芥川賞は、朝比奈秋の『サンショウウオの四十九日』と松永K三蔵の「バリ山行」が受賞しました。
今日は、医師作家である朝比奈氏に敬意を表してサンショウウオの方を、例によってKindleで読みました。
(以下、ネタバレあります)
全身が半分ずつ結合した「結合双生児」。そのひどく特殊な主人公設定に、まず興味をそそりますね。
真っ先に思い浮かんだのは、「あしゅら男爵」なのですが、もちろんそういう次元の話ではありません。
私も以前、考えたことがあります。頭部まで結合している双生児の、互いの意思の疎通はどうなんだろうと。
思っただけで相手に伝わるのか。それどころか、伝わる・伝えるという概念がなく「思いはひとつ」なのか。
読み進むうちにその答が得られたような、でもちょっと違うような、設定が難しすぎて矛盾をはらむような。
選考委員の一人は「小説にしかできない設定に挑んでおり、その文学的野心が評価された」と言います。
「映像化困難」とは思いませんが、映像化して面白いかどうか。その意味では、小説にしかならない設定かも。
結合双生児の心理描写という、たしかに実験的な設定を思いつくとは朝比奈氏、常人ではないと思いました。
なお、本作中に「あしゅら男爵」という言葉がちらっと出てきたのは、読者サービスでしょうか。