HPVワクチンは、メーカーの試算では、接種率が約40%だと聞きました。
私の印象や当院のデータではそこまで多くはないのですが、最近増えていることは間違いありません。
先月発表された大阪大学の調査では、世代ごとの接種率を詳細に算出しており、興味深いものです。
(1)勧奨接種差し控え前の公費助成世代(1994〜1999年度生まれ):接種率約70%
(2)差し控えによって接種が激減した世代(2000〜2003年度生まれ):接種率約4.6%
(3)勧奨接種ではないが個別案内を受けた世代(2004〜2009年度生まれ):接種率約16%
(4)積極的勧奨が再開された世代(2010年度生まれ):接種率2.8%
勧奨接種の再開後もまだ接種率が低迷しているようです。ただ、接種状況は年々改善しつつような気はします。
当院では、対象年齢に近いお子さんが別のワクチンを接種しに来た際には、必ずHPVワクチンも勧めます。
すると保護者には積極的な方もいらっしゃいますが、大半はワクチンへの懸念や不安を口にされます。
「副反応が心配です」
その心配は当然です。かつてメディアが喧伝し、国が接種を事実上ストップするほどの一大事でしたからね。
その懸念が消えたからこそ勧奨接種が再開されたのですが、人々の不安はまだ完全には払拭されていません。
勧奨接種の差し控えが医学的には誤りであったことを、国が認めないからこんな中途半端なことになるのです。
「ワクチンって、効果はあるんですかね」
いま使っている9価ワクチンは、約9割の予防効果があることが最近の研究でわかっています。
日本で毎年1万人近くが発症している子宮頸がんを、毎年9千人減らせる計算です。当然、死亡も激減です。
「検診をしっかりと受けさせますので、ワクチンは打たなくてもいいかと」
もちろん「検診」も大事ですが、それはがん(または前がん状態)を早期発見・早期治療するためのもの。
せっかく予防法があるのに、敢えて予防せずに発がんするまで待つのですか。それほどワクチンが嫌いですか。
まず予防して、でも万一に備えて検診もする。先進諸国のその考え方が、日本人にはまだ無理なのですかね。