HPVワクチンのキャッチアップ接種、期間延長へ

HPVワクチンの「キャッチアップ接種」が、1年間延長されることになりました。

キャッチアップ接種とは、このワクチンの積極的勧奨が中止されて接種機会を逃した人への救済措置です。

来年3月末で終了する制度だったのでいま駆け込み接種が多く、当院でも毎月数十人ほど接種しています。

ところがその出鼻をくじくように、<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-4754.html" target="_blank" title="ワクチンの供給が制限">ワクチンの供給が制限</a>され、なかなか手に入らない状況になっています。

接種需要が急に大幅に増えたため、メーカーが安定供給のためとして先月から限定出荷を行っているのです。

国やメーカーが需要予測を過小評価していたのだとすれば、国民も侮られたものです。

このワクチン不足が原因で接種が完了できないことのないように、救済期間の延長が望まれていました。

それに対してようやく昨日、厚労省は延長方針を決めました。1年間の延長というのは悪くないでしょう。

延長期間中の接種が可能となる条件は、今年度中にキャッチアップ接種を開始することです。

これまでに1回も接種していない方でも、3月までに1回でも接種すれば、残りの2回は来年度に接種できます。

任意接種料金がとても高額なワクチンです。未接種の方は、公費負担のあるうちに接種を考えてみてください。

と書いてきましたけど、1年延長に留める理由って何でしょう。<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-4741.html" target="_blank" title="無期限延長">無期限延長</a>でやればいいじゃないですか。

毎年3千人が亡くなっている子宮頸がんを予防するためなんだから、公費負担をケチってどうするんですか。

「ワクチンデビュー」のおさらい

「ワクチンデビュー」とは、赤ちゃんが生まれて初めてワクチンを接種する、大事な節目の行事です。

新ワクチンが登場して規則が変わり、接種スケジュールやワクチンの種類が<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-1694.html" target="_blank" title="以前">以前</a>とはだいぶ変わっています。

そこで今日は、赤ちゃんの予防接種をおさらいしておきましょう。

子どもが接種を受けることが法で規定されているのが「定期予防接種」で、通常は生後2カ月から始めます。

いま、ワクチンデビューで接種しているのは、次の4つのワクチン。注射が3本と飲むワクチンが1本です。

<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-4465.html" target="_blank" title="【5種混合ワクチン】">【5種混合ワクチン】</a> 4週間間隔で3回接種+1歳になってから追加接種(計4回)

今年4月から接種が始まった、「ジフテリア・百日咳・破傷風・ポリオ・ヒブ」の5つが含まれているワクチン。

3月までは、「4種混合(ジフテリア・百日咳・破傷風・ポリオ)」と「ヒブ」は、別々に接種していました。

その「4種混合」が定期接種になったのは2012年のこと。それまでは「3種混合」と「ポリオ」は別々でした。

このように混合ワクチンができることで、医療側は手間と過誤リスクが減り、赤ちゃんは痛みが減るのです。

【肺炎球菌ワクチン】 4週間間隔で3回接種+1歳になってから追加接種(計4回)

欧米から大幅に遅れて2011年、ヒブワクチンとHPVワクチンと同時に、新たに定期予防接種に加わりました。

当初は、7つの型の肺炎球菌に効く「7価」ワクチンだったのが、2013年からは「13価」となりました。

さらに今年4月からは「15価」、10月には「20価」が登場し、両方ともいまの定期接種に使われています。

ヒブや肺炎球菌は乳児期の重症髄膜炎を起こし、百日咳も低月齢で罹患すると重症です。必ず予防しましょう。

【B型肝炎ワクチン】 4週間間隔で2回接種+その4か月後頃に3回目(計3回)

将来の肝臓がんを予防するためのワクチンなので、他のワクチンとは少し意味合いが異なります。

その意味では、子宮頸がんを予防する「HPVワクチン」と似ています。

【ロタウイルスワクチン】 2回または3回接種

これだけが飲むワクチン。早めに開始しなければ副反応が起きやすくなるので、生後2カ月での開始がお勧め。

ロタウイルス感染による胃腸炎は、すべての乳幼児がたいてい罹ります。免疫があれば重症化を防げます。

ワクチンの種類と回数が多いですが、接種スケジュールはわりと単純で規則的です。早めにご予約ください。

インフルワクチン、せっせと接種中

インフルエンザワクチンの接種を、診療日には毎日行っています。その被接種者の方々を予約別に分けると、

(1)ネット予約:専用のサイトからの予約

(2)電話予約:他の定期予防接種と同時接種する方など

(3)窓口予約:生活習慣病等で定期的に通院している方など(高齢者が多い)

(4)集団予約:近隣の事業所の方

ネット予約の方にはインフルエンザワクチンのみを接種し、他のワクチンの同時接種は行っていません。

連続50人以上の接種を行う場合もあり、効率良く、しかも間違い接種を防ぐため、同時接種を避けています。

以前は、インフル接種時に母子手帳をチェックして、不足している定期接種を同時接種することがありました。

しかしそうすると、予診票を新たに書いてもらったりワクチンを準備したりで、予定時間がずれてしまいます。

なので最近は、同時接種するワクチンがある方は電話予約にして、特定の時間帯に集まっていただいています。

高齢者のインフルエンザワクチンの定期接種は、自治体によって自己負担額が異なり、窓口は少々面倒です。

熊本市は1,500円、合志・菊陽・大津1,400円、益城1,000円、玉名1,610円の端数はなんとかしてください。

菊陽町はTSMCで潤っているかと思いきや、むしろ益城町の方が太っ腹じゃないですか。

高齢者の中には、インフルエンザとコロナワクチンを同時接種する方もいます。今日も4人ほどいました。

今後、この2つのワクチンは、高齢者においては年に1回この時期に同時接種する流れになりそうですね。

HPVワクチン集団接種

熊本市医師会が、「HPVワクチン キャッチアップ集団接種」を、11月以降の日曜日に計画しています。

公費での接種期限が来年3月に迫る中で、日曜日に接種機会を設けて接種の便宜を図ろうというものです。

対象者が17歳〜27歳ぐらいなのでで、皆さん忙しくて平日には接種しにくいという面を考慮したのでしょう。

接種日は、11/17(日)と12/22(日)と来年3/23(日)の3回。時間は午前10時から正午。定員は各日50名。

過去にHPVワクチンの接種を3回完了していない方が対象なので、2回目3回目からの集団接種もあるでしょう。

しかし途中まで接種をした方よりも、まったく未接種の方をおもに救済する機会であってほしいですね。

前にも書いたように、3月までに3回の接種を終わらせるためには、11月中に接種を始めなければなりません。

1回目と2回目の接種は最低1カ月、2回目と3回目は最低3カ月ほどの接種間隔をあける必要があります。

それを踏まえての日程でしょうけど、11/17に1回目を接種して12/22は都合の悪い方はどうするのでしょう。

翌12/23に接種出来なければ、3回目を3/23に接種することもできなくなります。なかなか難しい日程です。

そんな接種日の設定がギリギリ過ぎる上に、たった50人しか接種できないというのもケチすぎませんか。

泣いても笑っても3月までなのだから、もう今後すべての日曜日を集団接種日にしてもいいぐらいですよ。

当院は、HPVワクチンに限っては、日曜・祝日を含むすべての診療日に接種の予約を受け入れています。

ただ、ワクチンが品薄で思うように入手できません。もしかすると医師会も、そこがネックなのでしょうか。

今年も、土曜の午後はワクチンタイム

<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-4390.html" target="_blank" title="「土曜の午後は、ワクチンタイム」">「土曜の午後は、ワクチンタイム」</a>というタイトルで書いたのは、去年の10月の第一土曜日のこと。

今年も同様に、今日は午後の時間帯全てを使って、おもにインフルエンザワクチンの接種を行いました。

インフルエンザワクチンの接種希望者は、まだそれほど多くはなく、予約枠にはかなり空きがありました。

今日のインフル接種数は36人。さらに子どもの定期接種が6人、そのうちインフルとの同時接種は2人でした。

コロナワクチンについては、当院では今年はおもに65歳以上の方への定期接種を行う予定です。

その理由は、昨年はコロナ流行期でさえ、しかも無料なのに、高齢者以外の接種希望者は少なかったからです。

また、昨年までに6回か7回接種を受けた高齢者でも、今回の定期接種の希望者は1/3程度にすぎません。

最近、某「反ワクチン」団体から、コロナワクチン接種の中止を求める手紙が届きました。

とくにいま話題となっている「<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-4740.html" target="_blank" title="レプリコンワクチン">レプリコンワクチン</a>」についての恐怖を煽るようなチラシが入っていました。

このような活動はもちろん、医療機関相手だけでなく、むしろおもに一般市民を対象に行っているわけです。

書いてあることの内容について、荒唐無稽のガセ情報だと論破できるほどの材料を私は持ち合わせていません。

ただ、レプリコンだから反対なのか、mRNAすべて反対なのか。ワクチンは全部ダメというのなら論外です。

新型コロナワクチンはまだ、有効性と安全性を「使いながら検証中」、という側面があるかもしれません。

なかでもレプリコンワクチン問題については、いちど論点を整理して書いてみたいと思っています。

HPVワクチンがついに供給不足

HPVワクチンが足りなくなりそうだと、メーカーや納入業者から「限定出荷」の連絡が来ました。

9月30日の1日のみの全国受注量が22万本と、通常の約半月分の受注量だったことを受けての措置だそうです。

実際にはまだワクチンは足りているのですが、本当に欠品になる前に、供給量を抑えておこうというわけです。

メーカー曰く、「限定出荷の期間中は、予約に応じた随時購入へのご協力をお願い親します」とのこと。

つまり、余計な在庫は置かず、使う分だけ発注しろという、一見至極もっともな話です。

しかし、この時期に駆け込み接種が殺到することなど去年から予測できたのに、ワクチン不足とは呆れます。

「接種期限が迫ってますよ」と煽っておきながら、「皆が接種するからワクチンが足りません」ですからね。

当院は、このワクチンを日曜と祝日にも希望者には全員に接種している、県内では唯一の医療機関です。

なので「今日打てますか」という問合せにはすべて対応すべく、十分な在庫を持っておきたいのですけどね。

今後ワクチンは、キャッチアップ接種の完了を妨げないように、医療機関の最近の実績に応じて配分されます。

つまり、すでに1回目のキャッチアップ接種を終えた方の2回目の接種分は、優先して供給するということです。

なので今月以降に慌ててキャッチアップ接種を始める方へのワクチンは、十分に入手できないかもしれません。

当院でキャッチアップ接種をすでに開始した方の2回目以降は、当然優先して接種を完了させたいと思います。

しかし、まだ接種を開始していない方が今月からでも接種をご希望なら、その方こそ最優先したいところです。

一方で、他院で接種を始めた方が当院での2回目以降の接種をご希望の場合は、お断りするかもしれません。

ともかくこの件は、第1にメーカーが、第2に国の施策が、そして第3に不要在庫を抱えている医療機関が悪い。

今回の不手際を踏まえて、キャッチアップ接種については半年程度、期限を延長するべきでしょう。

キャッチアップ接種、来月からでも間に合います

HPVワクチンの駆け込み接種が増えています。昨日と今日で14人のキャッチアップ接種をしました。

全3回の接種を標準的な間隔で行うと6カ月を要します。年度内に終了するには今月中の接種開始が必須です。

ただし「標準的」ではない、もっと短い接種間隔でもキャッチアップ接種として認められ、公費負担です。

その、規定上最短の接種間隔は、1〜2回目の間隔が1カ月、2〜3回目の間隔は3カ月です。

したがって、本当にギリギリ期限に間に合う接種開始期限は11月、ということになります。

それに間に合わなくても、年度内に2回目まで接種できればそれらは公費で、3回目だけが自費となるはずです。

朝は涼しくなりましたが、日中の日差しはまだ強く、今日の発熱外来で私はは少し日焼けしました。

一般外来と予防接種の間に、まだしばらくは発熱外来が食い込んできそうです。陽性者もまだ毎日出ています。

手足口病は途切れないし、溶連菌感染もくすぶっています。RSウイルス感染はむしろ増えつつあります。

そんな中で来月からは、コロナワクチンやインフルエンザワクチンの定期接種も始まります。

コロナには、それぞれ特徴のある5種類のワクチンがあり、インフルにはフルミストが参入します。

毎年、10月の臨床現場は混沌としてきます。手違いの無いよう、万全の準備をして臨まなければなりません。

でもとりあえず声を大にして言いたいのは、HPVワクチンのキャッチアップ接種はまだ間に合うということ。

インフルエンザワクチン、接種を始めました

インフルエンザワクチンの接種は、ネット予約の受付を今週日曜に開始し、接種は本日から始めています。

当院では、インフルエンザワクチンの接種予約は、原則として専用のサイトで受け付けています。

毎年千数百人の方へ接種しており、予約を全部電話で受け付けていたのでは窓口がパンクするのです。

コロナ禍以来、発熱外来とワクチン接種との動線や時間帯の分離については、とくに意識しています。

たとえば、ある1日の昼休み以降ラストまで全部をワクチン接種にあてると、時間帯分離としては理想的です。

そこで、ワクチンを入荷して最初の土曜日である今日の午後を、ワクチン接種専用の時間帯としてみました。

同様に、来月の土曜の午後にも、とくに午後4時以降に、インフルワクチンの予約枠を集中的に作りました。

ただ、予想外だったのは、現時点ではまだ、予約枠があまり埋まっていないことです。

今日のように9月のうちに接種をする方もいる一方で、全体的には出足が遅い印象があります。

昨今のインフルエンザの「季節性」が不明瞭になってきたことが、その理由のひとつかもしれません。

ワクチンの効果は「5カ月間続く」といわれますが、いったいどの5カ月に的を絞るべきなのかがわからない。

今接種すれば2月いっぱいの効果しかないと思う人は、あと1,2カ月後に接種を計画するでしょう。

1月〜3月に最大の予防効果を得たい、例えば受験生の方なら、12月前半頃の接種が良いのかもしれません。

あるいは、予防効果の強さと持続時間で定評のある、経鼻ワクチン<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-4739.html" target="_blank" title="「フルミスト」">「フルミスト」</a>も選択肢でしょう。

フルミストはさいわい、来週には供給されることが決まりました。ただし、当院の導入時期は未定です。

最新情報は予約サイトでお知らせしますが、たぶんその前に、当ブログで先行告知(リーク)するでしょうね。

キャッチアップ接種の期限を撤廃してはどうか

HPVワクチンの「キャッチアップ接種」の接種率は、まだまだ低いようです。

その接種期間が来年3月末で終了します。3回分の接種を標準的に行うためには、今月中の接種開始が必要です。

実は制度上は、11月中の接種開始でもギリギリ間に合うのですが、その裏技を最初から狙わないでください。

さて今回のキャッチアップ接種は、「(定期)接種する機会を逃した」方を救済するための措置です。

なぜ「逃した」かといえば、一部メディアによる誤情報によって、副反応への過剰な懸念が煽られたからです。

さらに、慌てた国が積極的勧奨を差し止めたことが、この誤情報にお墨付きを与えた形になってしまいました。

このワクチンは世界中で以前から広く接種が行われており、その有効性と安全性は十分に立証されています。

しかし日本は当時、子宮頸がんを予防するメリットよりも、副反応のデメリットの方を重要視したのです。

これを極論すれば、「副反応から逃れるためなら子宮頸がんになってもかまわない」ということになります。

いまキャッチアップ接種率が低迷しているのは、「副反応報道」のトラウマがあまりにも強かったからです。

そしてそれが「誤情報」であったことを周知する努力が、国にもメディアにもメーカーにも足りないからです。

今後徐々に接種率が上がるとは思いますが、キャッチアップ接種を今年度で終えるのは早すぎます。

先進諸国は、子宮頸がんの撲滅に向かっています。英国は2040年、豪州は2035年を撲滅目標としています。

日本でも子宮頸がんで亡くなる女性をなくしたければ、まずはキャッチアップ接種の期限をなくしましょう。

新型コロナワクチン、5つのどれにする?

「こみなてぃ すぱいくばっくす だいちろな ぬばきそびっど こすたいべ(かな)」

コロナ退散の呪文ですうそ。来月から国内で使われることになる、5つの新型コロナワクチンの販売名です。

メーカーは順に、ファイザー、モデルナ、第一三共、武田薬品、Meiji Seikaファルマ。

このうち「ヌバキソビッド」だけが「組換えタンパク」ワクチンで、他はみな「mRNA」ワクチンです。

組換えタンパクワクチンは不活化ワクチンの一種なので、mRNAワクチンに抵抗ある方の選択肢となります。

日本では武田薬品が製造していますが、開発したのは米ノババックス社。

「コスタイベ」だけが、来月から新たに供給される新開発のワクチンで、しかも臨床導入は日本が世界初。

他のmRNAワクチンとは異なり、「レプリコンワクチン」と呼ばれる自己増殖型のmRNAワクチンです。

少量の接種でも体内で増殖して十分な抗体が持続的に作られますが、逆にそれを懸念する考え方もあります。

製造販売するのはMeiji Seikaファルマですが、開発したのは米アークトゥルス・セラピューティクス社。

「ダイチロナ」だけが、第一三共が開発した「純国産」のワクチンです。

「Daiichi-Sankyo Corona vaccine」から「Dai-chi-rona」と命名したのも国産ゆえ。ダサいですが許します。

先行するコミナティなどとは異なり、スパイク蛋白の受容体結合部位のみをコードしたmRNAワクチンです。

mRNAが小さい(短い)ので、製造管理が容易で変異株への対応も早いという特徴があります。

「コミナティ」と「スパイクバックス」は経験済のワクチンなので、接種する側としても安心感があります。

なので当院では、今回は慣れたワクチン(コミナティ)で臨むことにしております。冒険心がない?