政治家は曖昧な表現を好む

「いま、国際情勢は、不安定化、流動化しています」

岸田首相は今夜の記者会見で、防衛力強化の必要性を説くための前提として、冒頭のように述べました。

「いま、国際情勢は、不安定で流動的です」

このように言った方が日本語としてはこなれていますが、敢えて堅苦しい表現を使いたがるのが政治家です。

「不安定に向かっている」という意味での「不安定化」なら、現時点ではまだ安定しているのでしょうか。

いやおそらくは、「すでに不安定だが、ますます不安定になっている」の意味なのでしょう。

「流動化」にしたって、「いまから流動的になる」ではなく「ますます流動的になる」という意味のはず。

政治家は何にでも「化」を付けたがります。

前にも書いたように、「加速する」と言わずに「加速化する」と言うのがいい例です。

「加速する」=「速度が増す」であるならば、「加速化する」=「加速度が増す」と考えるべきです。

つまり、実際に加速するかどうかではなく、今後加速する方向であるという間接的な表現なのです。

「化」をつけることで、何もかもが具体性や確実性を欠き、「前向きに善処」と同じ精神論になります。

言葉尻を曖昧にして言質を取られないような発言をするのは、政治家の性(さが)なのでしょう。