ワクチン接種量を勝手に微調整しちゃダメ

岡山県の医療機関で、新型コロナワクチンを規定より少なく70人に接種していた件には、少々驚きました。

被接種者の健康状態や副反応歴、希望などを考慮して、ワクチンを1/2〜1/4に減らして接種したとのこと。

副反応を抑える目的だったらしく、有効性よりも安全性を重視した、ある意味、日本的な考え方です。

もちろん医薬品は、国が定めた通りに投与しなければなりません。

治験を経て承認された対象・用法・用量が守られなければ、有効性と安全性が保証されないからです。

ただし、接種量が半分なら効果も半分なのかと言えば、とくにワクチンの場合にはそうではありません。

たとえばインフルエンザワクチンの1回の接種量は、3歳未満0.25ml、3歳以上0.5mlと定められています。

今年3歳になったお子さんには、敢えて、「今回から大人と同じ量ですね〜」と言いながら接種しています。

するとたいていの親御さんが少し驚いたような顔つきになるので、私は次の様にたたみかけます。

「3歳でも20歳でも100歳でも、体重が10キロでも100キロでも、接種量は同じなんですよ」

ワクチンの効果を考えたとき、年齢や体重に相関した投与量という考え方が(あまり)ないのです。

なので、低年齢・高齢者や低体重の方に同じ量を接種する際には、副反応が心配になる気持ちもわかります。

岡山の先生は、高齢者施設の入所者などが接種対象だったため、接種量を「調節」してしまったのでしょう。

例によってメディアは「今のところ健康被害は確認されていない」などとアホなことを書いています。

規定よりも少なく接種したというのに、急性期にどんな健康被害が起きるっていうですかね。

ワクチンの間違い接種の原因は、製剤の統一性の無さ

間違い接種をいかにして防ぐか。予防接種に携わる者にとっての永遠の課題です。

以前は子どもたちの定期接種における問題でしたが、最近はコロナワクチン絡みの過誤接種例が増えました。

ファイザーが「間違い接種防止対策のご案内」というパンフレットで、間違いを4類型に大別しています。

(1)被接種者の年齢確認漏れ

1回目を11歳のとき接種した後に12歳になったお子さんの2回目は、12歳未満用ワクチンを接種します。

2回目を11歳のとき接種した後に12歳になったお子さんの3回目は、12歳以上用ワクチンを接種します。

日本脳炎ワクチンの接種における年齢規定とは異なり、医学的にも納得できかねるので、間違いの元なのです。

(2)製剤の取り違い

同じ時間帯に異なる新型コロナワクチンを接種することなんて、私には怖くてできません。

たとえ同じ日に接種する場合でも、午前と午後で分けるなど、時間帯分離はきわめて重要です。

家族が同時に接種できるために、年代の異なる被接種者を同じ枠で接種するような便宜は図りたくないです。

(3)製剤ごとに対象年齢や用法・用量が異なることを知らなかった

規定を知らないのはダメですが、製剤によって希釈の有無が異なる設定は、明らかに制度設計のミスでしょう。

同じ新型コロナワクチンなのに、希釈するワクチンと希釈しないワクチンが存在する現状は是正すべきです。

(4)別年齢用の製剤の転用

医薬品は規定通りに使わなければなりませんが、有効成分の量が同じなら、その効果も同じはず。

と考えて、別年齢用の製剤を「有効利用」してしまった過誤接種もあるようです。

慌てて開発して適用年齢を拡大してきたワクチンなので、現行では製剤の使用法に統一性を欠きます。

将来的には、年齢ごとに用量のみを変える製剤へと向かうべきでしょう。いつまで接種するのかはともかく。

新型コロナワクチン、接種したくても時間がとれません

新型コロナワクチンの「5回目接種」を受けました。前回(4回目)からちょうど5カ月の接種間隔でした。

当院でも今日から、「オミクロン株(BA.4/5型)対応ワクチン」の接種に切り替えたところです。

帰宅後、いつものように熱めの風呂に入り、しっかりと全身を温めました。

ワクチンの接種は、免疫系を刺激することですから、体温を上げるほど有効性は高まると考えたからです。

ただし接種部にジンワリと痛みを感じ始めたので、カロナールを600mgほど内服しました。

せっかく上げた体温が下がるんじゃないのかとツッコまれるかもしれませんが、痛みはイヤなのです。

新型コロナワクチンの接種について、当院では熊本市の予約システムは利用していません。

原則として当院でこれまでコロナワクチンを接種してきた方に限定して、窓口で、予約を受け付けています。

接種歴が把握できている当院かかりつけの方がほとんどなので、接種の手続きから実施まではスムーズです。

ただし、オミクロン株対応ワクチンの供給量は十分なのですが、現状では接種枠をあまりたくさん作れません。

発熱外来の受診者が多く、時間帯分離を考えると、ワクチンの接種に割ける時間が制限されるからです。

それに加えて、インフルエンザワクチンの接種にも時間をとっていることが、重くのしかかっています。

今思えば、「インフルとコロナの同時接種枠」を作って、効率よく接種を進める作戦も考慮すべきでした。

かつては、同時接種なんてするものか、と考えていましたが、時間の節約を考えたら同時接種に限りますね。

「9価HPVワクチン」の定期接種は4月から

「<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-4018.html" target="_blank" title="9価HPVワクチン">9価HPVワクチン</a>」の定期接種は、来年4月からの開始が決定しました。

そうなると、より効果的なワクチンの導入を待つ「接種控え」が問題となるので、厚労省はこう言ってます。

「どのワクチンでも予防効果があるので、なるべく早い時期に打てるワクチンを打つことを検討してほしい」

それはその通りだと思いますが、新ワクチンが出たときはいつも、同じジレンマに陥ります。

新ワクチンにメリットがあるからこそ切り替えるわけで、効果を考えたら明らかに新ワクチンに利があります。

新ワクチンの導入を待つことのデメリットがあるとすれば、「待っている間に感染するリスク」に尽きます。

これは新型コロナワクチンでも同じ。オミクロン株対応を待つべきか、BA.5対応を待つべきか、悩みますね。

ただし、ことHPVの場合は「待っている間に感染するリスク」は微妙。コロナとはだいぶ事情が異なります。

私はむしろ、定期接種対象学年の方なら、新ワクチンを待っても良いと思います。実際にそう説明しています。

その意味で、なるはやで打つべきなのは、より高年齢のキャッチアップ接種対象の方々かもしれません。

新型コロナワクチン、公費負担見直しへ

新型コロナの新規感染者数が、47都道府県すべてで前の週よりも増加しています。

過去にも経験があり日本中の誰もがわかっているように、これは新たな波にさしかかったことを示す兆候です。

当院での昨日のPCR検査数30件は、第7波ピーク時の日曜と比べれば半分以下ですが、先週より増えています。

その陽性率はちょうど50%でした。これも徐々に上がってきています。

高熱や咽頭痛の強い方は相変わらず多いですが、入院を考慮するような重症例にはほとんど遭遇しません。

高齢者を中心にワクチンの接種率が高いので、目論見通り、重症化が予防出来ているのかもしれません。

そのワクチンの接種費用を国が全額負担している現行制度を見直そうと、財政制度審議会が意見しています。

昨年度は、新型コロナワクチンの接種に関連して、2兆3,400億円の国費が投入されたといいます。

厚労省がいつも感染者数や病床利用率などを扱うのと異なり、さすが財務省が気にするのはお金のことばかり。

でもおかげで、厚労省のサイトでは目にすることのなかった接種費用の詳細を、私は初めて知りました。

現行制度での接種単価は、約9,600円ですか。全額自己負担することになると、接種率は激減しそうですね。

一部は国費か自治体の補助が入ることを期待します。肺炎球菌ワクチンみたいに、半分公費とか。

高齢者とか基礎疾患を有する人だけは無料にしてもいいと思います。

でもいったい、あと何回接種するのでしょう。まさか、3カ月間隔で今後もずっと続くワケじゃないですよね。

ワクチン接種を推進していますが、強制はしません

「反ワクチン」団体の方から、ときどきダイレクトメール(郵便物)が届きます。

ざっと目を通した上で、場合によってはスキャンしてから廃棄します。

未開封のままポイ捨てすることはありません。どんな意見でも、少しは知っておきたいからです。

「反ワクチン本」も「ワクチン推進本」も、それぞれ購入して読みました。あるいは読んでいる途中です。

書籍は、著者がそれなりに責任をもって真面目に書いているので、読みやすければ読むに値します。

一方でネットはダメ。反ワクチンのサイトや書き込みがとても多いですが、これらはほとんど読みません。

自分でブログを書いてて言うのもナンですが、ネット上の著述にはどうしても責任感を感じにくいのです。

抑制の利かない完成度の低い文章が多いのは、あとでいつでも自由に削除や訂正ができるからかもしれません。

最近、私はいったい純粋なワクチン推進派なのかどうか、もしかすると中間派なのか、じつは少し考え中です。

もちろん、前回の新型コロナワクチンの接種から3カ月たった人には、一度はワクチンの接種を勧めています。

それは情報提供であり、選択肢の提示です。打つにしろ打たないにしろ、その希望を叶えたいと思います。

希望者には接種を勧め、希望しない人には「その考え方を尊重します」と応じ、くどくど説得はしません。

明確に「私はワクチンは反対です」と言う方に対しても、理解を示すスタンスは続けたいと考えています。

結局、けっこう同時接種しています

祝日ではありますが、一般診療は最小限にとどめて、今日はおもにワクチンの接種を行いました。

発熱外来受診の目的で電話が多数かかってきましたが、お断りしなければなりませんでした。

新型コロナワクチン(オミクロン株対応)を18人に、インフルエンザワクチンを86人に接種しました。

そのうち8人は、両者の同時接種です。過誤接種を避けるために、次のルールに則って、接種を行いました。

・コロナワクチンとインフルワクチンは、別々の時間帯に準備し、シリンジやトレイも異なる外観の物を使う

・コロナワクチンとインフルワクチンは、原則として別々の時間帯に接種する

・同時接種はコロナワクチンの時間帯に行い、インフルの時間帯にはコロナを同時接種しない

・同時接種においては、同じ側の腕に、最初にコロナ筋注→次にインフル皮下注、の順に続けて接種する

以前は、別の時間帯に同日接種することも考えていましたが、むしろ間違いの元になりそうでやめました。

前述したように一定のパターンを作り、確認しやすい同時接種環境を構築したので不安はありませんでした。

なお、いちばん手がかかるのは、中ぐらいに大きな子どもが、急に接種を嫌がって暴れるときですね。

接種中止は最後の手段。なだめたりすかしたり、あの手この手を使ってなるべく接種を受けていただきます。

コロナもインフルも接種希望者が思いのほか多く、接種予約枠を作ればすぐに埋まっていきます。

いずれのワクチンも、今はほぼ欲しいだけ入手できているので、その点は助かっています。

第8波の兆候が見えるコロナよりも、まだ流行していないインフルを予防したい人の方が断然多い状況です。

効果はともかく、それぞれのワクチンに対する安心感の違いかもしれません。

接種券はもうじき届きます

生活習慣病で定期的に受診されている方はみな、新型コロナワクチンの接種が推奨されている対象者です。

なのですべての来院者に一度は、接種の希望はないかとお尋ねしています。すると次のような質問が出ます。

「また打つんですか」→ あくまで任意接種です。ご希望の場合にのみ接種します。

「もう打つんですか」→ 前回の接種から3カ月間隔で打てるようになりました。

「こんなに早く打っても大丈夫ですか」→ ご不安なら、もう少しあとで接種してもよいですよ。

「オミクロン株対応ですか」→ 12歳以上用の追加接種ワクチンは、すべてオミクロン株対応です。

「接種券がまだ届いていませんが」→ 大丈夫です。もうじき届きます。届かなくても接種はできます。

接種間隔等の規定がコロコロ変わるので、対応に追われる自治体も大変。接種券が遅れるのも仕方ないです。

にしても、追加接種(3回目接種以降)の接種間隔が、どんどん狭まっているのが、不気味です。

以前は6カ月以上でしたが、それが5カ月間隔になり、いまでは3カ月間隔。

このままでは、いずれは「毎月接種」になりゃしないかと、今日も患者さんと談笑(?)したところです。

が、冗談抜きで、いったん狭まった接種間隔がまた広げられる根拠って、はたして出てくるのでしょうか。

いや、ブースター効果を考えると適度に長い接種間隔が必要なはず。その詳細な検討が待たれますね。

3カ月間隔のままで留まって、毎年4回のペースで打ち続けるなんて考えたくもありませんから。

間隔を気にせずインフル接種できるのは楽

コロナとインフルのワクチン接種を進めていますが、接種を希望しない人も多く、その理由は様々ですね。

(1)新型コロナワクチンを接種したくない理由

・不信:もともと打ちたくない、途中から(副反応に懲りて)打つのをやめた、KMBのワクチンを待ちたい

・不要:自分はコロナには罹らない、もう罹った、どっちみち罹る

・誤解:オミクロン株対応ワクチンを打ちたい、え?、もう対応してますか

(2)インフルエンザワクチンを接種したくない理由

・不要:打ったことがないけど罹らない、打ったけど罹ったことがある、去年も打ったけど流行しなかった

・負担:(無料のコロナに比べると、インフルの料金が際立つ)

当院の現状では、新型コロナワクチンよりもインフルエンザワクチンの方を、圧倒的に多くの方に接種中です。

両者の接種間隔の規定が撤廃されたおかげで、インフルエンザワクチンの接種作業が本当に楽ですね。

もしもこの規則が継続していたら、予約時に確認するだけでは不十分で、接種前に再確認せねばなりません。

そして接種直前になって「ありゃ、今日はインフル接種できませんね」となるケースが続出するところでした。

コロナとインフル以外のワクチンは、従来通り2週間以上の接種間隔が必要というのも、実はオカシな話です。

必要に迫られて検討が行われたインフルだけが同時接種OKとなったのは、いかにもご都合主義。

とは言え、おかげで助かってます。できれば、他のすべてのワクチンへの適用拡大を願います。

希釈するワクチンと希釈しないワクチン

津奈木町の医療機関で、新型コロナワクチンを10歳以下の子どもに希釈せずに接種した事例が報じられました。

隣接する水俣市でも同様の過誤接種が報告されているとのこと。もちろん、この地域特有の話じゃありません。

オミクロン株対応ワクチンが出るまでの、従来株対応の新型コロナワクチンは、

(1)ファイザー:希釈して0.3ml接種

(2)モデルナ:希釈せずに0.25ml接種(初回接種は0.5ml)

(3)小児用ファイザー:希釈して0.2ml接種

これがオミクロン株対応の「二価ワクチン」になったことによる変化は、

(1)ファイザー:希釈して0.3ml接種 → 希釈せずに0.3ml接種

(2)モデルナ:希釈せずに0.25ml接種 → 希釈せずに0.5ml接種

(3)小児用ファイザー:希釈して0.2ml接種 (オミクロン株対応ワクチンなし)

さらに、0歳6カ月から4歳児専用のワクチンの接種も、やがて始まります。

(4)乳幼児用ファイザー:希釈して0.2ml

このように、ワクチンの種類・用量や調整の有無が、実に混沌とした設定になってます。もはやトラップです。

接種に従事している者なら誰もが、いつか何らかの形で過誤接種が起きると思っているはずです。

12歳以上用ファイザーが希釈不要になったことは歓迎しますが、ならば小児用も希釈不要にしてほしかった。

製造段階であらかじめ薄く作っておけばいいだけの話、じゃないんですかね。しらんけど。