生剤を良いタイミングで使うということが、実はとても難しいのです。

真夏にRSウイルス感染

寒くなってから出てくる「RSウイルス感染症」が、真夏のいま流行しています。当院でも最近目立ちます。

高熱、ひどい咳、ゼーゼーいう、ぐったり、2歳未満、このうちいくつかに該当すれば疑いは強いです。

顔色が悪く、お腹がへこむような呼吸をして、身近にRSウイルス感染者がいたともなれば、ほぼ確実です。

必要に応じて吸入や点滴を行い、風邪薬に気管支拡張剤や抗アレルギー薬も加えて処方します。

チアノーゼや喘鳴が吸入で改善しない赤ちゃんは、病院を受診してもらうことになります。

そのような重症例では、確定診断のために鼻腔ぬぐい液を採取して、迅速検査を行う場合があります。

逆にそれほど重症でもないお子さんでは、RSウイルス感染かどうかの検査は必要ありません。

RSウイルス感染であろうとなかろうと、治療方針には何の違いもないからです。

ところが、「保育園で検査するように言われたので、検査して欲しい」という方がとても多くて困ります。

明らかにRSウイルス感染症ではなさそうな方まで、「念のため」検査を希望するのです。

残念ながら、<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-427.html" target="_blank" title="RSウイルスの検査">RSウイルスの検査</a>が保険適応となるのは、外来診療においては原則として0歳児だけです。

1歳以上の方にこの検査を行うと、保険がきかないので、自由診療となります。

保険診療と自由診療を併用することを<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-965.html" target="_blank" title="混合診療">混合診療</a>といい、混合診療は原則として禁じられています。

どうしてもRSウイルスの検査をするなら、一連の診療はすべて自由診療とみなされ、全額自費になります。

「そこまでして検査する必要はないと思いますよ、治療内容は同じですから」というのが私の説明です。

それ、弁膜症かも

最近テレビを見てて思わず吹き出したのが、ACジャパンの支援キャンペーンの、「日本心臓財団」のやつ。

「心臓弁膜症」について啓蒙する、コントのようなCMです。見てない方はぜひ、ネットでご覧ください。

登場人物は、上杉謙信と武田信玄。声の出演はサンドウィッチマン。

「息切れするし、もう年だわ」と嘆く謙信に、「弁膜症のせいかもよ」と信玄。

「ちょっと何言ってんのか、わかんないけど」という謙信の反応は、富澤たけしのお決まりのセリフですね。

たしかに「弁膜症」という聞き慣れない病名の登場が唐突なので、視聴者も「何それ?」ってなりそうです。

まあそのような疑問を抱かせることができれば、このCMも成功したと言えるのかもしれません。

ただしCMには時間が足りなくて、「弁膜症」自体の説明がほとんど、ていうかまったくありません。

結局言ってることは、「息切れが気になったら病院へ」ということ。

最後に、信玄が「高齢者に進言を!」、謙信が「早めに検診を!」というダジャレで締めくくります。

今でこそ、心臓病の代表と言えば、狭心症・心筋梗塞のような虚血性心臓病。次が不整脈かもしれません。

しかし弁膜症も意外に少なくはなく、息切れの原因は弁膜症かもしれませんよと、CMが訴えるわけです。

私が研修医の頃は、「心臓弁膜症」と「先天性心臓病」が、二大心臓病とも言えるものでした。

そのころの心臓手術症例のほとんどが、このいずれかでしたが、とくに多かったのは弁膜症でした。

しかも心臓弁膜症のほとんどが「リウマチ性心臓病」で、その多くが「僧帽弁膜症」でした。

若い医師の方には想像もつかないでしょうけど、昭和の時代はリウマチ性心臓病がとても多かったのです。

そのリウマチ性心臓病の原因は、<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-2055.html" target="_blank" title="溶連菌感染症">溶連菌感染症</a>です。いまでも日常的によく遭遇する、子どもの病気です。

今日1日だけでも、新患4人、再診7人の、溶連菌感染症の患者さんが来院しました。それほど多いのです。

さいわい、いまは有効な抗生剤治療があるので、溶連菌感染者が将来弁膜症になる可能性は低いでしょう。

ACジャパンが啓蒙している弁膜症は、実際のところリウマチ性以外のものが多いかもしれません。

でも私は弁膜症と聞くと、リウマチ性の僧帽弁膜症の、再手術・再々手術で苦労した時代を思い出すのです。

夏のノド風邪

インフルエンザが、いまだに出ています。そこそこ流行している学校もあるようで、驚きます。

しかし一方では、夏っぽい感染症も流行し始めました。ノドに来て高熱が出るものが多いようです。

最近とくに多いのが、「<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-793.html" target="_blank" title="アデノウイルス感染">アデノウイルス感染</a>」。

のどの奥や扁桃腺が赤く腫れます。高熱が続く割に元気。結膜炎を伴えば「咽頭結膜熱(プール熱)」です。

塩素消毒が不十分なプールでうつりやすいから、この病名が付いていますが、別の経路での感染が多い。

この1,2カ月コンスタントに出ているのが、「<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-1595.html" target="_blank" title="溶連菌感染">溶連菌感染</a>」。

のどの手前側が燃えるように赤く、一目で診断が付く場合もあります。抗生剤をみっちり飲んでもらいます。

お腹や下肢などに赤いザラザラの発疹が出て、念のためのどを調べたら溶連菌が出るケースもあります。

今週急に増えてきたのが、「<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-642.html" target="_blank" title="手足口病">手足口病</a>」。

のどや舌や手足にブツブツができます。熱は最初だけのことが多く、いつから登園できるのかでもめます。

規定では、本人が元気なら登園・登校できることになっていますが、感染力はしばらく続きます。

そのうち流行すること間違いなしなのが、「<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-651.html" target="_blank" title="ヘルパンギーナ">ヘルパンギーナ</a>」。

のどの発疹がひどく痛み、高熱が続き、水分も摂れない重症例には点滴が必要です。

あとで手足に発疹が出て、じつは手足口病でした、てこともあるので、手足口病の可能性にも触れておきます。

読売テレビの<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-1768.html" target="_blank" title="道浦俊彦氏">道浦俊彦氏</a>が、手足口病のアクセントについて、最近のブログに書いていました。

<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-1730.html" target="_blank" title="NHKの新辞典">NHKの新辞典</a>では「テ\アシ・ク/チビョー」であり、「ミヤネ屋」でもそのように発音したようです。

しかし、医療従事者はたいてい、「テ/アシ・クチビョー」と、平板型発音をしています。

名詞の<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-1883.html" target="_blank" title="平板化">平板化</a>は、業界人から始まることが多く、手足口病もきっとそうなるのです。

がん犬診

「においで『がん犬診』」 という時事通信のニュースの見出しに、座布団一枚。

患者の尿のニオイによってがんを発見するという、探知犬による判別率はほぼ100%とのこと。

この件は少し前から話題にはなっていましたが、「がん犬診」という言葉は、思いつきませんでした。

ならば、もうひとつの話題、線虫でがんを見つけるニュースは、どんな見出しが面白いか、考えてみました。

思いつきませんでした。

線虫も、患者の尿の微妙なニオイを嗅ぎ分けてがんを発見するわけで、原理は「犬診」と同じです。

その線虫の能力を見いだした、「アニサキス」がヒントになった<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-1618.html" target="_blank" title="エピソード">エピソード</a>については、前に書きました。

最近では、芸(能)人が食中毒被害にあって話題にもなっている、例の寄生虫・アニサキスのことです。

アニサキスによる激しい胃痛の患者は、胃カメラで除去して治療します。

ある医師が患者を胃カメラを覗いたら、アニサキスが患者の胃がんに食らいついていたと、そういう話です。

面白すぎてウソっぽいのですが、どうやら実話のようです。

では、犬ががんを探知できることは、どのようなキッカケで発見されたのか。これにも有名な逸話があります。

飼い主の足のホクロを、犬がしつこく嗅いだり噛んだりするため、皮膚科を受診したらメラノーマだったと。

尿で膀胱がんや前立腺がん、呼気で肺がんや乳がんや卵巣がんを、犬が発見したという実験報告もあります。

では、私の手足をいつも噛みまくる、わが家の愛犬・花は、いったい私の何を発見してくれているのか。

(蛇足)

あとで思いつきました、線虫でがんを見つけるニュースの見出し。

「がんを見つけてくれて、センチュー・ベリーマッチ」

すいません。座布団全部、持ってってください。

立位・座位CT

医療機器における最近の話題は、慶応大学と東芝メディカルが共同開発した、「立位・座位CT」でしょうか。

立ったまま、あるいはイスに座った状態での全身の断層撮影ができる、世界初のX線CT装置です。

荷重がかかった状態での運動器や、立位での腹部や胸部などの評価が可能になるというメリットがあります。

私が研修医の頃のCTは、何分間もかけてやっと1断面が撮影できるようなシロモノでした。

それがわずか0.275秒で、1度に320断面が撮れる装置まで開発されたと書いたのが、<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-766.html" target="_blank" title="数年前">数年前</a>のこと。

おそらく今後は、単純に時間の短縮とか解像度の進歩だけでなく、もっと画期的な技術革新が起きるはず。

立位・座位なんてものじゃない、歩行中に一瞬で全身スキャンできるような、そんなことになるでしょう。

経営不振の東芝グループの中にあって、東芝メディカルは有望な部門でしたが、泣く泣く手放した子会社です。

不採算だから切り離したのではなく、優良物件だからこそ売りに出したわけです。

昨年、<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-674.html" target="_blank" title="キヤノン">キヤノン</a>の傘下に入り東芝グループからは離脱していますが、社名はまだ、東芝メディカルです。

キヤノングループなのに、東芝メディカルとはこれいかに。

当初は、ソニーが東芝メディカルを買収するのではないかと噂されていました。

ソニー傘下に入ったとしても、東芝メディカルを名乗り続けたのでしょうかね。

春インフル

この時期にもまだ、インフルエンザが散発しています。

つい先週、埼玉県の高校で全校生徒の1割強に相当する101人が欠席し、学校閉鎖になったと報じられました。

埼玉だけではありません。熊本でも益城町の中学校で先週、学年閉鎖が起きているようです。

当院の受診者では、インフルエンザの方はだいぶ減りましたが、このまま終息という保証はありません。

このような時期のインフルエンザには、「春インフル」という呼び名が付けられているようです。

「春だというのに、今年はまだインフルエンザが出てますね」などという言葉が、しばしば聞かれます。

でも、本当にそうでしょうか。今年は流行が異常に長引いているのでしょうか。

調べてみたらちょうど<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-571.html" target="_blank" title="4年前">4年前</a>にも当ブログで、「一部地域ではインフルエンザが流行中」などと書いています。

この時期にインフルエンザが出ると、「春なのにインフルエンザ?」と、毎年思うだけなのかもしれません。

国立感染症研究所のサイトで過去10年間の流行グラフを見ると、今シーズンはまったく例年通りのようです。

と思っていたのですが、厚労省のサイトで全国の学校のインフルエンザ情報を見て驚きました。

先週(4/17ー4/23)は、全国で11校が休校し、学年閉鎖は146校、学級閉鎖は353校で実施されています。

いまだに流行が続いているのか、と驚くのはまだ早い。むしろ学校での流行は、いま増えつつあります。

先々週(4/10ー4/16)は、休校3、学年閉鎖35、学級閉鎖46校だったからです。

新学期が始まって、子どもたちの集団生活が再開され、流行が拡大しやすくなったということなのでしょうか。

この大型連休で、学校は休みになりますが、行楽地等では人間が密集します。さて流行はどうなるか。

麻疹の輸入と集団発生

「<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-1278.html" target="_blank" title="麻疹の排除">麻疹の排除</a>」を2年前にやっとWHOに認めてもらえた日本ですが、今年も麻疹の集団発生が起きています。

今年第1〜13週に報告された99例の麻疹のうち68例が、山形・東京・三重・広島の4都県で発生しています。

とくに問題は、海外からの輸入による集団感染です。山形のケースは、バリ島から帰国した方が発端者でした。

このように、国内の土着の麻疹ウイルスは排除できても、近隣諸国からウイルスが持ち込まれてしまうのです。

天然痘のように地球上から病原体を完全に撲滅しない限り、国境をまたいだ感染は防ぎきれません。

いつかブタインフルエンザが流行した時、空港での「<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-859.html" target="_blank" title="水際作戦">水際作戦</a>」が敢行されたことを思い出します。

あの手法では、すでに発症(発熱)した入国者は見つかっても、潜伏期の感染者はスルーしてしまいます。

まして麻疹の潜伏期は10〜12日と長いので、10日以内の旅行であれば、発症は必ず帰国後になります。

その方がやがて発熱しても、当初は風邪との区別もつかず、そうこうしているうちに周囲に感染を広げます。

まずは、海外に渡航しようとする者は、必要に応じて事前にワクチンを接種しなければなりません。

たとえウイルスが輸入されても、地域の大多数の住民が麻疹の免疫をもっていれば、集団感染は起きません。

ウイルスを持ち込んで国内で発症した人が治癒すれば、それで感染源は消えます。

ところが、ワクチン未接種等の理由で、免疫をもっていない人(感受性者)が多数いると、感染が広がります。

国内の麻疹発生が限りなくゼロになっても、MRワクチンの定期接種を続ける必要があるのは、そのためです。

ほとんど流行してないから、自分はワクチンを接種しなくてもいいだろう、なんていう考えは最悪なのです。

現にポリオではそのように思っている方もいますが、もしも海外から持ち込まれたら、それこそ一大事です。