今年度の診療報酬の改定では、「ベースアップ評価料」なるものが新設されました。
簡単に言えば「看護職員等の賃上げをするなら、医療費を割増にして患者から請求できる」という制度です。
この評価料による増収分は、医院の儲けにはできず、全額を従業員の賃上げとして配分しなければなりません。
でも、賃上げの原資は本来は経営者が工面するものであって、患者から直接取る仕組みは筋近いでしょう。
おそらく国は、医療機関全体の収入を増やしたのでは、職員の賃上げに直結しないと考えているわけです。
世論を考慮すると医療従事者の給料は増やしたい、でも医者は締めつけたい、そう考えた官僚の苦肉の策です。
残念ながらこの制度は、あまりにも複雑な仕組みなので私はいまだによく理解できていません。
おそらく当院ではベースアップ評価料を算定せず、単純に職員全員の昇給をするという方向になると思います。
今回の評価料は、事務職員には適用されません。看護職員等にだけ適用されるのがミソです。
経営側としては、看護職と事務職とで昇給幅に差を付けられず、結局は両者同程度の昇給となるでしょう。
看護職だけを「補助」することで、医療従事者全体の昇給を引き出すという、国のずる賢い政策なのです。