『おいしいごはんが食べられますように』読後感

<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-3760.html" target="_blank" title="芥川賞">芥川賞</a>には、高瀬隼子さんの『おいしいごはんが食べられますように』が選ばれました。

今回も私が受賞を逃した理由は、前にも書いた通りです(小説を書いていないから)。

受賞作はすぐ読むのが私の流儀(礼儀?)ですから、いまKindle版で読みました(以下、ネタバレあります)。

タイトルから、WFP(国連世界食糧計画)的な視点で書かれた啓蒙書かと私は一瞬思いましたが、違います。

「人間の中の多面性がよく描かれている」と選考委員の川上弘美氏は言いますが、それほど複雑な話でもない。

小さな職場の中での人間関係の、悪く言えばどうでもいいようなことが、ただ書き綴られているだけです。

なんなら、WFPから苦情が出そうな感じの食糧描写も少し、登場します。

「ごはん」つまり食事の場面が多く描かれていますが、豪華なフレンチとか、そういう料理ではありません。

そう書くと誤解されそうですが、決して食べ物や食材にこだわった内容ではなく、主体は心理描写ですから。

女性が書いた小説なんだなぁと思わせる部分が所々にあって、そこが私には妙に新鮮でした。

誰かのトークをずっと聞いているような、ごくごく自然な文体なので、悪く言えば気合が入らない小説です。

でもちょっとだけ<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-2843.html" target="_blank" title="不穏な雰囲気">不穏な雰囲気</a>もあって、それがあるから読み進めてしまいます。やっぱり不穏は大事ですね。

前回の芥川賞の『ブラックボックス』(砂川文次著)のようなスピード感はなく、歩く速さで読めます。