療養解除前の確認検査は不要、ということになっています

発熱外来では、早く結果を知りたいという理由で、PCR検査ではなく抗原定性検査を希望する方がいます。

しかし、PCR検査と抗原定性検査は、単にその感度や所要時間の違いだけではなく、目的が異なります。

「感染の有無を調べるのがPCR検査で、感染力を調べるのが抗原検査」と考えましょう。

PCR検査は、ウイルス遺伝子(核酸)を増幅して調べる検査なので、感染しているかどうかを判断できます。

わずかな量の核酸を特殊な方法で無理くり増幅するので、感染初期でも無症状でも検出することができます。

抗原検査は、ウイルスが産生する特定のタンパクを調べるもので、ウイルスの活動性を知ることができます。

タンパク量が少なければ検出されにくく、感染の初期や症状が軽いうちは偽陰性が出やすくなります。

「療養解除日に自主的に抗原検査したら陽性が出た」という相談を時々受けます。出たのなら仕方ないですね。

感染力の残存を示すのか別の要因か、解釈に迷うばかりなので、解除前の抗原検査を私は推奨していません。

PCR検査も同様。ウイルスの残骸を検出することがわかっているので、感染後の検査はやはり推奨しません。

しかし、感染者の職場復帰前に、それらの「確認検査」を求める事業所等がいまだにあります。

当院ではそのような検査はお断りしてきましたが、それで困るのは患者さんです。どうしたものですかね。

コロナとインフルの「同時感染」も珍しくはないかも

この3連休の発熱外来を総括しますと、やはり、コロナ・インフルの同時流行が始まっているという印象です。

3日間の発熱外来受診者のうち、新型コロナのPCR検査または抗原定性検査を行った方は101人でした。

PCR検査は59件(うちインフル同時検査は39人)、抗原検査は43件(インフル同時検査は27人)でした。

あれ、合計102人じゃん、と思った方、するどい。例外的に、PCRと抗原検査を両方行った方が1人います。

PCR検査の陽性者は37人(陽性率63%)、抗原検査の陽性者は24人(陽性率56%)でした。

予想はしていたとは言え、コロナとインフルの同時感染者が2人いました。これは衝撃的です。

1人は、職場にコロナ、自宅にインフル、39℃の熱、さあどっち?、という方。両方陽性でした。

1人は、自宅にコロナ、でもコロナには昨年罹った、40度の熱、じゃあインフル?、という方。両方出ました。

2人とも、すぐにインフル陽性が判明したのですが、それで納得せず、PCR検査までしたのが正解でした。

いま熱が出たら、周囲にどのような感染症が出ていても、インフルとコロナを両方疑う必要がありそうです。

その2人に電話連絡する時に思ったのは、コロナの発症日って、いったいいつなんだろう、という疑問。

発症の7日後までの自宅療養を指示しようにも、最初の発症日って、どっちの発症日なんでしょうね。

症状はすべてインフルの症状であり、PCR検査時にはまだコロナは発症していなかった可能性すらあります。

あるいはPCR検査後に発症する可能性もありますが、インフル経過中にその発症日はわかりにくいでしょう。

同時感染例での療養時間は、従来のコロナよりも長めにした方が良いかもしれません。

コロナに隠れてインフル地味に流行中

全国的には3連休だったかもしれませんが、当院は3連診でした。そして予想通りの、発熱外来地獄でした。

コロナについては、PCR検査の結果が出揃う明日総括するとして、今日はインフルエンザの現状報告です。

今日1日だけでも、インフルエンザの検査を40人に行いました。すべて、コロナとの同時検査です。

そのうち、インフルエンザA型陽性が12件(陽性率30%)でした。B型はいません。

12人のインフル陽性者のうち、39℃以上の熱が出た方が10人。コロナよりも平均的に熱が高い印象です。

おそらくコロナだろうけど、ついでにインフルも調べとこうか、というノリでインフルが出た方が8人。

そのうち4人は、家族か、園か、友人か、職場にコロナ感染者が出たので発熱外来を受診した方でした。

多くの方が、予想外の結果(コロナと思ったらインフル!)に、驚かれます。

PCR検査を希望の方にインフルの同時検査を提案すると、そっちは予防接種してるから大丈夫という返答。

ワクチンを4,5回接種してもコロナは心配するのに、インフルワクチンは妙に信頼しているのが不思議です。

コロナとインフルの同時流行はもう始まっていますが、一般の方にはまだその実感がないのかもしれません。

「療養解除」後も、感染力に注意が必要

生活習慣病の方が定期的に来院されます。当たり前のことですが、全員が「基礎疾患を有する方」です。

受付で「風邪症状などはないですか?」と尋ね、「ありません」という方のみ待合室に入っていただきます。

もちろん体温をチェックし、アルコール消毒もしていただきます。

ところが診察室で「このひと月、体調はいかがでしたか」と尋ねると、しばしば意外な答えが返ってきます。

「実はコロナに罹ったんです」と答えた方が、昨日・今日だけで4人もいらっしゃいました。

コロナの療養期間は「発症の1週間後まで」なので、それを過ぎたら「無罪放免」だと思われています。

療養解除後はもう、「わざわざ自分から申告する今の体調問題」とは考えないのかもしれません。

しかし療養期間の「1週間」というのは、社会を回すために敢えて短くしたものです。

発症後の経過によっては、1週間を過ぎてもまだ感染力のある状態の方もいるはず。

そのような方が「基礎疾患を有する方(しばしば高齢)」の集まる待合室に入って来られては困ります。

当院では原則として、発症後2週間以内の方は、そうと分かった時点ですぐ駐車場の車に戻っていただきます。

この神経質な対応を不愉快に感じる方もいるかもしれませんが、これはお互い様なのです。

爆破予告で緊急着陸

成田から福岡に向かうジェットスター機が爆破予告を受け、セントレアに緊急着陸する事件が今朝起きました。

セントレアに緊急着陸なら<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-2278.html" target="_blank" title="私も経験">私も経験</a>がありますが、あれは急病人の救命のため。今回は犯罪に伴うものです。

爆破予告という脅迫行為は、それ自体は簡単でも、結果として極めて大きな迷惑(被害)をもたらします。

到底イタズラでは済まされません。犯人は厳罰に処され、莫大な賠償金が請求されるべきです。

乗員乗客を人質にとったのだから、一種のハイジャックと考えても良いいでしょう。ならば重罪ですね。

本物のハイジャックじゃないので死傷者は出ないはずですが、機体からの脱出時に負傷した人が5人いました。

乗客の誰かがショックで心臓発作を起こした、とは報じられていませんが、そのリスクもあったはずです。

空港で厳密な保安検査が行われているのは、機内での犯罪、とりわけハイジャックを防止するためです。

しかし考えてみると、今回のように実行犯が必ずしも搭乗していなくても、航空会社を脅せてしまいます。

であるなら、空港でのセキュリティチェックをどれほど強化しても、ハイジャックは防げないことになります。

本来はそういった脅迫を寄せ付けないために、乗客だけでなく貨物のチェックも完璧にしているはずです。

しかし貨物室に爆弾がある可能性を完全に否定できなければ、結局は、安全第一ということになるんですね。

今回の犯行の目的は不明ですが、電話一本で実行可能な犯罪としてはあまりにも重大。厳罰は必須です。

「異次元の少子化対策」とは

「異次元の少子化対策に挑戦する」と、岸田首相が年頭の記者会見で述べました。

これまでの政権が成し遂げられなかった難題に、自分が抜本的な対策を打ち出すという意気込みのようです。

ぜひ、思う存分やっていただきたいですが、期待半分です。「異次元の」と言うほどの手を打てるのかどうか。

異次元というからには、前例を踏襲せず、大胆で、「非常識」とさえ思えるほどの対策なのでしょうか。

具体的には、子育て家庭への支援と女性の働き方改革の推進が柱のようです。

でもそんなことは何十年も前から叫ばれ続けてきたことで、いま必要なのは、かけ声ではなく具体策です。

そしてその具体策が、異次元だというのですが、ちょっと想像がつきません。

18歳までの医療費や教育費を完全に無料化する程度では、異次元とは言えません。低次元です。

母親が子育てで働けない家庭を経済的に支援するのではなく、女性が働けるようにする策を考えるべきです。

同時に、子育てをしながら働く女性を抱える企業をも、国が支援する仕組みを作る必要があるでしょう。

さらに、実際に子どもがたくさん生まれるような作戦を立てるべきです。

言葉は悪いですが、「産めば産むほど得をする」ような制度(税金や年金)を作るのが効果的だと思います。

ハンガリーのように、母親の所得税を免除するのも効果的です。異次元って、そういうことでしょう?

第8波のただ中のレセプト作業で疲弊してます

毎月初めは、前月分の診療報酬請求のための、いわゆる「レセプト」作業に追われながらの診療になります。

とくに正月は始業が遅れ、おまけに12月は発熱外来が忙しかったので、いま請求関係はバタバタです。

しかも点数の大きい検査料などは、レセプトに一定のコメントを追記しなければならず、異常に面倒です。

たとえばPCR検査だと、一定のコードを選んだ上で、下記の項目についてコメントを入力する必要があります。

(1)検査が必要と判断した医学的根拠:簡潔な文章で記載する

(2)検査結果:陽性か陰性か

(3)検査の実施日時:何日の何時何分か

もちろん本来は、日々の診療の都度入力しておくべき事柄です。でもそれができりゃ苦労しませんよ。

いつしか月末にまとめて入力するようになってしまい、昨年末はそれをサボったため、いまやってるのです。

12月の発熱外来数百件に、1例ずつチマチマと、同じようなコメントばかりを入力していく作業の辛さたるや。

国はおそらく、レセプト作業を面倒にして過剰検査や不正請求を防ごうという意図なのでしょう。

医療のひっ迫を防ぐために感染者の全数報告が廃止されたのは、医療関係者を思いやる気持ちがあればこそ。

補助金の審査も緩くして性善説で臨み、国は発熱外来を担う医療機関を最大限に支えようとしてきたはずです。

それなのに診療報酬となると、手のひらを返したように性悪説。つまるところ医者は信用されていないのです。

ビル・ゲイツ氏の「読書ルール」

「天才ビル・ゲイツに学ぶ 読書を“血肉”にするための5つのルール」という記事を読みました。

(1)電子書籍ではなく、紙の本を読むこと

ゲイツ氏は、読書中にひらめいたアイデアを、本の余白にメモるそうで、それが紙の本のメリットだとか。

メモのほか、マーカーを引いたり、ページの隅を折ったりする人もいますが、ちょっとマネできませんね。

ざっと読んで情報を拾うのがネット、汚さず大切に読みたいのが書籍、という棲み分けが私にはあるからです。

(2)いったん読み始めた本は最後まで読み切ること

あらかじめ丁寧にリサーチし、最後まで読む価値があると思える本を選ぶそうですが、私とは真逆ですね。

書評やネット記事で目にした本を、私は即座にポチるので、自宅に届いた頃には興味が半分は失せています。

また、読み進むうちに最後まで読む価値があるかどうかがわかるのであり、買う前に予測など私には無理。

(3)読書をする際は、まとまった時間を取って集中すること

読書のために、少なくとも 1 時間は中断のない時間を確保すべきだとゲイツ氏は言います。

彼は忙しいからせいぜい1時間なのでしょう。私は半日ぐらい暇がないと、ゆっくり読書する気になりません。

一方で、旅先でスキマ時間に本を読むという、妙に格好を付けた行為自体は好きです。

(4)関心が強いテーマは複数の本を読むこと

たしかに私も時々やります。ある本を買うとき、同じ分野や同じ著者の本をついでに買ってしまいがち。

でもその3,4冊が手元に届くと私の物欲はすっかり満たされ、どの1冊をも読まない可能性すらあります。

たまに大型書店に行くと、テーマこそばらばらですが何冊も大人買いしてしまい、積ん読まっしぐらです。

(5)本を読んで考えたことをアウトプットすること

ゲイツ氏はブログで多くの本の書評を執筆しているそうで、最初から書評を書くつもりで読むのでしょう。

この考えは理解できます。私もたとえば芥川賞受賞作などは、そのような気合いで真面目に読みます。

書評というほどではないにしても、当ブログでネタにするつもりで読むだけでも、けっこう疲れます。

TVドラマの救急救命率は高くて当然

『ER救命救急室』など、米国のTVドラマでの心肺蘇生の救命率が高すぎる、という研究記事がありました。

患者や家族に、非現実的で楽観的な、誤ったイメージを与えるのが問題だといいます。

それを言うなら、心肺蘇生に限らず、ドラマの緊急手術が「無事成功」する確率も尋常ではないでしょう。

誰もがさじを投げるような難手術だって成功するし、しかもその術後経過の順調さは奇跡的です。

でもそれがドラマなのです。困難を乗り越えた喜びや感動を描くのが、そもそもドラマの趣旨なのですから。

失敗手術や合併症に苦しむ姿や死亡例の数々は、単に、ドラマとして取り上げないだけの話。

いみじくも旧友・松谷君が発した<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-2404.html" target="_blank" title="「それは描かんのよ」">「それは描かんのよ」</a>なのです。奇跡や感動を描くからこそドラマなのです。

弥七の風車は、絶妙のタイミングで悪代官の腕に刺さります。弥七の失敗例など見たことがありません。

凶悪犯は必ず最終的に捕まるか死亡し、主人公は撃たれても死にません(最終回を除く)。

事故に遭った旅客機は奇跡的に着陸し、惑星の地球衝突は避けられ、異星人は撃退できるのです。

とは言え、最近では必ずしも完全なハッピーエンドではなく、ほろ苦い敗北感を残すことも多くなりました。

ただ医療系に限ると、不幸な結末では悲しすぎるので、映画はともかくTVドラマでは描きにくいですね。

「んなことあるかい」とツッコみながら、奇跡的な医療現場を目撃するのが、正しい視聴態度なのでしょう。

初日の出フライトと富士山

初日の出。皆様は見ることができたでしょうか。わが家から見た朝日は残念ながら、雲に覆われていました。

阿蘇・大観峰からは、美しいご来光を拝むことができたようで、さぞかし荘厳な気持ちになったことでしょう。

航空会社各社は、毎年「初日の出フライト」を企画しています。

絶対に雲に邪魔されないので、いつも人気のようです。見た人の「報告」を今年もネットで読みました。

ANAの場合、羽田・成田・関空の3空港からそれぞれ1便が、富士山周囲を遊覧飛行しました。

羽田発着便は、朝5時半に離陸して富士山の南側を半円状に飛び、長野県南部上空の「観賞ポイント」到達。

機内の左右両方の乗客が窓から鑑賞できるように、そのポイントではぐるっと小さく旋回飛行したようです。

きっとその位置からは、富士山から登る神々しい日の出を、南アルプス超えに観賞できたことでしょう。

でもこういう遊覧飛行って、窓側か、せめて窓から2つ目の席でないと、ぜんぜんつまらないですよね。

当然ですが座席によって料金は大きく異なり、2万6千円〜8万2千円。

ボーイング787-8の3-3-3の横並び9席の、真ん中の3席が最安席なんですが、かなり微妙な鑑賞でしょうね。

いずれにしても贅沢な催しです。そして日本人は、初日の出を見るならどうしても富士山なんですね。

ところで、日頃から飛行機を予約するときって、富士山が見える側の席を選びたいですね、少なくとも私は。

なので羽田に向かうときは左側です。伊豆半島の先っぽ上空を飛ぶので、富士の全景を遠くから眺められます。

難しいのは羽田からの復路便。たいていは富士山のわずかに北側を飛ぶので、左側席だと間近に拝めます。

たまに、富士山のほぼ真上を飛ぶことがあって、眼下に巨大な火口を見ることができるので感動的です。

でも富士山の真上の、しかもわずかに南側を飛ぶことがなぜか多くて、この場合には右側席が正解なんですね。