キャッチアップ接種の開始期限は今日まで(でした)

HPVワクチンの<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-4925.html" target="_blank" title="「キャッチアップ接種」">「キャッチアップ接種」</a>の開始は、今日が期限でした。

今日までに1回でも接種しておけば、あと1年間は公費で、2回目以降のキャッチアップ接種が可能なのでした。

という、すでに期限が過ぎた話を書いても何の役にも立ちませんが、この機会に当院の状況をまとめてみます。

キャッチアップ接種が始まったのは、ちょうど3年前です。

この3年間に、当院でHPVワクチンを1回でも接種した方は220人。

そのうち、1回目の接種をした方が196人、2回目が163、3回目が134人でした。

それらのうち、キャッチアップ接種はそれぞれ、105人、80人、72人。全体の5〜6割に相当する人数です。

とくにこの1カ月間に限ってみると、1回目の接種をした方は21人、2回目が3人、3回目が28人。

それらのうち、キャッチアップ接種はそれぞれ、18人、0人、23人と、なかなか興味深いですね。

つまり、この期限ギリギリに1回目の接種をした21人のうち18人は、キャッチアップ1回目の方でした。

残る3人のうち2人も、2回目以降をキャッチアップ接種に間に合わせるための、高1の方の接種でした。

しかし考えてみると、今月のキャッチアップ接種開始が間に合わず、接種自体を諦めた方もかなりいるはず。

厚労省の方。明日以降に接種を開始すると3回すべてが自費になるルールは、あまりにも厳しくないですか。

対象年齢の女性が来年度中に接種した分は、いつそれを開始したかに関わらず、全部公費にしましょうよ。

子宮頸がんを予防する目的の下では、現行の杓子定規な規定には医学的な正当性が無いと思います。

キャッチアップ接種へ駆け込み中

HPVワクチンの接種機会を逃した方への救済措置として<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-3733.html" target="_blank" title="「キャッチアップ接種」">「キャッチアップ接種」</a>が3年前から行われています。

今月いっぱいで終了する予定の時限措置でしたが、前にも書いたように、<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-4809.html" target="_blank" title="期限が来年度末まで延長">期限が来年度末まで延長</a>されました。

間に合わない人が続出したためです。勧奨が不十分だったことに加え、ワクチンの流通にも問題がありました。

そもそも、根拠に乏しい報道に踊らされて勧奨接種を止めた国が、救済に期限を設けることが間違っています。

しかも延長しておきながら、「今年度中に1回は接種しておくこと」というケチな条件まで付いています。

厚労省の意図はわかります。無条件にダラダラ延長したのでは切迫感がなく、接種が進まないかもしれません。

なのでとにかく接種を開始させるために、今すぐ打たないと金がかかるぞと、妙な脅しをかけているのです。

すなわち、1回目さえ間に合えば3回分すべて無料だけど、1回目が間に合わなければ全部有料(約8万円)。

しかしこのような条件を付けたら、駆け込み接種を生むであろうことは自明。結局、現場は混乱するのです。

今週は毎日6,7人接種しているような状況です。残り数日のために、明後日にはワクチンを30本入荷する予定。

接種費用を負担するのは自治体です。駆け込み接種が年度末に急増すると大変でしょう。

HPVワクチンの3回分の接種には、4〜6カ月ほどかかります。接種開始は春でも夏でも、秋口でも良いのです。

その意味でも、接種開始期限を半年ぐらい延長したらどうですかね。そのつもりなら、早く発表してください。

「帯状疱疹ワクチン」の定期接種は4月開始

「帯状疱疹ワクチン」の定期接種が、予定通り来年度から始まります。4月1日からです。対象は65歳。

もちろん66歳以上の方も、経過措置として今後5年間、5の倍数の年齢の時に接種できます。

この接種対象の決め方はちょうど、「高齢者用肺炎球菌ワクチン」とよく似ています。でも、同じじゃない!

注意すべき点は、帯状疱疹ワクチンの接種対象が「満年齢」ではなく「年度年齢」で規定されていることです。

たとえば来月からの接種対象は、来年度中に65歳かそれ以上の5の倍数の年齢になる方です。

なんと私もです。私は今年9月に65歳の誕生日を迎えるので、栄えある「初年度の接種対象」なんですね。

奇しくも、「共通一次元年」の学年が、「帯状疱疹ワクチンの定期接種元年」の学年となるわけです。

このように年度年齢を採用したのは、接種を知らせる「勧奨ハガキ」を出しやすいからでしょうね。

肺炎球菌ワクチンも、経過措置期間中はそうでしたが、現在は満年齢の方に変わっています。

以前から行われているインフルエンザワクチンの定期接種も、対象は満年齢で65歳以上と規定されています。

つまり、満年齢で規定された高齢者用ワクチンが2つあるのに、年度年齢で規定したワクチンが始まるのです。

経過措置が終わったら、帯状疱疹ワクチンも満年齢規定になるのでしょうけど、しばらくは間違い注意です。

不足がちなMRワクチンの接種優先順をどうする

年度末が近づくと、年度単位で行っている定期予防接種の期限も近づいてきます。

もっと早く接種しときゃいいのに、と言ってもしょうがないですが、ともかく駆け込み接種が多くなります。

なかでも重要なのは、就学前の年度(年長児)で接種する、麻しん/風しん混合(MR)ワクチン第2期接種です。

そしてこのMRワクチンが、昨年から品薄です。

原因は、武田薬品におけるワクチンの不具合(力価不足=効かない)で、まだ解決していないようです。

そのあおりを受けて、第一三共のMRワクチンもやや品薄になり、出荷が少し制限されています。

この状況はちょうど、先日書いたおたふくかぜワクチンの問題とそっくり、というか真逆です。

おたふくでは、第一三共のワクチンに不具合が出て出荷を停止したため、武田の方にしわ寄せが来ています。

当院で以前MR1期を接種した、今は年長のお子さんで、2期の接種歴の無い方を検索してみたら29人いました。

他院で接種したり、転居した方もいるかもしれませんが、単に未接種(接種忘れ)の方もいるはずです。

そういう方々には、接種期限が迫っていることを連絡した方がよいのかもしれません。

しかしワクチン不足のいま、2期の未接種者を救済するよりも、1期のお子さんへの接種の方が優先でしょう。

当院で乳児期にワクチンを接種して、いま1歳なのにMRワクチンが未接種の方を検索したら27人いました。

このうち、1歳後半のお子さんは12人。こういう方には、念のため連絡を取った方が良いのでしょうか。

でもそれよりも、すでに接種を予約済の方のワクチンこそ、最優先で確実に確保すべきでしょう。

製造元が限られるワクチンは、様々な要因で急に不足します。対象年齢になったらすぐ接種することです。

またまた、おたふくかぜワクチン不足

「おたふくかぜのワクチンが、いま不足しています。ただし、接種希望者が急増しているわけじゃありません」

と書いたのは<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-3492.html" target="_blank" title="4年前">4年前</a>のことですが、まさに今日も、同じ内容のブログを書かなければならない状況です。

おたふくかぜワクチンは、武田薬品と第一三共で製造しています。当院はいま、第一三共の方を使っています。

前回は、武田の工場で不具合が見つかって製造を中断した事案だったので、第一三共の方は流通していました。

つまり当院への影響はなく、武田の欠品騒ぎについては、申し訳ないですが高みの見物をしていた次第です。

ところが今回は第一三共です。有効成分の力価が規格を満たしていない(=効かない)ことが判明しました。

3月から出荷停止。すでに今月から限定出荷とし、9月まで出荷できない見込みだとのこと。これは困りますね。

しょうがないので武田のワクチンを急遽お願いしようと薬品卸に電話したら、それも難しいです、だと。

日頃取引のない当院に出せる武田のワクチンは無いと、そういうことですか。前回とは立場が逆転しましたね。

たぶん今回は、武田のワクチンを使っている医療機関がニヤッとしているんでしょうね、きっと。

と思っていたら、どうやら武田の流通も制限されていて、結果的に全体のワクチンが足りなくなっています。

ワクチンって、メーカーが限られている上に有効期限も短いので、こういうことがよく起きますね。

業界全体のワクチン供給計画に余裕がないのでしょうか。ワクチンが儲からないのかもしれませんね。

当院内の在庫はまだ多少ありますが、今後しばらくは節約して接種することになります。

すでに予約済の方の他には、MR第1期接種との同時接種の場合に限って使うことにします。ご了承ください。

「昭和100年」に高齢者の仲間入り

「昭和100年」となる今年、IT分野では、システム障害が起きる可能性「2025年問題」が指摘されています。

かつての「2000年問題」の日本限定版ですか。まあシステム改修でなんとかなるんでしょう。知らんけど。

昭和生まれの人の年齢がすぐわかる、というメリットはありますね、今年は。

昭和35年生まれの私なら、100から35を引いて今年65歳。誕生日前なら、1引いてください(老婆心)。

各種高齢者割引きなど、さまざまな「特典」が待ち受けているのが65歳です。

ANAの「スマートシニア空割」もそのひとつ。ですが搭乗当日しか予約できないので使いにくいですかね。

そういえばTOHOシネマズも、「シニア割引き」対象の60歳になってから、なぜかほとんど行ってませんね。

65歳になったら「高齢者の定期予防接種」を受けることになります。待ち受けているのは、次の4ワクチン。

(1)インフルエンザ(10月〜1月)、(2)新型コロナ(10月〜3月)、(3)肺炎球菌、(4)帯状疱疹

以上の4つの定期接種ワクチンのほかに、2つの任意接種ワクチンが高齢者に推奨されています。

(5)20価肺炎球菌結合型ワクチン:子ども用と同じワクチン、(3)の1年後から接種可能

(6)RSウイルスワクチン:60歳以上が対象

他人に接種を勧める立場上、自分が対象となるワクチンは全部接種するつもりです。今年は忙しくなりそう。

インフルエンザワクチン、まだ接種できます

インフルエンザが大流行しつつあることは何度も書いていますが、検出されるのはほとんど「A型」です。

国立感染症研究所が公表している「ウイルス分離・検出報告数」を見ると、過去数年の流行型がよくわります。

今期のウイルスは、ほとんどが「A(H1)pdm09」型。2009年に登場した、旧「新型インフル」ですね。

コロナ禍の最初の2年間、インフルエンザはまったく流行しませんでした。

感染対策が徹底しているからとか、ウイルス干渉だとか、そんな理由が説明され、ある程度納得していました。

ところが2023年からは、コロナとインフルが両方とも、断続的に流行するようになってしまいました。

コロナ禍前年の2019/20シーズンの、インフルエンザ流行株は「A(H1)pdm09」でした。

2年間の空白期間を経て、2022/23シーズンは「A(H3)」株の流行でインフルシーズンが再開しました。

その翌年、2023/24シーズンは、「A(H3)」に「A(H1)pdm09」が加わり、最後はB型に置き換わりました。

そして今シーズン。現時点では圧倒的に「A(H1)pdm09」のようですが、今後どうなるかはわかりません。

A型に罹った方でも、その後同じシーズン中にB型に罹ることもよくあります。

さらに時々、A型に「2度罹り」する人もいます。「A(H3)」と「A(H1)pdm09」の両方に感染したわけです。

これらすべての型に対する免疫を付けるのが、インフルエンザワクチンです。

感染を確実に防ぐほどの効力はありませんが、それなりの感染防止と重症化防止効果はあります。

今期未接種の方は、いまからでも接種を検討してみてください。まだ間に合います。

当院のインフルワクチンのネット予約は、本日をもって終了しましたが、ワクチンの在庫はまだ十分あります。

やっぱ打っとこう、と思われたら、いつでも電話でご予約ください。

ワクチンの「有効期限」管理

「有効期限を11日過ぎたヒブワクチン」を、県内の医療機関が1歳児に接種したと報じられました。

過誤接種には違いないですが、さいわい、期限を11日過ぎていたとしても医学的には何の問題もないでしょう。

むしろ問題は別にあります。有効期限を見落とすような確認態勢で他の間違いは起きてないのか、ということ。

接種量や間隔の間違いとか、違うワクチンを接種したり、接種する子どもを取り違えたり、という心配です。

とは言え、いちばん見落としやすいのは、たしかに有効期限でしょう。なにしろその表示が小さいのです。

なので当院では、ワクチン毎のロット番号と有効期限の札を、保冷庫の前面に目立つようにぶら下げています。

期限の年ごとに札の色を変え、期限間近のワクチンが常に目に付くようにして、緊張感を保っています。

ところで、当院で最近使ったヒブワクチンの有効期限をあらためて調べてみました。

今年3月〜5月の間に購入したワクチンの有効期限は全部、今年の11月でした。

すべて9月までに使い終えていましたが、けっこう期限の近いワクチンを使ったことがわかります。

6月〜8月には入荷はなく、9月以降の入荷分からは、有効期限が来年10月にまで大幅に伸びています。

このように、入荷ごとの有効期限の変化幅が大きいワクチンは、流通量が少ないのだろうと推測します。

5種混合ワクチンの導入以来、ヒブワクチンの需要が激減し、輸入量が減ったのかもしれません。

なので発注のタイミングによっては、有効期限間近のワクチンが届く可能性もあるわけです。

有効期限切れは過誤接種をまねくだけでなく、単価の高いワクチンを廃棄するというムダにもつながります。

医療機関においては、予防接種の予約とワクチンの発注を正確に連携させ、効率の良い在庫管理が必要です。

「帯状疱疹ワクチン」の定期接種対象は65歳

「帯状疱疹ワクチン」の、高齢者向けの「定期接種」が、来年度から始まることになりました。

と、<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-4648.html" target="_blank" title="5カ月ぐらい前に書いた">5カ月ぐらい前に書いた</a>のですが、どうやらようやく、本決まりになりそうです。

対象は65歳。ただし5年間の経過措置の間は、「5の倍数の年齢」の高齢者全員が対象となります。

これはちょうど「肺炎球菌ワクチン」と同じやり方ですが、肺炎球菌ワクチンは接種率が伸びませんでした。

しょうがないので5年間の経過措置を2回、<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-4506.html" target="_blank" title="計10年間の経過措置">計10年間の経過措置</a>が行われ、それが今年3月に終わりました。

その肺炎球菌ワクチンとは対照的に、帯状疱疹ワクチンは以前から問合せが多いですね。

任意接種(自費)でも接種したいという方もいますが、でも接種料金を聞いて辞退される方がほとんどです。

接種料金は、当院では2回で4万4千円です。バカ高です。だって、ワクチンの原価がべらぼうに高いのです。

そんな高額なワクチンなので、定期接種での自己負担金がいくらぐらいに設定されるのか、それが心配です。

ちなみに、このワクチンよりももっと高額の「HPVワクチン」は、自己負担ゼロで定期接種が行われています。

しかしその若者対象のHPVワクチンと比べると、高齢者対象の帯状疱疹ワクチンは分が悪いですね。

対象人数が多く自治体の財政を圧迫するので、高齢者にはある程度負担してもらうことになることでしょう。

では皆さま来年度からは、65歳になったら、肺炎球菌ワクチンと一緒に帯状疱疹ワクチンも接種しましょう。

さらに65歳と言えば、インフルエンザワクチンと新型コロナウイルスワクチンが、定期接種の対象となる年齢。

なので来年9月に65歳になる私は、10月には4つの定期接種を受けることになりそうです。ドキドキしますね。

「ハンコ注射」しています

結核を予防するための「BCG」は、いまでも「管針法」による皮内接種(いわゆるハンコ注射)をしています。

乾燥したBCGが入っているガラスアンプルを、アルコール消毒してカットするところから、すでに面倒臭い。

アルコールがよく乾いてからカットしなければ、中のBCG菌が死滅する可能性があり、慎重を要します。

溶解液をアンプルに入れて、これまた慎重に、時間をかけて溶解します。

上腕部をアルコール消毒して十分に乾かした後、BCG液をスポイトで吸って上腕部に垂らし、薄く伸ばします。

その濡れた部分にハンコを2カ所押します。シャチハタみたいに簡単にならんかなと、毎回思います。

ハンコの針跡(接種痕)は、3×3の9個が2セットで合計18個の点が並びます。大人になっても残ります。

過去にBCGは、経口投与→皮下注射→皮内注射→経皮接種(ハンコ注射)と、接種法が変遷してきました。

現在の方法がいちばん痕が残りにくい洗練された方法なのですが、それでもなんとなくレトロですよね。

しかもいまBCGをハンコ注射している国は、驚いたことに、世界中で日本と南アフリカだけだそうですね。

日本はつい2021年に「結核低まん延国」の基準を満たしたばかりで、先進国からは数十年遅れています。

なのでBCGがまだ定期接種なのですが、欧米先進国ではすでにBCGを接種しなくなった国が多いようです。

そもそもBCGは乳幼児の重症結核を予防する効果しか無く、日本もやがて接種を中止する日が来るでしょう。

昔は多くの予防接種が集団接種であり、注射器具の使い回しによるB型肝炎感染が問題となっています。

その「B型肝炎訴訟」における証拠として、医師によるBCG接種痕の確認(意見書)が求められています。

それがハンコ注射なら一目瞭然です。ところが昭和42年までは、皮内注射だったのです。

その接種痕を見る機会が最近ありましたが、種痘の接種痕とよく似ていて、私には判別できませんでした。

最近の人のハンコ注射痕と比べてどっちが目立つか(醜いか)、これは意外と甲乙付けがたいですね。