「N分N乗方式」よりも急ぐべき少子化対策があります

少子化対策として、所得税に「N分N乗方式」を導入することの議論が、国会内外で高まっています。

N分N乗方式は高所得者ほど減税効果が大きいため、税制の所得再配分機能が損なわれる問題があります。

しかしたとえ不公平であっても、まずは高所得者に動いてもらおうという、苦肉の少子化対策ともいえます。

あらためて、少子化の何が悪いのか、少子化対策は何を目指すのか、よく考えなければなりません。

将来の生産年齢人口が減れば国力が衰えます。そしてますます少子化が加速する悪循環に陥ります。

少子化対策のゴールは、生産年齢人口を増やすことです。それによって国は富み、国の力が増すわけです。

そのためにはまず出生数を増やすことが、もっとも重要な初期戦略であることは間違いありません。

しかしその子どもたちが、健やかに育ち、適切な教育を受け、将来への夢を持たなければ意味がありません。

ならばまず、いま育ちつつある子どもたちへの、医療・福祉・教育・就労対策から、始めるべきでしょう。

つまり、現状で満足な生活水準や教育環境にない子どもたちのいる家庭を、ただちに救わなければなりません。

お子さんが5人も6人もいるご家庭の多くは、差し出がましいようですが、何らかの支援が必要な状況です。

生活保護を受けているご家庭も多く、新たな減税制度を構築したところで、何の解決にもなりません。

税制改正が必要で時間のかかるN分N乗はそれとして、まずは今の子どもたちを育てなければなりません。

とくに栄養と教育。私が目にする範囲だけでも、その2つは喫緊の最重要課題だと思います。