バンジージャンプ後に、50代の男性が急死した事故(事件?)。呼吸が荒くなり、心肺停止したとのこと。
記事には詳細が書かれていませんが、ジャンプ直後の「息切れ」をヒントに、病状を推測してみます。
意識障害その他の神経学的異常についての記載が無いので、おそらく「脳血管障害」ではなさそうです。
胸痛や背部痛を訴えたという話も出てないので、「急性心筋梗塞」とか「急性大動脈解離」でもなさそうです。
病歴不明ですが肺炎や喘息の疑いはなさそうで、死因はおそらく「急性心不全」か「致死性不整脈」でしょう。
私はその中でも、もしかすると「急性右心不全」かもしれないと考えています。
昔、大学病院に勤めていた頃、高いところから飛び降りた直後に急性右心不全になった症例を耳にしました。
着地した衝撃で、心臓の「三尖弁」の「腱索」が断裂し、「三尖弁閉鎖不全」が起きたということでした。
このような「外傷性三尖弁閉鎖不全」は、ベテランの心臓外科医ならたいてい見聞きしたことがあるはず。
「三尖弁」は右心房と右心室の間の弁で、右心室が血液を肺へ拍出する際に右心房への逆流を防ぎます。
心臓の拡張期に大きく開き、全身の静脈血を右心房から右心室へと緩やかに招き入れます。
ちょうどその時にからだに強い加速度や圧力が加わると、三尖弁が大量の血液の流入によって圧迫されます。
その急激な負荷に耐えきれずに、三尖弁を支えているヒモ状の組織「腱索」が断裂してしまうわけです。
交通事故や墜落事故のときに、腱索断裂が起きることがあるとされています。
腱索が切れると、心臓が収縮したときに三尖弁がうまく閉じなくなり、弁の逆流が出てきます。
この「三尖弁閉鎖不全」は、腱索断裂以外にも様々な原因でが起きますが、通常はゆっくり進行するものです。
しかし、もしも断裂した腱索の本数が多くて、突然高度な逆流をきたすと、急性右心不全が起きるでしょう。
右心室から肺へ突然血流が送られにくくなり、ちょうど肺塞栓と同様に、息切れが起きるはずです。
と、考えてみましたが、詳細な報道がないので答え合わせができません。あくまで個人の推測ということで。