医師の残業制限だけでは改革にはならない

「医師の働き方改革」によって勤務医の残業時間の制限が厳しくなり、現場の労働力不足が危惧されています。

厚労省の調査では、全国の医療機関の約6%が、診療体制そのものを縮小する見込みだとのこと。

残業時間は原則として960時間以内。例外的に1,860時間またはそれ以上も認められる「抜け道」はあります。

私も大学病院勤務時代には、月平均200時間以上、年間だと2,400時間以上は残業していました。

それは90年代の話ですが、たぶん今でもそのような働き方をしている医者は大勢いると思います。

心臓外科では、緊急手術が入ったり、予定手術が長引いたりして、深夜の手術になることがしばしばあります。

その後、ICUで徹夜で術後管理をしていると、翌日の予定手術の患者さんが手術室に入る時間になります。

そのまま、予定手術をこなします。夕方までには終わったとしても、そこからまた術後管理が始まります。

2人の患者さんのベッドの間にイスを置いて座り、あっち見たりこっち見たりして、また次の夜を明かします。

自分だけが過酷な目に遭っているわけではなく、皆が頑張っているので、当然、自分も頑張るわけです。

しかしこんな働き方をしなければ予定手術がこなせないのなら、明らかに人員が足りないということです。

あるいは、術後管理は基本的に担当外科医がするという旧来のやり方は、合理的ではないのかもしれません。

さらに言うなら、書類仕事など医師でなくてもできる仕事が山のようにあって、手術よりもストレスです。

「働き方改革」では、量だけでなく質的な改革が望まれます。単なる残業制限では診療が縮小するだけです。