医者は字がきたない(例外あり)

字の書き間違いについて昨日書いたばかりですが、そこからのスピンオフということで。

子どもの頃、お腹をこわしたりして小児科に行くたびに、私の興味はお医者さんの書くカルテでした。

先生が万年筆でカルテにミミズのような文字を書き殴っていたのを、子どもの頃に何度も目撃しました。

それが日本語なのか英語なのか区別が付かず、もしかするとドイツ語なのかと思ったりもしました。

昔から、医者は字がきたないということになっています。(美しい字を書く先生もいらっしゃいます)

その理由として、医者は自分のしゃべる速度で文字を書きたがる、という説があります。

たしかに私もそうです。思考の流れを妨げたくないので、黙読の速さで文章を書いてしまいます。

一文字ずつ丁寧に書くことなどあり得ず、画数の多い漢字がとくに乱れます。ひらがなですら変形します。

もともと悪筆なのが、速記によってさらに酷いミミズ文字になり、おそらく書いた私にしか読めなくなります。

どうかすると私自身にも読めないことがあり、「解読」するのに時間がかかったり、ついに諦めたりもします。

電子カルテの登場によって医師がカルテを手書きしなくなったのは、つい最近のことです。

カルテ本文も点滴指示書も処方箋も紹介状もみな、キーボードとマウスで「書き上げる」ことができます。

しかしそのおかげで、たまに手書きしなければならない書類に出くわすと、酷いことになります。

漢字を忘れているとか、書き間違うというレベルの話だけではありません。

筆記作業に使う手や上肢の筋肉群が退化しているので、筆圧が上手に調節できないし、すぐ疲れるのです。

おそらく脳の筆記中枢も退化していますから、ボールペン先が意図した方向に進みません。

このように、電子カルテ時代になってむしろ、手書き文字がますます汚く醜くなってしまったのです。