九段理江さんの芥川賞受賞作『東京都同情塔』を、Kindle版で一気読みしました。
例によって、なるべくネタバレしないように感想を書いてみます。
主人公は、犯罪者が快適に暮らすための収容施設「シンパシータワートーキョー」を設計した建築家の女性。
設定のユニークさもさることながら、私が面白いと思ったのは「言葉」に対するこだわりでした。
「文書生成AIを駆使して書いた小説で、全体の5%くらいは生成AIの文章をそのまま使っているところがある」
受賞会見でのこの発言が議論を呼んでいますが、これは九段氏の目論見通りのことでしょう。
生成AIで作った文章を、あえて使うという実験的手法なのであって、批判されるような使い方ではありません。
「生成AI vs 人間」は、今後の文学には避けられないテーマとなるでしょうから、本作が先鞭をつけた形です。
さてこの先、小説と生成AIは、どのように共存共栄していけるのでしょうね。
生成AIで小説を書くことをテーマにした小説も出てきそうです。たとえば、こんなのはどうでしょう。
・生成AIで書いた小説でデビューした小説家が、自責の念に駆られながら2作目も生成AIで書いてしまい…
・人気小説家がスランプに陥り、ついにこっそり生成AI に手を出したら、大ヒット作ができてしまったが…
・生成AI小説が氾濫してきたので「生成AI文学賞」が創設された。ところが第1回の応募作を見たら…