酒気帯びパイロットと外科医

JALのパイロットって、酒好きの人が多いんですかね。また酒気帯びが原因で、運航に支障を来したようです。

メルボルン–成田便に乗務予定の2人の機長が、2人とも乗務前の呼気アルコールが基準以上だったとのこと。

前夜2人でスパークリングワイン2杯とワイン3本を注文したとか。飲み干したのなら、ちょっと多いですかね。

基準以下の呼気アルコールに下がってから出発したので、定刻から3時間以上遅れたそうで、迷惑な話です。

乗務の12時間前には、酒気を帯びていてはならない規則なので、だいぶ早く飲み終わる必要があります。

連日の乗務だったら一年中断酒しなければなりませんが、きっと飲める日も作れるようなシフトなのでしょう。

翻って外科医は、ほぼ毎日手術に携わり、しかもほぼ毎晩飲酒するわけです。(個人差あります)

私もかつて(90年代)、酒気帯びどころか酩酊に近い状態で、緊急手術に呼び出されたことがあります。

もしも酒気帯び手術が絶対ダメなら、緊急手術の可能性がある外科医は一年中酒が飲めないということです。

最近は違うかもしれませんが、私の時代は、たいていの手術は主治医と指導医の組み合わせで行っていました。

なので、夜から朝まで緊急手術に携わった後に、翌朝から自分の患者の手術をするようなこともありました。

連続勤務時間の上限など無かったのです。寝る暇も食事する暇もなく、トイレに行くのがギリギリでした。

そのような前世紀の働き方が、いまの病院で皆無かと言えば、そうでもないかもしれません(推測です)。

たとえ不眠でも風邪気味でも酒気帯びでも、他に外科医がいなければ、自分が手術をしなければなりません。

要は外科医が足りないのです。その点、勤務間インターバルが絶対に求められるパイロットは恵まれています。

修学旅行と急病

インフルエンザが増えています。当院の発熱外来では過去1週間で17人陽性だったので、注意報レベルです。

同時期に、コロナもマイコプラズマも溶連菌も手足口病も胃腸炎も出ていますが、インフルには及びません。

成人にも子どもにも多く、いちばん感染が拡大しつつあるのは学校です。

インフルを発症して修学旅行に行けなくなるお子さんが、何人も出始めています。ガッカリですね。

「でも現地で発熱したらもっと大変でしたよ」と親御さんを慰めると、「ですよねぇ」ということになります。

旅行中に発病したら、保護者が迎えに行かなければなりません。それが長崎でも京都でも東京でも、です。

近年の修学旅行では親のお迎えが当たり前のようですが、私が子どもの頃には無かったルールですね。

旅行先で集団行動を離れた子を看病するための人員(教員)が割けないのでしょうけど、親も大変です。

海外に行く学校も増えていて、そんなときのお迎えはどうするんだろうと、以前から心配していました。

台湾への修学旅行を控えた子の親御さんに尋ねてみると、学校からお迎えの話は出ていないとのこと。

さすがにそうですか。費用や時間はもちろん、そもそも親がパスポートを持っていない場合もあるでしょう。

でも万一の事を考えると、子どもが海外に行くときは、親もパスポートを作っておくべきかもしれませんね。

なお、学校は「学校旅行総合保険」に入っているので、保護者の救援旅費や宿泊費等は保険で補償されます。

保護者2名の往復交通費とホテル代(14日限度)や、生徒の帰宅のための交通費などが補償対象だそうです。

逆に言えば、旅先での医療費は補償外。海外旅行(とくに米国)では、むしろこの点が大問題でしょうね。

「Suicaパス」

「Suica」の位置情報データによって、タッチも何もせずに駅の改札を通過できるようになるらしいですね。

空港では「顔パス」の導入が進んでますが、駅では顔すら不要の、いわば「Suicaパス」になるわけですか。

スイカをバスケットボールのようにパスする絵を想像してしまいます。

今に始まったことじゃありませんが、モバイルSuica利用者の位置情報がJRに筒抜けということですね。

これっていったい、便利なのか怖いことなのか。Suica甘いか塩っぱいか。

ていうかSuicaに限らず多くのアプリがみな、スマホ利用者の動きを逐一把握しているわけです。

位置情報の追跡が嫌なら携帯なんて使えません。なのでスパイは使い捨て携帯です。使ったら壊して捨てます。

私がSuicaを使うのはたまに上京したときぐらいで、使用頻度が少なすぎて改札でアラートが出たりします。

すぐ駅員さんのところに行って処理してもらいますが、あれって田舎者を証明しているようなものですね。

そんなヘマをやらないように最近は、上京する前に、コンビニでいったんSuicaを使ってみたりします。

Suicaで得られる移動や決済のビッグデータを、JR東日本はいろんな形で利用したり売ったりするようですね。

JRが改札での「クレカ決済」の導入に乗り気じゃないのは、きっとそういうことなんでしょう。

やがて都会の駅で、タッチせずに改札を早足で抜ける人が増えると、慣れない田舎者はますます緊張しますね。

「帯状疱疹ワクチン」の定期接種対象は65歳

「帯状疱疹ワクチン」の、高齢者向けの「定期接種」が、来年度から始まることになりました。

と、<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-4648.html" target="_blank" title="5カ月ぐらい前に書いた">5カ月ぐらい前に書いた</a>のですが、どうやらようやく、本決まりになりそうです。

対象は65歳。ただし5年間の経過措置の間は、「5の倍数の年齢」の高齢者全員が対象となります。

これはちょうど「肺炎球菌ワクチン」と同じやり方ですが、肺炎球菌ワクチンは接種率が伸びませんでした。

しょうがないので5年間の経過措置を2回、<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-4506.html" target="_blank" title="計10年間の経過措置">計10年間の経過措置</a>が行われ、それが今年3月に終わりました。

その肺炎球菌ワクチンとは対照的に、帯状疱疹ワクチンは以前から問合せが多いですね。

任意接種(自費)でも接種したいという方もいますが、でも接種料金を聞いて辞退される方がほとんどです。

接種料金は、当院では2回で4万4千円です。バカ高です。だって、ワクチンの原価がべらぼうに高いのです。

そんな高額なワクチンなので、定期接種での自己負担金がいくらぐらいに設定されるのか、それが心配です。

ちなみに、このワクチンよりももっと高額の「HPVワクチン」は、自己負担ゼロで定期接種が行われています。

しかしその若者対象のHPVワクチンと比べると、高齢者対象の帯状疱疹ワクチンは分が悪いですね。

対象人数が多く自治体の財政を圧迫するので、高齢者にはある程度負担してもらうことになることでしょう。

では皆さま来年度からは、65歳になったら、肺炎球菌ワクチンと一緒に帯状疱疹ワクチンも接種しましょう。

さらに65歳と言えば、インフルエンザワクチンと新型コロナウイルスワクチンが、定期接種の対象となる年齢。

なので来年9月に65歳になる私は、10月には4つの定期接種を受けることになりそうです。ドキドキしますね。

危険な「ヒートショック」

中山美穂さんが亡くなられました。ご冥福をお祈りいたします。

さてその急死の原因は「ヒートショック」ではないかといわれています。

ヒートショックは、環境温度の急激な変化によって血圧などが大きく変動し、体調に異変をもたらす現象です。

脳や心臓などの循環障害(梗塞を含む)や、そうでなくても意識障害(失神)を起こす場合があります。

いちばん多いのが冬場の入浴時です。寒い脱衣室や浴室と温かい浴槽との温度差が問題となります。

このことは<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-2768.html" target="_blank" title="以前も書きました">以前も書きました</a>が、日本での溺水は、海や川の事故よりも、多くが入浴時に起きています。

ヒートショックによる一瞬の意識消失が、浴槽においては溺死の原因となり得ます。

その対策としては、

(1)温度差を減らす

風呂のフタ開けっ放し&シャワー出しっ放しも有効ですが、節約の観点からはなかなか徹底しにくいですね。

電気代が気になり今年はまだ浴室暖房を使っていませんでしたが、今夜帰宅したらスイッチが入っていました。

今回の事故を受けて、ヒートショックの怖さを思い知った家人にもスイッチが入ったようです。

(2)血圧が下がり過ぎないようにする

熱い湯に長くつからないことが推奨されていますが、熱い湯が好きな私には、ちょっと無理な対策ですね。

湯船から出るときは慎重第一。私は必ず浴槽内でいったんしゃがみ、ゆっくり立ち上がるようにしています。

飲食後には血圧が下がります。とくに飲酒後の入浴は危険なので、私はできる限り避けています。

(3)救助されやすいような配慮も?

異変に気付いてもらうために、家族に一声掛けてから入浴しましょう、などとよく言われます。

でも、なかなか風呂からあがってこないからと様子を見に来てくれた時点で、心肺蘇生が間に合うのかどうか。

そもそも、私が入浴している時間帯に家人はいつも、花ちゃんと散歩に出かけています。

保険証の発行は停止されたけど

マイナ保険証の利用率はまだ低いですが、従来型の健康保険証の新規発行は、当初の計画通り停止されました。

いまのところ、保険証はまだ使えるので、医療現場での混乱は(少なくとも当院では)まだありません。

国は医療機関にインセンティブを与えて、マイナ保険証の利用率を上げようと躍起になっています。

「医療DX推進体制整備加算」もその1つで、加算点数は3段階、例えるなら、松・竹・梅、があります。

現在「松」の加算を得るためには、医療機関の「マイナ保険証利用率」が15%以上であることが要件です。

来月からは、30%以上でなければ「松」は取れなくなります。20%以上で「竹」、10%以上なら「梅」です。

当院は30%を超えているので、今月も来月も「松」です。でも全国平均は16%程度と低迷しています。

つまりこのままでは、今月までは「松」だけど来月からは「梅」に落ちる医療機関が多いということです。

で、その加算点数はどのぐらいかと言うと、松11点、竹10点、梅8点です。(1点は10円)

当院を受診される方には、11点(110円)、3割負担の方なら30円程度の窓口負担をいただいています。

このような制度設計では、マイナ保険証利用率が低い病院の方が医療費が安くなるというジレンマを生みます。

まさか「当院はマイナ保険証利用率が低いのでオトクですよ〜」と宣伝するような病院はないでしょうけど。

マイナ保険証のシステム(オンライン資格確認)の導入時に、医療機関は多額の初期投資をしています。

その費用の多くは、国からの補助でまかないました。しかし、通信費などの維持費は、医療機関の手出しです。

専用回線を使うので、そのためだけに通信業者に毎月数千円を払っています。これが永久に続きます。

国は医療機関にちまちまインセンティブを付ける前に、まずシステムの維持費用を負担するのが筋でしょう。

高血圧治療と日々の血圧測定

「白衣高血圧」とは、日頃の血圧は正常の方が、健診などの時だけ異常に高くなってしまう現象ですね。

とりあえずは経過観察で良いのですが、高血圧の予兆かも、と考えて家庭での血圧測定をオススメします。

高血圧症の方の外来診療において重要なのは、自宅での朝晩の血圧「家庭血圧」の測定とその記録です。

「血圧手帳」(A6サイズぐらいのノート)に、朝晩の血圧を記録して、できればグラフにしてもらいます。

月に1回とかの来院時には、診察室で私が「診察室血圧」を測りますが、より重要なのはやはり家庭血圧です。

多くの研究で、家庭血圧の方が診察室血圧よりも心臓や脳血管疾患などとの関連が強いことがわかっています。

なので、家庭血圧の測定が几帳面な方の場合にはとくに、それがとても貴重な血圧管理の指標となります。

家庭よりも診察室での血圧の方が高いかと思いきや、その反対に家庭血圧の方が高い方が少なくありません。

これは「仮面高血圧」という現象と同様で、たいていは、朝晩の血圧が高く昼間は下がるパターンなのです。

休日には、昼間にも血圧を測ってもらうと、自宅でもかなり低い血圧になっていることが判明したりします。

あるいは、仕事の日に血圧が高く休日には下がる方は、休日に来院するので診察室血圧はいつも低くなります。

仕事の日の朝、どんだけアドレナリンが出てるんだろうと思います。日頃の家庭血圧の記録が需要です。

高血圧治療中の方にも、家庭よりも診察室血圧の方が高い白衣高血圧的な方が、多くはないけど時々います。

もしかすると、私が緊張を強いるような雰囲気を出しているせいかもしれません。

血圧を1回測って高いとき、意識を逸らすような雑談を挟んで2回目を測ると、20ぐらい下がったりします。

そういう変動にも意味はあるのでしょうけど、高血圧治療の指標となるのはやはり家庭血圧なんでしょうね。

ご面倒でもできるだけ毎日、朝晩記録していただくことをお願いするばかりです。

うりうりな妄想

瓜売りが瓜売りに来て瓜売れ残り売り売り帰る瓜売りの声」(諸説あります)

報道番組を見ていて久しぶりに、このフレーズを思い出しました。

中国共産党の元実力者で失脚した「薄熙来(はくきらい)」氏の息子が、台湾人と結婚したニュースです。

サラッと報じられたので、ふ〜んで終わるところですが、私はこの息子の名前が以前から気になっていました。

その名も「薄瓜瓜(はくかか)」氏。それから連想して、瓜売りフレーズを思い出したわけですうりうり。

中国共産党政治局に妙に興味がある時期が、かつて私にはありました。誰でもありますよね、そういうのって。

ネット情報に飽き足らず、遠藤誉氏の著書とかを買い込んで読みあさったりしました。

人口十何億人の巨大な国家を、たった数人が、激しく順位争いをしながら支配するという仕組みが怖過ぎます。

2011〜2012年に起きた「薄熙来事件」は、まるで映画のような展開でした。次のような感じでしょうか。

冒頭、薄氏の腹心(重慶市の副市長)が、女装姿で米国領事館に駆け込みますが、最終的に亡命に失敗します。

薄氏の不正蓄財のマネロンを担当していた英国人を薄氏の妻が毒殺した、その証拠などを携えての亡命でした。

この、重要人物が女装して決死の覚悟で行動するという手口は、古今東西いろんな場面で出てきますね。

こうして、強大な権力と莫大な資産で隆盛を極めた薄氏は、習近平の汚職狩りの象徴として起訴され失脚。

ところが、薄夫妻が無期懲役で収監されて物語は終了と思いきや、息子が台湾人と結婚するという新展開。

「両親は人民と大局の犠牲のため、身をもって屈辱を忍んで重責を担っている」と、瓜瓜氏は挨拶しました。

反体制組織の支援を受けた薄氏の復讐劇が、いま始まろうとしています(個人のうりうりな妄想です)。

「ふてほど」がピンとこない

「ふてほど」ですか。

「新語・流行語大賞」の年間大賞に選ばれたのは、ドラマ『不適切にもほどがある!』の略称でした。

このドラマ自体は、たしかに面白かった。ですが、この略し方は私にはピンときませんね。まあ、いいけど。

「もうええでしょう」にも違和感あり。ノミネートされた中から、トップテンに選ばれた言葉のひとつです。

ドラマ『地面師たち』の中で、ピエール瀧が演じる地面師がしばしば口にしたフレーズですね。

これも好きなドラマだったので、そのセリフはよく覚えてますが、でもこんな言葉が流行語になるんですか。

私が世間からズレているのか、流行語大賞の年間大賞って、いつも私にはしっくりこないものが多いです。

今年を象徴するような言葉が、大人の事情で選考やノミネートから除外されているのも一因でしょうか。

「もういいでしょう」ならば、助さん格さんの大立ち回りを終わらせるときの、水戸黄門のセリフですね。

そこで格さんが「え~い、静まれ、静まれ!」と声を出すと、悪人たちもなぜか皆、大人しく静まるのです。

続いて決まり文句「この紋所が目に入らぬか!」ですね。このフレーズこそ「永世流行語大賞」でしょう。

さらに「こちらにおわすお方をどなたと心得る。恐れ多くも先の副将軍、水戸光圀公にあらせられるぞ」と。

そして「え~い頭が高い。控えおろう!」とたたみかける。すると皆がひれ伏すわけです(たまに反抗する)。

いやいや水戸黄門って、大賞級フレーズの宝庫じゃないですか。ていうか番組自体が国宝級ですね。