診療報酬は、増えるか、減るか

診療報酬の改定が話題になる時期にはいつも、増大する社会保障費をどうするのか、という議論が出てきます。

社会保障費を抑えるには医療費を削減する必要があり、そのためには診療報酬を減らすべきだという論法です。

この理屈に、一般国民はああそうかと納得するのかもしれませんが、実はまったくオカシな話です。

診療報酬というのは、保険診療への対価であり、医療機関や医療従事者の収入の原資となります。

それは医者の「働き」に比例して得られるものなので、頑張れば頑張るほど収入が増えるのは当然のことです。

その際の、さまざまな診療内容に対する「点数」は国が定めており、それを国は自由に「改定」できます。

医者の儲けの総額ともいえる国民医療費を抑えるのは簡単。その点数の設定を引き下げるだけで済むのです。

しかしそもそも、国民医療費が増えたのは、高齢化やコロナ禍などによって、医療の需要が増えたからです。

たとえ、医者が頑張って国民の寿命を延ばしてきたとしても、高齢化社会は医者の責任ではありません。

なのに、医療需要が増えたので、医療費を減らすために医者の儲けの単価を下げようという話なのです。

そして残念なことに、医者の儲けを減らして医療費を削減することに対して、世論はあまり反対しないのです。

医師の働き方改革や看護師などの給料アップが求められる中で、診療報酬の改定はどっちへ向かうのでしょう。