マスクを無造作に内ポケットに押し込むな

新型コロナ感染症を、現在の「2類相当」から季節性インフルエンザと同じ「5類」へ引き下げる議論。

以前からくすぶっている話ですが、今回の「感染症法改正案」の審議で、それが確定するかもしれません。

「新型コロナの感染法上の位置づけを速やかに検討する」と、加藤厚労相が昨日の記者会見で述べました。

でもそのときの、加藤氏のマスクの扱い方が気になってしまったので、今日はそっちの話。

多くの政治家が会見時に壇上でマスクを無造作に外し、背広の内ポケットかシャツのポケットに入れています。

首相や官房長官はもう諦めるとしても、医療を管轄する厚労相がこれでは、いかんでしょう。

その外したマスクの、内側と外側の清潔度の違いが分かってるんですかね。いやそもそも、マスクの意義が。

マスクが感染対策として有効であるとすれば、それはウイルスの吸入を阻止できているということです。

阻止できたウイルスは、おもにマスクの外側に付着して、感染力のある状態でしばらくそこにとどまります。

外気を浮遊しているウイルス(を含む粒子)が、体の各部やメガネや衣類に付着する可能性もあります。

しかし、呼吸によって吸い込まれた外気が通過するマスクには、圧倒的に多量のウイルスが付着するはずです。

マスクの外側は不潔、マスクの内側は清潔、これはマスクの基本です。

そのことを意識していたら、ポケットにマスクを無造作に押し込むようなマネはとてもできないはず。

日本中がTVで見ている会見の場で平気で雑な振る舞いを見せている政治家の姿が、私は我慢ならないのです。

「1バイアルで1人」の贅沢接種もやむなし

乳幼児(6カ月から4歳)に対する新型コロナワクチンの接種が、ひどく低迷しているようです。

対象者には先週までに接種券が届いたはずです。集団接種はなく、医療機関で接種を受ける必要があります。

しかし、接種実施医療機関として熊本市のサイトに掲載されている医療機関は、たった24カ所。

当院もそれに含まれますが、必ずしも、接種実施医療機関が少ないから接種が進んでいないとも思えません。

当院での接種を希望したり接種の可否を打診してくる方自体が、皆無ではありませんが少ないのです。

それに加え、ワクチン1バイアルが10人分なので、まとまった人数を集めなければ接種できません。

と思っていたら、ついに今日、市から次のような連絡メールが届きました。

「お一人以上の接種希望者がいる場合、ワクチンは必要なバイアル数を柔軟に配送いたします」

つまり、残り9人分は廃棄してもかまわないから、たった1人のために1バイアル使ってでも接種して欲しいと。

ワクチンの廃棄を気にしなくても良いなら、人数が集まらないので接種が進めにくかった問題は解決です。

これで、希望者1人単位で接種を計画できます。人数分のバイアルを消費するぐらいのつもりで臨めます。

ただし、小児用ワクチンは希釈が必要なので、オミクロン対応ワクチンよりも準備に時間がかかります。

できれば、成人〜高齢者のワクチン接種が一段落してからの開始に、させていただきたい。

ていうか、そちらの希望者がまだ多くて、しかもインフルもあるし、接種するための時間が足りないのです。

当院のような発熱外来に注力している医療機関には、ワクチン接種に割く時間がもうこれ以上作れません。

インフルエンザの自主検査キットこそ、おおいに使うべき

たびたび書いているように、自宅で抗原検査をしてから受診する方がとても増えています。助かってます。

医療用キットで陽性なら、電話問診の内容によっては、受診せずにそのまま自宅療養となる場合もあります。

基礎疾患があったり、病状が心配だったり、何らかの処方を希望する方だけ、来院してもらえばよいのです。

ですがその方の濃厚接触者のPCR検査や抗原検査が必要なケースも多く、結局はご家族で来院されたりします。

そのついでに、検査キットの写真または現物を見せていただき、証拠としてその写真を撮って保存します。

ただ自宅での検査って、それが絶対に本人のモノかどうかはわかりません。自己申告を信じるしかありません。

コロナは感染すると一定期間の自宅療養等が必要となるので、本来は厳密な陽性判定が必要なんですけどね。

一方でインフルエンザは、コロナに比べれば療養の制限も緩いので、むしろ自主検査が望ましい気がします。

コロナとインフルの同時流行期には、両者を<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-4069.html" target="_blank" title="同時検査">同時検査</a>するか、もしくは先にインフルを検査すべきでしょう。

コロナの流行が優勢と思われるうちは、コロナとインフルの同時検査でよいと思います。

しかしインフルの方が圧倒的大流行となった時は、インフル単独の自主検査キットを活用すべきです。

いつぞや言われていたような、コロナだけ検査して「<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-4020.html" target="_blank" title="コロナ陰性=インフルと判断">コロナ陰性=インフルと判断</a>」なんてのはバカげてます。

日曜日の発熱外来、どうにかなりませんか

診療を終えて大慌てで帰宅したもののキックオフに間に合わず、録画を追っかけ再生で見ました。

W杯カタール大会グループリーグ第2戦です。残念ながら日本は、0-1でコスタリカに敗れてしまいましたね。

でも、こんな日なのに診療を早めに切り上げることができないほど、今日の発熱外来は混み合っていました。

午前中の早いうちに夕方の予約まで埋まることが、最近では当たり前になって来ました。

受付は一日中、「今日はもう予約が一杯です。申し訳ありません」と電話で謝り続けなければなりません。

なによりまず、熊本市(県)の休日の発熱外来体制が貧弱すぎます。これは去年からずっとそう思っています。

熊本県のサイトで、熊本県内の「診療・検査医療機関」つまり発熱外来の一覧を見ることができます。

これは公表に同意した医療機関のみの掲載ですが、全部で385医療機関、熊本市内だけでも157カ所あります。

しかしこの一覧には、発熱外来を実施する曜日や時間の記載がありません。

実は、この157カ所のうち、日曜日にも発熱外来を実施する医療機関は6カ所だけです。

しかもそのうち、朝から夕方まで対応しているのは、当院を含めてたったの2カ所だけ。

この状況が、いつまで経っても改善されません。休日の発熱外来をもっと充実させる方法って、ないですかね。

てことで、第3戦(対スペイン)は金曜日の午前4時から。これはまた厳しい時間帯です。

土曜はワクチン、日曜は発熱外来、のパターン定着中

もう何週間も前から、土曜日の午後はたいてい、ワクチン接種専用の時間帯にしています。今日もそうでした。

新型コロナワクチンは、原則として当院でこれまでの接種をしてきた方に限定して、予約を受け付けています。

「もう接種しない」「少し考える」などの慎重派の方もいますが、「すぐ接種したい」方も少なくありません。

10月からオミクロン株対応ワクチンに切り替わった時点から、少し接種希望者が増えた印象もあります。

インフルエンザワクチンも予約接種を進めています。ネット予約枠は、何曜日でもすぐ一杯に埋まります。

今年こそインフルエンザが流行するかもしれないと考えましょう。タカをくくったら痛い目に遭います。

お子さんには、他の定期接種ワクチンとの同時接種もオススメです。

このように、土曜日の午後には原則として一般診療をお断りしています。ご了承ください。

そのかわり、日曜日の発熱外来には、可能な限り多くの方に受診していただく覚悟です。

ただし土曜にしても日曜にしても、PCR検査を委託している検査センターの受け入れ体制に難があります。

日曜に採取したPCR検査の検体は、実際には月曜からの検査開始となり、結果が出るまで時間がかかります。

発熱外来の受診者にお願いしたいのは、来院前にできるだけ、自宅で抗原検査を行っていただきたいことです。

もちろん「医療用」でお願いします。「研究用」はダメ。陽性が確認できれば、当院での確定検査は不要です。

なんなら、受診自体も不要です。とりあえず、電話でご相談ください。アポなし受診がいちばん困ります。

ワクチン接種量を勝手に微調整しちゃダメ

岡山県の医療機関で、新型コロナワクチンを規定より少なく70人に接種していた件には、少々驚きました。

被接種者の健康状態や副反応歴、希望などを考慮して、ワクチンを1/2〜1/4に減らして接種したとのこと。

副反応を抑える目的だったらしく、有効性よりも安全性を重視した、ある意味、日本的な考え方です。

もちろん医薬品は、国が定めた通りに投与しなければなりません。

治験を経て承認された対象・用法・用量が守られなければ、有効性と安全性が保証されないからです。

ただし、接種量が半分なら効果も半分なのかと言えば、とくにワクチンの場合にはそうではありません。

たとえばインフルエンザワクチンの1回の接種量は、3歳未満0.25ml、3歳以上0.5mlと定められています。

今年3歳になったお子さんには、敢えて、「今回から大人と同じ量ですね〜」と言いながら接種しています。

するとたいていの親御さんが少し驚いたような顔つきになるので、私は次の様にたたみかけます。

「3歳でも20歳でも100歳でも、体重が10キロでも100キロでも、接種量は同じなんですよ」

ワクチンの効果を考えたとき、年齢や体重に相関した投与量という考え方が(あまり)ないのです。

なので、低年齢・高齢者や低体重の方に同じ量を接種する際には、副反応が心配になる気持ちもわかります。

岡山の先生は、高齢者施設の入所者などが接種対象だったため、接種量を「調節」してしまったのでしょう。

例によってメディアは「今のところ健康被害は確認されていない」などとアホなことを書いています。

規定よりも少なく接種したというのに、急性期にどんな健康被害が起きるっていうですかね。

コロナとインフルの同時検査キット、市販へ

新型コロナウイルスとインフルエンザの同時検査キットが、ネットや薬局で販売されることになりそうです。

コロナ単独の検査キットはすでにOTC(一般用医薬品)化されており、広く使われているのはご存じの通り。

医療用キットで陽性なら、もはや医療機関を受診する必要はないので、発熱外来のひっ迫抑制効果があります。

今後のコロナとインフルの同時流行に備えるなら、同時検査キットも一般売りすべきです。

現にこの1週間、当院の発熱外来でも、コロナとインフルの同時検査を希望する方が急増しています。

いやむしろ、コロナよりもインフルを疑ってインフルの検査を希望する発熱者が意外と多くて、驚きます。

でも「もうインフルは出てますか?」と問われれば、「まだコロナの100分の1以下です」と答えています。

熊本県の定点(80カ所)あたりの毎週の報告数は、0ではありませんが1未満です。まだその程度なのです。

当院でも、インフルが陽性に出た方は今年はまだ一人もいません。

発熱者に原則として全例コロナとインフルの同時検査をするのは、本来は正しい医療行為ではありません。

いちばん「怪しい」疾患(たとえばコロナ)の検査をまず行い、それが陰性なら、次の疾患を考えるべきです。

しかしそれでは、鼻腔(鼻咽腔)を綿棒で拭う操作を、2度繰り返さなければなりません。苦痛を2回です。

そこで、「順位を付けがたい」2つの感染症の検査を最初から同時に行うのが、同時検査キットなのです。

ムダの多い同時検査ですが、今回のケースは国も推奨しているので、心おきなく実施させていただきます。

なぜ最初から同時検査をしたのか、まさかレセプトにいちいち言い訳の記載を求められたりしませんよね。

今日の「勤労」はワクチン接種

「勤労感謝の日」の今日は、新型コロナワクチンとインフルエンザワクチンの接種専用日としました。

<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-4048.html" target="_blank" title="「文化の日」">「文化の日」</a>にもかなり多くの接種を行いましたが、今日は朝から夕方まで完全に、接種だけを行いました。

発熱外来を受診希望の方はお断りせねばならず、申し訳ありませんでした。

以前から、今月の祝日はワクチン接種に使うつもりでした。発熱外来も大事ですが、ワクチン接種も大事です。

午前中59人にコロナワクチン、そのうち12人にはインフルエンザワクチンも同時接種しました。

昼休みをはさんで午後は、ネット予約のインフルエンザワクチン接種を49人に行いました。

どちらか一方だけなら120人に接種することもできたのですが、それぞれ希望者が多いため折半しました。

コロナワクチンは、前回の接種から3カ月余りの方も多く、次はいつになるんだろうかと誰もが思っています。

年明けたらすぐ6回目でしょうかねぇ、という笑えない冗談も出ます。でもたぶん、春には6回目でしょう。

10月から接種しているオミクロン株対応ワクチンの接種で、ひどい副反応が出た人は当院では幸いいません。

回数を重ねるほど副反応がひどくなる、と覚悟して来る方もいますが、意外と平穏な経過のようです。

同時接種した方に重大な副反応が起きたら、補償の観点からも、それはコロナが原因だと考えるべきでしょう。

国が同時接種を推奨しているので、その考え方で問題はないはず。その意味では同時接種がオススメです。

第8波ピークを前に、「ゾコーバ」緊急承認

塩野義製薬の新型コロナ内服薬「ゾコーバ」が、緊急承認されました。

重症化リスクがない人にも処方でき、従来薬「ラゲブリオ」などよりも幅広く使える治療薬になるでしょう。

その妙な名称の由来は、「XO(ノックアウト)」+「COVID-19」=「XOCOVA(ゾコーバ)」だとか。

当院の発熱外来では、2日前の日曜の抗原検査とPCR検査は37件。そのうち陽性は25件。陽性率68%でした。

経験上、感染者が増えるほど陽性率は高くなります。第7波では、ピーク時には80%を超えていました。

すでに第8波に入ったことには、疑いの余地がありません。

家庭内感染や、保育園や学校や施設等でのクラスターで感染したお子さんは、まだあまり多くありません。

むしろ、周囲に感染者どころか発熱者もいない「寝耳に水」の方が目立ちます。

これは経験上、大流行の初期に見られた兆候と同じです。

第7波と異なるのは、自宅で抗原検査を行う方が多いこと。医療用キットで陽性なら、それでコロナ確定です。

重症化リスクがなく全身状態が良ければ、感染しても発熱外来を受診する必要はありません。

そのかわり、発熱したけど自宅で抗原検査が陰性だった方が、PCR検査目的で受診するケースが増えています。

日曜の陽性者25人のうち、HER-SYS入力を行った方は3人でした。医療機関の負担は確実に減っています。

ラゲブリオを処方したのは2人だけでしたが、ゾコーバなら、もっと多くの方に処方することができそうです。

ワクチンの間違い接種の原因は、製剤の統一性の無さ

間違い接種をいかにして防ぐか。予防接種に携わる者にとっての永遠の課題です。

以前は子どもたちの定期接種における問題でしたが、最近はコロナワクチン絡みの過誤接種例が増えました。

ファイザーが「間違い接種防止対策のご案内」というパンフレットで、間違いを4類型に大別しています。

(1)被接種者の年齢確認漏れ

1回目を11歳のとき接種した後に12歳になったお子さんの2回目は、12歳未満用ワクチンを接種します。

2回目を11歳のとき接種した後に12歳になったお子さんの3回目は、12歳以上用ワクチンを接種します。

日本脳炎ワクチンの接種における年齢規定とは異なり、医学的にも納得できかねるので、間違いの元なのです。

(2)製剤の取り違い

同じ時間帯に異なる新型コロナワクチンを接種することなんて、私には怖くてできません。

たとえ同じ日に接種する場合でも、午前と午後で分けるなど、時間帯分離はきわめて重要です。

家族が同時に接種できるために、年代の異なる被接種者を同じ枠で接種するような便宜は図りたくないです。

(3)製剤ごとに対象年齢や用法・用量が異なることを知らなかった

規定を知らないのはダメですが、製剤によって希釈の有無が異なる設定は、明らかに制度設計のミスでしょう。

同じ新型コロナワクチンなのに、希釈するワクチンと希釈しないワクチンが存在する現状は是正すべきです。

(4)別年齢用の製剤の転用

医薬品は規定通りに使わなければなりませんが、有効成分の量が同じなら、その効果も同じはず。

と考えて、別年齢用の製剤を「有効利用」してしまった過誤接種もあるようです。

慌てて開発して適用年齢を拡大してきたワクチンなので、現行では製剤の使用法に統一性を欠きます。

将来的には、年齢ごとに用量のみを変える製剤へと向かうべきでしょう。いつまで接種するのかはともかく。