麻疹(はしか)の大流行は防げるのか

海外から持ち込まれた「麻疹(はしか)」の感染が、各地で拡大しています。

麻疹は感染力が極めて強いため、ワクチンの接種が不十分な人は、容易に「空気感染」してしまいます。

感染者からの飛沫がなくても、感染者と同じ部屋・同じ列車等にいただけで、感染してしまうということです。

報道番組では、「はしかが増えているのは人の移動が増えたからです」という説明で済ませています。

これではスッキリしません。いくら人が移動しても、はしかが湧いて出てくるわけではありませんから。

世界には、アフリカや南米や東南アジアやインドなど、はしかが流行(蔓延)している国があります。

そういう国への行き来が増えて来たので、蔓延国からの持ち込み・持ち帰りが増えたということです。

ワクチンの接種率は、アフリカ諸国でもそれなりに増えて来ていましたが、コロナ禍によって頓挫しました。

そうして接種率が低下して麻疹がまた増えて来たところへ、人の移動だけは活発化した、という経緯なのです。

ワクチンの接種率の低下はしかし、発展途上国だけの問題ではありません。先進国でも深刻な問題です。

それは、「反ワクチン」あるいは「ワクチン忌避」の考えを持った人たちの存在です。

ワクチンが子どもたちの健康を害するリスクを過度に心配する方や、陰謀論を唱える人もいるでしょう。

中には、周囲の子どもの接種による集団免疫に期待して、わが子には接種をしない方もいるかもしれません。

麻疹の流行を防ぐ集団免疫の確立のためには、95%以上のワクチン接種率が必要とされています。

日本ではコロナ禍前までは、定期接種の1期・2期ともに、全国的にほぼ95%以上の接種率を保ってきました。

ところが2021年から接種率が下がり、とくに2期は全国的に92%程度という危機的状況です。

その危険なタイミングで、海外から麻疹が持ち込まれたからこそ、今回はとくに問題が大きいのです。

流行を防ぐにはワクチンしかありません。とりあえず第2期未接種の年長児の方へ。接種期限は今月末ですよ。

「5種混合ワクチン接種」実施登録

<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-4465.html" target="_blank" title="「5種混合ワクチン」">「5種混合ワクチン」</a>が4月から、子どもの定期接種に導入されます。

「5種」とは、「4種(百日せき・ジフテリア・破傷風・不活化ポリオ)」+「ヒブ」、のことですね。

市から委託を受けて接種のとりまとめをしている医師会から、接種するなら登録せよ、という書類が来ました。

なので早速、接種するのでヨロシク、とFAXしました。

4月からの接種においては、おそらく、「5種」か「4種+ヒブ」かを選択できることになると推測します。

医師がその選択肢を被接種者(の保護者)に示すわけですが、どちらを選ぶかは説明の仕方次第でしょうね。

5種を選べば注射の本数が減ります。赤ちゃんが泣く回数は減るし、保護者が書く予診票の枚数も減ります。

「新しいワクチンだけど大丈夫?」という心配は無用です。

なぜなら5種混合は、従来の4種混合にヒブを混ぜただけのワクチンですから、新しい成分は何もありません。

さらに言うならKMB/Meijiの製品は、4種混合のシリンジとヒブのバイアルが同梱された、セパレート型。

医療機関において毎回、これらの2つを混ぜてから接種する必要があります。

その意味では、製品としては「4種混合+ヒブ」パックであって、「5種混合」の名に偽りありって感じです。

一方で微研/田辺の製品は、最初から「5種」が混合されています。どうしてこれがKMBにできなかったのか。

KMB製品が「県産品」でなければ、迷うことなく微研を選ぶんですけどね。あとは卸値がどうなるか。

「特定接種」の登録更新

「特定接種」登録の有効期間が満了するため更新手続きをするようにと、厚労省からメールが何度も届きます。

あまりしつこいので、今日、更新手続きを済ませました。

特定接種とは、2012年に施行された「新型インフルエンザ等対策特別措置法」に基づく予防接種です。

2009年の新型インフルエンザの経験を踏まえての、強毒性の新型インフルエンザ等の感染症への対策です。

医療従事者や、インフラ業務の従業員や、感染対策に携わる公務員などに限定して、臨時に接種を行います。

接種を受けるからには、感染症の対応から逃げることは許されないという、バーターな制度でもあります。

この特例接種はしかし、新型コロナワクチンの接種の優先順位には適用されませんでした。

新型コロナは、国民のほとんどが短期間に感染して死亡者が多発するとは想定されない、というのがその理由。

ワクチンの供給に不安があり、高齢者の致死率が高いこともあって、高齢者等優先の接種が始まりました。

さて、厚労省の「特定接種管理システム」にログインしました。パスワードは忘れていたので再発行しました。

「事業所検索」ボタンを押すと当院が表示されるので、

「更新確認」ボタンを押すと確認画面に変わり、

「更新の意思あり」にチェックを入れ、

「更新確認」ボタンを押すと、

「このデータを更新します。よろしいですか?」と表示されるので、

「更新する」ボタンを押すと、

「更新の意思確認情報データの更新処理は正常に行われました。」と表示されました。

どんだけ「更新」の意思を再確認させるんですか。そこまで覚悟が必要なものですか、特定接種って。

どっちみち本番(パンデミック)では、その時点の状況で接種の優先順位が決まることになるんでしょうに。

「肺炎球菌ワクチン」接種の経過措置終了へ

テレビで段田安則氏が宣伝しているように、助成対象の方は「肺炎球菌ワクチン」の接種をお急ぎください。

段田氏と言えば、天皇に毒を盛るような極悪人(役)ですが、このワクチンは安心して接種できます。

日本人の死亡原因は、1位の「悪性新生物」、2位「心疾患」は近年不動ですが、3位以下には変動があります。

ひところ3位だった「肺炎」は今は5位です。もしかするとそれはワクチンの効果かもしれません。

また、老衰で亡くなった方は直接の死因が肺炎でも、それを老衰死亡として登録している面もありそうです。

ただいずれにせよ、肺炎で命を失う高齢者はとても多いということです。

その肺炎の原因として最も重要なのが「肺炎球菌」であり、ワクチンはその感染予防にはかなり有効です。

2014年からこのワクチンの「定期接種」が始まり、基本的な接種対象は65歳と定められました。

ただし、その時点ですでに66歳以上の方を救済するために、5年間の経過措置がとられました。

この経過措置によって、65歳以上のすべての「5の倍数の年齢の高齢者」が、接種対象になりました。

理論的には、5年の経過措置の間に、すべての高齢者が一年ずつ、接種対象となるはずでした。

ところが思いのほか接種が進まない。そこでさらに5年間経過措置が延長され、現在に至るわけです。

厚労省は今年度で経過措置を打ち切る方針のようです。来年度からの定期接種対象は65歳の方に限定です。

なので今がラストチャンス。現時点で65歳以上で未接種の方は、3月までに接種しましょう。

と言いたいところですが、いま接種出来るのは、いまの経過措置の対象である5の倍数の年齢の方だけです。

そんなケチなことせずに、もはや65歳以上の全年齢を対象にした経過措置にしてもいいんじゃないの?

肺炎死が減ったら国民医療費は確実に減るんですから、国はワクチン接種にもっと予算を割くべきです。

まさか、医療費削減のために、これ以上寿命を伸ばさない(=肺炎死を減らさない)政策じゃないですよね。

「同時接種用一括予診票」を求む

予防接種の予診票では、ワクチンによって、「はい・いいえ」の配列が左右逆になっているものがあります。

右側の列にずらっと丸を付けていけば良いような、安直なレイアウトを避けるための工夫なのでしょう。

おかげでその「トラップ」に引っかかる人がけっこういて、じっくり読んでなかったことが露見します。

それにしても、これまでに何度も書いてきたように、乳児の定期接種の予診票はどうしてこんなに面倒なのか。

満2カ月での「ワクチンデビュー」は通常、4つの皮下注射と1つの内服ワクチンによって始まります。

ヒブ、肺炎球菌、4種混合、B型肝炎とロタウイルスワクチンです。

この5つのワクチンの予診票は、ほぼ同様の内容・レイアウトなのですが、5枚書かなければなりません。

その4週間後には、これら5つの2回目の接種を行うことになるので、また5枚書かなければなりません。

さらにその4週間後には、B型肝炎ワクチンを除いた4つのワクチンの接種を行うので、書くのは4枚です。

毎回4,5枚書くのはかなりの労力と時間を要します。しかも同じような内容なので、バカらしくも感じます。

接種前の診察の結果、接種を見合わせることにでもなると、何枚も書き上げた予診票がすべてムダになります。

しかし、せっかくこれだけ書いてもらったのだから接種しようかと、体調の判断を甘くするのもまた問題です。

こういうとき、同時接種用の「一括予診票」があると、すごく助かるんですけどね。

せめて乳児の3回分だけでも、1枚書けば全部のワクチンに通用するような予診票を作ってもらえませんかね。

インフルエンザワクチン、ネット予約分の接種は終了

インフルエンザワクチンのネット予約の受付は、本日の接種分で終了しました。

今後も、ワクチンの在庫がある限り接種は続けます。たぶん来月も。

ただし明日以降の接種分は、すべて電話か窓口での予約受付となります。ご了承ください。

毎年10月から12月までの接種分は、原則として予約専用サイトからのネット予約で受け付けをしてきました。

その理由は、ネット予約だと、電話対応や予約帳への記載の必要がなく、受付作業がずいぶん楽だからです。

接種日時や氏名・生年月日・電話番号などの情報が正確に入手でき、とくに初診の方の場合に有効です。

接種データベースへもそのままデータを移行できるので、接種履歴の管理にも使えます。

このようにネット予約は省力化につながるので、その分、接種料金を割安に設定しています。

逆に言うなら、電話や窓口予約の場合は手間がかかるので、申し訳ないですが接種料金を割高にしています。

定期接種とインフルエンザワクチンの同時接種の場合の料金は、例外的に「ネット料金」にしています。

その理由は、定期接種単独の場合とインフルも追加する場合とで、あまり手間が変わらないからです。

生活習慣病の方の定期受診の際にインフルエンザワクチンを接種する場合も、ネット料金にしています。

これも、接種に要する準備作業や事務作業に、それほど手間がかからないからです。

インフルエンザワクチンの接種料金は、開院当初のような「破格値」にはしていません。

あまりにも安くすると、初診の方の予約が殺到してしまい、かかりつけの方が予約を取りにくくなるからです。

開院して17回目のインフルエンザワクチンシーズンですが、紆余曲折を経て、いまのやり方に落ち着きました。

今シーズンは今日までに、1,327人の方に接種をしてきました。さいわい、重大な副反応もなかったようです。

これが地域の方のインフルエンザの予防に、少しでも貢献できていれば良いのですが。

「5種混合ワクチン」定期接種へ

「5種混合ワクチン」の導入が決まりました。来年4月から、子どもの定期接種に組み込まれることになります。

「5種」とは、「4種(百日咳・ジフテリア・破傷風・ポリオ)」に「ヒブ」を加えたものです。

乳児の定期接種はいま、満2カ月から「4種混合+ヒブ+肺炎球菌+B型肝炎+ロタ」の同時接種で始まります。

注射が4本と、飲むワクチン(ロタ)が1つです。

5種混合を使えば、注射が3本に減らせます。

これで赤ちゃんの苦痛は4分の3に減り、大泣きする時間も、接種に要する時間も、短縮することでしょう。

5種混合ワクチンには、阪大微研製とKMB製の2種類あります。効果は同じ(はず)ですが、違いもあります。

【<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-4199.html" target="_blank" title="ゴービック(阪大微研">ゴービック(阪大微研</a>)】

前にも書いたように、同社の4種混合が「テトラビック」なのに、5種混合は「ペンタビック」じゃない。

その命名には納得しかねますが、ワクチンそのものは調整不要でそのまま接種できる点がいいですね。

【クイントバック(KMB)】

同社の4種混合が「クアトロバック」なので、5種が「クイントバック」という命名は、リーズナブル。

しかし、使用時に4種混合ワクチンでヒブ乾燥製剤を溶解するという、一手間が必要です。

県産品なので応援したいところですが、この「用時溶解」の作業がたぶん、面倒になるでしょうね。

インフルエンザワクチンの接種枠は、これ以上なかなか増やせません

インフルエンザワクチンは、10月から今日までに、当院では988人に1,192回の接種を行ってきました。

2018年以来6シーズンの同じ時期の接種回数は、1151→1169→1602→1383→1117→1192人でした。

コロナ禍初年度(2020年)には、インフルとの同時流行に備えて、接種者が急増したことを思い出します。

ところがこの年、インフルエンザがまったく流行らなかったので、翌2021年は接種者が少し減りました。

さらに2021年にも流行しなかったので、2022年にはさらに接種者が減ったという経緯です。

今期は、インフルエンザがすでに流行中という状況なので、ワクチン接種者が激増すると予測していました。

でも蓋を開けてみると、ワクチン接種者はせいぜい、コロナ禍前と同程度なんですね。

これはしかし、接種希望者が多くないからではなく、当院の接種キャパが限界なのです。

そう考えると、3年前(2020年)の接種では、そうとう無茶してますね。

コロナに最も怯えた年ですから、インフルとの同時流行を防ぐためにも、ガムシャラに頑張ったのでしょう。

今年も頑張りたいところですが、発熱外来の受診者がまだ多くて、接種ばかりしている状況ではないのです。

というわけで12月も、発熱外来との時間帯分離を徹底した上で設定したネット予約枠は、すでにほぼ満杯です。

インフルエンザワクチン、ただいま精力的に接種中

土曜の午後の診療枠をすべて使って予防接種だけを行うのは、<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-4390.html" target="_blank" title="10月7日">10月7日</a>以来、今日で6週連続となりました。

コロナワクチンの接種希望者は少なくなりましたが、インフルエンザワクチンの希望者がとても多いのです。

土日の接種を希望する方が多く、しかし日曜は発熱外来に充てたいため、土曜の接種人数が増えるわけです。

時間帯分離を徹底するため、土曜の午後は発熱者等の受診はお断りして予防接種に専念することになります。

今年はインフルエンザワクチンの流通量が例年よりも多く、薬品卸からは希望量のワクチンを入手できました。

ただ、接種する時間が足りません。できるだけ多くの接種を行うためには、効率を上げなければなりません。

そのために、連続して多人数に接種する今の方式に落ち着いたのです。今日の午後も約80人に接種しました。

開院当初から数年間は、近隣の事業所に出向いて「出張接種」を行うこともありました。

しかし、院外での診療行為に係る厳密な手続きを踏む必要などを考慮した結果、近年はやめています。

その代わり、いくつかの事業所の方が、それぞれまとまって当院に来る形での「集団接種」をしています。

当院での接種料金は、開院当初こそ2,000円とか1,500円と激安でしたが、今はそれほど安くはありません。

あまり安くすると、市内一円から希望者が殺到し、かかりつけの方の接種ができなくなるからです。

そんなわけで、当院があまりオトクな接種料金ではないことを、かかりつけの方には申し訳なく思っています。

インフルエンザワクチンは、左右交互接種しています

新型コロナワクチンもインフルエンザワクチンも、接種するのはたいてい、利き手と反対側の肩や腕です。

あとでひどく痛んだ場合に、それが利き手ではない方が都合が良いからです。

中には、適度に力が抜けて良い感じなので右にお願いしますと利き手を差し出す人もいましたが、例外的です。

さらに私は、インフルエンザワクチンを2回接種する際には、1回目は左腕、2回目は右腕と決めています。

もちろん、2回目も左に打ってくれ、という被接種者本人(または保護者)の希望があればそれに従います。

実は以前から、同じワクチンを同じ腕に「反復接種」すると、局所副反応が起きやすいという話があります。

毎回左右を変える「交互接種」の方が、反復接種よりも強い免疫が付いた、という研究結果もあります。

なので私は、乳児のヒブや肺炎球菌ワクチンなどでは「交互接種」を採用しています。

生後2カ月の「ワクチンデビュー」では、左ヒブ・右肺炎球菌と決めています。ヒブ=「ひ」=左と覚えます。

翌月は左右を逆にして接種し、その翌月はまた左右を変えるのでヒブが左腕の接種に戻ります。

実は、インフルエンザワクチンも含めて多くの不活化ワクチンで、添付文書に次のような記載があります。

「接種部位は、通常、上腕伸側とし、アルコールで消毒する。なお、同一接種部位に反復して接種しないこと」

これは、MRワクチンや水痘ワクチンなどの生ワクチンの添付文書には見られません。

医学的根拠は不明ですが、不活化ワクチンで交互接種をルールとするからには、何か理由があるのでしょう。

そんなこともあって私は、インフルエンザワクチンも交互接種を原則としているのです。