マイコプラズマと学級閉鎖

「マイコプラズマ感染症」が流行しています。当院でもほぼ毎日、感染者(抗原検査陽性者)が出ます。

一般には「マイコプラズマ肺炎」という言い方をしますが、実際には気管支炎で済むことも多いようです。

その定点あたり報告数は熊本市では先週5.0に達し、インフルエンザやコロナを凌駕しています。

近隣でも流行していますが、厄介なのは、その潜伏期間(感染してから発症するまでの期間)が長いことです。

インフルエンザの潜伏期間は1〜4日です。新型コロナウイルス感染症では2〜5日が多いとされています。

これらの感染症では、学校内での流行拡大を防ぐために、必要に応じて「学級閉鎖」が行われます。

学級閉鎖前に感染した子は学級閉鎖期間中に発症するので、それが治ってから登校することになります。

つまり学級閉鎖は、自分が感染するのを防ぐだけでなく、他人に感染させることを防ぐこともできるわけです。

この目的を達成するためには、学級閉鎖期間の長さが、感染症の潜伏期間よりも長くなければなりません。

ところがマイコプラズマの場合、潜伏期間は2〜3週間と、かなり長いのです。

学級閉鎖前に感染した子は、学級閉鎖が明けてから発症することになり、学級閉鎖の意義は半減します。

もうひとつ。発症後に感染力が長く続くことも、マイコプラズマ感染症の問題です。

インフルエンザでは発熱後5日後までは出席停止、コロナでも発症後5日後までの療養が目安となっています。

もちろん、熱の下がり具合や咳などの症状によっては、何日か延長する必要があります。

一方でマイコプラズマは、感染性が高いのは発症後1週間ですが、その後も数週間は菌の排出が続きます。

いつから登校してよいのか判断しにくく、しかも全身状態が比較的良いので、早めに登校してしまいます。

また、発熱による欠席者が多くても、それがマイコプラズマなのかそれ以外なのか、厳密な区別が困難です。

なぜならマイコプラズマは、医療機関で簡易検査を行わないことが多く、検査しても偽陰性が多いからです。

マイコプラズマが流行している時に学級閉鎖をどうするか、教育現場ではなかなか悩ましい問題のようです。