「フルミスト」導入検討中だけど、発売はどうなる?

「フルミスト」とは、鼻からシュッと噴霧するタイプの、インフルエンザの生ワクチンの商品名です。

海外では20年以上前から使われていますが、日本では去年まで一部医療機関で未承認品が使われてきました。

ようやく国産のフルミストが承認されたので、2歳から18歳までを対象に、正規使用できることになりました。

「インフルエンザ」+「ミスト」からの命名であることは想像の通り。

鼻孔に噴霧するとウイルスが鼻咽頭部で増殖し、インフルに自然感染したのと同様の免疫反応が誘導されます。

不活化ワクチンでは血液中に免疫が誘導されるのに対して、フルミストは粘膜上に自然な免疫が成立します。

ワクチンの有効性は高く、不活化より持続性が優れると考えられています。しかも注射じゃないので痛くない。

ただし良いことばかりではありません。

鼻風邪のような症状の副反応があり、また厳密には、周囲の人にインフルエンザをうつすリスクもあります

鼻水・鼻づまりのある方は効果が減弱します。大泣きして鼻水ダラダラのお子さんへの接種はどうするのか。

そんなわけで今年は、接種対象をどのように設定しようかと考え中です。値段もかなり高いワクチンだし。

と思っていたら今日の午後、発売日延期の情報が入りました。「出荷に必要な手続きに時間を要した」のだと。

当初は9月26日発売の予定でしたが、しばらく延期されそうなので10月1日からの接種開始は絶望的です。

これほど出鼻をくじく話もないですね。私はもともと慎重に様子を見ていたので、まあこのまま様子見です。

休日にワクチン接種を

「平日に都合が合わない方向けに、土日祝・夜間に子宮頸がんの予防接種を実施している医療機関」

熊本市のサイトの「小学6年生からの予防接種(女性のみ)」のページに、そのリストが掲載されています。

全部で85施設。このうち日曜に接種を行うとしているのは、当院を含めてわずかに2医療機関のみ。

さらに、祝日にも接種を行う医療機関として掲載されているのは、なんと当院だけでした。市内でウチだけ。

ただし当院も、火曜と金曜と年末年始は休診しますので、すべての祝日で接種を行うわけではありません。

それにしても、土日祝日にも接種出来ますと市が広報しているのに、実際に接種する医療機関の少ないこと。

逆にここまで期待されているからには、責任上、当院はできるだけ希望者全員の接種を請け負う覚悟です。

ところで、冒頭に紹介した医療機関リストですけど、市のサイトの中から見つけるのはなかなか苦労します。

予防接種に関して、通常の「健康・医療ルート」で探そうとすると、

 健康・福祉・子育て > 健康・医療 > 検診(健診)・予防接種 > こどもの予防接種の受け方トップ

と進み、さらに深く、

 > 定期予防接種(A類)一覧表 > ヒトパピローマウイルス感染症 > 小学6年生からの予防接種(女性のみ)

と進んで、やっとたどり着けます。

ところが、このページにすぐに到達できる「子育てルート」が別にあります。

 健康・福祉・子育て > 子育て > 子どもの健診・予防接種 > 小学6年生からの予防接種(女性のみ)

熊本市のサイトはどうも、予防接種の記事の分類や階層の設計が失敗していますね。

少なくとも今が旬のHPVワクチンについては、トップページ付近にリンクを張っても良いと思うのですが。

キャッチアップ接種、まだ間に合います

<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-4697.html" target="_blank" title="HPVワクチン">HPVワクチン</a>は、接種の機会を逃した方のための「<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-4621.html" target="_blank" title="キャッチアップ接種">キャッチアップ接種</a>」が行われています。無料です。

その接種期限が今年度末(来年3月末)のため、とくに今月は駆け込み接種の方がとても増えています。

1回目と3回目の標準的な接種間隔が6カ月なので、今月中に接種を開始する必要があるのです。

3回目の接種が来年4月以降になってしまうと任意接種となり、かなり高額な接種料金を払うことになります。

なので今月接種を始めなければ間に合わないと焦るわけですが、大丈夫です。実はもう少し余裕があります。

規定では、1回目と2回目の接種間隔は最短で1カ月、2回目と3回目は最短で3カ月とされているからです。

つまり、3回分の接種を、最短4カ月で完了できます。11月中に接種を開始すればなんとか間に合います。

今月どうしても都合がつかない方も諦めず、来月からでも接種を開始してください。

風邪を引いたりして接種を延期することもあり得るので、11月からの接種開始はあまりオススメできません。

当院では、キャッチアップ接種の対象者に限り、土日や祝日の接種も受け入れます。ただし完全予約制です。

接種日には勧奨ハガキをお持ちください。初診の場合、ハガキが無ければ接種対象かどうか確認できません。

平日であれば保健所に問い合わせることもできますが、土日は保健所が休みなのでそれができないのです。

保健所の定期接種データベースに、医療機関がいつでも直接アクセスして閲覧できると助かるんですけどね。

コロナワクチン大余りの予感

今シーズンのインフルエンザワクチンと新型コロナワクチンの見込み供給量について、厚労省が発表しました。

インフルエンザワクチンの見込み供給量は2,734万本(3歳以上換算で5,468万回分)。

過去3年間の使用量が想定よりも少なく、ワクチンが余ったため、今年は想定使用量ギリギリの供給量です。

そのことを国は、「近年の平均使用量を超える供給量となる」と、あくまで十分量だと言い放っています。

しかし流通にはムラがあります。想定使用量ギリギリしか供給されないと、現場では足りなるものなのです。

ところが国は、「適切に使用すれば不足は生じない」「効率的な使用が前提」と、机上の空論を唱えるばかり。

10月3週には平年並みの流通量は確保すると言いますが、つまり、10月前半の品薄は国も認めているのです。

毎度のことですが、予約受付段階で悩むことになります。さてさて、そろそろ準備をしなければ。

コロナワクチンの見込み供給量は3,224万回分。そのうち従来型のmRNAワクチンは2,527万回分。

前年度の無料だったときの全世代での接種数が2,846万回ですから、今回の供給量は多すぎませんかね。

有料接種になるというのに、そんなに希望者がいるんでしょうか。ワクチンが大余りになりそうな気がします。

さて私自身、この高い(どれほど効果があるのかわからない)ワクチンを接種すべきかどうか、悩み中です。

自分が接種しなければ、人に接種を勧める説得力がないという考え方もある。う〜ん。

コロナワクチン接種の実施登録申請

「新型コロナウイルス感染症予防接種実施登録について」というFAXが届いたので、早速登録を申請しました。

実際の運用(予約〜接種)は当院の裁量でしょうから、忘れないうちに登録だけはしておこうというわけです。

定期接種の対象は、65歳以上の方と、心・腎・呼吸器・免疫機能の障害を持つ60歳以上の方だけです。

実施機関は、10月1日〜来年3月31日、となっています。3月で終わるのは要注意ポイントかもしれません。

接種料金(窓口負担)は3,260円。前にも書いたように、当初予想よりもだいぶお安くなっています。

医療機関への接種委託額は未定。報酬は決めてないけど接種登録してね、ていう募集って、どうなの。

定期接種用のコロナワクチンは今回から、各医療機関が薬品卸に発注して買い取り、接種に用います。

しかしその納入価格が異常に高額なので、市の接種委託額次第では「やってらんねぇ」ということになります。

値段はともかく、コロナワクチン製剤そのものは、温度管理や接種操作がとても楽になりました。

希釈不要の1人用のシリンジ製剤(針を装着してそのまま使える)が出たので、準備作業がほとんど不要です。

被接種者の数だけを室温に戻して使うことができるので、かつてのように残薬を廃棄することがありません。

室温で12時間、キャップを外しても4時間は使用可能とのこと。大丈夫か?と思うほど温度管理が楽です。

いま、当院かかりつけの65歳以上の方の接種希望調査をしているところですが、考え中の方が多いですね。

前回、接種を途中でやめた方や、7回接種してもコロナに罹った方が、次は有料でも接種するとは思えません。

接種希望者数を正確に把握し、ワクチンは少なめに入荷して接種する。今回はそんな運用になりそうです。

コロナ打つならインフルも

毎年10月から、当院ではインフルエンザワクチンの接種を行っています。各医療機関とも同様でしょう。

また今年は、新型コロナワクチンの接種も、10月から再開することになります。今回から有料です。

熊本市では、65際以上を対象とした新型コロナワクチンの定期接種は、窓口負担が3,260円になる予定です。

64歳以下の方の場合、基礎疾患のある方でも、大抵の方は定期接種の対象には入らないので注意が必要です。

市によると、64歳以下では「身体障がい者手帳1級相当」の方が対象となっており、かなり厳しい基準ですね。

コロナワクチンは納入価格がかなり高額なので、任意接種の料金設定をどうするか、いまだに悩み中です。

かかりつけの方で任意接種を希望する方に限定して、ひっそりと接種を行うことになろうかと考えています。

いまかかりつけの方に、接種の希望をお尋ねしているところですが、反応は半々かそれ以下です。

無料でも接種を途中でやめた方々が、有料なのに接種する可能性はあまり無いでしょうね。

一方で65歳以上の定期接種は、窓口負担金が当初の予想より安価でもあり、対象者へ接種を推奨する予定です。

できれば希望者には、コロナワクチンとインフルエンザワクチンの同時接種を提案したいこところです。

昨年も多くの方に同時接種をしましたが、特段の問題は起きませんでした。

中にはむしろ、肩(コロナ接種部)よりも腕(インフル接種部)の方が痛かった、という方さえいました。

コロナワクチンは、インフルエンザワクチンに限らず他のワクチンとの同時接種が、いまは認められています。

65歳といえば、肺炎球菌ワクチン接種の対象でもあります。対象の方は、この際、3本同時接種しますか。

サル痘の予防法は種痘だけなのか

「サル痘」改め「エムポックス」が、一部の国でまた感染拡大しているとのこと。気になりますね。

「ツイッター」改め「エックス」と似ていることも気になります(なりませんか)。

サル痘(Monkeypox)という呼称が誤解や偏見につながるから変えようなんて、まったく猿に失礼な話です。

「Monkey」の頭文字だけ残して「Mpox」にするという、その中途半端なやり方もどうかと思います。

ただ、WHOが9年前に示した指針に基づいいた、<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-1331.html" target="_blank" title="動物愛護の精神からの名称変更">動物愛護の精神からの名称変更</a>の側面もあるかもしれません。

エムポックスの原因ウイルスは「ポックスウイルス」の一種で、他に似た様な感染症がたくさんあります。

「牛痘」「豚痘」「ラクダ痘」「ヒツジ痘」「ヤギ痘」なんてのもありますが、名称はどうするのでしょうね。

「水いぼ」もこの種類のウイルスによる疾患ですが、「水痘」とは言いませんね。それはまた別の感染症。

その「水痘(水ぼうそう)」を英語で「Chicken pox」といいますが、病原はヘルペスウイルスの一種です。

「chicken」からくる誤解や偏見を防ぐために「Cpox」に名称変更しよう、という話はなさそうです。

さてエムポックスですけど、この2年間で、すでに国内でも200人以上の発生があるんですね。

水痘とは異なり、顔や手足や口や肛門周囲に発疹ができやすいということで、まるで手足口病じゃないですか。

予防にはワクチンが有効だといいます。海外では不活化ワクチンが用いられていますが、日本では未承認。

日本でエムポックス予防に使えるのは、KMB製の生ワクチン「乾燥細胞培養痘そうワクチンLC16」です。

その接種手順ガイドには、「二又針で15回を目安として少し血がにじむ程度に圧刺する」とあります。

結局「種痘」ですか。ちょっとこれは、有事の際に接種者となるのは荷が重いというか、躊躇しますね。

HPVワクチン接種、増えているけどまだ少数

HPVワクチンは、メーカーの試算では、接種率が約40%だと聞きました。

私の印象や当院のデータではそこまで多くはないのですが、最近増えていることは間違いありません。

先月発表された大阪大学の調査では、世代ごとの接種率を詳細に算出しており、興味深いものです。

(1)勧奨接種差し控え前の公費助成世代(1994〜1999年度生まれ):接種率約70%

(2)差し控えによって接種が激減した世代(2000〜2003年度生まれ):接種率約4.6%

(3)勧奨接種ではないが個別案内を受けた世代(2004〜2009年度生まれ):接種率約16%

(4)積極的勧奨が再開された世代(2010年度生まれ):接種率2.8%

勧奨接種の再開後もまだ接種率が低迷しているようです。ただ、接種状況は年々改善しつつような気はします。

当院では、対象年齢に近いお子さんが別のワクチンを接種しに来た際には、必ずHPVワクチンも勧めます。

すると保護者には積極的な方もいらっしゃいますが、大半はワクチンへの懸念や不安を口にされます。

「副反応が心配です」

その心配は当然です。かつてメディアが喧伝し、国が接種を事実上ストップするほどの一大事でしたからね。

その懸念が消えたからこそ勧奨接種が再開されたのですが、人々の不安はまだ完全には払拭されていません。

勧奨接種の差し控えが医学的には誤りであったことを、国が認めないからこんな中途半端なことになるのです。

「ワクチンって、効果はあるんですかね」

いま使っている9価ワクチンは、約9割の予防効果があることが最近の研究でわかっています。

日本で毎年1万人近くが発症している子宮頸がんを、毎年9千人減らせる計算です。当然、死亡も激減です。

「検診をしっかりと受けさせますので、ワクチンは打たなくてもいいかと」

もちろん「検診」も大事ですが、それはがん(または前がん状態)を早期発見・早期治療するためのもの。

せっかく予防法があるのに、敢えて予防せずに発がんするまで待つのですか。それほどワクチンが嫌いですか。

まず予防して、でも万一に備えて検診もする。先進諸国のその考え方が、日本人にはまだ無理なのですかね。

今シーズンのインフルワクチンの接種準備の準備中

猛暑の中、皆様お元気にお過ごしでしょうか。それともバテ気味ですか。なんならヘトヘトですか。私もです。

診察室と炎天下の駐車場を毎日何回も往復するので、白衣と手袋の間に露出した前腕部分だけ日焼けします。

大雨より猛暑の方がマシ、と先日書きましたが、こうなるとどっちもどっちです。

今日の発熱外来。コロナ遺伝子検出検査12人中、陽性10人。だいぶヤバいと思います。

ところが一方で、もう8月に入ると、実はインフルエンザワクチンの接種準備を始める時期なのです。

10月からの接種開始のために、9月中には予約サイトを立ち上げたり、ワクチンの発注をする必要があります。

さて今年は、どの時期に何人ぐらいの予約枠を設定すべきか、接種需要を予測しなければなりません。

当院のインフルワクチン接種データーベースを見ると、昨年の接種数は1,368人、接種量は652.25mlでした。

では問題。接種量が0.25mlの3歳未満のお子さんへの接種は、何人だったでしょう。

鶴亀算ですね。全員が0.5mlと仮定した場合の接種量と実際量との差を0.25で割れば答が出ます。

さて、今年は(おそらく)10月から新型コロナワクチンの定期接種が始まります。

高齢者に対しては、希望があればインフルワクチンとコロナワクチンの同時接種を行うことになるでしょう。

ただし今回のコロナワクチンは有料接種。なので需要がまったく読めず、現在予備調査中です。

そもそも、現時点でまだ、熊本市での自己負担額も決まっていません。もうそろそろ決めてほしいですね。

「帯状疱疹ワクチン」が定期接種へ

「帯状疱疹ワクチン」の、高齢者向けの「定期接種」が、来年度から始まることになりました。

帯状疱疹の予防といえば、以前は「水痘ワクチン」を使っていました。

これは、子どもの定期接種にも使っている生ワクチンを、そのまま帯状疱疹予防に応用するものです。

6年前に、不活化ワクチン「シングリックス」の接種が日本でも始まりました。

こちらは、新たに開発された組換えワクチンで、2回の接種が必要ですが高い有効性が認められています。

当院の現在の任意接種料金は、水痘生ワクチン9,000円、シングリックスは2回で44,000円です。

これは、ワクチンの納入価格を考慮して当院で独自に設定したものですが、おおむね他院と同様の料金です。

定期接種となれば公費による補助が入りますが、まさか全額公費負担の完全無料にはならないでしょう。

たとえば現在接種が行われている「成人用肺炎球菌ワクチン」では、熊本市の場合、窓口負担は4,600円です。

これは、全額自費の場合の任意接種料金と比べると、約半額の自己負担設定になっています。

一方でシングリックスは、原価がとても高く、半額自己負担ではかなり高額な窓口料金となってしまいます。

しかし、窓口負担を減らして公費負担を増やせば、自治体の財政を圧迫しかねません。

高い接種率を達成するための、ちょうど良い自己負担料金設定は、どのぐらいになるのでしょうね。