「ダンドリ君」劣化中

「ダンドリくん」という漫画が、昔ありました。

私も子どもの頃から、段取りを気にするタチでした。どんな作業をするにしても、ムダな動きが嫌いなのです。

ただし言っておきますが、私がムダな動きが嫌いなことと、実際にはムダな動きが多いことは、別問題です。

それはちょうど、片付いた綺麗な部屋が好きだけど、自分の部屋には足の踏み場も無い、というのと同じです。

心臓外科手術というのは、まさに段取りの極致です。なので心臓外科医は、ある意味で私には「天職」でした。

とくに心臓を止めて行う「開心術」では、手術精度の次に重要なのは、できるだけ早く終わらせることです。

そのための準備として、手術操作のすべてを最初から最後まで、頭と体にたたき込んでおく必要があります。

もちろん、精度と速さ以上に、手術デザイン能力とトラブル適応力が重要であることは言うまでもありません。

トップレベルの心臓外科医の手術を見ると、術中の操作にたったの1秒も、ムダな動きがありません。

その手は、何かの目的のためだけに最短ルートを動き、正確な手術操作をして、最後まで止まることがない。

ある先生は、手術時間を1秒でも短くすることを常に考えれば、手術が上達すると教えてくれました。

そういう世界から足を洗ったのに私は、せめて日常生活では完璧な段取りで動こうとしているわけです。

しかし近年とくに、自分の段取りの悪さには辟易します。記憶力も判断力も適応力も低下しているのでしょう。

何かの目的のために動くつもりが、行ったり来たりムダだらけ。最後には、当初の目的も忘れてしまってます。