レントゲンもデジタル

レントゲン検査の世界もデジタル化していることは、<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-1745.html" target="_blank" title="先日も書いた">先日も書いた</a>通りです。

どのような方法であれ、X線照射装置により撮影し、体を透過したX線を何らかの形で記録するところは同じ。

その記録方法が進化しつつあるわけです。古い順に並べてみると、

(1)感光剤を塗ったフィルムに焼き付け、現像機で現像し、そのフィルム自体を明るいところで見る。

(2)特殊な蛍光体を塗ったプレートに撮影し、スキャナで発光させて読み取り、デジタル画像に変換する。

(3)CCDカメラ(または大型検出器)で撮影し、デジタル画像に変換する。

現在の主流は(2)でしょう。スキャナを通した後のプレートは、情報が消去されるので、何度でも使えます。

しかし(2)は、スキャン作業にひと手間かかります。その点(3)は、まったくデジカメと同じ原理です。

9年前の当院開業時は、(1)から(2)への過渡期であり、(3)はまだ登場したばかりの新機軸でした。

新しモノにとびつきたがる私ですが、信頼性を考慮して、(2)を選択し、現在に至っています。

それをこのたび、(3)のCCDカメラの装置に切り替えるすることにしました。ついにフルデジタル化です。

撮影の数秒後には、診察室でレントゲン写真を見ることができます。

導入するのは、アールエフ社の「NAOMI」です。NAOMIって、何かの略じゃないですよ。「ナオミ」です。

そのネーミングですよね、ユニークというか、気恥ずかしいのは。

この会社は、飲み込むタイプの「カプセル内視鏡」でも有名ですが、その製品名もユニーク。

最初は「NORIKA(ノリカ)」だったのですが、改良されて今は「Sayaka(サヤカ)」です。やれやれ。

胸部レントゲン検査

頻度はそれほど多くはないですが、当院でも、胸部レントゲン検査をときどき行っています。

肺炎や胸膜炎や気胸を疑うときや、心不全や他の心肺疾患の経過観察のために、定期検査する場合もあります。

フィルムではなく「イメージングプレート」という、X線を感知するセンサーの板をセットして、撮影します。

そのプレートを、読み取り装置に入れると、専用のパソコン(Windows)上に画像が出てきます。

このようなシステムを「CR(コンピュータX線撮影)」といい、いまの医療現場では一般的です。

画像は院内LANを介して、診察室の電子カルテの端末(Mac)でも見ることができます。

さてその、専用のWindowsパソコンが古いので更新しましょうよと、CRメーカーが見積を持って来ました。

パソコン本体とモニターとCR用ソフトが、すべて最新版になるそうです。

総額275万円のところ、特別に205万円値引きして、見積額は70万円。そういう価格の出し方がまず、イヤ。

レントゲン撮影の時、スイッチはいつも規則通り、私が押しています。看護師に押させるのは、違法行為です。

「はい、息を大きく吸って〜、止めてっ!」などと、インターホン越しに呼びかけて、スイッチを押します。

「はい、息を大きく吸って〜、吐きだしてっ!」と、言い間違えてしまったことが、一度ありました。

「は〜い、では次、本番行きますよ〜」と続けて、ごまかしました。

壁紙修復DIY

熊本地震で、当院の備品等は一部損壊しましたが、建物自体の被害は比較的軽微でした。

そんな中で、壁紙(クロス)は、あちこちで裂けました。数えてみると、大小合わせて50カ所以上。

壁と建具の揺れ方のミスマッチが原因でしょうか。ドアや窓に近接する部分で、壁紙がいちいち裂けています。

ハウスメーカーに修復の見積を依頼したところ、予想よりも1桁高い、腰を抜かすぐらいの金額でした。

足場を組み、エアコン等を外し、壁の下地を修復し、壁紙をすべて貼り替えるという、壮大な工事です。

申請すれば、国からの補助も出るのですが、それでも高すぎます。というわけで、DIYです。部分修復です。

修復にはどのような道具が必要か、ネットで予習してから、ハンズマンに出かけました。が、売り切れ。

壁紙修復関連用品が、ことごとく売り切れています。むむむ、甘かったか。というわけで、Amazonで発注。

そのグッズが届いたので、先週から診療の合間などに少しずつ、修復を行っています。

以下、文章ではわかりにくいのは承知で、その手順を書いてみましょう。

(1)修復部付近の壁紙を剥がす(めくる)ために、カッターで切り込みを入れ、壁紙を観音開きにする

(2)デコボコに盛り上がった下地をカッターで削る

(3)パテを塗って窪みを埋めて平らにし、パテが乾いて縮んだら塗り重ね、乾かす

(4)壁紙用の糊を塗って、観音開きしていた壁紙を元に戻して貼り付け、ローラーでならす

(5)乾いたあとで、隙間があればコーキングを入れ込む

素人がやったにしては、思いのほか仕上がりが良く、なかなか楽しいDIYですね。

天変地異とデータの保管

医療機関の被災では、建物の損壊、停電、断水、機器の故障の次に来る問題は、カルテの散逸でしょうか。

紙ベースのカルテや、レントゲンのフィルムなどは、今後の復旧が大変でしょう。

電子カルテの医療機関では、端末やネットワークの被害状況と、<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-59.html" target="_blank" title="データの保存">データの保存</a>状態がいちばん気になります。

当院では、電子カルテのデータ(診療内容や患者情報)は、毎日診療終了後にバックアップをとっています。

システムによっては、クラウドベースでデータを保存する場合もありますが、当院では院内保存の形です。

電子カルテのサーバー機の内臓HDDに、まず最初のバックアップを取っていますが、これはダメですね。

サーバー機自体が故障したら、それでアウトです。

なるべく毎日(実際には週に2,3回)、別のMacにも、その<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-1213.html" target="_blank" title="バックアップの複製を保存">バックアップの複製を保存</a>することにしています。

しかしそのMacも故障したら、やはりアウトです。

外付けHDDや、DVDや、USBメディアに、バックアップを保管する方法もありますが、私はやっていません。

小さな装置やメディアに個人情報などを保管したら、セキュリティー上の心配が出てくるからです。

当院では、10台のパソコンを使っていましたが、そのうち9台が、地震で床に落下してしまいました。

そのうち電子カルテのサーバー機(iMac)は、液晶パネルの損傷が激しく、起動ができなくなりました。

しかし奇跡的に、ネットワーク経由で内蔵HDDにアクセスできたので、データは取り出せました。

そのデータが取り出せなかったら、地震の直前2日分の診療情報をすべて、失うところでした。

バックアップは常に、複数の場所に保管する、という鉄則は守らねばなりませんね。このたび痛感しました。

しかし、パソコンが全部同時に故障しかねなかった今回の大地震では、この方法でも不十分。NASでも同じ。

自宅に分散保管したとしても、やはり完璧ではありません。自宅も被災したからです。

このたびのような「天変地異」を経験すると、クラウドへのバックアップも、検討すべきかと思えてきました。

1人で診療してみました

「事務員なし、看護師なし、医者1人」

このような、離島の診療所のような環境での診療に、今朝はチャレンジしてみました。

定期処方薬が切れそうな人や紛失した人、避難先に薬を持ってくるのを忘れた人などが、けっこういます。

避難所や、自家用車の中で寝起きしている人も多く、疲労が溜まれば風邪もひくでしょう。

ごった返している救急病院を、軽症者の診療でわずらわせるわけにもいきません。

そんな思いで土曜も日曜も、時間を限って診療しました。避難所生活をしている職員も、出勤してくれました。

ようやく今日は平日。他の医療機関の診療も始まるとは思いましたが、当院も朝から診療を開始しました。

ただし、職員を休ませるために、午前中は果敢にも(無謀にも?)、1人で診療を行うことにしました。

実際には、看護師1名が急遽出勤してくれましたが、1人診療に備えて、7時前から準備をしていました。

まず、「本日受診された方へ」という特別な説明書を作成・印刷。そこに書いておいたのは、

(1)検査ができません:私1人では手がまわらないし、検査センターも稼働していません

(2)ミニカルテを発行できません:ミニカルテは当院のウリなんですが、手間がかかるので割愛です

(3)医療費の計算ができません:すみません、私、医療事務に自信がありません。

ということで、午前中の患者さんは全員、窓口支払いナシです。無料で、処方せんだけ出しました。

外見上は、「薬は出しときました。支払いはけっこうです」という、まるで赤ひげ先生のようなノリです。

もちろん、後日精算しますけど。

なんとか短時間でも診療

「余震は、本震よりも規模が小さいのですね」と、昨日のニュース番組で、アナウンサーが尋ねたところ、

「もっと大きな地震が起きて、そっちの方が本震、前のが前震、ということもあり得ます」と某専門家が回答。

イヤなこと言うなぁ、と思ってたら、本当に、その通りになってしまいました。

本日未明の大地震は、熊本地域の全住民に、計り知れない恐怖をもたらしました。しかも余震が続きます。

今朝は7時前に出勤。クリニックの外観に異変はありませんでしたが、その内部はメチャクチャでした。

何てことか、サーバー用のMacが床に落下し、液晶パネルが割れています。こりゃダメだ。

診療データを取り出し、別のMacに、サーバーシステムをインストール。起動OK。助かった。

電子カルテとプリンタの稼働が確認できれば、基本的な診療はできます。でも、問題は職員です。

当院の職員は、現在ほぼ全員が避難所生活をしています。とてもじゃないけど、出勤できそうにありません。

しかし、高血圧や糖尿病や喘息などの方には、予定日に受診しないと薬が切れて困る方がいます。

高熱や嘔吐・下痢でぐったりしながら、避難所生活をしているお子さんも、いるでしょう。

そのような患者さんのために、短時間だけでも、今日は診療をすることに決めました。

ある程度準備ができた時点で、ネット予約サイトの文面を、次のように改めて、診療を開始しました。

===

本日は、11時から診療を開始しています。余震などの経過を見ながら、15時頃に診療を終える予定です。

アイチケットによる予約受付は行っていません。診療の予約は、電話でお願いします。

院内の片付けと並行して診療しますので、職員は普段着です。

また、かなりお待たせするかもしれないことを、ご了承ください。

===

何人かから「今日もやってるんですね」と言っていただけました。無理して診療した甲斐がありました。

新バージョンのバグ

人柱覚悟で、iPhoneを「<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-1632.html" target="_blank" title="iOS 9.3">iOS 9.3</a>」にアップデートしたら、やっぱり不具合がありましたね。もちろん想定内。

その修正版「iOS 9.3.1」がリリースされましたが、これはあと2,3日、様子を見ることにします。弱気です。

さて昨日、改定された診療報酬に対応すべく、電子カルテのバージョンアップ作業を行いました。

私が使っているのは、「アガペ」社の「MindTalk」という、MacでもWindowsでも使える電子カルテです。

この製品は、全国的なシェアは小さいのですが、私の「<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-138.html" target="_blank" title="ミニカルテ">ミニカルテ</a>」に対応する、日本で唯一の製品です。

というより、私の「ミニカルテ」構想に賛同してプログラムを作りかえてくれた、貴重な電子カルテなのです。

診療報酬の改定は、初再診料や加算点数から、すべての薬価や検査や処置等の点数にわたります。

その内容を記載した「医科診療報酬点数表」をダウンロードすると、pdfファイルで300ページを超えます。

このような膨大な改定内容をすべて反映させて、新たなバージョンの電子カルテができたわけです。

だからでしょうか、ちょっとしたバグが、たびたび見つかります。

たまたま昨日は休診日。なので当院では、ゆっくりと更新作業を行うことができました。

終了後、確認してみてさっそく、ある加算の点数が微妙に間違ってることが判明。日計表にも表示の不備あり。

メーカーのサポートに何度も電話して、やっとつながると、修正版「1a」を準備していますとのこと。

ところが、待てど暮らせど、メーカーのサイトに「1a」がアップされません。

また何度も電話して、やっとつながると、「1a 」に不備があったので、再修正版「1b」をアップしますと。

そんなこんなで、再修正版「1b」によって今日は、大きなトラブルもなく、診療を行うことができました。

でも、昨日から診療していた医療機関は、少々バタバタしたことでしょう。改定初日が休診日でよかった。

インフルB型流行中

当院で本日診断したインフルエンザは、A型よりもB型の方が多いという、珍しい事態でした。

このようなB型インフルエンザの流行は、私の開業8年間の経験では初めてのことです。

国立感染症研究所の、ウイルス分離報告を見ても、今シーズンの流行はかなり特異的です。

まず、現在の流行の約6割が、2009年に流行した、元「新型」インフルエンザ(A型(H1N1))です。

昨年の主流だった、いわゆる「季節性」インフルエンザ(A型(H3N2))は、今ほとんど検出されていません。

つまり、昨年A型インフルエンザに罹患した方でも、今年またA型に罹患する可能性があるということです。

B型が多いのも特徴。過去3年間は「山形系」主体だったのに、今期は「ビクトリア系」が拮抗しています。

つまり、この数年B型インフルエンザに罹患した方でも、今年またB型に罹患する可能性があるということ。

従来、A型に比べて比較的軽症と思われてきたB型ですが、今年のB型は重症が多い印象があります。

もしかすると、「ビクトリア系」は重症なのかもしれません。

ところで、来院する発熱者がすべてインフルエンザとは限りません。その他の感染症の方もたくさんいます。

南米帰りの方であれば、ジカ熱も疑うべきなのでしょうね、これからは。

先日、川崎市の高校生がジカ熱を発症しました。ブラジルに10日程度滞在し、帰国した後の発症です。

入国前に38度の熱が出ていたものの、空港では下熱、その後また発熱し医療機関を受診したようです。

発熱者を診た医者が、ジカ熱を疑うかどうかがカギ。海外渡航歴だけは、聞き漏らさないようにしなければ。

しもやけ&あかぎれ

「しもやけ」とか「あかぎれ」の方が、ときどき来院されます。たいてい、ご高齢の女性かお子さんです。

私も子どもの頃は、足にしもやけ、手があかぎれでした。

【しもやけ】

寒冷による、末梢循環障害です。外用薬やビタミンEを処方しています。

漢字で「霜焼け」と書きますが、レセプトで書く傷病名となると「凍瘡」です。「凍傷」ではありません。

古い辞書「古事類苑」を見たら「瘃」という、見たこともないような字で書いてありました。

「箋注倭名類聚抄」には、「俗呼之毛也計」とあります。「俗にしもやけと呼ぶ」と読むのでしょうか。

【あかぎれ】

寒冷によって、皮膚が乾燥して裂けた状態です。保湿剤と抗アレルギー薬を処方することがあります。

「あ(足)」が「かかる(ひびが切れる)」ことから「あかがり」と言われたのが、語源だそうです。

「あか」から「赤」とか「垢」を連想(<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-1596.html" target="_blank" title="異分析">異分析</a>)したために、残された「がり」が「ぎれ」になったとのこと。

一字で「皸」とか「皹」と書くようです。これも初めて見ましたが、左右を入れ替えても同じ意味の漢字です。

このような漢字は他にないのか、調べたらありました。「飄」と「飃」です。「つむじかぜ」と読みます。

私の両手の甲は今、あかぎれに近い状態です。速乾性擦式手指消毒剤を、毎日100回以上擦り込むせいです。

エタノールを約80%ほど含有するこの消毒薬を、手に擦り込むたびに、皮脂が溶けて流れ出していきます。

それを補うべく保湿剤を使いますが、それがまた次の消毒によって失われます。毎日、その繰り返しです。

保湿剤含有の消毒薬も使いましたが、あまり効果はありません。消毒薬含有の保湿剤なんて、ありませんかね。

無銭飲食・無賃乗車

本来有料のサービスを受けておきながら、その対価を支払わない行為には、しばしば名前が付いています。

飲食店では「無銭飲食」の言葉を使い、交通機関であれば「無賃乗車」となります。

無銭飲食は「食い逃げ」とも言うし、無賃乗車は「ただ乗り」という言い方もします。

これが医療機関の場合、どのように表現するのでしょうね。

無銭飲食にも2通りあります。

支払い時に金銭を所持してないことが発覚する場合と、最初から、金は持たんが食わせてくれ、という強者。

前者は、警察に突き出されるか皿洗いというのが定番です。

後者は、追い出されるか、店主の特別な温情によってたらふく食べさせてもらえる場合もあります。

では、医療機関の場合、とくに後者の場合どうすべきでしょうか。じつは時々遭遇するのです。

持ち合わせがない、保険証も切れている、でも何らかの病状で苦しんでいる。明らかに治療が必要。

このような方に、お金がないなら帰って下さい、とは言えません。良心に従えば、診療をすることになります。

次に来たときに保険証と財布を持ってきてくださいよ、と念を押すのですが、二度と来られない方もいます。

内容証明郵便を出して請求するなど、あまり大げさなことは、したくありません。どうしたもんでしょうね。