覚悟していても大変な、祝日の発熱外来

祝日ですから、当院の発熱外来は日頃の日曜日以上に、混み合うことが予想されていました。

確かに、朝の9時過ぎには夕方までの予約が埋まったので、県の担当者に紹介中止の連絡を入れました。

ところがその担当者曰く、「祝日は休診だと思い、今日は発熱外来の紹介をしていませんでした」と。

じゃあ、どうして朝から予約の電話が混み合ってたんでしょうね。

明日から当院は、5日間のお盆休みに入ります。夏の5連休は多分、開院以来最長です。

臨時休診の3日間を火曜・金曜の定期休診日が挟んでいるだけなのですが、結果的には異常に長い休診です。

休診中にやることはたくさんありますが、例えば電カル端末のMacのOSのアップデートも計画中です。

今メインで使っている診察室のMacでは、OSが古くてHER-SYSにログインできないのです。

HER-SYS入力のために、いちいち院長室まで移動する不便さを、そろそろ解消しなければなりません。

新しいOSはもちろん、「クリーンインストール」を行います。

これにはHDDを初期化する作業を伴い、Macはスッキリ爽やかになりますが、多分、1日仕事です。

コロナが落ち着いてから行うつもりでしたが、待っていてはキリがないので、お盆休みに行うことにしました。

さて今日は、PCR検査が54件、抗原検査は18件でした。

検査センターとの兼ね合いでPCR検査を17時で打ち切ったので、その分、今日は抗原検査が多くなりました。

PCRの結果は明日判明します。明日は、電話連絡とHER-SYS地獄が待っています。覚悟しています。

新型コロナ治療薬「ラゲブリオ」薬価収載へ

「ラゲブリオ」を、今日は2人の方に処方しました。新型コロナウイルス感染症治療用の内服薬です。

新型コロナ用の内服薬には、他に「パキロビッドパック」がありますが、他の薬との兼ね合いで使いにくい。

一方でラゲブリオは気軽に処方できる薬なのですが、実際にはさまざまな制約があって処方数が伸びません。

この薬は、軽症から中等症1の患者のうち重症化リスクがある方に対し、発症から5日以内に処方できます。

この「発症から5日以内」というのが、なかなかキワドイのです。

例えば、発症の翌日に当院でPCR検査実施、その翌日結果判明、その翌日処方、というケースならOKです。

しかし、発症の2日後に検査、翌日結果判明、その翌日が当院の休診日だと、処方がギリギリになります。

明日の祝日は、かなりの数のPCR検査をすることになりそうですが、結果が判明する明後日は休診日です。

たとえ休診日でも、検査結果の電話連絡やHER-SYS入力やチェックシート送付はもちろん、行います。

しかしさすがに、休診日に処方はできません(処方できるぐらいなら休診しません)。

さらにその後はお盆休みに突入するので、明日検査する患者さんへのラゲブリオ処方は不可能なのです。

どの医療機関で陽性判定をしても、別の医療機関でその判定結果を入手して薬を処方できる仕組みが必要です。

HER-SYSや保健所を介した現在のやり方では、処方に間に合うようなスムーズな運用は難しそうです。

ちなみに今日の中医協総会でラゲブリオの薬価収載が了承されました。保険適用となり一般流通が始まります。

薬価は5日分で94,312円。コロナ医療は公費負担なので患者負担はありませんが、なかなかの高額薬ですね。

少々の病状では入院できない状況です

新型コロナ患者の入院病床とか発熱外来や検査体制などの「ひっ迫」については、ずっと言われ続けています。

本日時点での確保病床使用率は、熊本県で85.1%、熊本市121.1%、うち重症者用は、県28.3%、市52.0%。

全体のキャパがそれほど大きいわけではないので、感染者が入院するための基準には厳しいものがあります。

昨日も、心不全と低酸素のある高齢者が当院の抗原検査で陽性でしたが、手配しても入院はできませんでした。

入院チェックシートに「早期入院」が必要だと明記した上で、保健所に電話も入れたのに、無理でした。

自宅に駆けつけた保健所の方が実測したSpは93〜94%。90%を切ったら救急車を呼んでください、とのこと。

おそらく、この方よりもずっと重症の方のために、残り僅かな重症病床を空けているのでしょう。

しかし日頃から診療している担当医が、これは危ないと思った患者さんぐらいは、入院させていただきたい。

いや、それも叶わぬくらいに、熊本の医療は厳しい状況なのかもしれません。

昨日も予測したように、少なくとも熊本では、第7波はまだピークアウトする様子はなさそうです。

それなのに当院は、12日から数日間のお盆休みに入ります。大事な時に、まことに申し訳ありません。

さて、お盆の人の動きが、その後の感染拡大にどのように影響するのでしょうね。今は不安しかありませんが。

第7波がピークアウトしたとは思えません

誰もが知っているように、月曜日の新規感染者数が少ないことは、何の安心材料にもなりません。

土日の検査結果のほとんどが月曜の夕刻以降にHER-SYS入力されるため、感染者登録は火曜になるからです。

たしかに、1週間前の同じ月曜日の数値よりは減っていますが、そんなの誤差範囲です。

現に私は今夜、その慄然とするような検査結果を前にして、半泣きになりながら、事務処理をしたところです。

昨日の日曜日のPCR検査は、検査数こそ30件と少なめでしたが、陽性は26件。陽性率87%は過去最悪です。

土日のPCRと今日の抗原検査の陽性件数は全部で44件。これらのHER-SYS入力を開始したのが21時前。

入院チェックシートまで作成して、保健所にメール送付したのがたった今、23時51分のこと。

それから大慌てで、帰宅前にこのブログを書いています。締切(23時59分)まで時間が無いので短めです。

いちどに44件の発生届等を提出するのは、2月以来かもしれません。コロナの勢いが止まりません。

これらの発生届などはすべて、明日の感染者数としてカウントされ、メディアにその数値が登場します。

この1,2週間の発熱外来の異常な雰囲気からは、もうじき第7波がピークアウトするとは、私には思えません。

ワクチン接種していても、BA.5に罹ればたいてい高熱が出ます

新型コロナワクチンの接種歴については、先日も触れたようにHER-SYSの入力項目から削除されました。

初期のHER-SYSには、すべての接種回のワクチンのメーカーと接種日を記載する必要がありました。

最近はそれが、ワクチンの接種回数と、最終ワクチンの接種日とメーカーだけになっていました。

そしてついに今回、ワクチンについては、接種歴の有無も何も記載しないでよい仕様になったわけです。

つまり厚労省は、ワクチン接種歴と新型コロナ感染の関連については、全数調査を断念することにしたのです。

これは英断です。ただし重要な医学的解析なのでおそらく、サンプリング調査等は行われることでしょう。

一方で、熊本市の入院チェックシートには、「接種回数が1回以下」かどうかを記載する欄が新設されました。

それが重症化リスク因子と考えられるからですが、医師の作業量削減の流れに逆行する仕様変更です。

とは言え、そのぐらいの情報の提供なら、私も労を惜しむつもりはありません。

ワクチン接種歴とコロナの感染性や症状との関連については、私も以前から興味はあります。

少し前まで(BA.5出現前?)、ワクチン接種した方は、コロナに罹っても高熱が出にくい印象がありました。

ところが最近は、3回接種者でも4回接種済みの方ですら高熱が出ます。もしかするとBA.5の特徴でしょうか。

そんな分析も、私の僅かな経験では誰かに吹聴できるものではありません(と言いつつブログには書いてる)。

だとしても、他人の受け売りではなく自験例による考察を語ることには、一定の説得力があると思うのです。

発熱外来の疲弊対策はまず、事務作業の削減から

発熱外来の面倒なところは、診療そのものよりも事務作業だと言う人がいます。私です。

実際、HER-SYS入力と入院チェックシートの作成作業に、私はずっと(いつから?)忙殺されてきました。

厚労省が、その負担軽減のためにHER-SYS入力項目の大胆な削減を打ち出したことは、昨日書いた通りです。

重症化リスクの低い患者においては、氏名、性別、生年月日、報告日、住所、電話番号のみでOKだと。

そこで念のため保健所に尋ねると、熊本はまだ「健康フォローアップセンター」が開設されてないので・・・

つまり体制が整っていないので、もうしばらく、これまで通りにお願いしたいとのこと。

いやいや、それでは厚労省の改革の趣旨に反しませんかと。発熱外来の疲弊をどうしてくれると(心の中で)。

最終的に、上記6項目にフリガナと発症日を加えてくれたらそれでいいです、という保健所の言質を得ました。

となると面倒なのは、熊本独自の「入院チェックシート」です。

チェックシートの煩雑さは、HER-SYSを簡便にした趣旨に反しませんかと、そう正論で問いただしました。

これに対して保健所の対応は明確ではありませんでしたが、概ね私の思った通りにやらせてもらえそうです。

これからは重症化因子を持つケースに集中して(軽症例は手抜きして)、メリハリのある報告で臨みましょう。

とりあえず今夜の発生届は、最小限項目のHER-SYS入力としました。これでだいぶ、気が楽になりました。

発熱外来の「正常化」のために

「オミクロン株の特徴に合わせた医療機関や保健所の更なる負担軽減への対応」

そのように題して、厚労省の「対策本部」は昨日、次のような4つの方針を打ち出しました。

(1)患者発生時の届出項目の更なる削減

(2)「発熱外来自己検査体制」整備の更なる推進

(3)効果的かつ負担の少ない医療現場における感染対策について

(4)救急医療等のひっ迫回避に向けた対応

HER-SYS入力項目が7つに減ったことは歓迎します。これでほぼ、<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-3950.html" target="_blank" title="先日私が希望した通り">先日私が希望した通り</a>になります。

ワクチン接種歴や基礎疾患の内容などは、忙しい時に入力する必要のある情報ではなかったということです。

「自己検査」のための抗原検査キットが足りるのかは疑問。何しろ医療機関でさえ入手には苦労してますから。

自己検査で陽性となった方が、発熱外来を受診せずに自治体のフォローアップを受けられる仕組みも必要です。

症状が軽い場合は、検査や薬のために医療機関を受診することは避けるべきだと、改めて強調されています。

また、療養終了時に発熱外来での検査を求めないことについても、引き続き 幅広く周知を図るとのこと。

発生届の簡素化と自己検査の有効利用は、発熱外来の「正常化」のためには絶対必要です。

防府に日本三大天神

昨日のブログの「白紙に戻そう検討使」の意味が分からん、という方がいらっしゃったので、念のため説明。

「遣唐使」を停止した年(西暦894年)の覚え方(語呂合わせ)ですね。元受験生ならきっと知ってるはず。

停止を決めたのは菅原道真です。後に無実の罪で大宰府に左遷されて、その怨霊が雷神になった人ですね。

流される途中で寄った松﨑(いまの山口県防府市)で、いつかこの地に住みたいと言ったそうです。

その証拠に、左遷の2年後に道真が大宰府で亡くなったその日、防府に神光が現れ瑞雲が棚引いたとか。

というわけで日本三大天神は、北野・太宰府・防府なのです。これは小学校で習いました(防府出身なので)。

「とりあえずビール」という時に、いちいち「ヌサもとりあえずビール」と言う友達が学生時代にいました。

百人一首に取り上げられている、菅原道真の歌がその由来。これもまた、受験戦争の弊害と言えるでしょう。

「このたびは 幣(ぬさ)も取りあへず 手向(たむけ)山 紅葉(もみぢ)の錦 神のまにまに」

(今度の旅は道祖神に捧げる幣も用意できませんでした。手向けの山の紅葉を捧げるので、神よ御心のままに)

「幣(ぬさ)」という読みは耳慣れませんが、字面は「紙幣」でお馴染みの漢字です。

私は高校時代に、「神のまにまに」から「紙の money, money」を連想しました。つまり紙幣です。

このことは大学時代にABBAのヒット曲「Money, Money, Money」に出会った時に、また思い出しました。

コロナ対策の見直しをためらうことなかれ

熊本県の今日の新型コロナ新規感染者は4,414人、全国でも24万9,830人と、いずれも過去最多となりました。

一体収束する気あるんですかね。こうなればもう、収束を待つのは諦めて対応を変えるべき時かもしれません。

コロナによる純粋な医学的問題よりも、コロナ対策に伴う制限の方が、社会に強く影響しているからです。

「第7波を乗り越えた後には見直しが不可避だ」と言う岸田首相は、方針を力強く語るわりに行動が遅い。

岸田首相を「検討使」だと揶揄したのは国民民主党の玉木代表ですが、まことに秀逸な命名です。

いやしかし、次々に繰り出す政策がしばしば国民を惑わせた某首相(故人)よりは、少しマシかもしれません。

ニュースを見ていると岸田氏は、いつも目が真っ赤に充血しています。最近は頭髪の縮れも目立ちます。

「人の話をよく聞くこと」が特技だと言う岸田氏ですが、万人の意見を公平に聞いていては何も進みません。

優秀なブレーンからの情報と、ご自分の見識と良心とで、この難局を乗り越える決断を下していただきたい。

たとえば、感染者の全数把握は即刻、取りやめるべきです。そうすればみんなが楽になります。

事務作業が大幅に減るので、保健所も発熱外来も、本来すべき仕事に集中できます。いますぐすべきです。

感染者数の動向を知りたければ、サンプリング調査でいいじゃないですか、インフルエンザみたいに。

物事をよく吟味するという意味で、「検討使」は褒め言葉かもしれません。検討の後は、行動あるのみです。

野党やメディアの質問には的確に答え(賢答使)、後には「健闘使」と改名されるようだといいですね。

「白紙に戻そう検討使」などということのないように、お願いします。

「濃厚接触者」の扱いを見直す

社会経済活動への影響を考慮して、新型コロナ感染者の「濃厚接触者」の扱いが変わりつつあります。

当ブログで「濃厚接触」という言葉を始めて使ったのは、<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-1353.html" target="_blank" title="7年前">7年前</a>に「MERS」について書いた時でした。

まだ耳慣れない「のうこう」の響きからは、「農耕」とか「農高」を想像した方もいたでしょう。いないか。

職場や保育園でも問題にはなりますが、濃厚接触者がいちばん発生しやすいのは、家庭です。

少し前までは、家族間の接触度合いを保健所が聞き取り調査して、誰と誰が濃厚接触者だと認定していました。

しかし感染拡大に伴い面倒な認定作業は行わず、同居家族は基本的に濃厚接触者と考える方針になっています。

家庭内濃厚接触者の待機期間は、感染対策をとらずに最後に感染者と接触した日から5日間に短縮されました。

さらに2日目と3日目に抗原検査を行なって陰性なら、3日目に待機が解除されます。

私の経験上、濃厚接触の2,3日後に発症する人が多いので、3日後の解除はけっこうきわどい規定です。

抗原検査キットの入手も難しいでしょう。医療機関ですら、診療用のキット確保で苦労しているのですから。

感染者と毎日接触しているのに、感染者よりも5日早く待機が解除されると思っている濃厚接触者もいます。

残念ながらその状況では、感染者よりも5日長く待機しなければなりません。

無症状の濃厚接触者が待機する必要があるのかどうかは、議論の余地があります。

一方で、抗原検査によって待機期間を短縮できるという規定にも、確かな医学的根拠はあるのか疑問です。

抗原検査による「無症状者の陰性判定」を国が認めるということになりますが、私には納得がいきません。