「安全」も「安心」も、どちらも大事

インフルエンザが流行し、タミフルなどの抗インフルエンザ薬を処方する機会も増えました。

そのタミフルは一時、「異常行動」の原因と見なされて、10代への処方が禁止されていた時期がありました。

後に、タミフルではなくインフルエンザそのものが異常行動を引き起こすことが、多くの研究で判明しました。

濡れ衣だったことが科学的に証明されたわけですが、いまなおタミフル処方には難色を示す方が一定数います。

HPVワクチンもそうです。いま接種希望者は増えていますが、このワクチンには懐疑的な方まだ多いのが現状。

メディアが大々的な反ワクチンキャンペーンを張り、国までもが「接種を推奨しない」と明言したからです。

「安全」よりも「安心」を重視した、と言えなくもないですが、当時の国は科学よりも心情を優先したのです。

科学者に耳を貸さず、市民団体や国民感情に左右される日本の役所の弱腰行政には、心底ガッカリしました。

医療従事者やWHOからは懸念の声が出ましたが、国は科学的データを黙殺し、なかなか動きませんでした。

幸い、新事実が出たわけでもないのに国は方針を転換し、近年HPVワクチンは勧奨接種が再開されました。

いま福島原発の処理水放出事案では、科学的には安全だと日本が説明しても、中国はなかなか納得しません。

この件は、中国の国家的戦略が根幹にあるので、科学的に納得できていないだけの単純な話ではありません。

しかしうわべ上、中国は科学的観点から問題を指摘し、日本は科学的観点から安全を訴えている状況。

かつて反ワクチンに加担した国が、今回は科学的安全性を押し通すという、そのご都合主義が滑稽です。