コロナとインフルは「同時接種」しません(たぶん)

新型コロナワクチンと他のワクチンの「同時接種」は、インフルエンザに限り例外的に認められています。

まだ検討中かと思ってたら、7月の審議会の結論をもって決定事項だったんですね。一応は朗報です。

当院では、子どものワクチンの同時接種を積極的に行ってます。早期接種完了のために有用だからです。

しかし2年前から、インフルエンザと他のワクチンの同時接種に限っては、原則として行っていません。

多くの人にインフルワクチンを接種する際に同時接種を行うと、接種作業が複雑になり手間がかかるからです。

このような場合の「手間」は得てして「確認不足」を誘発し、「過誤」を生む要因となりかねません。

新型コロナワクチンとインフルエンザワクチンの同時接種でも、同じ懸念があります。

コロナワクチンは1バイアルから複数人に接種する特殊性から、同じ時間帯に多人数を集めて接種しています。

一方でインフルも、接種枠を決めてまとめて予約を取る(原則としてネット予約)方式で接種してきました。

両者を同時接種することになれば、多人数への接種の流れが複雑になり、過誤の入り込む余地が生まれます。

なので今シーズンは、両者別々の接種枠を設定してそれぞれ単独接種を行い、同時接種は行わない方針です。

幸い、インフルとコロナの接種間隔には制限がないので、それぞれの接種を別々に独立して計画できます。

同じ人が午前中にインフル、午後にコロナを接種するような「同日接種」も、計画の自由度を高める裏技です。

それよりも問題は、今年のインフルワクチンの接種希望者が多いのか少ないのか、予測ができないことです。

おまけにコロナワクチンの入荷数も不透明。仮に両者を同時接種しようにも、計画の立てようがないのです。

「オミクロン株対応ワクチン」の接種希望量調査

「オミクロン株対応ワクチン」の接種が、10月中には始まることになりそうです。

現在接種を行っている新型コロナワクチンは、オミクロン以前の「従来株」に効くように作られたものでした。

この従来株に加えてオミクロン株(BA.1)にも対応した、「2価ワクチン」の接種が決定しました。

接種対象や前回からの接種間隔など、詳細はまだ決まっていません。何よりも供給量がどうなるか心配です。

そんな中、熊本市から各医療機関にむけて、オミクロン株対応ワクチンの接種希望量の調査が始まりました。

10月11日〜12月31日の各日の、ファイザーとモデルナの接種予定人数(希望人数)を全部書けというもの。

この10〜12月と言えば、インフルエンザワクチンの接種時期とピッタリ重なります。

コロナワクチンとインフルワクチンに、これまで通り2週間の接種間隔が必要だと、かなり面倒です。

(追記:インフルワクチンに限り、コロナワクチンとの接種間隔の規定は撤廃されることになりました)

そもそもインフルが流行するのかどうかもわかりません。去年と一昨年は完全に肩透かしを食らいましたから。

おまけに両方のワクチンの接種を並行して進めるときに、まさか発熱外来もまだ多忙だと困りますね。

そんな状況なのに、年末までの詳細な接種計画を今月中に決めて提出せよという、いつもの無理難題。

こんな調査にはもう慣れてます。詳しく計画を練ることもできず、アバウトな回答になるのも毎度のこと。

たまには接種専用日も

毎週金曜日は休診日ですが、今日は特別に、予約者を集めて新型コロナワクチンの4回目の接種を行いました。

当院で3回目接種を2/14までに行った高齢者の中から、82人にモデルナのワクチンを接種しました。

待合室での「密」を避けるため、予約時間通りに来院していただき、接種15分後にお帰りいただく流れでした。

ですが皆さん、早め早めにいらっしゃる。10分前なんてのは遅い方で、たいていは20分前には到着されます。

1時間近く前にやって来る方も珍しくありません。たぶん、起床時刻から何からすべてが、早い方なのです。

徒歩で来院する方も多く、時間まで車でお待ちいただくこともできず、結局、予定より早めの接種となります。

このようにして、「早めに行ったら早めに診てもらえた」という記憶が強く定着していくのでしょうね。

接種(筋肉注射)はすべて、私が行いました。左利きの方1名以外全員が左肩への注射です。

登録作業や確認作業のうち私が行うのは、電子カルテへの記載と、院内データベースの確認と登録です。

私の作業内容だと、1人3分あればこなせますが、他のスタッフの作業を考慮すると1人4分ペースが妥当です。

なので1時間に15人、これはちょうどモデルナ1バイアルからとれる本数(公称値)に相当します。

実際には、ローデッドシリンジなら1バイアル20人分とれるし、慎重にやれば21本、ギリで22本いけます。

ただしワクチンは配給制で無料だし、とくに流通量の多いモデルナでは、あまり無理なことはしません。

一方でファイザーは品薄です。8月分の当院の配給数はたった5本でしたが、9月に至ってはわずかに2本です。

そんなわけで、これまでファイザーを3回打ってきた方も、4回目はほぼモデルナですのでご了承ください。

ワクチン+自然感染で、コロナ免疫を長期間維持する作戦

新型コロナワクチン接種後の、自分の血液中の「抗体価」を調べてみました。

当院で4回目接種を受けた、私を含む2名の「SARS-CoV-2 スパイク蛋白(IgG)」を測定しました。

4回目接種のちょうど2週間後において、2人とも抗体価は約13,000 AU/mlでした。十分高い数値です。

新型コロナウイルスは、表面の「スパイク」という構造物がヒトの細胞表面と結合して、感染が成立します。

「mRNAワクチン」は、スパイク蛋白の設計図を接種することにより、人体内でスパイク蛋白を作らせます。

すると免疫反応によりスパイク蛋白に対する抗体が体内で製造され、これがウイルス防御の武器となります。

ワクチンの接種によって抗体価が上昇しても、残念ながらやがて徐々に低下していきます。

一説では、3カ月で半減し、4か月後には30%程度に下がるとも言われています。

そのようなワクチン効果の減弱によって、いま日本で感染再拡大が起きているという考え方もあります。

私が今、かなり強い免疫を持っているとしても、数カ月後には貧弱な免疫状態になってしまうのでしょう。

ではこれからも、何度も何度もワクチンの接種を繰り返さなければ、免疫は維持できないのでしょうか。

いや、自然感染による免疫の再強化、すなわち「ブースター効果」を期待する手もあります。

免疫力の強いうちに、発熱外来で感染者の飛沫を適度に浴びて刺激を受け続け、免疫を維持する手法です。

現状の感染防護態勢を敢えて緩めるという、少々危険な香りのする作戦ですが、上手に試したい気もします。

今からでも、ワクチン打ちましょう

「もしや感染者数が増加に転じてませんか」と書いたのは9日前のこと。いやはや、確実に増えてますね。

「直近1週間の人口10万人あたりの感染者数」は、熊本県は沖縄県に次いで全国2位じゃないですか。

たしかに発熱外来多いです。とくに子どもの感染者が増えています。

近隣の小学校では、学級閉鎖や学年閉鎖が相次いでいます。

その学校の生徒はしかし、学年が違うと学級閉鎖のことなど知らない子もいます。

クラスの誰かが休んでも、その子がコロナなのか何なのか、「個人情報」を理由に明らかにはされません。

担任の先生がコロナで休んでも、子どもたちには明確には伝えられない有り様です。

集計するには1日早いですが、今月当院でPCRまたは抗原検査で陽性と診断した109人の内訳を調べると、

10歳未満29人(27%)、10代18人(17%)、20代9人(8%)と、ここまでで50%を超えました。

一方で、60歳以上はわずかに7人(6%)、65歳以上に限るとたったの3人でした。

感染者は圧倒的に小学生や未就学児に多く、彼らは最初は高熱が出ますが、すぐに解熱して元気になります。

大人の症状は2パターン。微熱のまま経過する方と、高熱が2,3日続く方。ほぼ、ワクチン接種歴の違いです。

18歳以上で今月PCR陽性になった60人のうち、ワクチン3回接種済の方は29人もいました。

ワクチン接種は、感染予防効果はゼロじゃないけど弱い。しかし言われている通り、症状は軽くなるようです。

今からでも決して遅くはないでしょう。3回目接種は、やっぱりオススメですね。

乳児の定期接種の「セット予診票」を望む

赤ちゃん(乳児)の定期予防接種は、満2カ月から始まります。いわゆる「ワクチンデビュー」です。

デビュー後には毎月、数カ月間、定期接種に「通う」ようになります。接種ワクチンの概略はこうです。

(1)2カ月:ヒブ・肺炎球菌・B型肝炎・ロタウイルスワクチン

(2)3カ月:ヒブ・肺炎球菌・B型肝炎・ロタウイルスワクチン・4種混合ワクチン

(3)4カ月:ヒブ・肺炎球菌・ロタウイルスワクチン・4種混合ワクチン

(4)5カ月:BCG・4種混合ワクチン

(5)6カ月:日本脳炎ワクチン

(6)7カ月:日本脳炎・B型肝炎ワクチン

保護者の方は、4種類5種類のワクチン接種のために、4枚5枚の予診票を書かなければなりません。

いちばん上の方に、住所・氏名(フリガナ)性別・生年月日・保護者氏名・体温・平熱を書く欄があります。

その下には、いくつもの質問事項が並ぶので記入したり、はい・いいえ、の該当する方を丸で囲みます。

1枚書き上げるのに数分程度を要します。複数のワクチンを接種する場合には、かなりの作業量になります。

昨日から鼻水が出ている場合、4枚5枚の予診票全てに、昨日から鼻水が出る旨を書かなければなりません。

それが面倒で、少々の体調不良は記載しない方がいるかもしれません。

1カ月以内に他のワクチンを接種したかどうかを問う設問もあり、ワクチン名をすべて書く必要があります。

4週間おきに複数のワクチンの接種を行っている方にとって、この欄の記載はかなり大変です。

それがイヤで、4週間ではなく31日間隔でのワクチン接種を希望する親御さんもいるほどです。

自治体によっては、複数のワクチンの同時接種時には、専用の予診票が準備されているそうです。

どうせ設問内容などは全く同じなのだから、複数のワクチン接種のために書く予診票は1枚で良いはずです。

「ワクチンデビューセット」とか「満3カ月セット」みたいな、わかりやすいセットの予診票がいいですね。

熊本でも早く採用していただきたい。

小児の新型コロナワクチン接種者が、これ以上増える気がしない

高齢者を中心に「4回目接種」の希望者は多く、当院の7月の予定枠はかなり埋まってきました。

ファイザーの供給量が少なくモデルナ主体になるので、それを嫌がる方が一部、接種を見合わせています。

しかし副反応の心配よりも、少しでも早い接種を望む方が、高齢者には圧倒的に多いようです。

それとは対照的に、小児(5〜11歳)の接種が低迷しているのは、<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-3853.html" target="_blank" title="先日も書いた">先日も書いた</a>通りです。

少しでも接種数を増やそうと、熊本市の予約規定やシステムが変更されます。

予約日に制限を設けず、1回目接種も2回目接種も、接種間隔を守ればいつでも予約できるようになります。

また医療機関へのワクチン供給量の上限も撤廃され、医療機関は何人にでも接種できるようになります。

これで、予約が取れないために希望通りの接種ができない小児はいなくなるはずです。

ですが残念なことに、そもそも接種希望者がいません。当院への問い合わせも、最近はほとんどありません。

振り返ってみると、接種開始前の3月には、多くの熱心な問い合わせをいただきました。

勢いを感じて当院では、熊本市の接種開始日よりも1日前倒しして、3月27日(日)から接種を始めたほどです。

その後の接種希望者の出現具合を、「<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-1260.html" target="_blank" title="イノベーター理論">イノベーター理論</a>」になぞらえると、次のようになります。

待ってましたと、初日の接種に24人の予約が入りました。これはある意味「イノベーター」な方々です。

その後の1カ月で、約30人の予約が入りました。これを「アーリーアダプター」としましょうか。

ところが、その後が続きません。「アーリーマジョリティー」も「レイトマジョリティー」も不在。

世の中の大半は、「ラガード」つまり「様子見」を決め込んでいる人たちなんですね。

夏休みの接種希望者も、いまのところ現れません。問い合わせゼロです。

残念ながら、予約を取りやすくしても接種率が改善するとは思えません。問題はもっと深刻なのです。

「4回目接種」後の副反応は過去最強、というわけでもない

私自身が新型コロナワクチンの「4回目接種」を受けて2日たちました。まずはその経過報告から。

2日前の接種当日の夜、上腕部から肩にかけての痛みが始まり、翌日さらに強まり、今朝まで続きました。

ただ、寝返りを打って左側臥位で寝ることは可能でした。これは3回目接種後には不可能だったことです。

そして今日の午前中ふと気が付くと、痛みがほとんど消えていました。突然に改善するんですね。熱なし。

熊本市から当院へ配給される、8月接種分の4回目接種用ワクチンの量(接種可能上限量)が通知されました。

当院は、かかりつけの方への接種数を計算して、ファイザー84人分、モデルナ135人分を申請していました。

ところが通知された配分量は、ファイザー30人分、モデルナ135人分。ファイザー大幅削減。モデルナは満額。

これは6月・7月も同様でした。なのでいま予約を受け付けている方は原則として、モデルナの接種となります。

接種希望者の方の反応は、(1)モデルナでもかまいませんよ、(2)ファイザーがいいですね、の2通り。

モデルナOKの方は、接種券が届いてなくても、当院での予約が確定し、接種日時を決定していきます。

一方でファイザー希望の方は、わずかな配給数でやりくりすることになり、接種予定日は決めにくくなります。

3回目でファイザーを接種した際に副反応が強かった方の、4回目接種に対する考え方は、3つに分かれます。

(1)こんどはモデルナを打ちたい:妥当な考え方

(2)やはりファイザーを打ちたい:モデルナを接種したら、もっとひどい副反応が起きそうなので

(3)もう、打ちたくない:そのような方には、無理強いはしません

「4回目接種」開始

新型コロナワクチンの「4回目接種」が始まっています。当院でも今日から、接種を開始しました。

その対象となるのは、3回目接種から5カ月以上を経過して、次のいずれかを満たす方です。

(1)60歳以上

(2)18〜59歳で、(A)基礎疾患を有するか、(B)新型コロナの重症化リスクが高いと医師が認める者

当院では今日、6人に接種を行いました。私自身も(1)の「高齢者枠」で接種しました。

4回目接種に限っては、たとえ医療従事者でも基礎疾患が無ければ、59歳以下の方は接種できない規則です。

コロナ病棟や発熱外来に従事する者よりも、高齢者や重症化リスクのある方への接種が優先されています。

ワクチン接種の目的が、感染予防ではなく重症化予防であることが、ここに来て明確になってきたわけです。

でも感染リスクよりも重症化リスクを重要視するのであれば、若者への3回目接種勧奨とは若干矛盾します。

「2回目きつかったし、コロナ罹っても軽いなら3回目は接種しない」という若者の意見は至極真っ当です。

新たな理論で開発されたばかりのワクチンが、治験もそこそこに、世界中で猛然と接種し続けられています。

私は基本的にはワクチン推進派ですが、このような激流に身を任せ続けて良いものか、時々考えてしまいます。

しかし他人に接種を勧める以上、とりあえず自分が打っておかねばと、本日率先して接種したところです。

さて、4回目接種後の副反応は3回目と比べてどうなんでしょうね。あー、そろそろ腕が痛み始めました。

HPVワクチンの勧奨接種再開はたぶん、コロナのおかげです

HPVワクチン(子宮頸がん予防ワクチン)接種の積極的勧奨が差し控えられて9年。もうそんなにたちますか。

世界中で幅広く、粛々と、平然と接種が行われているこのワクチンを、日本人だけが忌避し続けてきました。

最近になってようやく<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-3820.html" target="_blank" title="勧奨再開">勧奨再開</a>となりましたが、現時点では、接種希望者が急増している雰囲気はありません。

それでも、キャッチアップ接種の希望者はそこそこいます。これからだんだん増えていくのでしょう。

日本人は、理屈よりも情緒の国民性。科学的事実よりも、衝撃的な映像などメディアの影響を強く受けます。

メディアは、そんな国民や各種団体に「ウケ」の良い報道を垂れ流し、あるいは扇動します。

国は、メディアや団体から叩かれるのを嫌い、また過去の判例にとらわれ、事なかれ主義の無策に徹します。

女性を子宮頸がんから守らなければならないことの重要性は、昨今どうしても無視できなくなってきました。

根拠をもって勧奨を止めたワクチンの接種を、一転して推し進めるためには、何かきっかけが必要です。

しかし、ワクチンの成分も有効性も安全性も9年前と同じ。何か新事実が出てくるとも思えない。

そんな時に、突如として現れたのが、新型コロナウイルス感染症であり、新型コロナワクチンなわけです。

日本人は、たとえ副作用があっても有用ならと争うようにワクチンを接種しました。筋肉注射にも慣れました。

この新型コロナワクチンの登場は、HPVワクチンの再開に向けての、追い風どころか神風に近いものでした。